アインズ様Lv1   作:赤紫蘇 紫

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レベリングの続きです。魔法について、勝手な解釈で書いております。


ちょっと丈夫になりました(英雄くらい)

 デミウルゴスの引率の元、接待レベリングを繰り返し。悟はようやくレベル30になった。装備品もより高品質の物が身に着けられるようになったので、毒や麻痺などの状態異常にも耐性のある装備を身に着けている。……が、未だに魔法は使えない。

「……元々の私は魔法詠唱者なんだがな……」

 戦士職の真似事のような事ばかりしていて、悟は色々と心配になって来ていた。自分では全く自分のステータスは見られないから、変なビルドになっていないか不安で仕方ないのだ。確かにこの身にMPがあるのは分かるのに、それが行使できないもどかしさ。今の悟は、冒険者モモンの下位互換といった感じの戦い方をしていた。

(ビルドは自分でしか見えないし、でも今の俺だと見ることが出来ないし……どうしたらいいかなぁ。せめて今の職業が分かれば……)

 と、悟はそこまで考えてふと気付く。魔法発動の為には、何らかのトリガーが必要なのかもしれない、と。

「デミウルゴス。今は三位階までの魔法の巻物が製作可能だったな?」

 そう訊けば、控えていたデミウルゴスがすぐに答えをくれる。

「はい。それよりも上の位階の魔法は、羊皮紙が耐えきれずまだ作成が出来ませんが、三位階まででしたら古代図書館の司書たちが製作可能です」

「なら、現時点で製作可能な魔法全ての巻物を持って来てくれないか?そうすればまた私も魔法を行使出来るようになるかもしれないのでな」

「かしこまりました。では、急ぎ作成するよう伝えて参ります」

 悟がそう言うと、デミウルゴスは一礼して即座に古代図書館へ向かった。

(……コレで習得出来なかったら、フールーダでも呼ぶしかないかなぁ……。でも、俺今威厳ある姿じゃないからなー……。ナザリック外の相手と会うのは出来れば避けたい、っていうか)

 そんな事を考えながら、悟はアイテムボックスから本を取り出してパラパラとページを捲る。古代図書館から借りてきた、ギルメンが寄贈していた本だ。一般流通している本とは違って、ギルメン個人の主張が強い一冊となっていて、中々面白い。タイトルは”モテ男に学ぶ!脅威の社交術”だ。……既婚者も居たが、基本的に喪男ばかりのギルドでそのタイトルだと信憑性が怪しすぎるが、娯楽作品として読むのには十分だったのだ。

(結構面白いけど、間違った知識の本が古代図書館にあるのも困りものだよなぁ……冊数多いし、全部俺がチェックする訳にもいかないし……検閲みたいなのは良くないよなぁ)

 と、半ば流し見のような感じで読みつつ、悟はつらつらとそんな事を考えていた。

 

 

 

 時間にして一時間と少し経過した頃。デミウルゴスが戻って来た。

「遅かったな、デミウルゴス。一体何があった?」

 てっきり、司書に言伝してすぐに戻るものだと思っていた悟はそう訊ねる。

「お待たせして申し訳ありません、アインズ様。司書たちがすぐに作成すると申しておりましたので、作成し終わるまでその場で待っておりました」

「そうか。なら、もう第三位階までの魔法は全て揃っているのか?」

 そう訊くと、デミウルゴスはインベントリから大量の巻物を出す。

「とりあえず、全て一セットのみご用意しました。複数必要であれば、追加で作成するよう伝えておきますが」

「ありがとう、デミウルゴス。では、追加で二セット程用意するように伝えてくれ」

 そう命じると、デミウルゴスは一礼して尻尾を揺らす。

「かしこまりました。急ぎであれば今から伝えてきますが、如何致しますか?」

「そうだな、作成にも時間が掛かるし悪いが先に伝えてくれ。お前が戻るまで、茶でもして待っているから」

 悟はそう言うと視線をメイドに向ける。すると、即座に茶の用意がされる。デミウルゴスはそれを見て再度一礼して部屋から出て行った。

(……さて。第六階層の円形闘技場で試し撃ちをしてみて。それからまた考えるか……)

 メイドが淹れてくれたカモミールティーを飲みながら、デミウルゴスを待つ。お茶請けにクッキーも用意されていたので、それも摘まみつつ。

「茶の香りの邪魔をしないクッキーか。これも美味いな。いつものバタークッキーも美味いが」

 通常のクッキーよりバターが控えめなのか、カモミールティーの香りを邪魔しない、香りが控えめなクッキーは軽めの食感でサクサクと食べられてしまうから思わず枚数が進んでしまう。

「アインズ様、お代わりもありますがいかがですか?」

 ニコニコと笑顔でそう訊かれて、悟は一瞬考えるがすぐに首を小さく左右に振る。

「止めておこう。この後すぐに動かねばならないからな」

「かしこまりました。ではお茶はいかがいたしますか?」

「そうだな、茶もこれで止めておこう。そろそろデミウルゴスも戻るだろうしな」

 カップに半分程残っているカモミールティーをゆっくりと飲んでいると、デミウルゴスが戻って来る。

「アインズ様、お待たせしました。あと二セットですと、余裕を見て三時間程時間が欲しいとの事です」

「そうか。なら、使用するのは明日以降か。……少し休んだら、円形闘技場に向かう。人払いと護衛の手配を頼む」

 カモミールティーを飲み干してから悟がそう言うと、デミウルゴスは軽く一礼すると口を開く。

「そちらの手配はもう済んでおります。アインズ様のお支度が済み次第向かうことが出来ますのでご安心を」

「そうか。なら、あと少ししたら向かうとしよう。装備も変えないといけないしな」

 悟がそう言って立ち上がると、メイドがそっと付き従う。悟はそのままメイドを連れて衣装部屋に入る。

「本日は魔法を主に扱うからな、魔法詠唱者の装備で今の私のレベルでも着用出来る物を用意して貰おう」

「はい、アインズ様!!」

 悟に任された事が嬉しいのか、メイドは目を輝かせながらクローゼットから装備品を見繕っている。

(……今の俺、魔法詠唱者の装備似合わないんだけどなぁ……。ローブが鬼門って言うか。イマイチ威厳が出ないからなぁ……)

 小さく溜息を吐きながらそんな事を考えていると、メイドは素早く準備してくれる。今日はこれから戦闘訓練があると知っているからか、朝のお召し替えの時よりかなり早い。効果重視だから、デザインより性能で選んでいるせいだ。性能で選ぶとなると、選択肢はかなり狭まる。

「出来ましたっ!各種魔法耐性が最大になるように組み合わせました!!」

 やり遂げた!という晴れやかな顔でメイドにそう言われて、悟は躊躇いがちに笑みを浮かべる。

「ありがとう。では私は出て来るので、部屋で待機しててくれ。戻り次第休憩が出来るようにな」

 と、そう声を掛けると、途端にメイドの頬は紅潮する。

「勿体ない御言葉……!はい、いつお戻りになっても快適に過ごせるよう準備しておきますね!」

 悟の言葉に歓喜しているメイドを穏やかな表情で眺めながら、悟はデミウルゴスの待つ前室へ向かう。

「待たせたな、デミウルゴス。では向かうか」

「アインズ様……!あぁ、やはりアインズ様には魔法詠唱者の装備が最もお似合いです……!!」

 ローブを着て現れた悟に、デミウルゴスは大仰に感動を示してみせる。その勢いに、悟は苦笑するしか無い。

「そうか。まぁ、私は本来魔法詠唱者だしな、皆に一番馴染みがあるのもこういったローブ姿だろう。……さぁ、行くか」

 そう声を掛けると、デミウルゴスはそっと扉を開ける。扉の先には、いつものように警護のシモベたちが居た。その中心に進むと、<転移>の巻物を使う。すると、一瞬で全員が第六階層へと転移する。

(リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンだと、手を繋いでいる相手くらいしか一緒に移動出来ないからなぁ。俺が<集団転移>使えればいいんだけど、確か五位階か六位階だからなぁ……。まだ巻物自体が作成不可能だし、自力で覚えるほか無いんだけど)

 そんな事を思いつつ、皆と円形闘技場に入る。初日に言っておいたからか、守護者たちも非番の者以外は客席には居なかった。本日居るのは元々第六階層を守護しているアウラとマーレの二人のみだ。

「……では、とりあえず試してみるとするか」

 アイテムボックスから、手始めに第一位階の巻物を取り出して使用してみる。

「<魔法の矢>」

 魔法を使うときのようにそう魔法名を言いながら巻物を使うと、三本の矢が出現した。その矢は真っ直ぐに的に向かってゆく。……が、以前のアインズのように的は破壊できない。威力が違いすぎるからだ。

「……あー……。やっぱり、攻撃魔法は巻物の使用でもレベル依存なのか。思っていた通り、まだ40には届いてないから三本なんだな」

 その成果にほんの少しだけガッカリしながらも、それでも悟は巻物を持っていた方の手に魔力が集まったのを感じていた。

(よし、今なら……!)

「<魔法の矢>!!」

 そう悟が叫ぶと、掌に集まる魔力。それが、勢い良く射出される。巻物を使ったのと同じく、三本だ。

「……っ!やったぁ!!使えた!!」

 素を出して大喜びし、ガッツポーズをする悟を、デミウルゴスもシモベたちも我が事のように喜びながら見つめている。

「デミウルゴス!とうとう魔法が使えるようになったぞ!!」

「はい!おめでとうございます、アインズ様!!」

 嬉しげに尻尾をブンブン振りながらそう言うデミウルゴスは、さながら飼い主に褒められて大喜びしている大型犬のようだった。

「やっぱり、推測通りだったな。こちらはユグドラシルと違って読んだだけで習得出来るような魔術書は存在しないから……代わりに巻物をと思ったんだが」

 擬似的な魔術書となった巻物は、悟に魔法の発動の感覚を思い出させた。……本来なら、人間の"鈴木悟"には知り得ない感覚。だが、今の悟の肉体の中には魔力が存在している。だからこそ、骨の身体のアインズが転移して初めて理解した魔法を発動させるという感覚が、生身の身体の悟にも戻ったのだ。

「だが、これだと自力で覚えられるのが巻物が存在する位階魔法だけになるが……戻るまでの暫定ならそれでも問題あるまい?お前たちが私を守護してくれるのだからな。そもそも、戻るまではナザリックの外になど行けないから特に問題は無いと思うが……」

 デミウルゴスと、自分を警護しているシモベたちを見ながら悟がそう言えば、皆が一斉に大きく頷く。

「勿論です!アインズ様のお身体には傷一つ付けさせはしません!!」

 デミウルゴスは拳を握りながらそう力説する。傷こそ付けられていないが、何回か女淫魔に煮え湯を飲まされているからか、その言葉にはかなりの実感が篭もっていた。

「そうか。なら安心して過ごすこととしよう。……まずは、第三位階までの魔法の習得だな。それが終わったらもう少しレベリングをしたいんだが、ナザリック内でポップするモンスターたちの中で魔法が効く高レベルのシモベはまだ居たか?魔将クラスになると復活に金貨が必要になって来るからな、蘇生費用が掛からないシモベでレベリングをしたいんだが」

 悟がそう訊くと、デミウルゴスは少し思案する。

「……ナザリックは地下大墳墓という性質上、アンデッド系モンスターしか自然には湧きませんので……その中で高位だとすれば、死者の大魔法使いが恐らくは最高レベルかと。一応魔法も効きますが、倒すまで少し時間が掛かるかもしれませんね。司書などの死の支配者ですとやはり蘇生費用の問題もございますし」

 その答えに、悟は頷く。

「そうか。死者の大魔法使いが最大か。……なら、レベル40前後までならいけそうだな。……MPの制限があるから、そうサクサクとは上げられないだろうが」

 現地ではレベル30程度で英雄の領域と言われている事を考えると、その程度あれば日常生活を送る上では十分過ぎるのだが……ナザリックのレベルカンストなNPC(主に女性守護者)の事を考えると、万全とは言えないと悟は思っていたのだ。

「まぁ、いいか。デミウルゴス、私は魔法詠唱者だからな、今後のレベリングは魔法中心の攻撃で行いたいが……死者の大魔法使いだと若干魔法に対して抵抗があるよな?」

「はい。ですので、魔法攻撃メインで倒されるのであれば、通常よりもレベリングにお時間が掛かるかと」

 デミウルゴスの答えに、悟は一瞬考え込む。

「……私の今のビルドが見られたらいいのだがな……。迂闊に物理攻撃メインでレベリングをしていて、取得出来ない職業が出てしまっても困る」

 悟が目指しているのは、あくまでも当初のアインズ・ウール・ゴウンの職業だ。つまりは、”死の支配者”だ。最終的に其処へ至る為、出来る限り魔法職らしい戦い方を心掛けているのだが……今の種族が人間である悟が至れるかは不明だし、そもそも呪いが解けてしまったら、今のレベルやビルドはパァになりそうではある。だが、それでも悟は身の安全の為にレベリングを継続しようと思ったのだった。

「時間は掛かるかもしれないが、ナザリック内で安全にレベルアップをすることにしよう。……デミウルゴス。死者の大魔法使いで私に倒されてもいいと言っている者を集めてくれ」

 悟がそう言うと、デミウルゴスは恭しく一礼をした。

 




次はアルベドの予定ですが……適度なセクハラが浮かばず四苦八苦中です!
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