「アインズ様のレベルが下がってから、我々がよりアインズ様が快適に過ごせるように努力しているのは皆も知るところだと思います」
と、そうセバスがメイドたちの前でそう告げる。すると全員が瞳をキラキラと輝かせながら大きく頷く。
「ユリ。プレアデスも特別な任務が無い物は一般メイドと同様にアインズ様が快適に過ごせるよう努めている筈ですが……」
本日ナザリックに居るのは、プレアデスのうち長女のユリと次女のソリュシャン、妹争い中のシズとエントマである。末妹オーレオール・オメガはいつものように第八階層なのでこの場には居ない。
「はい、セバス様。ですが、私たちは戦闘メイドですので……アインズ様当番には組み込まれておりません。そのため、現時点ではあまり御方のお側に行く事もありません」
セバスの問い掛けに、ユリはそう答える。
「……確かに、王国が滅びてからはあまり潜入作戦などもありませんでしたからね。では、プレアデスも基本業務は一般メイドと同様という事で間違いないですか?」
微かに首を捻りつつセバスはそう問い掛ける。
「はい。……あと、現状ではエントマはアインズ様のお側には行かないよう厳命しております」
ユリのその報告に、セバスは頭を傾げる。
「ユリ、あなたの判断ですか?それは何故?」
その疑問のままそう訊けば、ユリは大きく溜息を吐きながら答える。
「……あの子のおやつが問題でして。飛び回りますし、どうしてもアインズ様を不快にしてしまいかねないので、近付かないように厳命しております」
ユリのその言葉に続けて、エントマが弁明する。
「でもぉ、食べないとお腹減っちゃってぇ……」
モゾモゾと動く新鮮なおやつを食べながらそう答えるエントマに、セバスは渋面を作る。
「それは……仕方ありませんね。他の者は?」
その仕方ない、はユリに向けてなのかエントマに向けてなのか……。セバスはそう言うとユリに他のプレアデスの状況を訊く。
「はい。ナーベラルは、冒険者モモンのアリバイ作りの為ギルドに報告に行ったりナザリックへ戻ったり……と出入りを繰り返している状態ですね。本日も帝国に向かっております。
ルプスレギナはカルネ村の任務がありますので、現在はずっとそちらに。エントマとシズとソリュシャンと私は一般メイドと同様の仕事をナザリックでこなしております」
ユリの後ろに居たシズは無言で頷くと腕の中のエクレアをギュッと抱き締めている。ヒクヒクとしているエクレアの口からはほんの少し泡が出ているが、何とか生きているようだ。
「ソリュシャンも通常の業務ですか?」
「はい。今のアインズ様のお身体は三吉君様のようにスライムが必要なお身体ではありませんので、アインズ様絡みのお仕事はありませんから。……元々、彼女はアインズ様のお身体に触れてはおりませんが」
以前の三吉君様誘拐事件を思い出し、苦しげにそう言うユリの答えに、セバスは小さく頷く。ソリュシャンは居心地悪そうな表情をしている。過去の暴走は、いまだに彼女の中でしこりとなって残っているらしい。
「……今は、一般メイドと同じ業務でアインズ様にお仕えしておりますわ。また御命令があれば、潜入も致しますが」
ソリュシャンの答えに、セバスは口を開く。
「そうですね。あなたの演技力は素晴らしかったですから。また御命令があればそう伝えます」
セバスはそう言うと、また視線をユリに向ける。
「オーレオール・オメガも通常通りですね?では、プレアデスの皆も一般メイド同様に、今後はきちんと休日を取るように。これは、アインズ様の御命令です」
セバスのその言葉に、プレアデスたちだけでなく、メイドたち全員がざわめく。
「セバス様!それは……」
「アインズ様は仰っていました。プレアデスは戦闘メイドという性質上、休みが不定期になりがちだと。だからこそ、平時はきちんと休みを取り英気を養って欲しいと。御方の仰る通り、きちんと休みを取ることこそが、最も彼の方の為になる事だと肝に銘じなさい」
セバスは、自分自身にも言い聞かせるかのようにそう言った。……どうにもブラック企業の社畜体質なナザリックのNPCたちは、24時間働きたがるので、悟はいつもその対応に苦慮していたのだ。目指せ!ナザリックのホワイト企業化!!と本人は意気込んでいるが、NPCたちからしたら至高の御方にお仕えできない休日は苦痛を感じるものでしか無いというのに。
まぁ、それも悟がアインズだった頃に改革を色々推し進めたので、休みを取ることはアインズ様の為になる、と皆が理解してからは休みはある意味業務の一環のような感じでNPCたちも抵抗なく受け入れてくれるようになったのだが。
「皆の気持ちはよく分かります。ですが、アインズ様は休みを取ることでより仕事の効率が上がると仰っています。つまり、休みを取り入れることで我々はより一層アインズ様の為に働けるのです。だったら、アインズ様に忠義を誓っている私たちがやることは一つです。御命令通り適度な休みを取って、心身の状態を常に最高に保ち、更にアインズ様の為になるよう心掛けて仕えましょう」
セバス自身も可能であれば24時間悟に仕えていたいと思っているが、当の本人がそれを望んでいないのだ。だから、自分にも言い聞かせるように悟の命令を皆に伝えることで全員がきちんと休みを取るように指導する。
「「はいっ!!」」
セバスの言葉に、その場の全員の心が一つになった瞬間だった。皆がそう声を揃えて返事をし、悟への忠誠を改めて誓う。……悟の知らない所で、また勝手にNPCの忠誠心が上がった瞬間でもあった。