インフィニット・ストラトス 転生者は双子の姉 作:夜光・陽炎
追記・指摘があったので修正
―――五月。試合当日
場所はアリーナ・Bピット
あれから数週間たったが、亡国機業に関してのデータは一向に集まらない、それどころか、予測では今日にでも奪還する結果という始末。
なぜこの結果を予測できたかというと、一夏のIS奪還はこの日が―――試合中で消耗しているときに襲えば最適だと考えたのだ。あいつらがこのチャンスを逃すはずが無い
しかし、内通者が見つかれば即刻逮捕&尋問―――といきたかったが、そうも行かない。内通者がまだ見つかっていない。リークした三人も怪しい動きは無い。完全に手詰まりだった
「……くそ」
そんな声を漏らさずに入られなかった。
もう少しでも情報が手に入れば対策を練られるはず―――
「姉さん、どうしたのだ?」
「……いや、なんでもない」
どうやら感情が顔に出ているらしく、妹の箒に心配までかけられる。
……予測時間は、11:30ぐらいか。いや、その頃合がベストだ。天候はそのあたりから曇り始めるし、なんせ試合途中。これほど完璧な頃合があるだろうか
「あ、もうすぐ試合が始まりますよ」
同じく、アリーナのピットにいた山田先生がそう呼びかける。
ビットに備え付けられているリアルタイムモニターには、二人の生徒―――一夏と鈴が居た
「………甲龍(シェンロン)、第3世代型IS。燃費と安定性を第一に設計されているISか。なるほど、長期間戦闘を想定してのものなんだ。つまんないね」
「え?藍更さん、あのIS知っているんですか?」
「ん、まあ……」
正確には脳内の与えられたデータだが、詳細は空中投影したホログラフィーモニターだ。HSCを目に装着しているおでいつでもどこでもネットだろうがコア・ネットワークだろうがに接続する事が出来る
「にしても、これは相性悪いかもね」
「……えーと、よくわからないんですけど……」
よく分からない山田先生のために説明してやろう
「一夏のIS『
「え、それって―――」
「ガードリッチが切れればお終い。左手の『雪羅』にも同じ事がいえます。あれにも
「そ、それって、藍更さんがわざとそうしたんですか?」
「その通り。公平じゃないからデメリットを少しでもかけて置かないと、後々苦情が出ますからね」
「そ、そうなんですか……でも、それでなんで不利になるんです?確かに長期間戦闘が出来なくても、遠距離と近距離を併せ持つのはどちらも一緒だと思いますけど」
「……これが一番問題ですよ。あいつの弾は『当たらない』」
「……ふぇっ?」
そう、一番の問題。それはアイツが『ド素人』と言うこと
戦場で一番の要になるのは何か?武装?鍛えられた体?制圧武力?兵数?
――――ちがう。どれも大切だが、一番の要になるのは『戦闘経験』という何にも代えられない代物だ。
戦闘経験は『兵力予測』『自身の戦闘力』『動きの柔軟さ』『状況の把握』に影響し、そしてなにより『戦況の予知』という指揮官的なことをも可能とする『時間が作る宝』の一つだ。
これを極めたものは数少ない。対人実戦経験を多々持っている者は数十年前の『第二次世界大戦』の生き残りぐらい。ISの実戦経験を持つものはまず数えるぐらいしかいないだろう。IS同士の実戦戦闘は極めて珍しいケースなのだから。
「あいつはまず銃の撃ち方すら知らないです。ほとんど感任せで撃っているだけ。正直、あいつに遠距離武器持たせたのは失敗でしたよ。ほんと」
「そ、そんな……それじゃあ」
「遠距離、なんてことは死んでも考えないほうがいいですよ。絶対に近距離で使うしか道は無いですし。ま、別にいいんじゃないですかね?」
「ええ~!?それじゃあ負けちゃうじゃないですか!」
「大丈夫です。アイツが鈴に勝てるなんて今は無理ですから」
「な、なんかひどい……」
すまんが本気で言っているんですよ。あいつは『まだ』勝てない。
せめて勝とうものならば、一夏のISの周りに浮いている四つの大剣―――自動支援装備の雪無をうまく使うしかないだろう。
だが、勝ち負けはどうでもいい。今は亡国のことだけを考えるんだ
◆ ◆ ◆
『それでは両者、規定の位置まで移動してください』
アナウンスに促されて、俺と鈴は空中で向かい合う。その距離は五メートル。かなり短い距離で、これなら開始早々近接武器のぶつかり合いになりそうだった
「一夏、手加減無用よ。負けが決まっているんだし、どれだけ私を楽しませる事が出来るかが見ものね」
「けっ、俺が負ける前提かよ。その言葉、後悔しないよな?」
こっちは最初から全開で行くつもりだ。鈴は何かと油断しそうだし、早期決着が最良だな。
予め、左手の雪羅と右手の雪片弐型には薬莢を装填してある。トリガーを引いた瞬間、エネルギーが駆動部に送り込まれ光の刃を形成するだろう。
雪羅はブレードモードで同じくエネルギー刃を出して攻撃できる。
雪無も前方防御モードにしておいたし、準備は満タンだ
「一応言っとくけど、ISの絶対防御も完璧じゃないのよ。シールドをぶっ壊して攻撃すれば本体にもダメージは入るからね」
「あたらなければどうという事は無い」
「……コピペみたいな台詞言ってないで真面目にやりなさいよ」
会心のボケにツッコミが入ったところで、ふんどしを締めなおす。いや、精神的な意味だよ
『それでは両者、試合を開始してください』
ビーッとブザーが鳴り響く。瞬間、
――――ガキィンッ!!
激しい金属音がして、反動によって吹き飛ばされる。俺はセシリアに習った
「いっつつ……いきなり飛ばしてくれるじゃない。けど―――」
鈴が手にしているのは大型の青龍刀―――と呼ぶにはあまりにも禍々しく、しかもそれをバトンのようにぶりまわしている。ISの機能によって補助されている筋力があったとしても、ほとんどは個人の実力によって左右されるものであり、いかに鈴が優れているかを今実感した。
そして、それを縦横斜めの軌道を描いて切り込んでくる。追加で高速回転して遠心力で勢いをブーストしている分、その威力はとんでもないものになっていた。
(まずっ!これじゃあ得意の近距離戦を持っていかれる。一旦距離を取って………!)
「―――遅い、温い、甘い!!」
ガンッ、と肩にある
その瞬間嫌な予感がして左手の雪羅をシールドモードにして展開するが―――
「だから、甘いって言ってるのよ!」
鈴が青龍刀を持っていない右手で雪羅を殴りつけてきた。
勿論、少し動いたがそれでもガード体勢は崩れなかった。だが
「かかったなアホが!」
鈴の右手の一部装甲がパージされたかと思うと、その中から現れたのは巨大な『杭』だった
「まさか―――」
「パイルバンカーよ。残念だったわね」
パァンッ!と火薬がはじける音がした瞬間、左腕の雪羅が少々の破片を散らしながら弾き飛ばされた。
右手は鈴の青龍刀をホールドしているので防御には回せない。
ますい、と思ったときにはもう雪無に脳内から指令を出していた
肩部位の球体が光る直前、四つの大剣が目前に現れる。刹那―――
―――ドォン!
実弾ではない、ビームでもない。だが、『何か』によっての衝撃で弾き飛ばされた
「ぐあっ!?」
前方の雪無ごと吹き飛ばされ、体勢を崩してしまった。
「しまっ――――!?」
「今のは前菜―――次がメインディッシュよ」
―――ドカァンッ!!
「っつあっ!!??」
目に見えない『何かに』吹き飛ばされ、俺は地表に叩きつけられた。背中から叩きつけられていたので数秒間呼吸ができなかった
雪無のサポートのおかげでダメージは32まで半減しているが、アシスト無しだったらと想像するとぞっとする
「くそっ……出鼻をくじかれた。だけど、ここで逃げたら男がすたる……!」
左手を見ると、装甲が少し欠けた雪羅があったが、動かすにはまだ十分のようだ。
右手の雪片も少しだけ刃こぼれしていたが無問題。
トリガーを引いてイジェクターから薬莢がはじき出される。瞬間、刀身の鎬が開き、間から光の刃が生成された
「本番はこれからだぜ、鈴」
「しぶといわね~……ま、嫌いじゃないけどね。掛かってきなさい、遊んであげるから」
「その言葉、後悔するぞ?」
◆
「なんだあれは………?」
ピットからリアルタイムモニターを見ていた箒がそうつぶやく
それに答えたのは、さきほど合流したセシリアだった
「『衝撃砲』ですわね。空間自体に圧力をかけて砲身を生成、それによって生じる衝撃を砲弾化させて打ち出すものですわ」
「おまけに燃費も最良。軽いチートだね」
それに説明を付け足した凪紗。外見とは裏腹に、かなり頭を悩ませていた
彼女は一切モニターを見ていない。見ているのは右手に握っている指輪―――黒桜の調整ウィンドウだった
ウィンドウに表示されている時刻が一秒過ぎるたびに、彼女の頭はズキンと痛んでいる
(………潰す。ここで、決着をつける)
ただそれだけを思い、作業を進めていた
さて、何話になるやら。そんなに長くはならないと思いますが……