アインズ様Lv1   作:赤紫蘇 紫

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鈴木さんが男性陣とスパリゾートナザリックでのんびりするだけのお話です。原作では居なかったセバスとパンドラズ・アクターも一緒にお風呂に入って欲しかったんだ……!


鈴木さん、スパリゾートナザリックへ行く

「……何故私の周りの女性陣はああも積極的なんだろうな……」

 自室に戻ってソファに腰掛けると、悟は大きく溜息を吐く。そんな疲れた様子の悟に、デミウルゴスは狼狽えまくっている。

「ア、アインズ様……!とりあえず、紅茶でも如何でしょうか?」

 そう言いながら、デミウルゴスはサッと紅茶を用意する。マジックアイテムであるティーポットは、常に紅茶にするのに適した温度のお湯が満ちていて。悟が欲したときにすぐに紅茶やコーヒーが飲めるようになっていた。

「あぁ、すまないなデミウルゴス。……うん、やはりナザリック産の茶葉は香り高いな。外交時に他国の茶を供される事もあったが、これだけの香りを持った紅茶は無かった」

 アインズの肉体は骨だから飲食は出来ないが、それでも客人として招かれた際は一応食事は提供された。それもあって、悟も一応料理や茶の善し悪しはザックリとだけど理解出来ていた。

 上質な紅茶を飲んで少しは落ち着いたのか、悟は笑みを浮かべている。

「……アインズ様……」

 デミウルゴスは、言葉を選んでいるようで何かを言い淀んでいる。

「なぁ、デミウルゴス」

 そんなデミウルゴスに、悟は穏やかに話し掛ける。

「以前のように、男性守護者だけで風呂にでも行かないか?今回は前回呼べなかったセバスも呼んで」

 悟の意図を察したデミウルゴスは、その場で一礼する。

「かしこまりました。日程はいつに致しましょう?」

「そうだな……急だが、明日がいい。明日の午後二時くらいからまったりとしたいな。守護者たちのスケジュールはどうなってる?」

 ソファの上でしどけなく肢体を投げ出している悟は、素を出してそう言う。その様子に、デミウルゴスは悟の疲労度の高さを察する。

「問題ありません。では、皆にその旨伝えておきますので、アインズ様はもうお休み下さい。本日はお疲れでしょう」

「……あぁ、そうすることにしよう。デミウルゴス、何かあったら明日の朝食の時にでも言ってくれ」

 悟はそう言うと、そのまま寝室へ向かった。

「……さて。急ぎ皆に連絡を入れないと。今からなら皆調整が出来る筈ですからね」

 悟を見送ってから、デミウルゴスは全員に順次<伝言>を入れたのだった。

 

 

 

 翌日。女性守護者のうちシャルティアとアルベドには内緒で、男性守護者たちだけでスパリゾートナザリックへ来ていた。アウラには事情を話し、二人が九階層に来ないようさりげなく誘導して貰っている。

「お前たち、忙しい中集まって貰ってすまないな。今日は皆で湯に浸かり普段の疲れを洗い流すとしよう」

 悟がそう言うと、全員が悟の後に続き脱衣所へ入る。皆、事前にデミウルゴスから事情を聞いている為、お疲れ気味の悟をどう労うべきか必死に考えている。

「……ふぅ」

 前もって指示をして、湯の温度をぬるめの38度にしていたので、レベル1の悟でものんびりと浸かることが出来る。かけ湯をして軽く身を清めてからゆっくりと湯船に浸かると、悟は大きく息を漏らす。

 その心地よさそうな様子に、守護者たちは安堵の息を吐く。

「アインズ様、お疲れ様でした。昨日は本当に、その……」

 そう言葉を濁すデミウルゴスに、悟は笑い掛ける。

「気にするな、デミウルゴス。女淫魔の衝動を甘く見ていた私の失態だ。お前は魔将たちとともに私を守ろうとしてくれていたのだろう?感謝する」

「そ、そんな!感謝など……!」

「いや、感謝させてくれ。お前たちが頑張ってくれているからこそ、私は今も無事なのだからな」

 悟のその言葉に、デミウルゴスは感極まっている。感情に連動している尻尾が、湯をバシャバシャと跳ねさせていた。

「マーレ、コキュートス。お前たちもいつもアルベドを抑えてくれていて感謝するぞ。お前たちが協力して抑えてくれているからこそ、私が無事で居られるんだ」

「アインズ様……!そんな、勿体ないお言葉です!」

「ソウデス。我々ハ、当然ノ事ヲシタマデデス」

 悟の傍に入っているマーレと、隣の冷水風呂に入っているコキュートスは口々にそう言う。二人とも悟の言葉に感動している。

「パンドラズ・アクター。お前も適切な装備を揃えてくれて感謝する。今後もレベルが変動すると思うが、都度適切な装備を用意してくれ」

 今回は男性陣を呼ぶとしていたので、前回は居なかったパンドラズ・アクターも一緒に湯船に浸かっている。そして悟の言葉に大仰に身振りで感動を伝える。

「あぁ、父上っ……!!その言葉だけで私っ……!!」

「……うん。落ち着け?湯が跳ねるからな?」

 テンションの上がりきったパンドラズ・アクターを宥め、悟は今度はセバスに視線を向ける。

「セバス。お前にも感謝しているぞ。メイドたちを統括してくれているお陰で、日々快適に過ごせているからな。今後もよろしく頼む」

「はっ!かしこまりました。今後も精進し、アインズ様の生活に不自由の無いようメイドたちに指導いたします」

 セバスも珍しく頬を紅潮させてそう応える。彼も前回の時は任務で一緒に風呂に入ることは出来なかったため、今回の機会が嬉しくて堪らないのだ。

「……何でアルベドとシャルティアはああも肉食系なんだろうな……」

 と、ふと漏れた悟の本音に皆顔を見合わせる。恐らく彼の方が疲れているのは彼女たちが原因だと察したからだった。

「アルベドは女淫魔ですからね……。シャルティアは種族的にそこまで積極的では無い筈なのですが……」

 デミウルゴスがそう思案しながら答える。

「父上が美形なのが原因のような気がしますが」

「いや、だからって襲いかかって来ないだろ、普通!!」

 サラリ、と悟自身が原因だと言い放つパンドラズ・アクターに、流石に突っ込まずにはいられなかった。

「そうは仰いましても。あのお二方、父上以外には襲いかかってませんしねぇ……」

 飄々とそう言われて、悟はガックリと肩を落とす。

「ア、アインズ様がいくら格好良くても、襲うのはダメだと思いますっ!!」

 すると、珍しくマーレが大きな声でそう言い放つ。その声に賛同するように、セバスとコキュートスも声を上げる。

「左様ですな。アインズ様の御意志を確認もせず襲うなどと……」

「襲ウコトハ正当化デキナイナ」

 三人の言葉に、悟はほんの少し気持ちが楽になる。

「ありがとう、マーレ、セバス、コキュートス。……パンドラズ・アクター。お前はもう少し私を労ってもいいんじゃないか?」

「えぇー?十分労ってるつもりなのですが……」

「アインズ様!私は彼女たちが悪いと思っておりますから!」

 慌ててデミウルゴスもそう言うと、悟に自然と笑みが零れた。

「分かっているさ。お前は連日彼女たちの対策をしてくれているしな。元に戻るまで迷惑を掛けると思うが、よろしく頼む」

 悟がそう言うと、デミウルゴスは尻尾を揺らすのを必死に抑える。さっき、パンドラズ・アクターが注意されていたのを覚えていたからだ。

「迷惑などと……!私はアインズ様に仕えられることこそが幸せなのですから、気になさらないで下さい」

 湯船の中なので跪きはしなかったけれど、深々と頭を垂れてそう言うデミウルゴスに悟は少し焦る。

「デ、デミウルゴス!お前の忠心は理解した。だから、頭を上げないか!今日は皆でリラックスをしに来ているんだ。そのように堅苦しくされたら私の疲れも取れないぞ?」

 悟にそう言われて、デミウルゴスは慌てて頭を上げる。

「申し訳ございません、アインズ様。では、アインズ様がリラックス出来るようにマッサージでも……と言いたいところなのですが。今のアインズ様のレベルを考えると、以前のようにお背中をお流しすることも難しく……」

「でしたらっ!!この私が父上のお背中をお流ししましょう!!」

 デミウルゴスの言葉に、自信満々にそう言い放ったのはパンドラズ・アクターだった。ザパリ!と湯船から立ち上がって、堂々とそう言う彼に、悟は不安でしかない。

「……何でお前、そんなに自信満々なの?」

 素でそう突っ込む悟に、パンドラズ・アクターは胸を張って答える。

「当然ですっ!この私、どんな繊細なアイテムでも壊すこと無く管理しておりますので……レベルが1の父上に触れても力加減を誤る事などあり得ませんから!」

「そう言われれば……。では、今回はお前に任せることにするか。他の者は、せめて私のレベルが30を超えるまでは待ってくれるか?その程度になれば、背中を流される程度で即死や瀕死にはならないだろうからな……」

 悟のその言葉に、皆パンドラズ・アクターを羨ましそうに見ながらも大きく頷く。誰もが悟を傷付けたいとは思っていないので、我慢しているのだ。

「父上っ!かゆいところなどはありませんか?」

「……それ、床屋の台詞じゃないかな……」

 パンドラズ・アクターの言葉に色々不安になっていた悟だったが、意外にも適度な力加減で背中を流されて全身がリラックスしてくる。

「お前、意外と器用なんだな」

「お褒めにあずかり光栄です、父上!御髪も洗いましょうか?」

 悟の褒め言葉にテンションの上がったパンドラズ・アクターはそう訊いてくる。

「あぁ、そうだな。身体も問題なく洗えているんだし……任せてもいいだろう。丁寧に頼むぞ?」

「はい、父上!お任せ下さいっ!!」

 意気揚々とそう言うパンドラズ・アクターを眺めながら、他の面子は今後の悟の警備体制の強化などについて語り合っている。

「……思い詰めたアルベドが何をするか分からないからね。アインズ様が元に戻るまでは、君たちにも協力して貰うよ」

「分カッテイル」

「はい!」

「お呼びとあらば、すぐに参上いたしますよ」

 三者三様にそう答えを返す。デミウルゴスはその様子を見て大きく頷くと、再び口を開く。

「セバス。執務中は君がメインでアインズ様の警備に入るのだけど……君一人だと流石にあのアルベドやシャルティアが来たら抑えられないだろう。だから、私の配下の悪魔も貸し出そう。何かあったら盾に使ってその隙にアインズ様を逃がしてくれ。……<伝言>の巻物も十分に持っているね?」

「はい。何かあった際には使わせていただきます」

「あ、あの!僕はどうしたら……!」

 やる気満々といった風情のマーレがそう訊いてくる。

「そうだね。アインズ様にアルベドやシャルティアが襲いかかろうとしたら前もやったように蔦で抑え込んで欲しい。その場にコキュートスが居たら、冷却して貰えば楽に抑え込めるだろう」

「分カッタ、ソノ様ニシヨウ」

「はい!コキュートスさんと協力します!……その、コキュートスさんが居ないときは……ちょっと気絶させるくらいなら、大丈夫ですよね?」

 サラリ、と怖いことを言い出すマーレだったが、デミウルゴスは笑顔のまま大きく頷く。

「うん、それも良い手だね。意識が無ければ襲いかかれないだろうし。君の負担にならないのなら、そうしても構わないよ」

 こちらもサラリと怖いことを言っているが、彼らにとって守護者よりもアインズの身の安全が第一なのだから当然だ。

 話し合いをしながらも、全員が身体を洗い終わり、再度仕上げに身体を温める為に湯に浸かれば、悟もパンドラズ・アクターに全身を磨かれてピカピカになった身体で湯船に浸かる。

 ぬるま湯なので、デミウルゴスにはやや物足りない湯温だが、デミウルゴスの好みに合わせたらマーレや悟、パンドラズ・アクターには入れない温度になってしまうから仕方がない。

「……あー……。疲れてるときは、やっぱりぬるま湯にゆっくりと浸かるのが最高だな……」

 大きく深呼吸しながらそう言う悟は、心の憂いが全て晴れたかのようで。守護者たちもその様子を見て安堵する。

「そ、そうですね!このくらいの温度だと、ゆっくり入れますし……アインズ様と色々お話し出来て嬉しいです!」

 マーレが満面の笑みでそう言うと、悟もつられて笑顔になる。

「そうか。マーレがそう言ってくれるのなら、皆を呼んだ甲斐がある。普段は守護者同士もこんなにのんびりとは話す機会も無いだろう。存分に話をするといい」

 悟がそう言うと、パンドラズ・アクターがインベントリから日本酒とお盆を取り出す。

「アインズ様!やはり湯で交流を深めると言ったらコレでしょう!マーレ様の分はノンアルコールをご用意してありますので是非!!」

「……お前、変な所で気が利くな?では、皆酔い潰れない程度に楽しんでくれ。私も頂こう」

 悟のその言葉に、セバスがスッと手を伸ばしお酌をする。執事らしいさりげなさであった。

「ありがとう、セバス。お前も呑め」

 そう言って、悟がセバスの杯に酒を注ぐと、セバスはうっすらとその瞳に涙を滲ませる。

「こ、光栄です……アインズ様……!」

「マーレもな。マーレの分はジュースだが、大人になったら皆と同じく酒を注いでやろう」

「あ、ありがとうございます!嬉しいです、アインズ様!!」

 喜色満面で注がれたジュースに口を付けるマーレは、本当に幸せそうだった。

「コキュートスも武人さんのようにいける口なんだろう?遠慮せずに呑むといい」

 コキュートスの入っている氷風呂の方に近付くと、悟はコキュートスにも日本酒を注ぐ。氷風呂ではあっという間に酒の温度も下がってキンキンに冷えてしまうが、コキュートスには丁度呑み頃の温度だ。

「アリガタク頂キマス、アインズ様」

 ゆっくりと味わうように呑んでいるコキュートスは、外見からでは分からないがかなり上機嫌なのだろう、氷水からはみ出ている尻尾が、嬉しそうに揺れていた。

「ほら、デミウルゴス。お前も呑め。コキュートスとバーに行ったりしてるんだろう?いける口なのは知っているぞ。ウルベルトさんもかなり呑めていたからな」

「はっ!頂戴いたします」

 恭しく杯を捧げ持つデミウルゴスに、悟は苦笑する。

「そんなに固くなるな。もっとリラックスしてもいいんだぞ?せめて今くらいはお前も休んでくれ」

 その言葉に、一口酒を呑んだデミウルゴスは小さく頷く。

「父上ー。私には注いでくれないんですか?」

 と、そんな風にマイペースなパンドラズ・アクターは、悟の前に杯を差し出してくる。

「あー、分かった分かった。ほら、これでいいか?」

 なみなみと注いでやると、パンドラズ・アクターは嬉しそうにそれを飲み干す。

「……ペース早くないか?」

 呆れたようにそう言う悟に、上機嫌でパンドラズ・アクターは嬉しそうに答える。

「父上に注いで貰うとより美味しく感じます故!」

「二杯目は自分で注げよ」

 素っ気なくそう返すが、パンドラズ・アクターは手酌で注ぎつつも嬉しそうなままだ。

 マーレ以外はほろ酔いになって、普段以上にリラックスをしてなごやかに話をしている。マーレも場の雰囲気に酔っているのか、いつも以上に愉しそうに見えた。

 悟はそんな皆を見て、幸せな気持ちになりながらゆっくりと酒を呑んでいる。

(……今日はここに来て良かったなぁ……。皆のこんな表情が見られただけでも、スパに来た甲斐があるよ)

 自身の疲れも吹っ飛んで。悟は明日からも頑張れるような気がしていた。




去年は更新が殆ど無かったので、お正月休みに一生懸命書いてました。不定期更新ですが、引き続きよろしくお願いします<(_ _)>
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