アインズ様Lv1   作:赤紫蘇 紫

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セクハラと言うよりは(ry


セクハラとは……?

「……アインズ様が、とうとうレベル40を超えられたなんて……!」

 悟の肉体が、辛うじて触れることが出来るレベルになったと知って、アルベドはだらしなく口元を緩める。……折角の美貌が台無しである。

「確かに、私から触れるのは禁止されているけれど……アインズ様がその気になってさえ下されば、合意の上の行為になるのよ……!」

 金色の瞳をギラつかせるアルベドは、悟が恐れている肉食獣そのものだった……。

 

 

 

「……何かすごく嫌な予感がするんだが」

 無事レベルアップが完了し、<魔法の矢>も4本放てるようになった悟は、ぶるり、と小さく身体を震わせた。5本目はまだ出せないことから、まだレベル40台であることが伺える。

「アルベドかシャルティアがアインズ様の噂でもしてるんでしょう。……警護を増やしますか?」

 当然のようにそう言うデミウルゴスに、悟は顔を引き攣らせる。

「冗談でも止めてくれ。彼女たちが同時に来たら逃げるのだって難しいんだからな」

 悟が逃走に徹すれば、警護が必死に足止めするだろうから何とかなりそうではある。が、無駄な犠牲は出したくないと悟は思っていた。

(命のやり取りならさ、犠牲も止む無しだと思うけど……内部のいざこざでの犠牲はなぁ……)

 大きく溜息を吐くと、悟は踵を返す。

「今日の訓練はここまでにしよう。……何だか疲れた、今日は早めに休む」

「はっ!では、食事も早めましょう。料理長にもそのように伝えます」

 デミウルゴスはそう言うと、その場に控えていた影の悪魔に命じる。その命に応じて、影の悪魔は調理場へ走った。料理長は<伝言>が使えないし、普段は必要無いので巻物も持っていないからだ。

「そう言えば、明日はアルベドから報告を受ける日だったな。……悪いが、若干警備を増やしてくれ。どうにも嫌な感じがしてな……」

 溜息を吐きながらそう言う悟に、デミウルゴスは深く頷く。

「かしこまりました。何があろうとアインズ様をお守り出来るよう、耐久値の高い者を増やしておきます」

「頼んだぞ、デミウルゴス。あのアルベドと渡り合えるのはお前くらいだからな……」

 悟はそう言うと、遠い目でどこかを見ていた。過去の女性陣の際どい精神攻撃を思い出してでもいるのか、黄昏れたような雰囲気の悟に、デミウルゴスは何とも言えない複雑な表情になっていた。

 

 

 

 

 翌朝。装備可能になった中で最も強力なローブを纏って、悟は執務室でアルベドを待っていた。勿論、一人では無い。本日はデミウルゴスだけでなく、コキュートスまで控えている。そして、八肢刀の暗殺蟲に影の悪魔を始めとするシモベたちに、昨日デミウルゴスが言っていた耐久値の高いシモベだ。

(さすがに、ちょっと仰々し過ぎるかな……。でも、マジで何か嫌な予感がするんだよな……)

 昨日の夜パンドラズ・アクターを呼び出して、状態異常防止の装備フルセットを見繕って貰い身に着けた悟だったが、それでも漠然とした不安があって。落ち着かない気持ちのまま、椅子に座っていた。

 と、ノックの音がした。

「アインズ様、アルベドです。書類をお持ちしました」

「……入れ」

 内心の不安を押し隠しながら、悟はそう答えた。すると、アルベドはそっと扉を開いてしずしずと入って来る。その様子は、悟にセクハラをしまくるようなエロ女淫魔には見えない。

(……見た目だけは本当に清楚で可憐なんだけどな……。喋らなきゃ美人なのに勿体ない……)

 と、そんな事を考えつつ、アルベドを見る。

(……今日は装備もマトモだな。いつもとは違うけど、タブラさんの事だしペロロンチーノさんとは別方向な装備をめちゃくちゃ沢山作ってそうだよなー)

 今日のアルベドの装備は、藤色のロングドレスだ。普段の装備のように両サイドにスリットが入っているが、その程度は悟ももう見慣れているので動揺はしない。胸元も過度な露出はされていない、清楚寄りな装備だ。……が。

「……ん?」

 視界に、違和感があった。悟は不思議に思いつつ、何度も瞬きを繰り返す。

「えっ、ちょ、何だ……!?」

「アインズ様!一体どうなさったのですか!?」

 悟の動転した様子に、デミウルゴスがすかさず駆け寄る。コキュートスは悟の視界からアルベドを遮るように前に出る。

「……。デミウルゴス。ひとつ、質問だ。アルベドの今の装備をどう思う?」

 ほんのりと頬を赤く染めた悟がそう訊けば、デミウルゴスは首を捻りながら答える。

「はい。アインズ様の御前に出るのに申し分ない装備かと」

「コキュートス。お前は?」

「私ニモ、問題ガアルヨウニハ思エマセン」

 二人のその言葉に、悟は頭を抱えた。……何故なら、悟の目にはアルベドがほぼ全裸と言っても差し支えないような姿で立っているように見えていたからだ。

(えっ!?マジで!?って言うか、何で!?低レベルだと、そう見えちゃうの!?でも、俺と同レベル帯のシモベは無反応なんだよな……)

「アインズ様?如何なさいました?どうか此方をご覧下さいませ……」

 そう言って妖艶な笑みを浮かべるアルベドは、今の悟の状態を正確に把握しているようだった。まるで胸元を見せ付けるように前屈みになって悟の方に身体を向けるその姿は、どう考えても悟を誘惑しているとしか思えなかった。

(見えてるっ……!!色んな所が丸見えだからっ……!!)

 アルベドの裸体が目に入らないように、必死に視線を逸らしながら悟は口を開く。

「……アルベド」

「はいっ、アインズ様!!夜伽は今からでも構いません!!」

 食い気味にそう言うアルベドに、悟は慌てて否定する。

「違うっ!!そ、それはタブラさんが創造した装備だそうだな?」

「はい!以前は無意味な装備でしたが……今はとても役に立つ装備ですわ」

 アルベドの言葉に、悟は察する。……以前は無意味。つまり、フレーバーテキストがあっても実際に効果が発動しなかったか、発動していても察することが出来なかったか……。

(どっちだろうな……?でも、どちらにせよ、俺だけがそう見えてるってのが問題なんだよな……。おっぱいは丸見えだし、し、下も……!)

 ちゃんと、装備を身に着けているとは認識出来ている。けれど、その上でアルベドが全裸であるという認識を持ってしまう。幻惑か何かの効果だろう、と悟は判断する。

「……アルベド」

 微妙にアルベドから視線を逸らしつつそう呼べば。

「はい、アインズ様!」

 すかさず、そう返ってくる。

「その装備は、今後私の前では着用禁止だ。そのような破廉恥な装いで私の前に出るなど……何のつもりだ?」

 威厳を保った声でそう告げれば、アルベドはその場で崩れ落ちる。

「どうして……!どうしてですか、アインズ様!!世の殿方はこのような装いがお好きだとタブラ様が遺された書物にもありましたのに……!アインズ様も、裸エプロンはお好きなのでは……!?」

 潤んだ瞳でそんな風に訴えられて。悟の心が若干痛むが、ここで許してしまっては危険だと悟の本能が激しく訴えてきている。

「破廉恥な装い……?では、今我々が見ているアルベドの姿は偽り!?」

「何、ダト……!?アインズ様ヲ謀ルトハ、何タル不敬……!!」

 悟の言葉にデミウルゴスとコキュートスが反応する。

「……やはり、お前たちには普通の装備に見えているんだな。私には、アレはほぼ全裸にしか見えないからな、目の遣り場に困って仕方ない。八肢刀の暗殺蟲、アルベドの身体を隠せるような布か何かを持って来い」

「ハッ!只今お持ちいたします!!」

 悟の言葉に、一匹の八肢刀の暗殺蟲がそう言うとダッシュでその場を離れた。と、すぐにシーツを持って戻って来る。近くの部屋の寝室からでも持って来たのだろう。

「ささ、アルベド様。アインズ様の御命令です。これを身に着けて下さい」

「……チッ。分かったわよ!身に着ければいいんでしょ!!」

 アルベドは小さく舌打ちすると、渋々シーツで身体を隠す。その事に悟はあからさまにホッとした様子を見せた。

「アルベド。何故この様な事を?」

「アインズ様のレベルが上がったと聞いたからですわ!!今のレベルのアインズ様でしたら、交わることも可能だと……!!」

 アルベドのその言葉に、悟はガックリと肩を落とす。

「……アルベド」

「はい、アインズ様……!」

「タブラさんの残した書物だがな、あくまでもアレは一般論だ。……その、私はだな。恥じらいの無い女性は少々苦手でな」

 悟は必死に言葉をひねり出し、ソフトな言い換えでアルベドにそう伝える。本音を言うと、『肉食獣な女子怖い』に尽きるのだが、ソレをそのまま伝えるのは憚られたからだ。一般的な感性を持っている喪男な成人男性からすれば、いくら美人であろうと露出狂な肉食系女子に迫られるとか恐怖しか感じないのだが……生粋の女淫魔のアルベドからしたら、そんな存在が居るとは思ってもいない。想像すら出来ない。だからこそ、アルベドがどんなに頑張っても逆効果にしかならないのだった……。

「そ、そんな……!アインズ様、私は……!!」

「それにな、アルベド。まだ様々な問題が残っている状態で、そういった気持ちにはなれない。全てが終わってからならまだしも……」

 悟のその言葉に、アルベドの金色の瞳がギラリと輝いた。

「分かりました!では、全てを終わらせた暁には私と……!くふふふふっ……!!」

 どんな妄想をしているのか、せっかくの美形が台無しの、崩れきった笑みを浮かべるアルベドに、悟だけでなくその場の全員がドン引きしていた。

 しかし、今のアルベドから推察するに、“全てが終わるまで”は我慢するのだろう、とデミウルゴスは冷静に判断する。勿論、今までの前科が前科なので、微塵も油断はしないのだが。

(……先延ばしになっただけだけど……。とりあえず、未来の俺、頑張れ……!!)

 と、悟は笑い続けるアルベドを見つめながらそんな事を考えていたのだった。




アルベドはタブラさんが死んだと思ってるから遺す、悟はタブラさんが引退しただけだと知ってるから残すです。
ちなみに、アルベドが着ていた装備は”人間種”にだけ全裸に見えるというユグドラシル時代では意味を持たなかった物です。レベルは関係なし。(アインズ・ウール・ゴウンは異形種オンリーのギルドなので誰も効果に気付けない)
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