アインズ様Lv1   作:赤紫蘇 紫

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あっさりし過ぎかな?とも思ったのですが、アインズ様の未来が幸せに満ちあふれていることを祈りつつ終わりにしたいと思います。


終わりは突然に

 唐突に、目が覚めた。夢を見ていたような、そうでなかったような。そんな曖昧な記憶があった。

「……うーん……?」

 昨日までとは、何かが違う。そう思い目を開けると……。

「あれ……?何か、視界が……?」

 身を起こすと、明らかに視界が違う。慌ててアイテムボックスから鏡を取り出して自分の姿を眺めると……。

「戻って、る……」

 鏡の中に映っているのは、アインズ・ウール・ゴウンと名乗っているアンデッドの異形種。昨日までの”鈴木悟”という人間は、もうどこにも存在しなかった。

「えーと……<魔力の精髄>っと。あ。ちゃんと見える!」

 通常なら他人に掛けて魔力の残量をチェックする魔法であるが、鏡を見ながら唱えてみたら鏡越しの自分の魔力もしっかりと視認できた。その容量は、恐らくはレベル60にも満たない鈴木悟の倍以上は余裕であると推測された。

「良かった……。多分、完全に戻ってる。これで安心して外にも行ける!」

 そうは言っても、鈴木悟だった頃には試すことも出来なかった高位階の魔法もきちんと行使出来るか試してみないと安心は出来ない。

 時間経過で自然と解除された<静寂>に<施錠>を確認し、アインズはサッとローブを纏うと寝室から出た。

「おはようございます、アインズ様……ッ!!」

 元に戻ったアインズを真っ先に迎えたのは、アインズ様当番のメイドであった。下げていた頭を上げたメイドは、視界にアインズを入れた瞬間、歓喜のあまり息を詰めその瞳に涙を浮かばせる。

「お戻りに、なったのですね……!」

「あぁ。お前たちにも心配を掛けたな。先ずはデミウルゴスを呼んでくれ。今後のことを相談したいからな」

 穏やかにそう言うアインズに、メイドは頬を紅潮させて一礼すると、すぐに部屋を出た。

 

 

 

 

 悟がソファでリラックスしていると、ノックの音が聞こえた。

「入れ」

 そう返すと、すぐに扉が開く。

「失礼致します。アインズ様……!おめでとうございます。無事にお戻りになったようで何よりです」

 興奮のあまりか、激しく尻尾を左右にブンブンと振りながら、デミウルゴスが一礼する。

「ありがとう、デミウルゴス。お前の尽力のおかげで、この身に戻るまで無事に過ごせた」

 アインズがそう言うと、デミウルゴスがそっと目頭を押さえる。感極まって涙が出そうになるのを、必死に堪えてでもいるかのようだった。

「……勿体ないお言葉……!」

「そんな事は無い。お前の働きは、本当に素晴らしかったからな。あれだけ脆弱だった私を守り抜くのは本当に大変だったろう」

 アインズにそう労われて、デミウルゴスはその場に跪く。

「とんでもございません……!僕として当然の事をしたまでです」

 溢れ出す感情を抑えようとでもしているような声は、微かに震えていて。感情豊かな尻尾はまだ小刻みに左右に揺れていた。

「だとしても、だ。お前の尽力が無かったら、無事ではいられなかっただろうからな。改めて礼を言わせてくれ」

 緩く眼窩の炎を揺らめかせながらアインズがそう言うと、よりデミウルゴスは深く平伏する。

「あぁ、頭を上げてくれ。とりあえず皆に報告せねばなるまい?一時間後に玉座の間へ集合するよう、皆に伝えてくれ。私はその間身支度を整える」

「かしこまりました。皆にそのように伝えます。伝え終わりましたら、お迎えに上がります」

 もうデミウルゴスの警護は必要無いのだが、その気持ちが嬉しくてアインズは小さく頷く。

「うむ、そうしてくれ。では後程」

 アインズがそう言うと、デミウルゴスは立ち上がって一礼してから部屋を辞した。

「さて。お前たち、身支度を頼めるか?久しぶりに様々な装備を身に着けられるしな、腕を奮ってくれ」

「はいっ、アインズ様!!」

 アインズにそう声を掛けられて、本日のアインズ様当番のメイドは瞳を輝かせながら頷いたのだった。

 

 

 

 

 コンコンコン、とノックの音がした。小一時間ほど経過した後だったので、ノックの主はデミウルゴスだろう、とアインズは当たりを付けて返事をする。

「入れ」

「失礼致します、アインズ様」

 アインズの予想通り、ノックをしていたのはデミウルゴスだった。いつも以上に気合いの入った様子で室内に入ると、全身フル装備のアインズを目にして一瞬固まっていた。

「あぁ……アインズ様、何と威厳溢れるお姿……!!」

 そう呟いた次の瞬間、デミウルゴスはその場に跪く。メイドも、デミウルゴスの言葉に首が折れんばかりに大きく頷きまくっている。……天井に張り付いている、八肢刀の暗殺蟲までもが同様にしていた。

(えっ!?ちょ、待って!?俺、絶望のオーラとか出してないよな!?何か皆の態度おかしくない!?!?)

 デミウルゴスたちのその行動に、アインズは内心焦りまくりだったが、表面的には何事も無かったようにしている。

「デミウルゴス。私を迎えに来たのだろう?皆を待たせては悪い。そろそろ出ようか」

 そう声を掛けると、デミウルゴスは立ち上がって一礼する。

「かしこまりました。久々のアインズ様のお姿に、感動してしまいまして……。お見苦しい姿をお見せしてしまい、申し訳ありませんでした。では、ご案内致します」

 デミウルゴスは音も無く移動すると、優雅に扉を開けた。アインズは、威厳を保つようゆっくりと歩を進めて廊下に出る。その後に扉を閉めたデミウルゴスが続く。メイドと八肢刀の暗殺蟲は、更にその後ろに続く。さりげなくデミウルゴスは足を速め、アインズの前に立つと先導をする。

(……アルベド対策かな?八肢刀の暗殺蟲も前方に回ってる……)

 数匹掛かりなら僅かな間だけだけどアルベドを抑え込める八肢刀の暗殺蟲だから、足止めには最適だ。

(元の姿に戻っても、襲ってくるアルベドには一瞬ビビるもんなぁ……)

 以前のし掛かられて身動きが取れなくなった際に、八肢刀の暗殺蟲とマーレが助けてくれた事を思い出し、アインズは小さく身体を震わせた。勿論、デミウルゴスたちには気付かれない程度の微かな動きではあったけれど。

 と、そんな風に物思いに耽りつつ歩いていると、あっという間に玉座の間に着く。八肢刀の暗殺蟲が天井から降り、扉を押し開くと、ざわついていた室内があっという間に静まり返る。

「アインズ様のご入場です」

 デミウルゴスがそう口にすると、皆が一斉に跪く。それを尻目に、アインズは真っ直ぐに玉座に向かう。デミウルゴスはその一歩後ろをついて歩く。……周囲に目を配りながら。

(そこまで警戒する必要は無いと思うんだけどなぁ……。俺が人間だった時の癖が抜けないのかな?)

 アインズがそんな事を考えている間に、玉座に到着する。ローブを派手に翻しながら着席すると、皆に声を掛ける。

「頭を上げよ」

 そうして、全員が頭を上げ、アインズに視線を向けたことを確認してから、再度口を開く。

「見ての通り、私は元の姿に戻れた。皆、心配を掛けたな」

 アインズのその言葉に、皆は涙を浮かべる。歓喜のあまりに。……アルベドとシャルティアは、どさくさに紛れてアインズに抱きつこうとしていたのだが、デミウルゴスに前もって言われていたアウラとマーレ、コキュートスに影の悪魔らに抑え込まれている。八肢刀の暗殺蟲たちは、デミウルゴスと一緒にアインズの傍で警戒している。その様子に安堵したアインズは、更に言葉を続ける。

「今後も私はお前たちと共にある。世界中の誰もがアインズ・ウール・ゴウンの名を知るまで、皆には尽力して貰う。良いな?」

(……そうすれば、いつか。仲間が転移して来た時には……)

 アインズの内心など誰も気付かず、その命に嬉々として頷いている。それは階層守護者たちも例外では無かった。

 

 

 

 ……そして、再び物語は動き出す。アインズが望んでいたのとはやや違った方向へと。それがアインズにとって幸せな事なのか……誰も知らない。だが、この場の全員が、嘘偽り無くアインズの幸せを願っているのは紛れもない真実なのだ。だから、きっと未来は明るい……筈だ。多分。

 

END




拙い物語を最後まで読んで下さってありがとうございました!
ハーメルンでは感想に返信出来ておりませんが(コミュ障なのでスタンプが無いと辛いのです……)、頂いた感想や誤字報告は全て目を通しています。
しおりやお気に入り、評価も本当に嬉しかったです。

次はまたギルメンとモモンガさんのお話とかを単発投稿予定です。
お知らせとかは今まで通り活動報告にさせていただきますね。
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