インフィニット・ストラトス 転生者は双子の姉   作:夜光・陽炎

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短い短い詐欺。調子乗って書き続けていたら長文になったでござる。

はい、長くなりました。といっても後日談ですが。
この話は説明のようなものです。学園が後々どうなったかというものです。たぶん

それでも疑問が晴らせない場合はコメントしてください。あるとは……思う


第三十四話・その後の後日談

気付くと、真っ暗な光景が広がっていた。

 

しかし自分だけが赤だった。

そして、視界も赤に染まり、意識も朦朧としていた

 

 

そして、一回だけ瞬きすると、目の前に誰かが立っていた。

同じ赤の姿で

 

「……お前は、何をしたい?」

 

「…………」

 

その人物は、そんな問いを掛けてきた。

 

なんだろう。初めて会ったのに、久しぶりな感じがする。

いや、おかしい。明らかに初対面だ。声だってノイズが掛かって――――ノイズ?

 

「もう一度問う。お前は何をしたい?」

 

表情を変えず、ノイズ掛かった声でこちらに声を掛ける。

 

………あの顔……どこかで―――いや、違う。アレは――――

 

「………答えないのか」

 

そんな声で思考は途中で中断された。

お前は何をしたい?と聞こえた。そう言っている。聞こえにくいはずなのに、こんなにはっきりと耳に届いている。

 

……自分は、何をしたいか……?

 

「……わからない。何も、思い出せない」

 

「…………」

 

私にとっては、今更過ぎる質問だった。

今、自分でも何をしたいかわからないのだ。少なくとも、十二歳以前の頃にはあった「はず」だ。

しかし、今になって思い出せない。

 

「…………そう……なら、まだ会うべき時間ではなかったな」

 

「……え?一体、どういう――――」

 

「……一時の別れだ。どうせすぐに会う」

 

「こと……だ……―――――!?」

 

赤い人物がこちらに手を翳す。その刹那、赤い人物は水のように崩れ落ち、私の視界が歪み始めた。

 

「……思い出せ、理解しろ。お前はいずれ―――――なる」

 

「な、何!?」

 

よく聞こえなかった。

ノイズが更に増し、音声が聞き取れないぐらいにまで増加したのだ

 

「お前、が―――やりたい事は――――――――――」

 

そして、もう完全にノイズが聞こえなくなった。

同時に視界も暗転。自分の姿も見えなくなった

 

「………なんなんだよ、もう……」

 

呆れたのか、それもと諦めたのか。よく分からない気分だった

 

 

「こんな……力……意味なんて……な……い」

 

 

 

最後に聞こえたのは、そんな誰かの呟きだった

 

 

 

 

 

                      ◆

 

 

 

 

パチン。

そんな音がするぐらい、目を大きく開いた

 

ザァァァァァと雨音がしている。しかし、今の自分には静寂にも感じた。

 

薬品―――消毒液の臭いが鼻を刺す。

部屋も全体白で、特に目立った装飾は無い。

 

「…………えーと」

 

とりあえずは、発声確認。声は問題なく出る。

重力感覚からするに、自分は今ベットか何かに寝ているようだ。しかもかなりの低反発素材の。

 

「病院、か?ここ」

 

窓はカーテンをかけられていて景色が見えなかったが、おそらく病院だろう。自分の隣には親切にも点滴スタンドが置かれ、そこには輸血用のパックが架かっていた。

 

「う~ん……たしか貧血になって倒れて。それから……無いな、記憶」

 

血を流しすぎて倒れたところで記憶が途切れている。

まあ、失神していたのだからあったら困るけど。説明が付かないし

 

自分の体を見ると、患者服に着替えられていた。

だが、右腕があるはずの部分だけぼっかりとなくなっていた。

 

「右腕……吹っ飛ばされたんだっけ?参ったなぁ……取りにいけるかな」

 

「馬鹿者、今出てどうする」

 

「え!?」

 

急にドアの方面から声がして、上半身を立ち上げる。

底に立っていたのは紛れも無く、スーツ姿の千冬さんだった。

 

「全く……様子を見に来たと思ったらいつの間に起きてくれて……心配したぞ」

 

「いや、えーっと………何時間、寝てましたか?ここ其処なんですか?」

 

「三日三晩、ずっと眠りっぱなしだ。ついでに雨も三日三晩降り続けている。不思議なものだな。あとここはIS学園付近の総合病院だ」

 

「総合病院?三日……?えっと、それじゃあ……」

 

「落ち着け、話してやる。お前が寝た後の話をな」

 

千冬は椅子を引っ張り出し、ベットの隣に椅子を置いて腰掛ける。

そして、少しずづ口を動かし始めた

 

「……お前が気絶した後、敵さんには見事逃げられたよ」

 

「まぁ、あの状況じゃあ、無理ないですよね……」

 

ベットの隣にある冷蔵庫から、缶ジュースを二本取り出して、一つをこちらに渡す。

それを左手で受け取ったが、なぜか冷たくなかった。

 

冷蔵庫が故障でもしたのか?と思ったが、千冬が腕をつねったおかげで理由がわかった

 

「痛みが、無い」

 

「……一時的な感覚麻痺、だそうだ。医師の診断結果でな。アドレナリンが死ぬ程出た影響らしい」

 

「なるほど……」

 

「話を続行するぞ――――んぐっ……ふぅ。円夏のISが奪われた、のは知っているな。話した記憶がある」

 

「………」

 

「その後、イギリス本国に連絡を取ってみたが、返事はこうだ。『奪われたのはそちらの警備が不十分なせいだ。そちらで責任を取ってもらおう』とな。実に滑稽だ、自分たちが決めた代表の尻拭いも上手く出来ないとは、実に反吐が出る。――――それでも、こちらに責任が無いとなれば嘘になる。というわけで、あっちはこちらにISを一つ提供しろ、と言っている」

 

「……条約なんて皮肉なものですね。コアの取引はアラスカ条約で禁止されているはずなのに」

 

缶ジュースのリングプルを起き上がらせ、蓋を開ける。そのまま一口飲むと、渇いた喉が潤う感触がしてきた。

 

「同感だ。法律なんて、考え方次第ですぐに変わる。――――今回の強奪騒動で、アラスカ条約の規定は『例外』とされた。イギリスに非は無い、と全協定国が認めたそうだ。全てこっちの責任として抱える事になるだろうな」

 

「最悪ですね。一瞬で掌返しとは」

 

「本当だ。自分たちで決めた規律を簡単にひっくり返すとは、自分が不利になったらすぐにまた同じような事をするだろうな。それが人間というものなんだが」

 

「とりあえず、話を戻しましょうか」

 

「そうだな。――――結果的に、IS学園は警備増強。お前が人間国宝級の人物さながらか学園周囲にSPが着くようになった、よかったな人気者」

 

「………皮肉にしか聞こえませんよ」

 

「そうか?まあいい。そして、捕まえたメンバー三人の身柄だが―――」

 

「…………まさか」

 

「そのまさかだ。――――二日前、死亡が確認された」

 

「…………」

 

「原因は心不全。心臓からインプラントチップが発見されて、それを調べてみたところ特定の周波数を受信すると心臓に高電圧をかける仕組みになっていたそうだ。鹵獲されたときの対策だろう。えぐいことをする連中だ」

 

「……あのときと、同じですね」

 

「ああ、そうだ」

 

一年ほど前、凪紗が『亡国機業』に捕まったとき。逆に内部から壊滅させられ、約四十人が病院送りになった事件だ。

 

表には『凶悪犯罪者集団、アジトが見つかり警察が進行。しかし、ガス爆発により約四十人が病院に搬送』という記事になっていた。結果的に全員間に合わなく死亡とかかれているが。

 

しかし、真実を知るのは凪紗本人と千冬、他日本政府数名だけだ。

そのときはまだ凪紗の存在自体がばらされていなく、政府にも千冬がやったと信じ込ませたが

 

しかし、問題はそこではない。

こちらも心臓発作――――心不全が原因で亡くなっているのだ。明らかに方法が同一だと言っていい。

 

「………はぁ、手がかりなし。ですか」

 

「ああ、はた迷惑な奴らだ。あ、あと学園の被害状況だが………」

 

千冬はすこし口ごもると、少しだけにやけだした

 

「……アリーナの全壊、どうするつもりだ?」

 

「……あ」

 

そういえば、自分でぶっ壊したのを忘れていた。

おや、だって記憶飛んでたし、正確には暴走して「やっちゃったZE☆」見たいなノリだったし!私悪くないし!無人機がしつこくてやっただけだし!非常時だったし!

 

「―――というわけで、弁償代数億円。どうするんだ?」

 

顔をニヤニヤさせながら聞いてくる千冬。実に悪い冗談としか考えられなかった

 

「……え、マジで?」

 

「くくっ、くはははははは!冗談だ冗談!なにも捨てられた子犬みたいな目をするんじゃない!ははははははは!」

 

「冗談?え?」

 

「はーっ、まぁ今から説明するが……。回収されたISコア、元の持ち国が見つかってな、その国がこちらの損害を援助して修理費用を立て替えてくれるそうだ。よかったな」

 

「は、はぁぁぁっ……よかった。一生借金生活だと思ったよ」

 

「お前ならコアでも作ればすぐに誰かが立て替えてくれると思うが?」

 

「……理由、知ってて聞くんですか?」

 

「ああ、そうだったな。すまん」

 

篠ノ之姉妹がコアを一定量作らないのは理由がある。

知っているのはごく小数……いや、本人たちと親友ぐらいしか知らないのだが。

 

理由は、『大量のコアめぐりの争い、不公平な数のコア所持(例・Aの国30個、Bの国10個)を防ぐためである。やれば出来るが、やってしまうと後始末が出来ないので、約450個ぐらいしか作らない、そう決めたのだ。二人で

 

「それ以外にも、学生寮がぶっ壊れたが、あれはお前が壊したのではないしな。……不幸な事故だった」

 

「なんのですか!?」

 

「いや、少しボケただけだ。忘れろ」

 

あれ?千冬さんこんなキャラだっけ?

 

「そして、負傷者0死傷者0。見事すぎる結果だ。今回の事件のMVPはお前だ、凪紗」

 

「え?私が?」

 

「あたりまえだ。事件に対しての迅速な対応。真っ先に人命救助を優先したのは良い判断だった。そして、死者負傷者0だったのは奇跡に等しい。あれでだれも怪我をしなかったのだからな――――それでも、相手の目的を達成させたのと、犯人を逃がしたのは痛いな。これでは及第点しかあげられん」

 

「お厳しいお言葉で。私の性格の問題なのは十分理解してますよ」

 

「それならいい。ついでに言うと、被害者0だったのは通常生徒『だけ』の話しだ。代表候補生では被害は続出だ。一年限定だがな」

 

「…………」

 

「二名重傷、二名軽傷、わかるだろう?――――織斑円夏、右腕骨折、脳震盪、肋骨皹あり、後遺症として演算能力低下可能性あり。しかも全治二ヶ月。直ってもリハビリ必須だそうだ。そしてお前、右腕損失、内臓損傷の恐れあり、大量出血原因で貧血症状、不眠症。エトセトラ、全治一ヶ月。一夏は頭蓋骨に皹発見、現在治療中。凰のやつは軽い打撲、窒息による能への小ダメージだけだった。この二人は現在はベットで遊んでいるだろう。もうとっくに目覚めたみたいだしな」

 

「円夏、そんなにひどいんですか……?」

 

「ああ、かなりな。最悪、昏睡状態が長引くらしい………それに、記憶喪失の可能性ありと来た……正直あいつらが来たらぶっ飛ばしてやりたいな……!!」

 

「………」

 

この気持ちは純粋なる姉としてだろう。怒っているのか、悲しんでいるのか、顔を真っ赤にしながら小さく涙を流している。

 

いや、これは無力感、だろうか。

今自分は何も出来ないという気持ちの表れ

 

「………円夏、今どこにいるんです?」

 

「ここだ」

 

「は?」

 

「ここだといっている」

 

千冬は立ち上がると、自分の後ろにかけられていたカーテンを引きちぎるように振り払った。

そこには―――

 

「…………円夏、苦労したんだね」

 

包帯だらけの円夏の姿が、そこにあった。

周りは機械類だらけでごちゃごちゃになっている。よくもまあ、これだけ持ち込めたものだ

 

「……いつ目覚めるって言ってました?」

 

「最低でも一週間。最長で十三日だ、そうだ……実を言うと、私がここに来たのは円夏の看病のためだがな」

 

「えー……まあ、いいんですけど。仕事は?」

 

「あんなことがあって仕事がはかどれるか。生徒たちのカウンセリングもあって、教師たちは全員休んでいるよ。あ、教師の中にも負傷者がでたそうだが、たいしたことは無かったそうだ」

 

「カウンセリング?どうしてですか?」

 

「……あんな戦場紛いなものをみて、不安を覚えない奴はいないだろう。例外はいるかもしれんが」

 

「ああ、そうですよね。お疲れ様です」

 

「どうも、とだけ言っておこう。――――……円夏……私は、お前を守ると誓ったはずだが……これでは口だけの大人だな。姉失格だよ」

 

ぶつぶつと自虐している千冬を見て、少し優になってきた。

 

―――どうにかできないものか。………いや、出来るかもしれない。可能性次第だが

 

「千冬さん」

 

「……なんだ?」

 

「円夏の血液型って、何型ですか?」

 

「……Oの-だ……ドナーが一番少ない血液型だが、それがどうした?」

 

「……ふ、ふふっ……」

 

「?何を笑っている」

 

「いや、これも「運命」って奴ですかね。――――私もO-型ですよ」

 

「は?……いや、それが何だって言うんだ?」

 

「だから、忘れたんですか?私の中にあるものを」

 

「中にあるもの?なんだそれは」

 

「……完璧に忘れ去られてますね。仕方ないか、そんなに話していなかったし」

 

そう言ってベットから降り、立ち上がって見せた。

普段の怪力や運動能力とはかけ離れた華奢な体。しかし、その能力は未だに健在らしく、片腕が無いのに平気そうに歩いて見せた。とんでもない『慣れ』である

 

「千冬さん、ナイフっぽいのありますか?」

 

「……ペーパーナイフならあるが」

 

「十分です」

 

ズボンのポケットから小さなナイフを渡してくる。

それを感覚が薄い手で受け取ると、折りたたんである刃を展開しそれを自分の歯に咥えた

 

「……待て、何をする気だ」

 

「こうふふんんでふほ(こうするんですよ)」

 

口に咥えたペーパーナイフの刃の先端を、自分の掌に刺した。

しかしそれを抜き取らず、口から離してあえてそのままにしている

 

勿論、血液は少しずづだが出ており、下に向けたペーパーナイフから血液が垂れていた

 

「お前……!乱心したのか!?」

 

「違いますよ!……全く、黙ってみてくださいよ」

 

血液が垂れているペーパーナイフを手ごと円夏の口の上まで持っていく。

そして、血液は円夏の口から少しずづ入っていった

 

「本来なら輸血のほうが効果的なんですが、それだと時間が掛かりすぎなのでこうしました」

 

「いや、一体何をしているのか検討付かないんだが」

 

「やっぱり忘れたんですか?私の体内のナノマシン」

 

「……あ」

 

今更思い出したように、千冬は間抜けな声を漏らした

 

「これでよし――――そろそろ発作が始まります。押さえててください」

 

ペーパーナイフを抜き取り、そこら辺に置いといた後、円夏の胴体をきっちりホールドする。

 

「え?いや、え?」

 

「いいから!早くしてくださいよ」

 

「わ、わかった」

 

慌てて円夏の足を押さえつける。

刹那、急速に円夏の体温が上昇した。冷やされて冷たかった体が、一気に熱に晒されたように赤くなっている。

 

「がっ……あああああああああああ!!!」

 

意識があるのか、それとも無意識なのか、金切り声のような悲鳴をあげ、もがいている。

どういうことなのか、という顔をしている千冬だが、今は暴れている円夏の動きを抑えるのに集中した。だが

 

「あああああっ!!!うああ!あっぁぁああぁぁあああああ!!」

 

異常なほどに苦しんでいるを見て、ついに耐え切れなくなった

 

「ど、どういうことだ!説明しろ凪紗!」

 

「発作って言ったでしょう!?―――っ!私のナノマシンは私専用に開発されているんです。だから、私以外の人間が導入してしまったら『拒否反応』を起こすんですよ。今がまさにそれ、です!」

 

「ならどうしてこんなことをした!」

 

「わかるでしょう?アレは尋常じゃないほど再生力を高める代物なんです。今退場されたら、私が困るんですよ。後悔しか出来ない!だから、今はやれることをする。違いますか!」

 

「っ……!わかった。だがこれはいつまで続くんだ!?」

 

「傷が治るまで、ですかね……大丈夫、全治二ヶ月程度ならあと十秒ぐらいで終わるはず!」

 

「っあああぁぁあああっ!!あああああぁぁあああああああああ!!!!」

 

「耐えてくれ、頼む。耐えてくれよ!」

 

ガタンガタンとベットが揺れる。

計測器が脈拍数189と知らせてくる。他の計測器もアラートが鳴り響き、耳をガンガンと襲ってくる。これほど十秒が長く感じたことは無い。

 

そしてついに―――

 

「あ、ああ………ぁ…………」

 

もがくのをやめ、その場で四肢を放り出すようにして動くのをやめる。

同時に気を失ったようで目蓋を閉じた。

 

「ふぅっ……!あっぶねぇ……!」

 

「ああ、もうこんなことは二度とごめんだ。加減が難しい」

 

汗だらけになった二人は、頭を押さえて愚痴を呟く。

心身共に疲れたのか、凪紗はベットに腰を掛け、千冬も椅子に座り直すのであった。

 

「ええと、たぶんもう治っていると思いますけど、起きるまで時間掛かりますよ?」

 

「承知の上だ。直してくれた事には感謝するが――――よくもあんなものを私の妹にやってくれたな?」

 

欠陥マークが額に浮かんでいて、ちょっとばかし威圧負けしそうだったが、すぐに気持ちを切り替える千冬さんは一応、一応感謝しているみたいだった

 

「いや、だって二ヶ月もベットのままじゃあ本人もつまらないだろうし……なにより私が納得いかないんですよ。私がこいつらを―――……え?」

 

急に頭に霧がかかった様に朦朧とする。なにか重要な事を思い出そうとしたのだが……

 

「どうした。具合悪いのか?」

 

「い、いや、なんでもないです。そ、それより私の腕、どこにあるか知ってますか?」

 

「腕か?そこにあるだろう」

 

千冬が指差す方向、自分の右隣を見ると、布に包まれた何かが置いてあった

 

「いや、えー……お前を運ぶときに拾ってな。処理はお前に任せようと持ってきてたんだ。腐敗していなければ良いが」

 

布を広げると、血だらけの生々しい腕がそこにあった。

一見すると、自分のものとは思えなかったがとにかく自分の腕だ。それだけは間違いない

 

「で、どうするんだ。それ」

 

「……こうしますよ」

 

患者服の右の部分をはたいて右腕の断面を隠している包帯を解き、傷口があらわになった右腕があった場所に血だらけの右腕をくっつける。

瞬時にジュゥゥゥゥと肉が焼ける音がして、煙も少しだが出ている。正直痛覚が鈍っている事には感謝する。じゃなければ激痛が腕に走っていただろう

 

「……まさか、治しているのか」

 

「正解。といっても、しばらくは感覚が戻りませんけど………」

 

完全につながったところで、音も止まった。

指を動かそうと力を込めてみるが、やはり動かない。仕方ないが

 

患者服を着直してベットから降りる。

そして、静かに立ち去ろうとしたが

 

「おい待て。どこ行くんだ」

 

「……いや、ここは何も言わないで送るところでしょう?」

 

「その基準がわからん。いいから何しに行くんだ」

 

「いや、ただの散歩ですが」

 

「大人しくしてろ。お前はけが人なんだぞ。少しは言う事を聞け」

 

「いや、散歩ぐらいいいでしょうが。なんでそう呼び止めるんですか」

 

「私が後々面倒を抱えるからだ!」

 

「なんでですか」

 

「あとで医者に「探してきてくれ」なんていわれたら私が苦労するだけだろう。いいから寝ておけ」

 

「すぐに帰るからいいですよ。どうせ病院内を歩き回るだけだし」

 

「いいから寝ろと言っている。教師の言う事が聞けんのか」

 

「聞くか。私は誰かに縛られるのは嫌なんですよ」

 

「いいから寝ろと言った。聞けんのなら、実力で行かせて貰うぞ?」

 

「ああいいとも。丁度ウォーミングアップがほしいところでしたから。片腕あれば十分ですよ」

 

「舐められたものだな……!いいだろう。望みどおり力でねじ伏せるぞ小娘」

 

「誰が小娘だ。喧嘩売ってのかこらぁ」

 

「売っているとも。大丈夫だ、痛みは無い」

 

「殺す気か!?」

 

相変わらずの犬猿の仲でよろしいこと

 

だが、その間に入るものがあった

急にドアの向こう側から声が聞こえてきたのだ

 

『ちょっと!一夏はあたしと腕組んでたのよ!いきなり横入りはやめてよね!』

 

『いえ、凰さんは一夏さんと同室でしたから少しはわたくしに譲るべきですわ。凰さんは優しさというものを知って欲しいですわよ』

 

『そ、それを言うなら私もだぞ!私だって一夏のそばに……ごにょごにょ』

 

『おいお前ら、けが人のお見舞いなんだから静かにしろよ。たぶん千冬姉も着ているだろうしさ』

 

――――なんだろう、猛烈に嫌な予感がする。

 

そしてドアが開かれると―――一夏の目と凪紗の目が合った。

その後はつかの間の静寂

 

 

「あ」

 

「え……ええええええええっ!」

 

 

そんな叫びが、病院に響いたのであった

 

 

 

 

 

                  ◆     ◆     ◆

 

 

 

飛行船内部。

 

篠ノ之束は、無人機越しで撮っていたビデオを、何度も繰り返し見ていた。

その目は、おもちゃをあたえられた子喪度のようにも見えるが、なにか期待をしているような子供の目でもあった

 

「ふっふふ~ん♪なぎっちったらー、あんな隠しだまを持っていたなんて。底が見えないね~まるでIS。一日一日進化しているみたいだよー。ま、そんなことはないだろうけど」

 

足をばたつかせて映像を見ている。その映像は、無人機が最後に撮った映像―――八俣遠呂智・封解草薙ノ剣(やまたのおろち・ふうかいくさなぎのつるぎ)》が放たれたときの映像であった。

急に見えない巨大な蛇が八匹、それぞれの得物を食いつぶしている映像。ただ一言、素晴らしいとしか束は思っていなかった

 

「でもぉ~あんな切り札(ジョーカー・カード)持っているなんで、反則だよ反則!おかげで束さんの作品は微塵も残らず消えちゃったよ!ぷんぷん!」

 

頬を膨らませ、座っている椅子をがたがたさせる束。そのすがたは無邪気な子供だったが、その中に眠る腹黒さは知り合い以外に知る由は無い

 

「んー。あれを何十枚も隠し持っているとなると……束さんとしても困っちゃうなー。よし!コア作りが終わったら招待しよう。うんそうしよう!」

 

独り言を呟きながら、暗い闇へと消えてゆくのであった




うん、束さん黒いね。原作でも黒いが。
さて、ようやく、ようやく(大事な事なので二回言いました)原作一巻分終わったのですが、まさか三十話分になるとは、想像できなかった。幾ら過去編があるからってこんなに長くなるものだろうか?

ま、いっか。
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