インフィニット・ストラトス 転生者は双子の姉   作:夜光・陽炎

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第四十四話・最後の試合

『さぁ!ついに来ました、学年別トーナメント一年の部決勝戦!あー、司会はこの私、黛薫子が勤めさせていただきます。―――え?部長?やだなー、勿論、OHANASIして譲って頂いたんですよははは!!……コホン、と・に・か・く、決勝戦まで後五分、それぞれのペアは一体どんな戦闘を繰り広げてくれるのか!』

 

アリーナのスピーカーから聞こえるハイテンションの声が大気中に響く。

そしてアリーナ中央のステージには、四個のISが空中に漂っている。そう、勝ち上がってきた一夏、シャルルペアと私&ラウラペアだ。

 

「黛さん……テンション上がってるな」

 

「仕方ないんじゃない?決勝戦だし、つかOHANASIって……」

 

「あはは。まあ僕は全力を出し切って戦うつもりだよ。勿論勝つつもりだけどね」

 

「威勢はよし。だが、貴様等が私たちに勝てるかな?」

 

「んだとぉ?」

 

一夏とラウラの間に火花が散っている。

……これもしかしてフラグ折れた?折れちゃった?

 

まあそんな事はどうでもいいとして、この間少しだけ一夏に雪片の使い方をアドバイスしてやったら、前より格段に動きと戦い方がよくなった。

 

真正面から突っ込むのは変わらないが、それでも正面から行くと見せかけて予想外のフェイントを仕掛けるようにもなった。

そしてスピード戦法は……ここはあまりよく出来たものとは言えず、まるで白蓮のスピードに振り回されているようだった。まあここはどうにもならないので一夏自身が何とかするしかないだろう。

 

 

ついでにだが、今『黒桜』の武装を少し変えている。変えるといっても減らしただけだが。

 

まず肩についていた荷電粒子砲だが、無人機戦にて問題が発生したため今はオミットしている。つかそもそもアレはトーナメント前から外していたけど説明を忘れてしまった。つっても試験用だったから今後使う場面も無いだろう。

そして腰に付いていたビームハンドガン。あれは『ホワイト・グリント』の新兵装開発のときベースにしてしまったから無くなった。そもそも一度も使っていない。雪影とか紅桜を使ったほうがいいし。

 

まあ、というわけで後付け武装は背中に付いている直方体のミサイルポットとマグナムカノン、ツインビームライフル(試作試験用)しかない。初期は刀二つしか無かったってことだった。あとライフルビットとかも後付けだよ。

 

 

……と、説明はこれくらいにして。ラウラが急に地方をぽんぽんと叩いてきたので一度思考を中断する。

 

「?どうしたの、ラウラ?」

 

「いえ、少し作戦を練ようと思いまして」

 

作戦、ねぇ……

ラウラの思考を読み取り、少し頭をかぐ。

 

「ラウラ、別に作戦は練らなくていい」

 

「え?でも」

 

「私からは一つ―――デュノアは私が相手してやるから、お前は存分に暴れとけ」

 

「……教官」

 

呆れ半分に宣言する。ラウラはきっと一夏と正面から戦いたいはずだ。だからこそ作戦は練らない。一対一で作戦は逆に足を引っ張る。

 

『四人とも!定位置について!あと三十秒だよー!』

 

「与太話はそこまでだ。武器を構えろ」

 

「―――jawohl」

 

「いわずもかな」

 

「言わなくても、もう構えているよ」

 

私はビームライフルとカノンを展開し構える。ラウラは腕に備わった高周波ブレードを、一夏は雪片と雪羅、シャルルはソードオブショットガンとアサルトカノン。皆それぞれの武器を構えた。

 

『第四回戦……もとい、決勝戦!スタァァァァァト!!!』

 

「ラァァァァアアアアア!!!」

 

スタートのブザーと共に、ラウラが肩のレールガンを掛け声と共に乱射する。

その弾丸雨はみごとに一夏とシャルルとを捕らえ、二人を二方向へ分かれさせた。

 

「いきなり!?」

 

「開幕ブッパとは、中々強引じゃねぇか!」

 

「ふふははははは!!貴様の相手は私だ!」

 

「知ってるよ!なら遠慮なく――――」

 

「貴様なら遠慮なく――――」

 

「「ぶっ潰せる!!」」

 

二人とも正面から瞬時加速でぶつかり、激しく火花を散らす。

 

「一夏!」

 

「おっと、あなたの相手は私だよ」

 

唐突に道をふさがれたシャルルは一歩後退する。自分の正面に居た私がただならぬ覇気を放っていたのだろうか、シャルルが苦虫を噛んだような顔をする。

 

「ごめんね~。あの子達の邪魔をさせるわけには行かないんだ」

 

「くっ……これは、きついかも」

 

「いざ尋常に―――と言いたいところだけど、今は決闘が目的じゃないからね。―――今は、圧倒させてもらう!」

 

シャルルはすぐさまショットガンを構える。そして引き金を引く―――直前に、私のビームライフルをぶつける事で軌道をずらし、弾丸たちは明後日の方向へ行ってしまった。

 

「ショットガン、いい判断だ。だが」

 

次の瞬間、シャルルの顔にビームライフルが向けられる。

だがシャルルも簡単に攻撃を受けるつもりは無いようで、もう片方に持っている武装、アサルトカノンを至近距離で乱射。

 

が、同じく私も簡単に当たるつもりはないので体を捻り回転。発射された弾の射程外の逃れて、もう一度ビームライフルをシャルルへと向ける。

 

「なっ!?」

 

「まずは一発」

 

ついにビームライフルの引き金が引かれ、銃身の先が発光した。そしてその銃口から発射された銃弾は、シャルルの胸へと飛来する。

 

シャルルはそれを背中を仰け反ることで回避し、再度ショットガンでこちらを発砲してきた。

私はそれを手を強く振り『空打』を使って全て静止させる。

 

「へぇ……中々やるじゃん」

 

「伊達に一夏の練習相手してないよ。僕は」

 

「んじゃま、再開といきましょうか!」

 

カノンをシャルルへ向けて一発だけ発砲。ISの身の丈ほどある銃から放たれた弾丸は巨大で、それをぎりぎりでかわしたシャルルはソニックブームにより肩を引っ張られた。

 

「いっ……!」

 

それに気を取られ行動が遅れる。それは致命的で、私相手では最もしてはいけないミスだった。

 

「らぁっ!」

 

「ぐっあ……!」

 

一気に距離を詰めてライフルの銃底を使い打撃、遠距離武器での攻撃とは思えない適当さで、シャルルの不意をついた。

 

「もう一撃!」

 

「いっ!」

 

今度はカノンを腰で支えて大きく振り、脇腹へと命中させた。

巨大な鈍器で殴られた事よりシャルルの体がISごと後方へ吹き飛ぶ。

 

だがしかし、吹き飛んでいる途中で一回転し瞬時に体勢を立て直した。そして素早くこちらに照準をつけ、トリガーを引いてきた。

 

私もその行動をしている間にビームライフルを捨てて腰に滞在させていたホルスタービットから高硬度ブレードを引き抜き、飛来してきた弾丸を自分に当たりそうなものだけ片っ端から叩き落す。

 

「か、勝てる気がしないんだけど……」

 

「ぬふふ。ま、がんばってる方だと思うよ?ほらほら、どんどん攻撃して――――全部潰すから」

 

「うぐっ……!?」

 

ちょっとした挑発に乗ったのか、シャルルが両手に持った銃を全弾発射してくる。

というか、挑発に乗ったというより私に恐怖して武器を乱射しているようで照準がバラけている。

 

……あれ?私別に殺気とか放ってないんだけど……

 

とりあえず自分に来る束は全部叩き落し、瞬時に加速してシャルルに近づく。

接近と共にシャルルは後退する。そしてそこから銃での遠距離射撃。

 

弾丸を防ぎながら少し後退してみると、後退したときと同様に急に親切ブレードへ持ち替え、突撃してきた。

 

「ん?これは……」

 

試しにもう一回近づいてみると、シャルルが近接ブレードを振り上げて攻撃してきた。

そしてそれを受け流して反撃を試みたが、股急に距離を離し銃に持ち替えての牽制。

 

「……なるほど、一定のリズムを保ちながらの戦闘か。悪くは無い。だが―――」

 

先ほどと同じくブレードを展開し、突撃する――――と同時に、私は瞬時加速を使い、急接近した。

 

「―――使う相手を選ぶべきだよ」

 

瞬時加速の勢いに乗り、流れるようにブレードをシャルルの体に叩き込む。

ブレードでガードしようとしたシャルルだが、その思い虚しく私はシャルルをブレードごと斬り飛ばした(・・・・・・)。正確にはブレードを二等分に斬り裂き、その奥に居たシャルルを攻撃したのだ。

 

「リズムに頼った戦術はリズムを崩せば簡単に崩れるもんさ。ま、人間ってのはリズムに乗って生きる生き物みたいなもんだから、やりにくいだろうけどね」

 

肩にトントンとブレートを担ぎ、右手のカノンをシャルルに向ける

 

「さーて、適当にあしらっておきますか」

 

 

 

                  ◆

 

 

「ラァッ!」

 

「無駄だ!」

 

一夏が振り下ろした雪片の攻撃が止まる。いや、手が止まる。まるで何かに固定されたように。

ラウラのAICによって大苦戦を強いられるはずだっだ(・・・)一夏は、AICの意外な突破口を見つけ、いまやラウラと互角に戦っていた。

 

右手はラウラによって止められたが、左手は違った。左手の雪羅をブレードモードにし、それをラウラ目掛けて切り上げた。

 

「くっ!」

 

一夏の右手に集中している意識を左手に切り替える、わけにも行かず、仕方なく後方にステップ。その瞬間右手への集中も消え、自由に動けるようになっていた。

 

「やっぱり、複数停止は無理みたいだな」

 

「……それがどうした。複数止められないなら、まとめてやればいい!」

 

「ちっ……!雪無、解除!」

 

次の瞬間、一夏の体はコンクリートに埋もれたように動かなくなる。しかし、間一髪で『雪無』の開放に成功し、それをラウラへと突っ込ませていた。

 

「ふん、姑息なまねを!」

 

ワイヤーブレードを全て撃ち出し、雪無の迎撃にかかる。

しかし、雪無は四つのうち一つが前に出て、その身の大剣を扇風機のように高速回転させ、ワイヤーブレードを絡ませながら防ぎきった。そして―――自爆。約六個のワイヤーブレードを巻き込みながら破片を飛び散らせる。

 

「何ッ!?―――ぐあっ!」

 

大量の破片がラウラの体を襲う。それによりラウラの集中も乱れ、一夏の拘束が解除される。

 

「よし!雪無、全力攻撃だ!」

 

合図と共に雪無が自身を回転鋸のように回転させ、ラウラに襲い掛かる。

だが、ラウラにそんな手は通用しなかった。

 

「この、屑がアアァッ!!」

 

一つ目には肩のレールガンを無尽蔵に火を噴かせ、二つ目には残りのワイヤーブレードを全て叩きこまれ、三つ目は高周波ブレードによって機関部を切り裂かれてラウラ自身の手によって葬られた。

 

「次は貴様だ!」

 

「そうか、ならよっ!」

 

一夏が後先考えずに瞬時加速で突っ込んでくるのを見て、ラウラは終わった、と確信した。肩のガトリングレールガンの動きは健在であり、最後の全力掃射をした―――筈だった。

 

急に一夏の体が九十度旋回し、真横に急加速した。

瞬氏加速で再加速を?違う、そこまでの速度は出ていない。なら一体何が、その疑問は一夏の手に持っていた雪片で答えが出ていた。

 

雪片から出ていたのは刀身ではなかった。本来刀身が出てくるはずの噴射口からは風のようなものが途轍もない勢いで噴出しており、まるで強力なスラスターのように―――

 

「―――!?まさか、エネルギーを開放させた勢いで」

 

「ご名答!正解者には褒美を上げなくっちゃあな!」

 

刹那、ラウラの視界から一夏が消える。

しかし気配は前にも後にも無く、まるで本当に気配が消し去ったようだった。

だがラウラはある違和感を覚えた。そしてその違和感から推理を組み、たどり着いた結論は

 

「上か!」

 

「またまた正解!―――喰らえ!」

 

「ぐあっ!!」

 

上から降ってきた一夏の渾身の一撃は、ラウラの左肩から右の脇腹まで切り裂いた。当然、シールドがごっそり減る。

終わりかと思いきや、更なる追撃が待っていた

 

「開放!」

 

一夏の口から発せられたコマンドが白蓮に認識された。刹那、雪片から突風―――カマイタチが噴射され、ラウラを襲った。

 

「ぐがあぁぁぁぁアアアあッ!!」

 

「これでえええええ!!」

 

「――――させるかあぁぁアアアアアアアアアアアア!!!」

 

―――EAES・起動

 

ラウラの視界に唐突にその言葉が書かれたウィンドウが表示され、同時に期待が発光し始める。

シュヴァルツェア・レーゲンはその光に包まれながら細部を、体を変形させ、『進化』を始める。

 

「らアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!」

 

ラウラは光が収まるのを待たず、そのまま一夏へと瞬時加速で突進。

 

「み、見えな―――」

 

発光しているのが目くらましになったようで、一夏は自分の手で目を保護している。

それが仇となり、接近しているラウラに気付くことができなかった

 

そして、視界が晴れた頃にはもう遅かった

 

「吹き飛べエエエエエエッ!!!!!」

 

「しま―――ぶぁっがアあッ!!」

 

ラウラの体重を乗せたストレートはみごとに一夏の頬へ突き刺さり、彼を何十メートルも吹き飛ばすには十分すぎる威力だった。

 

 

一夏は何十回も転がりながら吹き飛び、ついにはアリーナ観客席の壁にまで叩きつけられた。

 

「くがぁッ!!ぁ……!」

 

肺から空気がたたき出され、肺が空気を戻そうとして呼吸が不安定になる。

 

(まず、い………!)

 

「もらったああああああ!!!」

 

輝きが止まり、もはや原型を止めていないシュヴァルツェア・レーゲンが今までに見たことが無い超高速の特攻突きを繰り出しに一直線に突っ込んでくる。

 

「オ、オお、おおああああああああああああああっ!!」

 

足で後ろの壁を蹴り、咄嗟に地面に転がる。

すると、直後にシュヴァルツェア・レーゲンが先ほどまでに一夏がいた壁に突っ込んでいき、周囲に煙を撒き散らした。

 

「けほ、けほっ……!あ、ぶねぇ……」

 

ほっと一安心し、シャルルの様子を見に行こうとした。

 

 

―――それが、一夏の運の尽きだった。

 

 

後から不意に地を蹴る音がし、振り返ると――――黒い弾丸が、自分目掛けて突っ込んできたのを気付いた。

その高速の勢いのまま、頭を鷲づかみにされる。

 

「ふざ……嘘、だろ……」

 

なぜあの勢いで突っ込んで、傷一つついていないんだ。それが、一夏の疑問だった。

ラウラはそれに答えることは無く、一夏の頭を勢いに乗せたままアリーナの壁に叩きつける。

 

そしてそのまま、一夏の頭を壁に押し付けたまま大根を摩り下ろすようにこすりつけながら超加速を始めた。その苦痛はシールドがあっても生半可なものではなく、途轍もない痛みが一夏の頭を襲った。

 

「ぐ、アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアあああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

 

バギバギとコンクリートが砕かれていく音。一夏にはそれが自分の頭を握りつぶしているような音にしか聞こえなかった。

それでも、苦痛に耐えながらかろうじで頭を動かし、白蓮に命令を送る。

 

「カート、リッチ、一つ分、完全……開放!!!」

 

痛覚を押し切り、腕に信号を送る。

残った力を振り絞り、雪片のトリガーを引くと金色の薬莢が排出され、その刀身に光が灯る。

これで終わりではない。刀身は瞬間だけぶれると、形を変えて強い衝撃波へと成り代わった。そしてそれはラウラの体を吹き飛ばし、反動で一夏の体を再度壁にたたきつけた。

 

「なんだと!?」

 

「お返しだクソが!!」

 

反動で壁に叩きつけられながらも、すぐに体を無理矢理弾き、吹き飛んだラウラに食いつくように追いかける。

 

「この……死に損ないがあああああああああああああああ!!!!」

 

「ふざけろこのチート野郎がああああああ!!!」

 

ラウラは片方の足をバンカーのように地面に撃ちこみ、地面をせり上げながら減速。同時に一夏の方へ瞬時加速をし、追いかけてくる一夏に対抗する。

 

二人の武器が交わり―――先に一夏の雪片がラウラの体を突いた。

 

「ぐ、がっ!」

 

「リーチじゃあ、勝っていたようだな!」

 

そして一夏が更なる追撃を繰り出そうとしたが、それは出来なかった。

 

「私を舐めすぎだ、屑が!」

 

唐突に巨大な『何か』を突きつけられ、一夏の動きは止まった。

いや、止まらされた。

 

「忘れてた、AIC………!」

 

変な変身に気をとられ、すっかりAICの存在を忘れていた。

腹に突きつけられた『それ』は、ガトリングレールガンという生やさしいものではなかった。

 

「弾道弾迎撃用超大型レールガン……マッハ10の弾丸を人間が受けたらどうなるのか、楽しみだ」

 

「……マジですか」

 

轟音。瞬間、一夏の体は今までに受けたことが無い衝撃を受けていた。肺が凹み呼吸も出来ずただただ吹き飛ばされる。

アドレナリンが大量に分泌されたのか、世界が急にスローモーションになる。

 

(この化物を、倒せる力はねぇのかよッ!!)

 

脳裏で、かすかにそんな事を考えていた。

 

(なんとか、アイツと対等に戦える力は!)

 

『あげようか?その力』

 

(……え?)

 

『欲しい?力』

 

予期してもいない、少女のような声が聞こえてきた。

しかしそれは耳からではない、その声は脳に直接響いていた。

 

(ああ、欲しい………こいつを問答無用でぶっ飛ばせる力が)

 

『うん、わかった。貸すよ』

 

誰が、どうやって、何のために。

 

『でも、覚えててね。これ、特別だから、反動、凄いよ?』

 

反動が凄い。それはわかった。だが、今の一夏にはどうでもよかった。他人を平気で見下すような態度を取る奴をぶっ潰すには安い。

 

(どうでもいい……意識でも腕でも何でももってって良いから、さっさとやってくれ)

 

『うん、それじゃあ、また』

 

それからいつまで経ってももう声は聞こえなくなっていた。

世界も元の速さに戻り、一夏は超高速で吹き飛ばされながら目の前に表示されたウィンドウを凝視する。

 

―――完全開放形体(フルドライブモード)に移行しますか?

 

答えは言わなくてもYESとなっていた。もう、脳裏で答えていたのだから。

承諾された瞬間、体のあちこちから駆動音が鳴り、全身のフレームが隙間を作っていた。そしてそこから―――大量の光があふれ出た。

 

「ぬ、おおおおおおっ!!!」

 

吹き飛ばされていた体も謎の推進力により減速して静止し、両手には鳩尾を直撃していた巨大な弾丸の回転を止めた証に煙が上がっていた。そして目の前には呆然としているラウラ。どうやら自分は無意識のうちに弾丸を掴んでいたらしい。だが、それだけではない。全身から眩い光が漂っており、それが雪片の放っている光と『同じもの』だと瞬時にわかった。

 

「これは……すげぇ!」

 

思わず本音が漏れた。本心から、これは凄いと思った。今までずっと一緒に戦ってきたはずなのに、まだ自分には知らないものがあったと知った。だから驚愕した。まだこんな切り札を残していたとは。

 

「……それが何かは知らんが、それでも立場は変わらん!いい加減地獄に落ちたらどうだ」

 

「断る。せっかく『こいつ』がチャンスをくれたんだ。やらなきゃ恥だぜ」

 

「そうか……なら死ね」

 

先ほど至近距離からぶっ放してくれたレールガンを構えて撃ってきた。

しかし同じ手は二度と通用しない。雪片を真正面に構え、一瞬でトップスピードへと加速した。

 

「うおっ!?」

 

想像以上の加速で、思わず身震いしたが今はどうでもいい。トップスピードのままレールガンの弾へと突っ込み、切り裂いた。

 

「くっそがぁっ!!!」

 

それに続きラウラがレールガンを何度も何度も発射してくる。が、次々と弾丸を切り裂いて距離を縮める。

その光景に、ラウラは直感した。近接戦に持ち込むのは自殺行為だと。

 

何故かはわからない。でもそう感じた。圧倒的な技量の差を。近接戦経験の差を

 

「なぜだ……なぜ、お前は………」

 

「ぬおおおおおお!!!」

 

一夏は襲ってくる弾丸が全て切り裂き、ついには羅裏の目の前まで近づいた。

 

「なぜお前はその様になるまで戦える!!」

 

「らぁっ!!」

 

雪片で斬りつけてきた手をAICで止めるが、やはりもう片方の雪羅で反撃を受けそうになる。

瞬時に後退し、再度レールガンを連射する。が、やはり全て切り裂かれ、先ほどの二の舞になる

 

互いの得物をぶつけ合い、花火を散らせながら鍔迫り合いになり、二人のISは他のISとは比べ物にならないほどの力を武器に加え、互いの武装に皹が入る。

 

「すっげぇ力だ……!押し切られるッ」

 

「なぜ貴様は、こんなに強い!」

 

「は、はぁ!?それ今言う事か?」

 

「いいから答えろ!軍人でもない貴様が、一体どうして私と同等に戦える力を持っているのだ!」

 

「って言われてもな、ISが力を貸してくれたんだよ」

 

「それだけではない。どんな苦痛にも屈さない精神力、拷問でも受けていない限り一般人に芽生えるはずが無い!」

 

「苦痛なら、昔一杯味わったよ!」

 

鍔迫り合いに押し勝ち、地面を抉る形で押し切る。そしてついにラウラのブレードが真っ二つに折れ、雪片の斬撃をそのまま胴体に受けてしまった。

 

「まずい……!」

 

「これで最後だああああっ!」

 

「やらせるかああぁぁぁあああああ!!!」

 

肩の大型レールガンをパージし、それを両手で抱えて遠心力をかけながら大振りする。

 

「な、なんつー事考えんだ!」

 

「ただでは転ばないのでな」

 

なんとか雪片で防ぐ。しかし衝撃を殺しきれず、地面をガリガリ削りながら少しずつ後退させられる。

 

「先ほどの続きだ。貴様はどうして、私などのためにこんなに必死になる!」

 

「テメエがむかつくからだよ!」

 

「ふざけるな!」

 

「ふざけてねえよ!」

 

その答えで心に隙が出来たことを把握し、一夏はラウラの鳩尾に膝蹴りを一撃食らわせる。「ぐふっ」という小さなうめき声を発し、一夏の更なる追撃の回し蹴りを喰らい吹き飛ぶ。

 

「うぐおおおおおっ!!!」

 

それでも転ばず、足を地面に叩きつけて空中へ跳び、一回転して姿勢を立て直すと地面に両足を食い込ませ、体重をかけて急ブレーキ。手に持ったレールガンを―――撃たず、投げてきた。

 

「嘘ォ!?」

 

予想外の攻撃に油断し、一瞬だけ隙が出来た。

ラウラは瞬時に投げたレールガンを追いかけてキャッチし、そのまま一夏の懐へ飛び込んでレールガンによる『突き』を食らわせる。

 

だが只では喰らわないらしく、すぐさま一夏は腕をクロスさせ腹を守る。

 

それがジャストタイミングで間に合って攻撃は威力軽減され、少し位置が下がっただけに押さえられる。

二人は気力尽きかけ、そこで膠着状態に入った

 

「あぶねぇ……」

 

「先ほどの質問、真面目に答えてもらおうか」

 

「っ………だから、単にむかつくだけたっつってんだろ」

 

「貴様、いいかげんに―――」

 

「言っとくけどな、大真面目だぜ」

 

「―――何?」

 

「むかつくって理由もふざけているように見えるが、たぶんお前が思っている理由じゃねぇ」

 

「どういうことだ」

 

「……お前が、昔の俺に似てんだよ」

 

「……は?」

 

「二度は言わねぇ。似てるっつても思っているのは俺だけかも知れねぇ」

 

「冗談かそれは?私の何処がお前に似ているんだ」

 

「力だ」

 

「?」

 

「お前、どうしてそんなに力を求める」

 

「それは、一歩でも教官に近づくために―――」

 

「やっぱりな」

 

「――なんだと?」

 

「俺も昔はそうだった。一瞬でも早く、一歩でもいいからアイツに近づくために力をつけてきた」

 

「……何を、言って」

 

「だがな、やがて一個の真理に気付いた。――――そんなことして何になる?」

 

「………」

 

「もっと早く気付けたはずだった。俺は……あいつの様にはなれない」

 

「それが、どうしたというんだ」

 

「まだ気付かないのか?―――お前は、凪紗にはなれねぇんだよ」

 

「……」

 

「アイツはアイツ、俺は俺、お前はお前だ。誰かが他人になりたくても、決して他人になる事は出来ない。同じ道を進むことは出来ないんだよ」

 

「……ぁ……」

 

「お前ももう気付いてんだろ?どれだけがんばっても、俺たちはアイツになれねえ。だから、お前ももう少し改心して自分を―――」

 

「……黙れ」

 

「―――え?」

 

「黙れ……黙れ、黙れ黙れ、黙れ黙れ黙れ黙れ黙れえッ!!!!」

 

「おい、どうし―――」

 

「貴様に!貴様に何がわかる!凪紗は戦いしか生きがいの無い私に、唯一の希望を与えてくれた、夢を、人というものを与えてくれた!私もその様になりたかった。それが夢だった!憧れの人になりたかった!」

 

「気持ちはわかる!でもそれは幻想だ!叶わない夢だってのがわかんねぇのかよ!」

 

「黙れえええええええええッ!!!」

 

「くそっ!」

 

自分の生きがいを否定されたラウラは錯乱し、怒り、一夏を本気で『殺し』にかかった。

 

「黙れ黙れ、黙れ!黙れえええええええええええええええ!!!!!!」

 

「な、んだこの力!?」

 

「殺す……!貴様だけは、殺す!よくも、私の夢をッ!!!」

 

「っ……このわからずやがああああああああああああああ!!!!」

 

ラウラのレールガンを光剣で両断し、続いてくる折れたブレードでの攻撃を受け流し、ブレードを根元から叩き折る。

雪片の柄にある石突きで抉るようにラウラの腹に打撃を加え、くの字に曲がった体の中央に中段蹴りを加えて膝をつかせる。

 

「く、ぐおおおっ……!!」

 

「終わりだ……!」

 

そう告げられた言葉は、ラウラには死を宣告するような死神の言葉に聞こえた。

 

一夏は雪片のトリガーをカートリッチが尽きるまで引き、全てのエネルギーを刀身に集中させた。

刹那、約二十メートルほどの超長刀が出来上がる。

 

「まだ、ここで、負けるわけには……ッ!」

 

「これで、少しは改心することを祈るぜ」

 

断罪の言葉と共に、光剣は振り下ろされた。

 

 

――――その光に飲み込まれたラウラは当然シールドエナジーを0にしながら、ISの装甲を撒き散らしていった。

 

 

その刹那、異変が起こった。

 

 

 

 

(こんな、ところで……負けるのか、私は)

 

確かにラウラの優勢だったはずだ。それが突如の覚醒と逆転劇によって立場が覆された。それは間違えようもない。しかし

 

(負けたくない、負けて堪るものか……!負けてしまったら、私に存在価値なんて……)

 

脳裏に浮かんだのは、自分の『親』というものと同等の存在が、自分を哀れなものを見るような目で立ち去って、遠ざかるビジョンだった。

 

(いやだ……いやだ!私を置いていかないでくれ……!私を、捨てないでッ……)

 

私は優秀だった。自分は遺伝子操作で生まれた、親も誰もいなかった。誰も私を人間としては見てくれなかった。最初は皆自分をモルモットとして見ていた。作られた実力で、自分は威張っていた。それでも自分が優秀なのは変わらなかった。

 

―――世界最強の兵器、ISが現れるまでは。

 

その適合性向上のために行われた処置『ヴォーダン・オージェ』によって異変が生まれたのだった。

『ヴォーダン・オージェ』。擬似ハイパーセンサーとも呼ぶべきそれは、危険性など全く無かった。失敗などありえなかった。そう―――ありえるはずが無かった。

 

神の悪戯だったろうか、この処置により自分は左目が金色へと変質し、常に稼動状のままカットできない制御不能へと陥った。

それだけならよかった。目を閉じていればなんとかなった。だが、現実はそれを許さなかった。

 

軍事上層部から、私は『イレギュラー』と烙印を押され、それ故にIS訓練も遅れをとる羽目になった。

そしていつしかトップの座から転落した自分を待っていたのは、部隊員からの嘲笑と侮蔑、そしてついに皆から『出来損ない』の烙印を押された。

 

 

絶望の中に閉じこもっていた私は、二つの希望の筋を見つけた。それが……織斑千冬と篠ノ之凪紗との出会いであった。

最初は恨んだ。最強のIS乗りと、自分がこんな羽目になった元凶であったからだ。

復讐してやろうと思った。しかし、その圧倒的な力に、諦めた。死にたいとも思った。だが、二人の言葉で救われた。闇の中から引きずり出してくれた。

 

「ここ最近の成績は振るわないようだが、なに心配するな。一ヶ月で部隊内最強の座へ戻れるだろう。信じてみろ。なにせ、私が教えるのだからな」

 

「恨むんなら恨んで構わない。だがそれは只の八つ当たりだ。そんなことしている暇があったら、一歩でも先に踏み出したらどうだ?たった一度転んだだけじゃないか。何度でも立ち上がって、何度でも転べばいい。本当に立てなくなったら、その時私が手を貸してやるからさ」

 

その言葉に、絶対的な信頼を覚えた。その言葉に偽りは無かった。彼女等の言うとおりにしたら、言葉どおり一ヶ月で再び最強の座に舞い戻った。

しかし、また部隊員に可笑しな目で見られた。なにか細工をしているのではないかと囁かれた。昔の私なら、とっくに殴り合いに発展していただろう。

だが気にならなかった。どう思われても構わなかった。

 

そんな事もどうでもいいと思えるほど、二人に、強烈に、深く、憧れた。

 

―――ああ、こうなりたい。この人のようになりたい

 

彼女等が滞在した一年間、話をした。休みの時間の合間に話しに言った。話しなどしなくても良かった。無視されても良かった。ただ、そばにいるだけで、『勇気』というものがもらえた。

 

いつしかだろうか。私はこんなことを聞いてみた。

 

「どうしてそこまで強いのですか?どうすれば強くなれます?」

 

「………」

 

そのとき、普段見せないような顔、驚いたような顔を見せた。

そのときだった。いつものような鬼のような厳しさではなく、わずかに優しい笑みを浮かべたのは

 

「私には、弟と妹が居る」

 

「弟と妹……ですか」

 

「またその話ですか?幾ら何ヶ月も離れているからって毎晩毎晩私にその話を聞かせては―――」

 

「違うわ馬鹿が。コホン……あいつらを見ていると、わかるときがある。強さとはなんなのか。その先に何があるのか」

 

「……よく、わかりません」

 

「それでいい。話してもわかるものではないからな。そうだな、いつか日本に来る事があったら、一度顔を合わせてみろ」

 

「……凪紗教官は?」

 

「私?………私は……」

 

「……」

 

その時は、心が読めなかった。顔も、何かを隠そうとしていた。それが強くなるための秘訣なのかは知らない。だが、明らかに迷いを秘めていた。

 

「……そうだな……聞かないほうが良いよ?」

 

「それでも」

 

「……はぁ……わかった、一つだけ教える。それは――――」

 

その時の二人は、何かを思い出したような顔をし、同時に優しい顔を見せた。

 

(違う、あれは私が知る教官じゃない。あなたは強く、凛々しく、厳しい、それがあなたのはずだ―――)

 

許せない、教官たちをこんなに変えてしまう者など。認めない、認めてなるものか。だから―――

 

(力が欲しい)

 

だから、今あの男に負けるわけには行かない。

 

(あの男を、完膚なきまでに叩き潰せる力を……最強の力を!!)

 

力が必要だ。自分の力でなくてもいい。他人の力も奪っていい。たとえ体の一部を持っていかれようとも、魂をささげなくてはならないなら――――そんなもの、くれてやる!

 

 

 

 

 

《Vaikyrie Trace System》……boot.

 

 

 

 

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」

 

「なんだ!?」

 

「一体なにが!?」

 

今まさに壁に埋もれているシャルルに止めを刺そうとした直前、急に後から鼓膜を裂かんばかりの悲鳴が聞こえ、行動が一時中断した凪紗は刀をしまい、後ろを振り向く。

 

「何……あれ………」

 

「おいおい………嘘だろ、アレは…………」

 

 

 

 

 

 

 




熱中しすぎてキリのいいところで終われなかったのはこの私のことだ!………はい、すみません。キーボードガチャガチャやってたらいつの間にかめっちゃ長くなっていました。
キリのいいところで終わらせようにも終わらせられなかったので、変なところで「後半に続く……」みたいな終わり方でした。はい、すみません。大事な事なので二回言いました。

まぁ、次回について少し語ります。(まだ書いてないけど)原作どおりの展開にはなるんですけど、途中からオリジナル展開に変わります。(たぶん)そして最後はなんと!……考えてません。私は後先構わず突っ込んでしまうタイプなので、終わり方はその場その場で決めます。悪い癖ですね。


※追記

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