インフィニット・ストラトス 転生者は双子の姉   作:夜光・陽炎

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遅くなってすみません。いろいろ忙しかったもので。
一万文字ブッちぎってますが、まあ今まで投稿できなかった分ってことでw

では、どうぞ


第三十二話・終結への道(上)

前話より数分ほど前

上空二千メートル、輸送機「ガーディアン」格納庫。

 

格納庫内部には、ISが立てに列を作って整列しており、一機を除いて対地面制圧装備のクラスター爆弾用グレネードランチャーを持っている。

誰から見ても今から戦闘を起こすとわかるだろう。

 

だが、そのISには人が乗っていなかった。いや、『まだ』と表現したほうが良いだろうか、整列しているISのそばで格納庫に居た全員が集まっている。

 

「―――以上で強襲作戦の説明終了。なにか質問は?あるなら三十秒以内で答えて」

 

「……うーん、とりあえず私がステルスで先行、その後からスコールたちが陽動に回る、ってことか?」

 

「そうよ。オータム、あなたがこの作戦の要になるわ。コアを回収したらすぐに連絡、同時にガーディアンに帰還してちょうだい」

 

「もう一方のコアはどうすんだよ?」

 

「私のほうで何とかする。私を含めて陽動人数は四人。失敗する確率は五分五分ってところね……」

 

ゆっくりとISの方へ近づき、操縦席に腰を下ろすスコール。

一見クールそうに見えている。が

 

「なにが不安なんだ?」

 

「……そうね、あっちの方で彼女は一部セキュリティを無効化したそうだけど、今回の騒ぎで一気に復興してMAXまでレベルを引き上げられた。それでもアリーナの方だけだけど、それでも成功率は下がっているのよ。これ以上トラブルは御免被りたいわ」

 

「……やるしかねぇんだろ?」

 

「そうね、やらなきゃ私たちの首が飛ぶわ。がんばってちょうだいね、オータム」

 

「プレッシャー、きついぞおい」

 

周りに居た女性たちはそんなやり取りを見てなにも動じなく、スコールと同じく操縦席に座る。

同時にガシャンと音がして、ISが起動する。

 

「んじゃ、私も装着しますかっと」

 

そう呟いたオータムは、刹那光につつまれ、黒い装甲を持ったIS『アラクネ・TYPE(アクロバデック)(ステルス)AS(アンチ・スナイパー)仕様』を装着する。

 

このISはステルス―――特殊作戦用に改造されており、一時的な光学ステルスと室内戦闘を想定した高い可動性を持っている。

さらに背中に8つの独立したPICを展開している装甲脚を備え、蜘蛛を模した異様な容姿をしている。装甲脚には砲門が装備されており、火力の底上げを可能とした。

 

が、その特殊過ぎる仕様のせいで稼働時間が大幅に削られており、長時間の戦闘には向いておらず、操縦もピーキーなゆえに扱えるものはほとんどいない。

 

もっとも、『オリムラマドカ』のIS『サイレント・ゼフィロス』の戦闘を視野に入れているので、背中のバックパックに付いている大型の球体状の装置『スナイプ・センサー』を使い、半径一キロの捜索が可能になっており、ハイパーセンサーも超遠距離対応になっている。

 

しかし当の本人にとってはただ一言『邪魔』としかいえない。

なぜなら

 

「私、近接戦闘の方が好きなんだが……」

 

―――ただ個人的なスタイルの問題なのだから。

 

「文句言わないの。―――ハッチ、開放」

 

スコールの掛け声と共に、後部にある出入り口―――ハッチが開けられ、そこから強風が流れ込む。

だが、ISを着ている彼女らにはどうってこと無いが、長時間この状態が続くと、輸送機内のバランスがおかしくなり、墜落しかねない。

 

急いでオータムに指示を送る。

 

「オータム、先行よ」

 

「ああ、じゃあ行ってらぁ―――ふっ!」

 

背部のスラスターが火を噴いた瞬間、巨大な金属体が勢いを付け前進して外部へと弾き出る。

 

「光学迷彩、起動」

 

呟きと共に、オータムの体がゆがんだと思うと、急に姿がかき消された。

 

「順調のようね。――――あなたたち、行くわよ!」

 

『了解!』

 

 

こうして、コア強奪作戦は始まったのであった。

 

 

そして、現在に至る

 

 

アリーナの周辺上空には、計八機のISが飛び回っている

 

「……余分戦力を残しているわね。ざっと三機、こちらと戦闘しているISが四機……三機は地面でこちらの警戒と避難している者の防衛。なるほど、そっちも余裕はないってわけ」

 

マシンガンでばら撒かれている弾丸をスピードだけで振りほどき、彼女のIS『ラファール・リヴァイヴ』は華麗に敵へと近づく。

手にロングソードを展開し、左腕の物理シールドで弾丸を弾きながら接近。剣の攻撃範囲まで近づいたところでシールドバッシュ。この不意打ちにより体制を崩した相手を右手の剣で一閃し、さらに一蹴り食らわせる。

 

「あっ……!?」

 

相手が手に持っていたマシンガンを蹴り、その手から弾き飛ばす。

空中に舞うマシンガンにロングソードを投擲し、破壊。武器を無くすということは戦場において最悪の状態に近いが、相手のISもラファール・リヴァイヴだ。

 

IS『ラファール・リヴァイヴ』は第2世代型ISの量産型だが、2世代最後期の機体でそのスペックは第3世代型初期に劣らない。

だが、最も特徴的なのはその拡張領域。無改造でも10近い武器を後付けでき、武器の一つ二つ無くしたところで影響は少ないというメリットがある。

 

なので、武器を失った相手は即座に次の武器―――アサルトライフルを展開し、こちらに照準を向ける。

 

「しぶといわね。別に問題は無いけど」

 

スコールはがら空きになった右手にハンドガンを展開、同時に照準をアサルトライフルの『銃口』に向け、トリガーを引いた。

 

ドンッ!という爆発音と火薬の臭いを撒き散らしながら銃は弾丸を放ち、その弾丸は空気を裂きながら目標へと向かう。そして、その弾丸は綺麗にライフルの銃口へと入り、中の機関部をぐちゃぐちゃにかき回し、破壊する。

この間、わずか二秒。だが、相手がそれを知る由も無く、ライフルのトリガーを引いた瞬間

 

「――――!?!?」

 

自分のライフルの機関部がいきなり爆発し、その欠片が自分の体に当たる。

シールドの範囲外なので絶対防御が代わりに発動して無傷なのだが、代償としてシールドエネルギーがかなり削られる。

 

この至難の業を何気なくやり遂げたスコールは、真顔で相手を見ている。まるでどうでもいい子供のおもちゃを見るように。

 

「……つまらないわ、IS学園の教師と聞いて結構期待していたのに……はぁ」

 

こんな状況、そんな言葉を発しているスコールの精神はどうなっているのだろうか。

しかもそんな言葉を聞いた相手はまるで課の光景を信じられないような顔をしている。それはそうだ

 

「あ、なた……ふざけているの!?」

 

「………もういいわ。雑魚は消えなさい、時間の無駄よ」

 

スコールがそんな言葉を発した瞬間、突然姿をかき消した。

 

「う」

 

『うそ』。この二文字も言わせる余裕も与えられず、スコールは相手の目前に忽然と立っていた。

 

そんなに小難しい動きではない。ただ相手の視界外に瞬時加速(イグニッション・ブースト)で下に逃れ、真下から上昇しただけである。が、それを相手が認識できないほどのスピードにそれを可能とするスコールのテクニックは突出していた。

スコールは強奪部隊ではないにしろ、一人で代表候補数人と対等に渡り合える実力の持ち主。戦闘能力で言うならIS乗りでも上位の域に滞在できるだろうが、そんな実力を持っている者がどうしてこんな組織にいるのかは不明である。

 

「さようなら」

 

そんな声と共に、相手の額に何かが添えられ、瞬間爆音がする。

同時に相手の頭が吹き飛ばされ、背中を仰け反る。しかし再度爆音。今度は体が吹き飛ばされる。

 

至近距離からのヘットショット。シールドがなければ今頃相手の頭は木っ端微塵になっているだろう。

 

相手は白目を剥きかけており、額からも血が流れている。だが、スコールはそんな事も気にしたようではなく、弾が尽きるまで相手の額を打ち抜く。

 

タン、タン、タン、タン、タン、タン、タン、タン、カチッ、カチカチッ

 

弾切れ(ホールドオープン)を起こした拳銃をスコールは何気なく凝視し、マガジンキャッチを外してマガジンを外し、代えのマガジンを装填する。トリガーを一回引いてスライドを前に移動させ、量子化して収納(クローズ)する。

その動作が済んだ次に、オープンチャンネルを開く

 

『こちら01。目標の座標に向かい、捕縛する。皆は各自の相手と交戦状態を続行。あくまで時間稼ぎよ』

 

機械音が混じった声―――ボイズチェンジャーで発せられた声は確かに各員に伝わり、それぞれ『了解』とだけ呟く

オープンチャンネルを切り、声も元に戻す。

 

「さて、向かいますか」

 

そう言い、アリーナの小さな出入り口をちらっと見た後、スラスターから火が漏れた。

 

 

 

 

 

                        ◆

 

 

 

 

ステージの中央、火花が散っている。

 

「あは……あひ、ひひひぁぁぁあはははははははっ、あああああああ!!!!」

 

奇声と共に、無人機の体が派手に吹き飛ぶ。

その体躯は地面を滑るように弾き飛び、砂煙を上げながら転がっていた。

 

「クケヵききかこかあぁぁぁぁぁぁあああああああ!!ひひはひああはははぁああはははははは!!どうしたの、ねぇええ!!!もっと私を楽しませてよ!なあぁぁぁぁぁぁ!?」

 

そこには理性を失いかけ『本能』で動いている『獣』―――いや、人の形をしたものがそこにいた。

戦闘から数分も経たないうちに精神がこのような状態になっているのは、別に追い込まれたからではない。彼女はあることを悟り、理性を半分封じ込めた。その状態で『制御』を失ったらどうなるか想像は付くだろう。

 

理性より本能のほうが上回り、自分でも何をやっているのかわからなくなる――――つまりは暴走だ。

 

例えて言うなら、ブレーキを失ったJP、トリガーを離しても弾を撃ち続ける銃(※本当にあります)、制御下からはなれ勝手に動き続ける機械。そんな状態なのである、燃料がなくなるまで動き続けるモンスターマシンのような。

 

「おい……おいおいおいおいおいおい。こんなんで終わっちまわないでくれよ?久しぶりに本気出せるんだから少しは持ってくれ―――――ほぉら」

 

地面に大の字で転がって、手足を投げ出しているISを踏みつけ、右手にリボルバーキャノンを展開し、銃底を無人機の顔に叩きつける。

 

「ピーーーーーッ!」

 

リボルバーを持ち上げると、つぶれた無人機の顔が見え、凪紗はニタァッと笑いながら再度銃底を叩きつける。

バギッ、ボギッ、パチッ、パン、ブチブチという音が耳に聞こえ、もう凪紗の顔は幸せの一言に尽きた。楽しそうで何よりです

 

「ひひひひっ、おい、なんか言ってみろよ、なあ、悲鳴ぐらい上げられるだろ?やれよ、おい」

 

「ぴ、ピピ………ピ」

 

「……ちっ、つまんねーの」

 

満面の笑み(凶悪な方の)は一瞬で崩れ、悪態の態度に早変わり。

ガチャン、リボルバーキャノンの弾丸を発射する準備をし、その銃口を無人機の心臓部――――コアがあると思われるところに向ける。

 

「もういらない、消えろ」

 

トリガーを引く――――寸前

 

「―――――アァ?」

 

後から無人機が、凪紗の腕を鷲づかみにしていた。

瞬間

 

バギッ、バギボギッ。

 

腕のアームパーツごと、腕が潰された。

 

「いっ……たあああああああああッ!!!!――――……!!!ああ、くそいてぇ……!!」

 

常人なら泣き喚くところを、凪紗は笑っていた。常人なら頭のネジが飛んでいると思われる―――いや、飛んでいるのだが。

凪紗はリボルバーキャノンの銃口を、目の前の無人機ではなく、腕をへし折った張本人の顎に向けた。

 

「ご褒美だ。遠慮せず受け取れ」

 

――――ドカアァンッ!!!

 

普通の八十九口径の弾丸とは思えない轟音と共に、無人機の頭は首の周りごと丸ごと消し飛ぶ。

刹那、後から桃色の閃光が視界を包んだ。と、認識した瞬間、ビームの柱が凪紗を包んだ。

 

 

「うおおおおっ!?すっけえ……火力」

 

 

だが、凪紗は傷一つ無い、わけではないが、ビームによる直接攻撃は受けなかった。

なぜなら、先ほど倒した無人機の残骸が盾になったからである

 

ビームが納まると、視界が晴れて後の景色が見えた。

体に乗っかっている残骸を振り解き、射撃をしてきた二機のISを見る。

 

「んー……まだのこっていたかぁ……。まあいいや、『黒桜』ぁ、左腕復元しろ」

 

『了解、左腕復元』

 

ナビゲーションの声がした後、粉々になっていた腕が元通りになる。それと一緒に砕かれた筋肉繊維と骨も元通りになり、もう傷一つ残っていなかった。

 

「はあぁあ……。いーな、これ。すげーわ私。ぱねえ」

 

変な事を口にしながら歩を進めようとした、が、またまた―――というか、今度は胴体を掴まれた。

掴んでいるISは、先ほど顔を潰したISだった。どうやら熱感知かなんかで凪紗の居場所を特定し、捕獲したらしい。

 

しかし、気にも留めないような声で

 

「死に底無いはだまってよ」

 

瞬時に抜刀。掴んでいる腕は、真ん中から切り落とされた。

そして、そこら中に散開しているホルスタービットから一本だけ、高周波ブレードを抜き、それを無人機の頭に刺した。

 

串刺しになった無人機は機能を停止し、もう指の一本も動かなくなった。

 

「ったく……おまえの相手してる場合じゃないっての。お楽しみは終わりで、さっさと片付けてあいつらを……どうしよっかなぁ?」

 

不敵な笑みを浮かべ、ステージ中央へと立つ。

 

 

 

 

不意に、今まで機能を停止した無人機たちの体に光が灯った。

 

「およ?」

 

不意にそんな声を漏らし、その光景を眺める

体が半分になった機体、頭だけが無くなっている機体、腕だけがなくなっている機体、それまでもが起動し、こちらに体を向けていた。

 

「はぁ……?……姉さん、また変な改造とかしたのかよ………」

 

こんな状況になろうとも、余裕を持て余す凪紗。

しかし、これで七対一。残り五機は跡形をほとんど残さず消し去ったので起動するはずも無し。

 

「面倒だなー………飽きたし、さっさと潰すか」

 

 

――――第十三の型八番『秘奥義』(・・・・・・・・・・・・)

 

「―――きひっ………!《八俣遠呂智・封解草薙ノ剣(やまたのおろち・ふうかいくさなぎのつるぎ)》。食い尽くせ、『ヤマタノオロチ』………!!!」

 

 

刹那、凪紗を中心に八つの『何か』が生み出され、それぞれが自分たちの目標に向かった。

まるで、『自我を持っているように』

 

 

 

 

 

 

                       ◆

 

 

 

 

 

―――――トガガガガァン!トゴォン!ピギギギギギ!ガガガァァァァァァァン!!!!

 

 

 

「うわぁっ!?」

 

「な、何!?地震!?それとも敵襲……いや、もう襲っているか、ってうわっ!?」

 

アリーナ内部を走り回り脱出を試みている二人、鈴と一夏は急な激震に脚をとられ、混乱してしまう。

その激震は何度無く続き、それでもISのオープンチャンネルで会話を続行していた

 

「なによ……!?もう崩れそうな勢いね全く!!」

 

「ぐちぐち言ってても仕方ないだろ。っていうかいい加減降ろせこら!!いつまで荷物みたいに抱えてるつもりだよ!」

 

鈴はISを装着し、一夏を脇に抱えて移動している。

できればこの方が楽なのだが、それでは一夏のプライドが許さない。というか、ステージを出た瞬間からこの状態だったので、さすがに堪忍袋の緒が切れたようである。

 

「え、ちょ、暴れないでよ!―――ひゃんっ!?!?ど、どこ触ってんのよ!!!」

 

「は?――――ぶへらっ!?」

 

じたばたしているうちに、鈴の体のウィークポイントを触ってしまったらしく、ぶん投げられてそのまま壁と口付けするはめになった。

そしてギャグ漫画よろしくゆっくりと滑り落ち、一夏は鼻を押さえている。

 

「おおぉぉぉっ……!なにすんだよ!」

 

「こっちの台詞よ!どこ触ってんのよ変態!!」

 

「お前に変態呼ばわれされる筋はねえよ!」

 

「う、うるさいうるさいうるさい!!」

 

「お前はどこぞの赤紙剣士かよ……」

 

そんなどうでもいいやり取りをしている間にも、激震は止まらない。

「あ、これ完全にピンチだわ」と判断した一夏は、行動を速めることにした。

 

「鈴、やべえぞ。さっさと箒と合流して脱出だ!」

 

「わ、わかってるわよこのバカ!」

 

しかし、肝心なことを忘れていた。

 

「……ねえ、その箒って子、今どこにいるの?」

 

「………え?」

 

そう、居場所がわからないのだ。

居場所がわからなければ合流もくそもない。肝心な連絡を忘れていたのだ。

 

「しまった……わすれてた、やばい……!」

 

「アンタ、バカ!ほんっーーーーとにバカ!!なんでそんな肝心なこと忘れんのよ!」

 

「仕方ないだろ、しちゃったものは!――――――くそ、早くつながれ……つながってください!」

 

プルルル、と通信コールが何度も鳴り、この場の緊張感を一層高めていた。

そしてついに――――

 

『この電話番号の機器は、現在電源が切れているか、圏外です』

 

「………マジですか」

 

「……あーーーーー!!!もう、一夏、探しに行くわよ!!」

 

もう耐えられないといった声で、先に脚を動かす鈴。ISを装備しているので生身よりは早い……と信じたいが、今は独断行動は危険だ。「待てよ」と言い返そうとしたとき

 

――――熱源反応、ISと断定。識別信号赤、敵です

 

「ま」

 

言おうとした言葉が、何なのか、もう思い出せなかった。

徐々に世界がゆっくりになっていき、視界も青に染まっていく。これが、走馬灯という奴だろうか。気分は凄く悪い。

 

心臓の鼓動は強く、そして早い。体中から汗が流れてゆき、体を濡らす。

 

何かを言いたいのに、舌が動かない。「よけろ」、この三文字も言えない。

瞬間、鈴の真横にある壁に亀裂が入って行き、ビデオをスロー再生するように、ゆっくりと壊れていった。

 

そこから、大きな人方の金属体―――ISが飛び出してきた。

その標的となった鈴は、首だけを動かし、そのISに乗っている人物の目……フェイスカバーに隠されて顔は見えなかったが、確かにその顔を見ている。

 

鈴が、一瞬こちらを見たような気がした。

 

そう思った瞬間、先ほどと同じく徐々に世界が色を取り戻してゆき

 

―――ドゴォンッ!

 

音がした、と思ったら煙が舞い上がり、視界を封じる。

その煙は、すぐに晴れた。衝撃の光景を見せるように、ゆっくりと

 

「がっ、あ……っ……ぁ………!」

 

「…………」

 

そこには、黒色のISが、鈴の首を絞めていた。

鈴は抵抗しているが、相手は全く動じず、逆に絞める力を強めているように見える。

 

「……っぁ……う、そ……」

 

鈴は何かを言おうとしているが、全然聞こえない。いや、断片的に聞こえるだけだ。

助けたい、でも脚が動かなかった。なんでだ?なんで動かない?

 

「……………違う」

 

謎の乱入者はそう言うと、すぐに手を離す。

鈴は、力なくその場で崩れ落ち、ISも光になって消え失せた。

 

「………見つけたわ」

 

そして、こちらをゆっくりと見た。

その中から発せられた声は、アニメで出てくるように機械音が掛かっており、何者かも判別することができなかった。

だが、IS学園の関係者じゃない事だけは確実だろう。

 

「……なんだよ、お前」

 

「……う~ん、あなたを殺しにきた『悪の組織』ってとこかしらね?」

 

一夏は世界でも唯一の男のIS乗り。命を狙われる可能性もある。

しかし、ここまでするだろうか。こんな混乱を作る必要はあったのだろうか?

 

「ふ、ざけんな!ほんとになんなんだよ!?てめえら!!」

 

「だから言ったでしょう?あなたを殺しにきたって、ね?」

 

納得できない。理解できない。理解したくも無い。

いやだいやだいやだいやだ。逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ

 

脳と思考が全力でアラートを鳴らしている。

頭の中で「どうする」と言う単語が暴れている。逃げたい、けど

 

「い、ちか、ぁ……にげ、て……」

 

向こうから聞こえる鈴の言葉で、全てが決まった。

 

「う……おおおおああああああああっ!!!!」

 

叫んだ瞬間、体中が発光する。

刹那、何かに包まれている感覚が、体中に走った。これは――――

 

「……白蓮、弐式…?」

 

ボロボロになったはずなのに、まるで新品同様になっている。

 

「―――そうか、単一仕様能力(ワンオフ・アビリティ)で……!」

 

凪紗に聞いてみると、どうやら白蓮弐式には『二つ』能力が備わっているらしい。

一つ目は零落百夜という、防御を攻撃に回す能力。

そして二つ目、舞雪幻爛(ぶせつげんらん)。ISの装甲、エナジー、全てを回復する能力。原理は知らないが、エネルギーを小回復し、物理ダメージを全て回復するというおまけ付き。

 

だがしかし、

 

「これ、あの時以降は発動できていなかったんじゃ……」

 

そう、クラス代表決定戦以降、一回も発動できていないのだ。

理由を聞いてみると

 

『ISは搭乗者の心に応える。だから、お前には『心』が足りないんじゃないの?』

 

といわれた。

心が足りない、意味もわからず、ただ気合を入れて集中してみても発動しない。

もう無理だと思った頃に、こうして発動できてしまった。

 

この現象で、やる事は決まった。

 

「ああ、そうだ……覚悟しろよ。お前」

 

「……?何を言っているのかわからないけど、さっさと回収させてもらうわ」

 

「そう言えんのも、今のうちだ!」

 

全力の突進。二段瞬時加速(ダブル・イグニッション・ブースト)を使い、乱入者の胴体に思いっきり体当たりする。

 

「な――――!?」

 

「うおおおおおおおっ!!!」

 

そのまま押し切り、鈴から距離を開けさせる。

そして、加速の勢いに乗り、大型ジェットウィングスラスターをオーバーロード寸前まで出力を上げる。

 

相手の抵抗虚しく終わり、そのまま宙に浮きながら加速し、前にあった壁をぶち抜く。

だが、勢いは止まる事知らず、続けて壁を砕き、より一層外に近づける。

 

「ここから……ここから、出でいけえええええええええええええええ!!!!!!」

 

「うっ……!?」

 

「うおおおおああああああああああっ!!!」

 

そしてついに最後の壁を突き破る。

 

同時に、外の日光が、一夏の目を貫いた。

急に明るくなって、目を隠すと、少しずづ目が慣れてゆき目を開けると、そこには『廃墟』と呼ぶにふさわしいアリーナの姿が映った。

 

「なんじゃこりゃぁ……!」

 

「な、なんなの、これ?」

 

アリーナは入ったときの姿など皆無。表面のアスファルトは皹だらけになっており、装飾もボロボロ。一時間弱でこのような姿に早変わりしたと言っても誰が信じるだろうか?

 

「……ああ、凪紗がやらかしたのか」

 

それしかなかった。いや、アイツ以外に誰がこれをやったっていうんだ?いたとしたら目の前につれてきて欲しいよ。

 

「……生意気ね、あなた。じっとしていれば苦しまなくて済んだのに」

 

「大人しく殺される趣味はないぜ?」

 

なぜだろうか。俺の声はすこし楽しんでいるようにも聞こえた。

この状況を楽しんでいるのか?――――よく分からない、だが笑っているのには違いない

 

「何を笑っているのかしら?」

 

「ふっ、フフフ、ハハハハハハ!よくわかんねえけど、なんか楽しいんだ」

 

「は?何を言って―――」

 

「なんでもねぇよ。へへっ、さあ戦闘(バトル)開始といこうじゃないか!『悪の組織』さん?」

 

「そう……大人しくするつもりはないのね。―――なら、望みどおり行かせて貰うわ」

 

「そーかい。なら―――」

 

 

 

 

「―――いざ、参る!!」

 

 

 

 

                     ◆

 

 

同時刻。学生寮7F自室

 

「………なにが起こっているの?」

 

円夏は自分の自室で、頭を抱えていた。

外で起きている爆発音、そして小さな影が何個も上空を飛びまわっている。

 

「非常事態なのは間違いないけど……むやみに出たら危ないし……」

 

非常事態での対処マニュアル。その三、徐に外へ出ないこと、そして出来るだけその場から動かない事。救助が来るまで待つ。だが、その場が危険だったら迅速に脱出すること。

 

……と書いている。なので十数分ほど寮で待機しているが、一向に音はやまず、先ほど途轍もない爆発―――いや、破壊音が聞こえたところだ。

しかし、なぜ寮にいるかというと、少し仮眠を取ろうと自室に戻ったら、爆発音によって起こされたのだ。なので状況がいまいちつかめない。

 

実を言うと、アリーナのピットには仮眠室もあるのだが、実は円夏は枕が変わるとなかなか寝られないのだ。なぜか

しかし、今となってはあれが命を左右していたかもしれない

 

「……なんか今、すごい個人情報をばらされた気がする」

 

変な事を呟きながら、一旦状況整理をする

 

1、爆発が起きた。

2、それで今IS学園は混乱。調べてみたが、セキュリティレベルがかなり上がっている―――が、この学生寮のレベルが0になっている。原因は不明

3、今外に出てもわけがわからなくなるだけなので、出来れば移動しない方がいい

4、現在上空で謎のISが教師たちと交戦中。

5、アリーナがボロボロ。原因不明。だいたい想像は付くが

 

といったところである。

これらを整理していくと

 

「……正体不明のISがアリーナに乱入。そのせいでセキュリティレベルが最高レベルまで引き上げられた。同時に援軍、または第三の勢力が再度乱入。事態は一層混乱する。今は交戦中で、アリーナはなにか規格外の爆発か……または常識を逸脱した『何か』に壊されたか……かな。ただのこじ付けだけど、可能性は高いかも」

 

ぶつぶつ呟きながら、そこら辺をうろうろする。

さすがに閉じこもっていては何も始まらない、と思い、ドアに近づくと

 

「……?なにか、ある?……いや、『いる』!?」

 

「ご名答。勘の良いやつだ」

 

「―――!?」

 

ノイズ混じりの声が聞こえ、即座にその場をバックステップして距離を取る。

瞬間、ドアは突起状の武器に貫かれ、その身を真っ二つに分ける。

 

「なっ……」

 

「けけけ、なーに驚いてんだ。ただ姿が見えないだけだぜ、お嬢様?」

 

「う……そ」

 

姿が見えない、これはとても重大な問題である。これでは目標を視認することは不可能。

音でしか判断できないのはかなりの痛恨事であり、これでは確実にこちらが不利。ここで戦うのは、危険すぎる

 

「つーわけで、こっちも命掛かってんだ。一回死んでくれや」

 

「っ………!」

 

音以外にも、判断できる材料はある、それは大気。風の揺らぎで相手の位置を掴む事は至難を通り越して神業であるが、近距離なら素人の円夏にもどうにかできる。

見えないところからの攻撃をバク転で回避。隠し持っていた自動拳銃『グロック17』(ゴム弾仕様)を何発か正面に放つ。

 

相手も回避したようで、ゴム弾はそのまま宙を進む。

 

「……光学迷彩、なの?」

 

「多少の知識はあるようじゃねーか。恐れ入ったよ」

 

光学迷彩――― optical camouflage、active camouflage。基本的な解釈では、視覚的(光学的)に対象を透明化する技術で、その原理にはいくつかのバリエーションがある。

当初SF作品等に登場する未来技術であったが、近年の科学技術の進歩によっていまや実用化直前にまでこぎ付けた、ステルス装備の頂点にある代物である。

 

完全に透明ではないにしろ、メタマテリアルという素材を使用することで一定の迷彩が可能とされており、古銭的な方法ならば映像投影型というものがあるが、最先端のものは光の透過・回折型というとんでもない無茶をしでかしている―――と、聞いているが、真実かはまだわからない。

 

とにかく、そんなSFまがいのことが今、目の前で起きている。

対処法が一切思いつかない状況で、一体どうやって乗り切れというのか、と円夏の心境はそんな感じである。

 

「………いや、対処法、一つだけある」

 

「あ?なんだって?」

 

「その光学迷彩、最新のものと判断すると……まだ未完成だから大量の電力を必要とするはず。ここに来るまで長距離の移動をしたと想定すれば、もうすぐ使用不能になるはず……だと思う」

 

あくまで仮説。だが、相手は図星のように押し黙る。

 

「………ふっ、ふははははははははははっ!こりゃとんでもないお嬢ちゃんだ!この短時間でそこまで見抜くとはなぁ」

 

相手は面白がるように歓喜し、どこからはパンパンと音がする。きっと手でも叩いているのだろう

 

「ああ、そうだよ。あと二十秒程度で光学迷彩は消える。けどなぁ……」

 

 

「私がどこにいるか、お前に見えるのか?」

 

 

「え?」

 

急に後に大きな影ができる。

もしや、と思い、振り返ると。

 

―――黒く、おぞましいISが、そこにあった。

 

「じゃ、死んでくれ」

 

そんな短い言葉でも、しっかいrと殺気が込められている。

背中に怖気が走り、防御本能が思考スピードを上回り、その場でフルスロットルでダッシュし、後からの攻撃を回避する。

 

「あぁ……?避けた?すばしっこいガキだな」

 

気の抜けた声でも、円夏の思考は興奮を止めない。止まらせてはいけない、と本能が行っているのだ。気を抜いたらやられる。

 

そう思ったときにはもう、体が動いていた。

 

全力で部屋の出入り口を潜り抜け、急カーブしながら逃走を開始する。

 

「逃げんなよおおおお!!大人しくしていれば楽に逝かせてやるぜぇぇえええ??」

 

ねっとりとした声で叫んでくる。

だが、円夏はそれを聞かない。つまりは「どっちを選んでも殺される」状況に陥っていると理解したからだ。

 

廊下を全力疾走している間にも、後から砲撃が飛んできて、円夏のそばを掠っていく。

 

「はっはああああ!止まる奴はただの臆病者だ!止まらない奴はよく訓練された臆病者だぜ!ひひはははっははあはあああははは!!!」

 

なんかよく分からないことを奇声交じりの声で叫んでいる。

 

そしてついに廊下の端に付いた円夏は、設置してあったカラスの窓を突っ込むように破り、外に飛び出した。

 

「はああああ?なにやってんだお前?」

 

敵は円夏の行動を理解できないような疑問を口から漏らす。

だが、追われている彼女は、飛び出すだけではなかった

 

空中で一回転し、敵のほうに向き直る。

同時に、自分のISを展開、BTライフル《スターブレイカー》を正面に照準する。

 

スターブレイカーの装甲が一部開くと、そこから電磁波が走る。

 

「最大出力。シュート」

 

トリガーを引いた瞬間、レーザー砲と化したライフルの先端から廊下を飲み込むほどの大きさをもったレーザーが放たれる。

 

そのレーザーは廊下の壁を破壊しながら敵へと一直線に向かう。

 

「ちっ」

 

小さく舌打ちした彼女は、真横の窓へ跳躍。外へと飛び出し、レーザーの射線から逃れる。

 

目標を失ったレーザーは止まる事も無く、反対側の端まで廊下を破壊しつくした。その通った後は、黒く染まっている。

 

 

「ったく、派手にやってるねぇ~。ま、私には関係ないことだがな?」

 

「……これより、目標を排除する」

 

「聞く気無ですか、そうですか。んじゃ、死ね」

 

 

 

そうして、円夏対オータム戦が開始したのであった

 

 

 

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