インフィニット・ストラトス 転生者は双子の姉 作:夜光・陽炎
「……人は道を見つけ、それを歩む。だが、その志乱れたとき、その掟破れ、二度と同じ道には戻れず……か。ははっ、まさに今の私だね」
夜。IS学園の一番の高所。第六アリーナの管制塔頂上の屋上に、黒髪の少女は居座っていた。
その手には一切れの紙が持たれており、それを使って紙飛行機を作っていた
「……しかし、姉さん。あんな『ゴミ』を作るとは……相当楽しんでいるようだね。近々動きを見せてくるかな?ま、対処の範囲内なら問題は無いけど、あの姉さんだからなぁ……予想の斜め上を行くかもしれないか」
ピッ、と紙を正す。手に握られた小さな紙飛行機は、ヒョイっと投げられて、静かに吹くそよ風に乗りながら地面へと向かった。
だが、それが地面へと到着する事は無かった。
放射線状の軌道を描いて地面へと向かおうとした三秒後、バラバラの紙くずになり、風に流されて暗闇の林へと姿を消した。
そして、月光が屋上を照らしている中、その光を反射して輝いたのは一振りの刀――彼女の愛刀、殺人刀・『月光』。
その刀身は何よりも白く、何よりも美しい。そして、何よりも凶悪な『妖気』を放っていた。
「……魂が儚く散る様は何よりも美しいとはよく言ったものだ。所詮は一瞬の花火に過ぎない。……一瞬だけ、輝いても意味があるのかどうかはわからないなぁ……あなたならわかる?」
少女は振り向く。
その視線の先には、一人のスーツ姿の女性が居た。
「……門限がもうすぐだ、さっさと戻れ。あと、誰が許可無くアリーナの立ち入り禁止区域に入って良いといった?」
「質問を質問で返すかねぇ。どうでもいいけど、気をつけてくださいよ」
「ん?何をだ?」
「あの『組織』、近いうちに動きます。
「…………」
「何か問題が起こったときは、すぐに《暮桜》で対応してください。万が一、《リムーバー》でコアごと抜き取られますから」
「……そうか」
「なくなっても、作ればいい話ですけどね………よいしょ」
黒髪の少女は、屋上に掛けられていたフェンスに足を掛け、その向こう側へと移った
その向こうは道が途切れており、落ちたら死は避けられないだろう。だが、少女はそんな事も気にかけないように足を進める
「待て、何をする気だ?」
「見ての通りですよ。まあ、近いうちに寮には戻ってます。それじゃあ、グットナイト」
それだけを言い、少女は屋上から飛び降りた。
しかし、女性は助けに行くどころか、踵を返していた。
「……なあ、篠ノ之、お前らは一体何を見て、何を目指しているんだ?……私にはそれがわからない」
そんな呟きは、静かな夜の静寂へと消えていくのであった
◆ ◆ ◆
「ふうん、ここがそうなんだ……」
約同時刻。IS学園正面ゲート前に、小柄な体に不釣合いなポストンバックを持った少女が居た
昔から全然変えないヘアスタイル―――理由はちゃんとあるが―――だが、変わっていると言えば髪飾りが金色の留め金に変わっていることだった。
正直どうでもいい
「ちっ……もー、なんなのよ。この学園地図も無いのかしら?」
頭をくしゃくしゃにかき混ぜながら、上着ポケットから一枚の紙切れを取り出す。
その紙は原型を止めておらず、狭い場所に無理矢理突っ込んだかのようにボロボロに化していた。周りの物で人の性格がわかるとはよく言ったものだ
「えー……本校舎一階総合事務受付……だーかーらー!それがどこにあるのかって聞いているんでしょーがー!!」
パシン!と、紙を地面へと叩きつける。
勿論、返事などくれるわけもなく、静まり返った静寂がまとわり付くのであった
「あーもー、自分でさがせばいいんでしょ、めんどくさいわねぇ……」
ぶつぶつ言いながらも、足は考えるよりも先に動いていた。考えるなら動け、それが彼女のモットー。天真爛漫、破天荒、表すならいくらでも答えはあるだろう。
「っていうか、出迎えぐらい無いわけ?私一応代表候補生なんですけど」
こんな時間だ、来るわけも無く、彼女は学園内をさまよい続けるのであった。
―――ったく、出迎えがないとは聞いてたけど、ちょっと不親切過ぎるんじゃない?政府の連中にしたって、異国に十五歳を放り込むとか、なんとか思わないわけ?
夜中、きょろきょろと首を回して人を探す。
まだ門限じゃないので一人ぐらいいるだろうと希望を持ちながら歩く。
数分歩いていると、さすがに疲れてきたので近くのベンチに座り込んだ。
完全に迷路じゃん。そうしぶしぶ思いながら、バックの中にあった缶ココアを取り出す。
時間が経っているようでかなり冷えていたが、飲めるならマシだなと思ってグイッと一気飲みする。
しかし、最後まで飲む事は出来なかった
そのわけは、急に後から肩を叩かれたからである。
「うにゅ?―――――プゥ――――ッ!!??」
その人物は、一年ぶりに再会した彼女の『幼馴染』、藍更詩織(※本名はまだ知らない)だった。
「よっ、おひさー」
「し、しお、詩織!?ど、どうして!?」
◆ ◆ ◆
「ほうほう……色々あってここに来たのか」
「そうよ。苦労したんだからね……でも、まさか詩織がIS開発者なんて、私にとっては二番目にびっくりしたわよ」
「一番目は?」
「『アイツ』がこの学園に滞在している事」
「なーるほど」
人気の無い道を歩きながら、ツインテールの少女、凰 鈴音は歩いていた。
その隣には、滑らかなウェーブを描いている長い黒髪の少女、篠ノ之 凪紗は、案内しながら昔話と自分の正体、今までの経緯を話していた
「んで、アイツを追いかけて来たって事か?あはは!」
「な、なによ!乙女の純情を舐めないでよね!」
「いやぁ……しつこすぎたら嫌われるかもよ?……まあ、そんな冗談は置いといて、さっさと受付行こう」
「むぅ……そういやさぁ」
鈴が凪紗の方を向いて聞いてくる。
さらに、がしっと肩を掴んでホールドしてきた
「え?な、なに?」
「一夏の奴、元気?」
「……そりゃあ、元気すぎてボディーブロー食らわせても平気で立ち上がってくるわな。手が付けられないよ」
「うわぁ~……アンタもアイツも相変わらず人間離れしてるわねぇー……」
それでも否定しないのが凪紗と言う人間(?)であるのだ。
「えーと、とりあえず手続きは終了です。IS学園へようこそ、凰鈴音さん」
あれから数分後、無事本校舎へと到着し、手続きを現時刻持って終了した。
だが、鈴は何かと聞きたいことがあったようで
「あのー、織斑一夏って、何組ですか?」
隣で「そういえば言うの忘れていたな」と呟く凪紗。いや、忘れるなよ
「ああ、あの噂の子?一組よ。凰さんは二組だからお隣さんだね。あ、そうそう、あの子一組のクラス代表になったんですって。試合には負けたって聞いたんだけど、勝った人が辞退して推薦したらしくてね」
このことに凄く心当たりがある、なわけもなく、本人の凪紗は視線を逸らさずにはいられなかった。
「面倒だから押し付けた」なんてくだらなさ過ぎる理由を学園全体に公言してしまうと、本人が色々アレだからである。
しかし、一つ気付いた事があった。なぜか隣の鈴が小悪魔的な笑みを浮かべていた
「へえ~?なるほどなるほど。質問を続けますけど、二組のクラス代表ってきまってます?」
「え?決まっているけど」
「名前は?」
「……えーと、聞いてどうするの?」
女性がそう聞き返した途端、ステキな笑顔を見せてこう言った。
「そりゃあ……ぎったんぎったんにぶっ潰して奪い取るに決まっているじゃないですかー……」
「いや、え、」
「鈴、まさか……」
「こんな場所でハーレム王目指している奴に鉄槌を!なんてね。私は、この空白の一年でどれだけ成長したか見たいのよ。私を惚れさせた男なら、きっと大いなる成長をとげて打ち負かしてくれるはずでしょ?」
なんという無茶苦茶理論。
受付の女性と凪紗は、苦笑せずにはいられなかったという