アインズ様Lv1   作:赤紫蘇 紫

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第一~第三階層守護者、シャルティアの階層を見に行くお話ですが、視察と言うよりはお茶を飲みに行くだけな感じです。全年齢なので、セクハラは温いです。


すず散歩。その5

「先日、コキュートスの階層にアインズ様がお見えになったと聞いたでありんす……つまり!次はわたしの階層の番……!!精一杯おもてなしをしないと!……って、聞いてるでありんすか?アルベド」

 ナザリック女子会に集まった三人のうち一人、シャルティアはやたらと高いテンションでそう言った。アルベドはそんな彼女を苦々しげに見つめている。アウラは、というと静観の構えだ。触らぬ神に祟りなしとはよく言ったものだ。

「聞いてるわよ、腹立たしい!私なんか謹慎を言いつけられるし、アインズ様のスケジュールも教えて貰えないって言うのに……!!今程階層守護者という地位が羨ましいと思った事はないわ!!」

 腰の羽根をばたつかせながらそう言うアルベドを、シャルティアはどや顔で見つめている。

「それは自業自得でありんしょう?わたしはその様なヘマはいたしんせん。上手く立ち回ってアインズ様のご寵愛を……!!」

 うっとりとした表情でそう言うシャルティアを、アウラは呆れたように見つめている。

「いや、あたしからしたら二人ともどっちもどっちだからね?せっかくアルベドの謹慎が解けたのに、今度はアンタの謹慎とか……勘弁して欲しいんだけど?」

 大きく溜息を吐きながらそう言うアウラは、狐色に焼けたマドレーヌに手を伸ばす。

「おや、チビ助。心配してるのでありんすか?わたしはどこぞの間抜けな女淫魔とは違って本能のままに襲いかかったりはしないでありんすよ?」

 薔薇の花片の浮いた紅茶の香りを楽しみつつシャルティアがそう答えるが、アウラは疑わしげな視線のままだ。

「……少なくとも、デミウルゴスにとってはシャルティアもアルベドも同じ扱いみたいだよ。二人には絶対にアインズ様のスケジュールを教えるなって皆に厳命してたし」

 アウラのその言葉に、アルベドとシャルティアは大きく目を見開く。

「なっ……!心外でありんす!!」

「こっちの方こそ!!爛れた性生活の貴女と一緒にして欲しくないわ!!」

 二人して同時にそう返す様を見て、アウラは生温かい視線を送る。

「うん。デミウルゴスの判断は正しかったみたいだね……」

 女性守護者のうち二人がこうなのだ。自分は決してアインズ様にご迷惑を掛ける事がないようにしよう……と、アウラは密かに決意を固めたのだった。

 

 

 

「……今日がシャルティアの階層か……。デミウルゴス、装備品は問題無いか?」

 悟は朝食後デミウルゴスにそう声を掛ける。

「はい、アインズ様。先日パンドラズ・アクターに持参させたアイテムのうち、魅了への完全耐性がある品をピックアップしておりますのでご安心下さい」

「そうか。なら、安心だな」

(シャルティアはアルベドと違っていきなり襲いかかって来たりはしないから、まだ安心出来るかなー……)

 デミウルゴスの言葉に内心そう呟くと、悟は装備を整える。吸血鬼であるシャルティアの魅了の魔眼は任意発動ではあるが、今の全く耐性が無い状態の悟では色々と不安だったため、最優先で魅了特化の装備を身に着ける。次いで重要なのは毒や混乱等だが、飲食物を出されてもまずデミウルゴスが毒味をするので悟はあまり心配していなかった。

「アルベドやシャルティアが余計な小細工が出来ぬよう、現在も彼女らへはアインズ様のスケジュールを伝えておりません。シャルティアにも、向かう直前に連絡を入れれば問題無いかと。彼女は元々今日は階層の守護以外予定が入っておりませんので」

「……そうか」

 理性を失いがちな守護者統括であるアルベドを悟の傍には置けないため、現在は守護者たち等のスケジュールはデミウルゴスも把握するようにしている。お陰で視察は日々順調に行えている。これも、外の世界の状況がある程度落ち着いているから出来る事であった。

(レベル100の守護者で、しかも頭の良いデミウルゴスを護衛にして視察とか……本当に贅沢なNPCの使い方してるよなぁ、今の俺って。まぁ、非力だから仕方ないかもしれないけど……!マジで、いつ戻るんだろう俺……)

 とりあえず、自身の貞操の防波堤となってくれているデミウルゴスに悟は感謝してもしきれないと思っていた。……いくら悟が童貞であるとはいえ、自身が襲われての喪失は喜びよりも恐怖の方が優ってしまうのだから。それがどんなに美貌の女淫魔が相手であろうとも。

(アルベドは美人だしスタイルも良いけど……怖すぎるんだよ!!俺に飛びかかってくる時の目!!あのまま喰われてたら、俺、一生トラウマになるっ……!!)

 ……悟は三十路にもなって、まだ初体験に夢を抱いていた。少女漫画などでよくある、海辺の別荘での朝チュンとか、夜景の綺麗なホテルで……とか。そういった体験を、好みの女性と……等と妄想しているのだが、勿論この妄想は実現することは無い。元々骨の身体であるし、肉体のある今でも迫ってくるのは肉食系女子のみなのだから……。

「本日は何時くらいに向かいますか?」

 と、デミウルゴスに問われて悟は一瞬だけ思案する。

「そうだな……今日も午後からにするか。シャルティアの守護する階層は広いが、シャルティア自身の住居自体を訪れるだけならそんなに時間は掛からないだろうしな。それに、もし予定外の事があっても明日以降出直せばいいだろう」

「畏まりました。では、その様に。……念の為、装備は今から変えていただいた方が良いかと」

「あ、あぁ。お前がそう言うのならそうしておこう。では、午前中私は読書でもしておくとするか」

 悟がそう言って立ち上がると、すかさずメイドたちが近寄ってくる。装備の交換のためだ。悟はもう慣れたのか諦めたのか……素直に衣装室へ向かった。

 

 

 

(あーもう!!めちゃくちゃ緊張するんだけど!!ペロロンチーノさん、シャルティアに変な衣装とかいっぱい渡してそうだもんなぁ……)

 正直、童貞の悟には刺激が強そうな衣装も多そうで。今から動揺しないよう、悟は必死に脳内でシミュレーションを繰り返していた。……手元にあるのは、グラドルが載ってる写真集だ。以前にペロロンチーノが『運営にBANされないギリギリを探る!』と称して用意したデータだ。そんなチキンレースをしても仕方がないのに、ユグドラシルが許容するエロの限界に挑んだ男が悟にくれた物である。ちなみに中身は全部着衣である。上半身ヌードのデータを用意した際はあっさりとBANされて、ペロロンチーノは一週間程ユグドラシルにイン出来なかった。(後日運営に詫びを入れて何とかアカウント復活してもらえたのだが、もう二度とやるなとかなり絞られたそうだ)

(……着衣、って言っても。コレ、結構際どいんだけどなー。この水着、ほぼ紐だし)

 肌色面積多めのマイクロビキニや紐状の水着とは言い難い何かを着用しているグラドルたちは、総じて胸が慎ましやかだ。……ペロロンチーノの趣味である。ちなみに、悟の私物は巨乳グラドルばかりである。

(あれ?このデータがセーフだった、って事は、こーいう装備もセーフだったりするのか……?)

 と、悟は自分の考えに蒼白になる。もし、ペロロンチーノがこういった過激な装備をシャルティアに創っていたら……。

(ヤバイ!!俺、真顔で居られる自信がないっ……!!どうしよう、支配者の威厳を保つためには俺、どうしたらいい!?)

 必死に考えるが、解決策は見つからず。あっという間に昼食も終わり、シャルティアの守護する階層へ向かうことになったのだった。

「では、今から向かうとシャルティアに伝えましょう。移動の時間くらいでは小細工などは出来ないと思いますので」

「そうだな、頼む」

(うわー。デミウルゴス、めちゃくちゃシャルティアも警戒してる!!え、マジで何かされちゃうの俺!?)

 既に階層に向かう前からビビリまくりの悟であるが、何とか声だけは平静を保てた。……その表情は微妙に引き攣っていたが、誰も突っ込まない。皆がアインズを敬愛するが故の優しさであった。

「シャルティア。今からアインズ様をお連れするから、第四階層との入口で待機するように」

 そう言うと、デミウルゴスは無慈悲にも<伝言>を切る。

「さて。アインズ様、向かうとしましょう。シャルティアは待機させておりますので、何も問題はございません」

「……そうだな」

 満面の笑み&尻尾を褒めて欲しげに左右に振っているデミウルゴスを目にして、悟は同意を示すと部屋から出た。

 

 

 

「なッ……!デミウルゴス!?……チッ。切りやがった……!!お前たち、急いでクローゼットからあの装備を持ってくるでありんす!!わたしはここでアインズ様をお待ちしないと……!」

 普段の装備のシャルティアは吸血鬼の花嫁にそう命じると、ソワソワとしながら悟を待つのであった……。

 

 

 

 

「アインズ様……!ようこそお越し下さいました……!!」

 瞳を輝かせて悟を出迎えたのは、珍しくローブを纏ったシャルティアだった。最初の違和感に、まずデミウルゴスが反応した。悟をガードするように立つと、警戒するようにシャルティアを見つめる。

「……シャルティア。君はアルベドと違ってアインズ様を害したりはしないと思っていたんだが……。どうしたんだい、その装備は?」

「あらーぁ?デミウルゴスともあろう者が随分と細かいことを気にするでありんすねぇ?わたしはただ、ペロロンチーノ様が下さった装備の中でもこの場に特に相応しい装備に着替えただけでありんすよ?」

 挑発するようなその物言いにデミウルゴスの警戒はより深まるが、魅了への耐性がある装備を身に着けていない低位のシモベが無反応なので、悟はデミウルゴスを宥める。

「落ち着け、デミウルゴス。アルベドの件があってピリピリしているのは分かるが、お前が用意したシモベにも異常は見られないんだ。安心しても問題無いのではないか?」

 ぴょこり、とデミウルゴスの背後から顔を出してそう言う悟に、シャルティアの表情は途端に恍惚とする。

「アインズ様ぁ♡ペロロンチーノ様の自慢の装備、どうかご存分にご堪能下さいませ……♡」

 シャルティアはそう言うと、悟の目の前でローブを脱ぐ。するとその下には、露出度の高いパステルピンクのベビードールが見えた。

「!?ちょ、シャルティアっ!?」

 動揺する悟に、シャルティアは妖艶な笑みを浮かべる。

「いかがでありんすか?ペロロンチーノがお好きだった、絶対領域とやらを絶妙なバランスで配した装備は……?」

 そう言ってシャルティアは悟に近付いて来る。ベビードールはユグドラシル仕様であるため、BANされない程度の露出にギリギリ収まってはいたが……それでもかなり際どいデザインだったため、悟は思わず目を逸らしていた。胸の辺りは真紅の薔薇の刺繍が施してあり、布は透けているのに見えそうで見えない……そんなセクシーランジェリーをまとった合法ロリ。いかにもペロロンチーノが好みそうなデザインであった。ちなみに、下半身には紐よりはもう少し面積のある、これまたギリギリを攻めたデザインの同色のショーツを装備している。こちらも勿論スケスケである。……絶対領域の使い方が間違っている事には、誰も突っ込まない。

 悟の危機を察知して、スッとデミウルゴスが二人の間に割って入る。

「……シャルティア。アインズ様に拝謁するには、その装備は軽装すぎないかい?」

 言葉を選んでデミウルゴスがそう言えば。

「気のせいでありんしょう。何せこの装備は、ペロロンチーノ様が最終兵器と仰っていた物。それを、愛する殿方の前で披露するのに何の問題がありんすか?」

 シャルティアは優美な笑みを浮かべながらも挑発的な視線でデミウルゴスを見返す。……悟は、と言えば。沈静化が効かないため、動揺しまくったままデミウルゴスの背後に隠れていた。

(ペロロンチーノさん、何してくれてんの!?BANされるラインを探るにしても、ランジェリーとか無いでしょう!?あの装備、何の役に立つんですか!!)

 と、脳内でそう叫ぶが、この場を収めるような台詞は浮かんでこない。

(……そう言えば、タブラさんもアルベドのパンツやたらとたくさん創ってたよなぁ……。やっぱり男性プレイヤーが女性NPCを創造するとエロ方面に走りがちなのかな?俺は男性NPCしか創造してないからその辺の気持ちはちょっと分からないけど……)

 ふと、自分に襲いかかってきていた女淫魔の創造主を思い出しそんな事を考えるが、現実逃避をしてもこの場は収まらない。

「アインズ様ぁ♡どうかペロロンチーノ様の装備をご鑑賞下さいませ♡」

 そう言って迫ってくるシャルティアを、デミウルゴスと警護の者たちは必死に抑えていた。その必死な様子に、悟は現実に意識を戻す。戦闘向きでは無いNPCデミウルゴスにあまり無理はさせられない。

「シャ、シャルティア!」

「はい、アインズ様♡」

 名前を呼ぶと、嬉しそうにそう答える。悟は大きく深呼吸すると、デミウルゴスの背後から顔を出す。

「あぁ~♡麗しの君……!ようやくそのご尊顔を拝すことができたでありんす……!」

 恍惚とした表情でそう言うシャルティアに、本性丸出しで襲いかかって来たアルベドを思い出してしまうが、悟は何とかその場に踏み留まる。

「その、だな。その装備は平時に着用する物では無い。だからな、どうかローブを羽織って欲しい」

 顔が熱いのを理解しつつも、シャルティアの身体を見ないように視線をその顔に固定し、見つめるようにしてそう言えば、シャルティアはその口元をだらしなく歪めて身体を震わせる。

「あぁ……!久しぶりのアインズ様に、その様に見つめられたら……!」

「お前たち!今だ!シャルティアにローブを着せるんだ!早く!!」

 デミウルゴスのその言葉と同時に、警護の者たちが慌てて力の抜けたシャルティアにローブを着用させると、悟はホッと息を吐く。

「……シャルティア。その装備は戦闘には不向きだからな、普段はいつもの装備をするように」

 ほんの少し赤みの引いた頬でそう言う悟を、シャルティアはうっとりと見つめていた。

「……アインズ様、いかがいたしましょう?シャルティアがこの有様では、視察は難しいのでは?」

「うむ。そうだな……。シャルティア、歩けそうか?」

 悟が声を掛けると、シャルティアは潤んだ瞳のままこくり、と頷く。

「はい♡アインズ様♡是非とも私の部屋にお越しください。その、今のとは違う装備に着替えますので……」

 上目遣いにそう言われて。悟は断ることが出来なかった……。

 

 

 

「アインズ様♡こちらになりんす。お疲れでありんしょう、どうぞお掛けになって」

 ローブを羽織ったままのシャルティアにソファを勧められ、素直に座る。すると、途端に吸血鬼の花嫁たちがお茶を用意した。香りの高い、ナザリック産の紅茶である。

「失礼。先ずは毒味をしないとね」

 と、即座にデミウルゴスが割って入り、紅茶を数滴掌に落として口を付ける。そのまま飲まないのは、悟が飲むときに口を付けやすいようにだ。

「……問題無いようです、アインズ様」

「そうか。……うん、美味いな。これはシャルティアが好みの味なのか?」

 華やかな香りのする紅茶は、普段悟が飲んでいるものとは僅かに風味が違う。どことなく花を思わせるような香りに、悟はほんの少し不思議な気持ちになる。

「はい!気持ちが華やぎますし、リラックス出来るでありんすから」

 嬉しそうにそう言うシャルティアからは、さっきまでの妖しい雰囲気は消え去っていた。……その事に、悟がホッとしていると。

「では、失礼して。装備を変更して来るでありんす」

 シャルティアはそう言うと奥へと消えた。

「……デミウルゴス」

「はい、アインズ様」

「……次は、マトモな装備だと思うか……?」

 悟が恐る恐るそう訊くと、デミウルゴスは眉間に大きな皺を作りながら答える。

「すみません、全く予測が出来ません。ですが、御身は私たちが必ずお守りしますので……!」

 生真面目な彼のその言葉に、悟は緊張を高めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 シャルティアの部屋は、悟が思っていたよりは遥かにマトモな洋室だった。ペロロンチーノの性質から言って、もっとエロティックな部屋なのを想像していたが、少なくとも悟が見た範囲にはそういった物は見えず、ホッとする。

 香り高い紅茶を楽しみつつ、ふと疑問に思う。

(確かシャルティアって吸血鬼だからお菓子とか食べられない筈なんだけど……このお菓子、俺が来るからわざわざ用意したのかな?)

 そう思うと、悟はほんの少しだけ心がほっこりとするような気がした。……先程のセクハラはともかく、シャルティアが自分を慕ってくれているのは親が子を慕うような感情の延長だろうな、と思っていたから。

 ……実際には親を慕うような感情ならあんな事をしたりはしないだろうけれど、その辺の事に突っ込める存在はナザリックには存在しないのだった。ので、悟の妙な勘違いは正されることがないままだった。

「アインズ様!お待たせしたでありんす。この装備ならいかがでありんしょう?」

 そう言って現れたシャルティアは、今度は何故かバニーガールの衣装を着ていた。

「!?ぶ、っ……ぐ、ふ、ぅ!!」

 悟は口に含んでいた紅茶を派手に吹き出してしまい、その際気管に入った紅茶に激しく咳き込んでいた。

「殿方はこの様な装備が好きだとペロロンチーノ様が仰っていんした!布も丈夫だし耐久性にも問題無いかと思いんすが……」

 胸元がやや寂しいバニーガールではあったが、悟には少々刺激が強かった。元々のシャルティアの装備が露出が少ない物である為か、悟は思いの外衝撃を受けていた。

「アインズ様!お気を確かに……!こちらを!」

 デミウルゴスが慌てて気付け薬を差し出してくるが、悟はそれを断り、大きく深呼吸してからシャルティアに話し掛ける。

「……あー、その、だな。シャルティア。お前が私の為に装備を変えてくれるのは嬉しいが……TPOには合っていないから、いつもの装備になってくれないか?どうにも落ち着かない」

 ほんの少し頬を染めてそう言う悟を見て、シャルティアは一瞬本性を現しかける。その大きく開いた口元に、悟は小さく悲鳴を上げかける。

「!?ヒッ……!ん、んっ……。その、シャルティア?いつもの装備が恐らくペロロンチーノさんが一番好みの装備だと思うからな、着替えてきてくれ」

 上がり掛かった悲鳴を必死に飲み込み、冷静を装いそう言えば。創造主の名前を出され、彼が一番好みの装備だとまで伝えられ。シャルティアは頬を染めながら悟を見つめる。

「アインズ様……!それは、誠でありんすか?」

「あ、あぁ、本当だ。以前ペロロンチーノさんはシャルティアのドレス姿が可愛らしくて好きだと言っていたぞ」

 話に乗ってきたシャルティアに続けてそう言えば、その瞳は爛々と輝く。一瞬身震いをして、それでも視線を逸らさずに悟がそう言えば、シャルティアは恍惚とした表情で小さく呟く。

「可愛い……!ペロロンチーノ様とアインズ様がわたしを、可愛いと……!!」

(いや、俺は言ってないけどね!?)

 と、内心悟は思ったが、口にしたら面倒くさい事になるのは火を見るよりも明らかだったので、口を噤む。

「では、早速着替えて来るでありんす!」

 浮かれきった声でそう言うシャルティアを、悟とデミウルゴス、警護の者たちは呆然と見守っていた。

「……アインズ様。その……」

「……デミウルゴス、何も言うな……。私たちはこの階層の視察も無事に視察を済ませた。そういう事でいいだろう?」

 大きく溜息を吐きながらそう言う悟に、デミウルゴスは無言のまま一礼したのだった。

 

 

 

 その後。いつもの装備に戻ったシャルティアは終始上機嫌で。熱の篭もった視線をずっと悟に向けていたが、悟はそれを華麗にスルーすると他愛もない話をしてそつなく視察を終わらせたのだった……。

(シャルティアでこれって……。俺、アルベドの視察に行くのが怖いんだけど!?)

 内心激しい不安を抱えつつ、悟は自室へと戻ったのだった……。


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