やはり彼女が帰ってくるのは間違いなくまちがっている 作:マッキーガイア
変にゆったりした時間だった。
最近は忙しくてこんな時間は久々だ。ゴードンが捕まった後、エルフェの両親についても色々な黒い事実が浮かび上がってきた。人身売買、麻薬の密造、兎に角金になる事は何でもしたという。そしてエルフェの稼ぎを根こそぎ奪い取って自分は豪楽に酔っていた。これだけでも腹立たしいのにまさか自身の娘を金持ちに売るとは……もはや手に付けられないほど、腐っていた。
金は人を惑わせるというが、まるでそれを体で表現したような話だ。
……あ~、話がずれたな。忙しくてこんな暇なのは久々だって言う話だっけ?まぁ、理由としては、あれだ。エルフェの事だ。結局両親が捕まったエルフェは孤児みたいな立場にいた。なんでも親戚は誰も頼れないらしい、で、俺の両親が彼女を養子として請け負った。親父もお袋も彼女の事は気にかけていたという。
………その時のアイツの顔が忘れられない。
何度も、何度も、何度も親父たちに感謝していたのは言うまでもない。ずっとずっと、自分自身に無理を強いていたのだ。誰にでも幸せになる権利はある。なのにそれを許されなかった。哀れという言葉では言い表せないほどの悲しみが俺の中を渦巻いていた。
彼女は言う。苦しくても悲しくてもハチ君との思い出があったから頑張れたんです。って、そのハチ君は俺じゃないってわかっていながら俺は頬を染め上げた。
正式にエルフェが養子入りした頃には世の中からローマン・ゴードンという名前は無いものとして扱われていた。アイツが終身刑だと聞いた時なんというかほっとした。今後アイツがあそこから出られたとしても、もはや、居場所なんて無い。なら出れない方がアイツの為にもエルフェの為にもいいんじゃないかって思っていたからだ。
この様に2カ月で色んな手続きが終わった。エルフェの持ちもんとかいろいろ持ってくるのにちょっと時間かかったがそれもいい思い出だ。
ただいま日曜日の午前10時、先週とか先々週のこの時間は色々あって死ぬかと思ったけど今週は久々の暇だ。俺はリビングの日当たりのいいソファーで惰眠をとっていた。
【ねぇ、″俺″……】
ふと、頭の中で何か声が響いた。
「なんだよ″僕″」
この″僕″……いや分かりにくいな…とりあえず八幡(表)、と表しよう。こいつは2年程眠っていた挙句、俺に寝る前の尻拭いをさせた張本人なのでちょっと、反省してもらおうと最近は神経系つかって奴にちょくちょくちょっかいを掛けてる。たまに仕事が長引いてイラついてるときに精神内で寝てるコイツのケツを思いッきし蹴り飛ばしたりするとそりゃあもう、面白い反応を見せてくれる物だ。
【これからどうするのさ?】
「ん、そだな。普通に学校行って…」
【いや、そうじゃない】
話を区切らされる。
【………リューちゃんの事だよ。】
「………………」
静かに風が流れる。気づいた時には手汗がソファーにこびりついていた。
【リューちゃんはさ、君の事が好きだよ?】
分かってんだろと言葉を付け足す。
【君は彼女の気持ちを無碍にする気かい?】
「そうじゃない、そもそも、それはお前への気持ちだ。俺への気持ちじゃない。」
そもそも彼女がここに来た理由はこの八幡(表)に会うためだ。俺なんかはそのおまけに過ぎないのだ。
『たしかにそうだ。だけど、それが変わって来てるのを分かってるんでしょ?君は』
「………」
黙秘権を行使する。やっぱりコイツ俺だ。俺が今一番言われたくないことを軽々しく言いやがる。
俺はケータイの電源を付けると、ゲームを始める。
『ピリン♪』
軽快な受信音と共にメールの通知が届く。なんとなく通知タブに触れてメール画面にたどり着いた。
【へぇ、リューちゃんから…ねぇ…】
こいつ、笑ってやがるな…顔があったらぶん殴りたい。
【えぇっと…今から出かけられますか?だってよ。暇だろ?行ってこいよ。】
コイツ…あとで覚えておけよ
俺はとりあえず『大丈夫』とだけ送る。すると僕がブーブーと反論しやがったが、俺はしばらく無視を突き通す。
とりあえず俺は立ち上がり出かける準備を始めた。ん?何処に行けば良いのかわかるのかだって?
実は今日、エルフェは霧雨と万木と一緒に女子会だそうだ。場所は事前に知っているし、どうせ、霧雨辺りが『久々に幼なじみ全員で集まろうよ!幼なじみ3人が集まってて八くんだけ仲間外れなんて可哀想だよ!』とかなんとかかんとか言って他の二人が肯定したんだろう。なんだかんだいって彼奴ら、奉仕部のメンツみたいに由比ヶ浜みたいな天然キャラには弱いから…いや、あいつはバカだな…しまった、差が深まってしまった…
そんな事をしていると、メールが帰ってくる。
えっと……地図をスクショで撮って送ってきたらしい。……あれ?カフェじゃない…公園…?
しかも、この地図何処かで見覚えがある
「おい、僕。この地図知ってるか?」
【まったく!…全くもう、使い魔扱いしやがって……え〜っと?】
すると八幡(表)はへぇと小さく頷いたように声を漏らした。あまりに深妙そうに呟くものだから俺は八幡(表)に問いかける
「で?どうなんだよ?」
すると八幡(表)は楽しそうな口調で返してきた。
【いんや?知らない♪】
ぜってぇ、嘘だろ…
☆★★★★★
「はぁ……送っちゃった…」
とある、公園。ブランコに捕まったままリーラ・エルフェは呟いた。ここにあと10分程で彼が来る。そう思うと胸の辺りがキュッと苦しくなる。
「……っ」
ふと、ブランコの下に溜まった水溜りに自身の顔が写しこまれた。その顔は真っ赤に染まっていてとても人様に見せられた顔じゃない。
まずい!まずい!まずい!送ってしまってあれだけど、今彼にこの顔を見られるのは非常にまずい。
真っ赤になった顔は白い髪に合い重なってすごく目立つ。とりあえず頭を冷やそうと水道の近くに歩き出した。
最初に言っておくと。この公園に彼を呼んだ理由。それは、、、……うぅ…い、一般で言う所の…こ、告白です///
言おう、言おう、言ってしまおう…私はハチくんが…すす、好きです!……まぁ、これに関しては最初から言ってた事だし、周囲の事実なんですけど……よ、良く考えてみたら…ほ、ほら、すすすすすす…好きなんて言葉一回も言ってないなって…///(番外編以外で)
そ、それに一度ここに二人だけで来たかったって言うのもあって、ここは私が初めて彼に会った所なんです…そして、私が彼に結婚しようって言った場所でもあります。
ハチくんは私が初めて会った時の八くんじゃないと言う話を聞いて、まだ、昔のハチくんに期待しているのかって言われると……まぁ、そんな所もあるでしょうが……正直に言うと、、、今は今の彼が好きです。
あれ?これって、不倫になっちゃうのかな?私ってこんなにいやらしい女だったんですね…
で、でも、この気持ちはもう止められないから…
「………ふぅ、頑張らなくっちゃ…」
「何をだよ?」
後ろから声が響く。
「ヒッ…!?」
私は声を少し漏らしてしまった。この声の持ち主を私は知っている。
私は少しずつ、少しずつ、後ろを見渡した。
「よ、エルフェ…どうしたんだ?こんな所で?顔洗って…?」
「は、は、は、ハチくん!?」
彼の顔を見てまた、顔が真っ赤になった様に感じる。
「エルフェ!?どうしたんだよ!?なんかお前の顔真っ赤だぞ!!一回病院でも…」
「いやいやいや、違うから!大丈夫ですから!」
私はケータイを取り出した彼の手を掴む。こんな事で救急車呼ばれたらたまったものじゃない。必死につかまった。
最近彼は心配症な節がある。私の事を優先的に考えてくれるのは嬉しいけど…少し行き過ぎる傾向がありそうだ。小町ちゃん然り。
「そ、そうか?そうは見えないが…」
不安そうに私を見ると渋々携帯をしまった。
「で?どうしたんだ?今日は女子会だって聞いたが…」
「そ、それは、え〜っとね…その……えっと…」
女子会は嘘ではない。みんなに告白するにあたってどうすれば良いか話し合っていた。さっきまでは。
でも、いざ、言うとなるとやっぱり口が噤まれる。断られたら怖いとか、今まで感じなかった恐怖もだんだんと積み重なってきた。
「………そ、その…」
「……?」
ーーーーーしばらく無言の時間が流れる。
彼は、頭の上にハテナを浮かび上がらせながらも真剣に待っていてくれた。
「そ、その……私は…」
私ってこんなにどんくさかったっけ?嗚呼、ひどいな。これは…自分が恨めしく思う。もっとパッて言えたら楽になれるのに…
「だ、大丈夫か?」
「は、はい…大丈夫です……けど、これだけは…」
私はまだ言い出せない自分な腹立たしく思いながら軽く自分をつねった。
「そう、自分をあまり責めない方が良いぞ…逃げるのも手段の一つだ。」
「でも、それじゃあ!」
私がそう言うと彼はニヤッと笑った。
「いいんだよ、逃げても、戦略的撤退だ。逃げないで、お前が傷つく、位なら。」
彼はそう言うと遠い目をする。彼は何を考えてるんだろう、それは世界7不思議の一つに値するだろう…
だけど
「……ふぅ…もう大丈夫です。言えます。」
私がそう宣言すると、ハチくんは私を見つめた。
「ーーーー私、貴方のことが好きです。」
☆★★★★★★★★★★★
「………っ」
正直、こんな時どうすれば良いのかわからない。
俺は、真っ直ぐに、真っ直ぐに俺を見つめる彼女に圧倒された。
「……………………お前の言うハチくんは俺じゃないぞ……」
振り絞った言葉に覇気はない。エルフェは俺を見て言う。
「たしかにあっちのハチくんも好きです。けど、…。今は、私は貴方を所望してるんです。」
「なんで、俺なんだよ…俺は、俺は!」
Q、捻くれて、めんどくさいし…
A、それだけ、色んな事を考えてるって事ですよ。めんどくさいのはただ貴方が奥手なだけ…
Q、ボッチだし…
A、浮気の心配が無いですね。
Q、あとは…あとは…
A、私にハチくん問答で勝てるとお思いですか?
「貴方が自分の嫌いな所をいくつあげても。私は、私の全てを持って貴方を愛してるって言いましょう。他の誰でも無い……
私は貴方が好きなんです。」
俺の頬は真っ赤に染まった。きっとそれは先程のエルフェの様に、嗚呼、そうかさっきはそれを考えていたか…
【君は…君はどうしたいんだい?】
俺は……俺は
何も返せない、返す言葉もない。
ただただ、唖然と彼女の顔を見つめた。
【君は頑張った。本当に……だから君は君の望むままにしなよ。】
お前は良いのかよ?……お前は…エルフェはもともと俺じゃなくお前を求めに来てたんだろ。お前は……こんな結末で…
【僕は君だ。そう大差ないさ】
大差あるだろ。お前と俺では意識が違う、
【大差ないさ。僕は君だ、いくら見繕ってもそれは変わらない。それに君も…好きなんだろ?】
…………っ
【自分の事は自分が良くわかってる。さぁ、どうするか、君が決めて。僕は決断に従うだけだ……まぁ、ちょっとは文句言わせてもらうけどね】
俺は……俺は…
俺はしばらく固まったまま動けなかった。正直いまだに頭の整理の目処がついてない、中学の時の告白とは違う。いやその告白自体なかった事なんだけど、
俺は口を開かない口を開く。
「お、……俺は…心を出すことが苦手だから、はっきりとは言えないし、そう…何度もいえないと思う、だけど、今だから言える。」
正直この返答があってるかは分からない。
でも僕がこの場にいても答えはきっと変わらない。俺がそうだった様に
「好きだ。」
返答としてはあまりにも不格好な言葉を返事として返す。だけど、この言葉に迷いは無かった。さっきまで俺を押さえつけていた迷いはこの青空の彼方に消えた。
運命なんてものは初めから決まっていては意味は無いなんて言うが、それは通して見てから言える事だ。決してこの結末が正解だとは思わない。
だけど間違いではないと思っている。
そして彼女は笑って、言うだろう。
「はい!私も愛してます。」
って。
★★★★★★★★★★
END
ご愛読ありがとうございました!いつかまたお会いしましょう。さようなら、さようなら!
エピローグを書いた方が良い?
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描くよな?(威圧)
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描かないよな?(威圧)