インフィニット・ストラトス 転生者は双子の姉 作:夜光・陽炎
「―――二十七分。うん、持った方だね。これは」
「ふーっふーっ……そりゃどーも」
「き、きつい……」
「もう、そろそろ限界ですの……」
三人の平均残量エネルギー、約八十ちょい。実体ダメージ、大破直前。武器はほとんど破壊され、かろうじで使えるのは一夏の近接ブレードと、円夏のシールドビット二つとビームビット一つ。セシリアは貸してもらった『スターブレイカー』と近接ブレードの『インターセプター』だけだった。
雪羅は破壊され、現在は収納されており、円夏やセシリアのビットはほぼ全撃破。浮いている物は原型を止めているだけであり、ビーム発射機構が砕かれてほとんどまっすぐ飛ばなくなっている。
「ふむ……この状況が続くのはみんなきついみたいだし。そろそろ終わらせる?」
この『黒桜』。今まで主武装を一回も出していないという現実。機体ポテンシャルどころか操縦者の経験と技量の差が天地のほどの差であった
黒桜の武装――ライフルビット残数四、ホルスタービット残数九。近接ブレードは残り七本と、数で有利なはずの一夏側が完全に不利であった
「さあ、フィナーレと行くよ」
「くっ……!」
ちなみに、最大限瞬時加速を言う技は、名の通り限界まで瞬時加速を繰り返す技だ。一歩間違えれば簡単に骨が折れることもあるが、ハイリスクハイリターン、得られる速度は途轍もない物になる。
ライフルビットの射撃を使い、一夏の逃げ場を無くしながらすれ違いさまに右手のブレードで斬る―――筈だった
「―――――!?」
「な、なんだ!?体が……いや、ISが光って……」
急に一夏のIS―――《白蓮弐式》が光りだした。これは―――
「――――……
視界を包んでいた光が消えると、近接ブレード《雪片弐型・改》を握っている『本当の姿のIS』がそこにあった。フレームは操縦者の動きに最適化した形に変わっており、微々たる部位も形状が変化している。
そして、一番の変わったところは物理ダメージが全て消えているところであった
「な、なんだこりゃ!?」
「あ、あなた……一次以降って……今まで初期化状態の機体で戦っていたとでも!?」
「お兄ちゃん、無茶苦茶すぎるよ……」
「な、なんかすまん……」
そして、先ほどより白蓮は大きく光ったと思うと、周りにいた二人のスナイパーの実体ダメージもなくなっていた
「こ、これは?」
「じ、実体ダメージを?一体どうやって……」
これは
よく見ると、白蓮の周りに大剣のような物体は四つ中に浮いており、一夏の周りをグルグル回っていた。
《
試作でぶちこんでみたが、まさかここまで早く顕現するとは………。
AIは、コア人格を代わりに使い、コアと対話する事も可能であるが、言語機能は搭載していないので喋れないというのが欠点である。
使用しない時はリアスカートに装着されて推進力の代わりにもなり、攻撃時には勝手に目標に接近し迎撃してくれるという優れもの。さらに、刀身に高周波が流れて振動しているから、並大抵の金属はほとんど切ってしまう切れ味と共に、自動的に防御もしてくれるから初心者の一夏には最適だな。
って、さっさと意識を世界に戻すか
「あれ?こいつら俺の言葉がわかんのか?」
『~♪~~♪(グルグル)』
「……そうか、手伝ってくれんのか。なら―――」
『――!(ゴクンゴクン)』
一夏が雪片に付いている銃のトリガーのようなものを引くと、金色の薬莢がイジェクターから吐き出され、同時に鎬の溝が割れ、光があふれ出した。
「行くぜええええ!」
エネルギー無効化攻撃、これがあったらさすがに凪紗とでも直撃すれば無事では済まされない。
回避か、防御か――――
「うおおおおおおおおおおっ!」
回避をしようとしても、先回りしていた雪無が逃げ場を無くす。先ほどと全く逆の立場だった。
なら、受け止めるしかない。
ここは主武装の出番だ。
左右の腰にある刀――――黒刀《
武装せつめーい
黒刀《
刀の形をしている黒桜の主武装。雪影は斬撃をエネルギー刃化して放出する事ができ、紅桜は常時粒子散布しており、それを使ってビームを放つことが出来る。チャージすることでライフルの代わりとしても使用できる万能装備。
ぶっちゃけ雨月(あまづき)・空裂(からわれ)の上位互換である
紅桜を使い、正面の一夏に向けてビームを撃つ。さすがに刀からの射撃は予想外だったか、驚いたような表情をしていたが、すぐに戻してビームを弾く。
そして、互いの剣が同時にぶつかる。
――――ガキィンッ!!
耳が劈く音と共に。二人の体が吹き飛ばされた。
しかし、すぐに二人は姿勢を立て直し、再び剣を交じり合える
途中で雪無の攻撃も入ったが、足で吹き飛ばしながら攻撃を続けた
「ははは、中々やるようになったじゃないか」
「お前が教えてくれたからなぁ!」
叫ぶように会話しながら戦闘を続けている。互いの剣舞がぶつかるたびに激しい衝撃音が響いたが、二人にはもう周りの音すら聞こえていなかった。
正面、凪紗の後からくるビームなど即刻弾き、それどころか反撃すらしている。
「まったく、二人にも困ったものだ―――よッ!」
エネルギーの刃をかわしながら、隙を見て撃ち続ける円夏はそう呟いた。
セシリアの方は、その円夏を似ながら少々あきれているような表情を見せながらも、ライフルを撃ち続けるのであった。
◆ ◆ ◆
「す、凄い……。二人とも本当にISに乗るのが二度目とは思えないです」
ピットでリアルタイムモニターを見ていた山田真耶先生が驚愕の声を漏らす。それも仕方がない、見る限りでは一対一では元日本代表候補生の自分でも勝てるかどうかさえ怪しまれるのだから
「んんっ。まあ、私の弟だからな。出来て当然だ」
対して織斑千冬。通称鬼教官(またはブラ&シスコン)の織斑先生は照れているのか威張っているのかよく分からない感想を言っている。
「確かに、一夏は代表候補生クラス並の実力を持っているかもしれないな。だが、機体スペックに頼りっぱなしのやつには隙が出来る」
そういった瞬間、モニターで一夏が一太刀受けて吹き飛ばされた。
致命傷は避けているだろうが、大ダメージには間違いない
「……あいつ、後で縛く。いや、拷問はどうだろうか……(ぶつぶつ)」
「あ、あの~?織斑先生?」
「―――ん?どうかしたのか山田君?」
「い、いえ。何かと物騒な言葉か聞こえたような気がしたので……」
「そうか、気のせいだな」
ごまかしているつもりだろうが、全然説得力がないと思うのは自分だけか?と一瞬思った山田先生であった
「……手加減しているな」
「え?」
「凪紗の奴、遊んでいる。さっきから一夏の隙を見逃しているからな」
「と、とてもそうには見えませんが……」
「直にわかる。――――ほら、一瞬後ろを向いたのに、攻撃をしていない」
「よ、よくわかりませんけど……」
「ふぅ……まあ、あいつらが勝てる見込みはまず無いだろうな」
いや、もしかすると勝てるかもしれない。確率は1%以下だが、0ではない
あいつが本気を出せば、絶対防御などというものは紙に等しく、三人は今頃肉の塊と化していただろう。
今出している力は大体……三パーセントか
「まあ、がんばれよ。一夏」
本人には聞こえないエールを静かに呟いた千冬であった
◆ ◆ ◆
ナイフを持って近づいてきた円夏と正面から突っ込んできた一夏の軌道を手を添えるだけでずらし、それぞれ反対の方向に誘い込まれた。
同時に背中から蹴りを喰らい、かなりの距離を飛ぶ。そして、そのまま地面へと着地し、反対側の円夏と作戦を練るため合流することにした
だが、二人ともシールドでガードしていたらしく、軽傷で済んだ様だ。
「げほっ、げほっ!……いてて、守ってくれたか雪無」
『――――!―――!』
「心配してくれんのか?はは、サンキューな」
「お、お兄ちゃん。暢気に会話している場合じゃないよ」
どうやら、向こうも察したようで、あちら側も来てくれた様だった
「わかってる。これじゃあ負け戦だよこんちくしょう」
圧倒的だ。こちらは致命傷だらけなのに、あちらはほとんどダメージを負っていない。
実力差がありすぎだ。
「円夏さん!あなたも!無事ですの!?」
「あ、セシリア」
「どうやってここまでこれたんだ?」
「見てください」
二人が上空を見ると、暢気にこちらを見下ろしてこちらの動きを待っている。
余裕見せすぎといいたいところだが、本当に余裕なので仕方が無い
「……完全に舐めてるね」
「そんな事はいい。作戦を練ろう」
「同感ですの。普通のやり方じゃ、あの方には勝利の道すらあけてもらえません」
「いや、そもそも勝てるって思想は捨てたほうがいい」
「は、はい!?何を言っていますのあなたは!それじゃあ今までしてきた苦労が―――」
「いいんだよ、どうせこの状況じゃ負けるも当然。正直、降参だって考えた」
「あ、あなたねぇ!」
「でだ。勝つ事は諦めても『一矢報いるぐらいは出来るんじゃないか』ってな」
「な……」
セシリアにとって『負ける』ことは耐え難い事だったが、この状況じゃあ勝利は絶望に等しいほどの道のりだろう。形勢逆転もありえない。奇跡も起きない。ならどうやって勝利を掴むか。だが方法など無かった
「……わかりました。ではどうやって?」
中々納得する事はできなかったが、それでもするしかない。こみ上げてきた感情を抑えながら話を聞いた
「まず、―――――――」
「ん、やっときたか」
姿勢を解いて通常状態に変え、二刀を構える。
「悪いが、殺す気で行かせてもらうぞ?」
「どうぞ、ご自由に」
その後、数秒だけ硬直状態が続いた。そして、先に動いたのは一夏だった
「ぜあああああああああっ!!」
雪片を振る直前、トリガーを引いてエネルギー装填。金色の薬莢が空を舞う。
ついにゼロ距離まで近づき、頭上から渾身の唐竹を繰り出す。
刀を交差させて受け止めたが、受け止めた直後瞬時加速して無理矢理押し切る。
「なっ!?無茶苦茶な!」
不意を突かれてそんな言葉が口から漏れるが、本番はこれからだった
無理矢理押し切った一夏が凪紗の腹に蹴りを入れてさらに吹き飛ばす。
そう認識した直後、アリーナの壁へと叩きつけられた。
「くっ……」
「円夏ああああああああ!!」
「はあああああああっ!!」
一夏が咄嗟に急上昇したかと思うと、その後から円夏が瞬時加速で向かってきて、標準装備のBTライフルを正面に構えている
「スターブレイカー!リミットバーストモード!最大出力を喰らえ!」
BTライフルが今までに無い輝きを放つと、極大のレーザーを放つ準備をしている。
「やばっ……!」
即座に散開していたホルスタービットを集合させ、一つのシールドを作り出す。
できたと同時に極大のレーザーが正面から襲い掛かってきた。勿論、それはシールドに防がれるが、ビットが耐え切れずに爆発する。あたりが煙に包まれ、視界が封じられた。
瞬間、円夏がシールドビットを掴んでこちらに突進してきたのを確認した。
認識したときはもう目前の距離。さすがに反応が遅れ、展開装甲のシールドを張るのが少し遅れた
シールドビットが輝く――――
「自ば―――」
自爆。その言葉を口にする余裕も与えられず。目の前が轟音と共にオレンジ色に包まれた。
すぐさま上昇し、煙の中から脱出する。
「げほっ!うあっ……無茶するねぇ……」
煙が目に入り、涙ぐんでいたが、その隙を見せたのが仇となった
「まだありますわよ!」
「せ、セシリア!?」
いつの間にか目前にいたのか、それはすぐにわかった。―――煙を使ってうまく隠れて接近したのだ。
作戦としては拍手ぐらい送って良いのかもしれない
「ミサイルを全部もっていってください。遠慮は、いりませんわ!」
リアスカートに設置していた5,6機目の『ブルー・ティアーズ』が動き、銃身がこちらを向いていた。
ゼロ距離射撃。しかもミサイル。自爆する気満々だこれは
「喰らいなさい!」
左右から三発ずづ、計六個のミサイルが至近距離から爆発した。勿論、シールドが大幅に削られるが、直前に展開していた展開装甲のシールドである程度のダメージ軽減で免れた。
そして、再度周囲が煙に包まれる。
「うふふ……織斑さん、後は頼みましたよ……」
だが、最大の目的は『自爆でダメージを与える事ではなかった』。真上を向いて見ると
「ウオオオオオオオオオオオオおおおアアアアアああああああっ!!!!」
一夏が急降下+二段瞬時加速による途轍もないスピードで落下してきた。
「ゆきひらああああああ!!出力最大だああああああああ!!」
落下中にトリガーを何度も引き、それに合わせてマガジンに入っていた薬莢が全て排出される。
排出された薬莢は一夏のスピードについていけずに一夏の後ろへと下がっていく
そして、雪片は無理矢理注ぎ込まれたエネルギーをひびが入るほどあふれ出させながら、光の大刀を作り上げていた。長さは約40m。そんな出力でエネルギーを使っていたら、すぐにエネルギーを使い切ってしまうだろう。だが、それでよかったのだ。今の一夏の志向は
「いけええええええええええええ!!!」
だが、何もしない凪紗では無かった。かわすのは無理だと判断し、即座にもっていた二つの刀を交差させる
『――――モード転換・粒子全開放。『
機体内の加速粒子を全て出力へと回し、光の極大剣を受け止めるべくエネルギーのほとんどを全てウィングスラスターへと送る。
前進の装甲がパージされ、内部の金色装甲があらわになる。
「こっちも、ただでやられるわけにはいかないんでね!!」
そういった瞬間、光の刃を受け止める。
明らかにミシミシ機体が圧迫される音が聞こえる。こんな物を受け止めれば機体も悲鳴を上げるだろう
だが、少しずつ、少しずつだが、金色桜の高度が下がっている事に気付いた。
「アア゛アアア゛ア゛ア゛アアアアアアァァァァァッ!!!」
「うっ…………」
二つの刀にひびが入っている。
出力をこれ以上上げたら最悪-――――――
「………はぁ、全く、参ったよ」
二つの刀が同時に折れ、凪紗は光の刃へと姿をくらました
ドオオオオオオオォォォォォォォォンッ!!!!!!
アリーナ中に轟音が響き渡ると同時に、アリーナの地面が抉られて巨大な溝が出来上がった。
深さは暗くてよく見えないが、かなりの深さだと思われる
しかし、そんな事は一夏の脳には入らなかった
「勝った……の、か……?」
その事実を前に、しばらく動け無かった
これで始めての戦闘パートは終わりです。
できればご感想をいただけるとうれしいです。
間違いなどもあったらお知らせください。出来るだけ早く修正しますので