インフィニット・ストラトス 転生者は双子の姉   作:夜光・陽炎

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申し訳ございません。遅れました。


第四十九話・我が世の春が来たああああああああ!!

ショッピングモールの二階。私は嗅覚を鋭くしながら現在一夏&シャルロットの捜索を始めていた。しかし結構臭いがかすれてきており、今男性用の水着売り場の近くに来ている。

その後には、ぞろぞろと付いてきている六人の女性たち。

彼女たちも周りを凄い目つきで見渡しており、そのせいで周りには人が居ない。というか避けている。

 

「……おい、本当にここであってるのか?」

 

「知りませんよ。臭いで人を探すって結構難しいんですよ?犬じゃあるまいし」

 

「犬じゃないのか」

 

「あァア!?」

 

「ストップ!こんなところで暴れないで!」

 

千冬さんの失言でキレる間一髪で円夏が槍を入れる。

 

「ああクソッ……どうやら男性用の売り場には居ないみたいです。……すーはー……えーと確かあそこは………え?」

 

少しイライラしながら一夏の臭いの場所を再確認すると―――シャルロットは香水をつけているようで他の女性と見分けが付かない―――ここから対になっている場所。つまり

 

「どうした?」

 

「えーと………非常に言いにくいんだけど……あいつ、女性用の、水着売り場にいるんだけど……」

 

「……は?」

 

皆同じ顔だった。当然だろう。男が女の水着売り場に行くなど色々『自主規制』で『自主(ry)』なやつが関連して『(ry』なことがあるかもしれないのだ。そうでも無くても社会的に問題である。

 

「くっ……まさか一夏がそこまでフラストレーションが溜まっているとは……なぜ気付いてやれなかったんだっ!」

 

「気付いてたら何するつもりだったんだアンタ」

 

「もちろん『ピーーーーーーーー」

 

「………あ、うん、そう。皆、どうすんの?これ以上行きたいなら行ってもいいけど」

 

千冬の色々健全じゃない言葉を全力でスルーするし、他の皆に呼びかける。正直アレな事がある可能性があるならば色々アレしてこうなって……いや、もう考えるのはよそう。

 

「私は行く。一夏のフラストレーションを現場で色々アレしてコレしてはぁはぁはぁ………!」

 

「私は行きますっ。生徒がいかがわしいことをしているならそれを直して導いてあげるのが教師の仕事であり―――」

 

「あーはいはい。行くって事ですね」

 

「まだ半分しか言ってません………」

 

長くなりそうな山田先生の話を区切り、今度は残り四人の方を向いてみる。セシリアの鈴は言わずもかな。ラウラ同様目をキラキラさせてこっちを凝視している。円夏は苦笑で溜息をついており、もうついていくしかないといわんばかりの様子だ。

 

「……ま、あいつがそんなことするようなタマじゃないってことはわかってるんだがな……」

 

深い深い溜息をついて、反対側の水着売り場を見てみる。

そんなに混雑しても居ないし、これなら七人一緒に入っても問題はなさそうだ。

 

さて行くかと決心した次の瞬間、後から声を掛けられて振り向いてみる。

 

「あのー、お客様……?」

 

「え?どうかしました?」

 

「ええと……こちらは男性用の水着売り場なので……女性用の物は向かいの方に」

 

「ああ、すみません。少し知り合いを探していたもので」

 

「それで、そちらのお連れの方が今先ほど……」

 

「連れ?」

 

「ぎゃーーーーーーーっ!??」

 

「!?」

 

急に試着室の方から悲鳴が上がる。そしてその中に居た人物はよほど気を動転させたのか、カーテンを突き破って外に出てきた。……全裸で。

 

「ちょ、お、おま、お、おおお、おおおおおぉぉおお!?」

 

「ふっ……小物だな」

 

「な、ななん、なにいってんだこ、この、ちょ、が、がががが!?」

 

「ラウラアアアアアアアアアアアアアッ!!!」

 

ラウラはいつの間にか、ほんの数秒目を離した隙に試着室の中に入り、男のナニを観察していた。

ほんとにどんな思考回路していたらこんなこと思いつくんだと全力で抗議してやりたいが今はそんな場合ではない。すぐにラウラを男性から離し頭を下げさせた。

 

「ほほう、小物だな」

 

「ち、小さい」

 

「ほ、本物ってこうなってたんですね」

 

後でそんな呟きが聞こえる。

 

「なに見てんだお前等アアアアアアアアアア!!」

 

「なにって、ナニですが?」

 

「そんな事聞いてねえエエエエエエエエエエエエ!!!―――――すいませんすいません、ほんっとすいません!慰謝料払いますから許してください!!」

 

「……いや、別に、いいんだけど、さ………小さいって、なんか、ひどい、っていうか、なんか、俺……」

 

自分のナニを小さいと呼ばれたことでマインドブレイクしたのだろう。男性は裸のままで体育座りをしてシクシクと泣き始めてしまった。

 

「どうすんだよお前等!?」

 

「どうするって、ここは一発ヤっとくしかないだろう?」

 

「死ねボケええええええええええ!!ここは全年齢対象(R-15)の健全なSSなんだぞおいいいいいいいい!!」

 

「誰に向かって死ねオラアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!ぬぁにが全年齢対象だあああ!!何の話をしているのかさっぱりわからんわアアアアアアアアアアア!!!」

 

「開き直るなアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

「死ねやクソガキィいぃぃいいいああああああああああああああああ!!」

 

「消えエエエやアアアアアアアアあああああああああるぃああああああがぁあああああああああああ!!!」

 

全身のバネを一気に伸ばし、後に全力で引く攻撃予備動作をする。

対して千冬も同じく筋肉を盛り上がらせ、パンチの準備をしていた。

 

「消えろやオラアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

「こっちの台詞だメスゴリラアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

二人の拳が空気の壁を打ち砕き、互いの顔に放たれた!瞬間――――二人の拳は見事に交差し、互いの顔に同時に拳が入った!そう、クロスカウンターだっ!!

 

……ん?誰が実況してるんだ?

 

二人の拳の威力は人体だけに留まらず周りに衝撃波として拡散!結果

 

―――ドングラガッシャアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!

 

二人を中心地にして爆心地が出来上がり、店の内部は見事に拭き飛んだ。

 

 

……後々凪紗は修理代の全額を背負わさせる事になった。

 

 

 

                        ◆

 

 

―――ドングラガッシャアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!

 

「へ?」

 

急に後方から爆発音が聞こえた。

つーか、え?なんで爆発?

 

「一夏、急に大きな音が聞こえたんだけど?」

 

「あ、ああ……なんか爆発したみたいだ。ガス漏れかな?」

 

「こ、こっちは大丈夫だよね?」

 

「たぶんな………ていうか、爆発にしては随分と小さいな。ガス漏れじゃなくてなんか強盗でも……いや、ないか」

 

こんな多く人が集まる場所で強盗など逃げ切れるはずも無いしそもそもこのショッピングモールは警備員の数が半端なく多いのだ。一人だけならすぐに捕まるだろうし不審な動きをしていたら速攻で捕まる。こんなこというのもあれだが、こんなとこでやるよりスーパーマーケットのほうがよほど難易度は低いだろう。

 

「うーん……見てくるのも良いけど、なんだかんだで追い返されそうだし、詮索は止めておくか」

 

「じゃ、じゃあさ一夏。見て見て!」

 

そう言ってシャルル……じゃなかった。シャルロット改めシャルは黄色の水着、しかもビキニなのか違うのかわからないものを俺に見せてくる。

ふむふむ、説明書には面積は大きめに確保していて大きい方でも大丈夫………って、なにが大きいんだ?

 

と、説明を忘れていたが―――誰に説明するのかは置いといて―――今俺はシャルと水着を買いに生気前のショッピングモールまで来ている。

なぜか「(水着を買いに行くのを)付き合ってくれ」と言った瞬間一瞬固まったかと思いきや頬を真っ赤に染めながら首が取れるほどゴクゴクと頷き、当日になって急に月とすっぽんほどの差で喜びの顔から落ち込みの顔に……まあ、今に至るわけだ。

 

俺の分の水着はもう買い終えたが、戻ってきてみるとシャルが急に「水着を選ぶのを手伝って」と言ってきて現在に至り、今こうして水着を見せて気お手いるのだ。健全なる男子の俺に女性用の水着選びをさせるとは、これはもしや俺を精神的に追い詰めるシャルの作戦なのか?シャルって可愛い顔して意外と腹黒い一面を持っているもんだから失言するとリヴァイブで蜂の巣にされかねn

 

「一夏!ちゃんと見てよ!」

 

「え!?あ、シャルは可愛いぞ!」

 

「え!?」

 

「あ」

 

自分が思わず変なことを口に出してしまったことに気付く。

やばいやばい。こんなところでこんなこと口にしたら公共の場でディープキスするような……って、ディープキスってそんな意味だっけ。まあいいや。とにかく、本人にとってはかなりの羞恥ものだ。周りの女性や店員さえ「若いねぇ~」とか「おやおやまあまあ」とかなんか色々誤解されかねないことを口にしているではないか。

 

「あ、あの、シャル?さ、さっきのはナシ!違うから、え、えーと……」

 

「なにが、違うのさ」

 

「いやそのぉ……」

 

よく考えてみると、全然違わない。確かに、シャルは可愛いし、そこら辺で一人ふらふら歩いていたら速攻でナンパものだ。うーむ……どうやっていいわけすればいいのか。

 

「えっと……その水着を着けてるシャルは可愛いかなーって………ぬああああああっ!」

 

考えた事が口に出てしまった。畜生。こんなことになった事など無いから咄嗟に言い考えが思いつかん!ほら!シャルだって顔をリンゴのように真っ赤っかにしちゃったじゃないか!どーすんだこれ!

 

「その、見たい?」

 

「ぐおおおおおっ……って、え?」

 

「僕の水着姿、見たいって言ってるんだよ」

 

「いや、見たい見たくないといえば見たいが」

 

ってまたかよおおおおおおおおおお!!

 

くそう、なんでシャルロットさんは俺の心の隙を付いた質問をして来るんだ。これで周りから完全にカップル認定されてしまったジャマイカ!

 

「じゃ、じゃあさ。ちょっと来て」

 

「え、ちょ、シャル?シャルさん?なんで引っ張るの?」

 

疑問視を今日で何回浮かべたか。そんな俺に構わずシャルは俺の腕を引っ張り、なんと試着室に引きこんだ。

 

「ほ、ほら。その、水着って実際に来てみないとわかんないし、ね?」

 

「ね?って言われても困るんだがっ。こ、これまずいって。俺は外で出るから後で見せ」

 

「いいから!す、すぐ着替えるから待っててっ」

 

「だ、だから出るって」

 

「だ、ダメ!」

 

いや、そうしないと俺が社会的に殺されるんです。

 

「あらぁ~、最近の若い子はアタックが強烈ね~」

 

「いやね、妬けちゃうわ」

 

「ほらぁぁぁぁぁ!勘違いしてる人いるよ!」

 

「大丈夫!時間は掛からないから!」

 

「そういう問題じゃないいいぃぃいいぃ!って急に脱ぎ始めるなぁっ!」

 

急に目の前で脱ぎ始めたシャル。俺は咄嗟に背を向ける。

あれ?シャルってこんな子だっけ?最初に会った頃はもっとしとやかだったような……っうっ。ヤバイ、この状況マジヤバイ。どれぐらいかというとマジヤバイ。超ヤヴァイ。

背中越しから聞こえる衣擦れの音が俺の鼓動を高速化していく。くおおおっ、まずい、これ、まずい……よな?

 

 

なんでこんなことになってんだあああああああああああああああああ!!!

 

 

俺は心の中で悲痛の叫びを唱えるしかなかった。

 

 

                       ◆

 

 

(う、ううっ……勢いでこんなことしちゃったけど……大丈夫、じゃないよね……どうしよう)

 

と、こんなことになったのはシャルロットが追跡者の存在に気付いたからである。理由はゴクゴク単純。先ほどの爆心地あたりからIS――しかもコア、しかもしかも二つの信号が見地されたからである。

全てのISには『コア・ネットワーク』と呼ばれる特殊な情報構築空間が存在し、コアはそれを通じて全てつながっている。元々宇宙開発用のISには、離れていても互いの位置を認識しあえる必要があるためISは互いの位置を認識しあえるという特徴があるのだ。

しかし、そうしたコア・ネットワーク情報によって位置情報を露出させるのを避ける場合、潜伏、つまりステルスモードと呼ばれるのを使用する。

 

実を言うと追跡者のうち約二、三名の姿はすでにに視認したためもう存在はわかっているが、ほかの四名は全く検討付かない。二、三名というのはセシリア、鈴、千冬の三人。さきほど物凄い勢いで階段を駆け上がってくるのが見えた。

 

そして今、向こうの水着売り場になぜかコアがあると判明した。

 

(まさか……いや、そんなことはないはず)

 

しかし先ほどの爆発。あれが事故ではなく人力で発せられたのなら………

 

「あ、あのさ、シャル?」

 

「え、ふぇっ?!ど、どうか、したの?」

 

「いやそれ俺の台詞なんだが……着替えは終わったか?」

 

「あ、ごめん、ちょっと待って!」

 

自分の手が止まっている事に気付きすぐに着替える。

 

(さ、さすがに同じ個室で着替えはやりすぎたかな……いや、でも同じ更衣室で着替えた事あったし……ああもう!早く着替えようっ)

 

 

 

数分後

 

「……終わったか?」

 

俺はそろそろこの状況に慣れてきて大分落ち着きを取り戻した。しかしやはり意識してみるとこの状況異常すぎだろう。俺はギャルゲの主人公かと言いたくなるほどの展開である。………あれ?俺って……う~ん、こんなことあったようななかったような……

 

「あ、ちょ、ちょっと待って!」

 

急に音が途絶えたので着替えが終わったか?と思い声を掛けたら物凄くあせったような声が聞こえて内心まさか紐が結べないのか?と想像したが生真面目なシャルがそんなわけ無いかと斬り捨てる。

 

「終わったなら声掛けてくれよ。さすがに何分もここにいるのはちょっと……」

 

「わ、わかったよ――――わっ!?」

 

「え!?」

 

小さな悲鳴が聞こえて反射的に振り返ってしまう。

俺の目に映ったのは――――

 

「ば、バカーッ!待ってって言ったのに!」

 

「うわ、押すな押すな!」

 

水着を着ているシャルの姿が一瞬映った、と思うとシャルの掌が俺の頬を押して視界を封じてくる。

てかほんとに押さないで。この状況で外でたら俺間違いなく変質者扱いされるから!

 

「も、もうっ!心の準備が出来ていないのに……」

 

「あ、あのー」

 

「なにさ!」

 

「そろそろ手を離してくれると助かるんだが……」

 

「……わかった、み、見ていいよ。でも」

 

「でも?」

 

「……変な想像しないでよ」

 

「しない!しないから!」

 

そろそろ押されている頬が痛くなってきた。

頬から手が離れたのを確認すると、俺はゆっくりとシャルの方を向く。

 

「……………」

 

一瞬言葉を失う。

シャルが着ていたのはセパレートという水着とビキニを混ぜ合わせたような水着だった。色は夏を意識したのかイエローとオレンジの中間で、デザインはバランスよく膨らんだその豊かなチェストを強調したようなデザインで……

 

「あ、あの、一夏?実はもう一つあるんだけど」

 

「あ、えーと……いいと思うぞ?」

 

「へ?」

 

「いや、普通にかわ……綺麗だと思うんだ」

 

先ほどと同じく「可愛い」といってしまうところだったが、ここは方向転換して「綺麗」と言ってみた。これなら恥ずかしがらずに素直に受け止めてくれると思う。

 

「き、ききき、きれ………じゃ、じゃあこれにするね!」

 

……あれ?反応があまり変わっていないんだが……いや、こんな状況だし恥ずかしがるな。うん。だから早くこの状況を打倒すべく俺は早く次の行動に移った。

 

「シャル、俺そろそろ外に出て―――」

 

今度こそ外に脱出しようと試み、ドアに手をかけた。が、触ったと同時にドアノブが捻られている感触が伝わって、その事実が俺の焦りを確実なものとする。

 

(やばいやばいやばい!!まさか外から他の人が……!!)

 

ガチャ

 

(……終わった)

 

さらば俺の人生。ビバ牢屋暮らし。少女わいせつ罪で俺逮捕のビジョンを垣間見た。

 

「……………」

 

「………え?」

 

ドアの向こうに居たのは俺の想像を上回る人物。そこに立っていたのは、現在クラスメイトの藍更詩織もとい篠ノ乃凪紗、だった。

 

「…………」

 

凪紗は何故か無言でドアを閉める。

 

「…………」

 

「…………」

 

俺とシャルが数秒間硬直していると、ドアがもう一度開いた。

その奥には、表情を失った凪紗。そして…………千冬姉。

 

「…………なにやってんの、お前」

 

「…………一夏、欲望に負けついに犯罪に手を出したか。すまん、すまんお姉ちゃんが気付いてやれなくて………くっ」

 

「くっ、じゃなあああああああああああい!!!誤解だ二人とも!」

 

「説得力皆無だってことわかってるかお前」

 

「弁護士ーーーーー!!弁護士は居ませんかああああああああああああああ!!!」

 

「大丈夫だ一夏。お姉ちゃんの権限で二人で一緒に独房へ。そして中で禁断の」

 

「濡れ衣を着せるなああああああああああああああああああああああああ!!!!」

 

その場にはただ、俺の痛恨の叫びがこだまするだけであった。

 

 

 

                       ◆

 

 

「馬鹿かお前」

 

「うっ………」

 

俺の言い訳を聞いた後の第一声がこれだ。相変わらずスパルタで、凪紗は俺を完全に見下したような顔をしている。はっきりいえば、呆れ半分不機嫌半分だ。

 

「しかし、水着を一緒に買いに着たのはよしとしよう。しかし、試着室に二人で入るのはどうかと思うぞ?」

 

「教師として感心しません」

 

「す、すみません………」

 

千冬姉と山田先生から注意され、俺とシャルは完全に丸くなっていた。

しかしまあ、凪紗は意外と怒っていない。

 

「いや、別に私はお前等の関係がどうなろうがいいんだ。でもさ………これはないだろ」

 

「ごめん……」

 

さすがに凪紗にとってもこれはないわーと思わせるようなぶっとんだ行動だったらしい。シャル、恐ろしい子。

 

「そ、そういやさ、なんで山田先生と千冬姉、挙句の果てにこいつまで来てんだ?」

 

この空気をなんとかしようと俺は全力で話を逸らそうとする。というか疑問をそのままぶつけただけだが。

 

「それは今話すよ。でも、その前に」

 

「そろそろ出て来い馬鹿者ども」

 

不備を負って誰も居なさそうな場所に声を放ったかと思うと、その奥からぞろぞろと約三名が出てきた。

 

「そ、そろそろ出てこようかとおもってたのよ」

 

「え、ええ。タイミングを計っていたのですわ」

 

「その割には出るタイミングを見失ったみたいだけど」

 

そんなことを話しながら出てきたのはせりリア、鈴。そして、円夏だった。

 

「お前等まで、しかも円夏?」

 

「えへへ、ごめんごめん」

 

「ってあれ?もう一人はどうした」

 

「え?―――-って、いない!?」

 

円夏はきょろきょろと辺りを見回すと、しばらくして額から汗が流れてきた。

 

「……えーと、ごめん」

 

「……後で探すよ」

 

溜息混じりに凪紗は諦めるように言い放った。

もう一人とは誰のことだろうと考え込む。クラスの誰か……あたりまえか。じゃあ知り合い?うーん。

 

「さっさと買い物済ませて退散するとしよう」

 

こちらも同じく、千冬姉は溜息混じりにそういった。

手にしているのは水着で、千冬姉もどうやら自分と同じく土壇場準備らしい。

 

「あ、あー。私ちょっと買い忘れがあったので行って来ます。えーと、場所がわからないので凰さんとオルコットさん、ついてきてください。それにデュノアさんと藍更さん……あ、いや、いいです」

 

いきなり山田先生が三名ほどに呼びかけて有無を言わせず生徒三人を連れて向こうへ行ってしまう。その顔は何かを閃いたかのようだった。

 

その場に残ったのは俺と千冬姉と円夏、そして凪紗だけだった。

 

「ちっ、なぜこいつを連れて行かないのだ」

 

「え?」

 

「なんでもない」

 

軽い舌打ちが聞こえたような気がしたが、気のせいだろう。

 

「……ふーっ。なんというか、この面子だけでいるのは、一年ぶりだな」

 

「……あ」

 

ようやく山田先生が俺たちだけにした理由がわかった。

 

「私とお姉ちゃんと凪紗、外国に行ってたもんね。そういえばお兄ちゃん、一人で大丈夫だったの?」

 

「あ、ああ。弾とか蘭がたまに遊びに来てくれたからな。少し寂しかったけど、なんとかやってたよ」

 

「へ~。蘭ちゃんかぁ……しばらくあってないなー」

 

「じゃあ今度連れて行ってやるよ。弾がお前を見たらびっくりするぞ?」

 

「え、なんで?」

 

「いや、この一年でお前、大分綺麗になったからさ」

 

「………ふぇ?」

 

そういわれた円夏は急に顔を赤らめる。確かに綺麗と言われたら照れはするだろうが、肉親に言われてもそんなに反応しないんじゃないのか?少なくとも蘭が弾に言われたときは「……きもっ」とか言ってたし。いや、うちの円夏はそんなこと言うような子じゃありません!

 

「ええ、と……綺麗になった?」

 

「ああ、今じゃあどこかの男に狙われそうで肝が冷えるよ」

 

「そ、そう……」

 

それ以降黙ったままなぜかモジモジし始める。最初は理由がわからなかったが、途中からなんとなく察してきた。

 

「円夏」

 

「なえな、なに?」

 

「お前、もしかして……」

 

「ま、待って。まだ心の準備が……」

 

「トイレ行きたいのか?」

 

 

 

「……………」

 

 

 

「ば」

 

「ば?」

 

「バカああああああああッ!!」

 

「ぶごおっ!!?!」

 

真下から来る右アッパーを避ける事が出来ず円夏の拳は俺の顎に見事命中した。

しかも威力が生半可なものではなく全力だったようで俺の頭は半端ない勢いで店の天井に突き刺さった。体は腕のひじの辺りまで埋まっており、腕が全然動かせない。

 

「最ッ低!!女の子にかける言葉じゃないよ!お兄ちゃんテリカシー無さ過ぎ!!」

 

『す、すんません……』

 

壁、というか天井越しなので互いの声があまり聞こえないはずだが、かなりの大声だったので、円夏の声はしっかりと俺の耳に届いた。

 

「もうっ!……ラウラ探してくる!」

 

『え、ちょっと、あ、抜いてくれ!』

 

「しらない!」

 

ほんとにどこかに行ってしまうようでカツカツと大きな足音が遠ざかるのがわかった。

 

『あ、あのー、凪紗?抜いてくれないか?』

 

「自業自得だ。そのまま反省してろ」

 

頼みの綱が切れた。ああ、今日はなんたる厄日なのだろう。大人しく学校指定の水着でも着とけばよかった。

一人涙目になっていると、なんか急に下半身の変な感触が走る。

 

『え?凪紗?もしかして触ってる?』

 

「は?私じゃないけど」

 

『え、じゃあ一体誰が……』

 

ジィィィ。

 

ズボンのチャックが開いた音がした。

 

………え。

 

そして次に、ほんのわずかだが誰かの吐息が聞こえてくる。

 

「はぁ……はぁ……」

 

『ちょ、何処触ってんだ!?』

 

「って千冬さんんん!?何やってんだアンタアアアアアアアア!!!!」

 

「見ればわかるだろう。フェr」

 

「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

下でドタバタと二人が触る。というか争っている。

 

「HA☆NA☆SEEEEEEEEEEEE!!!欲望には逆らえんのだああああああああああああああ!!!」

 

「逆らえええええええええええ!!つーかこれ以上ヤったらアンタほんとにもう出れなくなるぞ!!」

 

「知るかあああああああああああ!!!私はっ、せめて一口だけ、一口だけだから!!」

 

「十分アウトだあああああああああああッ!!」

 

カシャンカシャンと色々倒れていく音がする。やばい、早く脱出せねばと本能が危機を知らせてきている。

 

―――スポン。

 

『っ!?!??!おい!なんかズボン脱げたぞ!!』

 

「いよっしゃああああぁあああああ!!あともう一枚いいいいいいいいい!!!」

 

「マジでやめええええっ!!!!スタッフーーーーー!!すたああああああああああっふ!!誰でも良いからこの馬鹿をとめろ!!」

 

「お、お客様、公然での猥褻行為は犯罪となりますゆえ……」

 

「邪魔だ雌があああああああ!!!」

 

「ひぃぃぃっ!?」

 

「いくら雑魚が集まったとて、この私をとめることは出来ぬ!!」

 

「なにブ〇リーの真似してんだ!!くそっ、なんで肝心な時にブレーキ役がいないんだ!」

 

「ふはははははははははっ!我が世の春がきたあああああああああああああ!!」

 

「もう、黒歴史は起こさせない!!」

 

なにガン〇ムごっこしてんだ!!くそっ、腕が動かせない!足を動かそうにもしっかりホールドされてやがる!やばい、本当に貞操の危機が

 

「邪魔をするなロー〇・〇ーラ!このギム・〇ンガナムをとめられると思っているのか!」

 

「だれがロー〇だ!いい加減妄想もやめろ!このゴリラあああああ!!」

 

「WRYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!!!」

 

「ゴリラじゃなくて吸血鬼―――って、ほんとにやめろこのクソ教師がああああ!!」

 

「あと、数セン、チ…………!」

 

『やっべぇっ………!フぬおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!』

 

貞操喪失の危機を本能的に確信した俺は全力で天井の壁を壊そうとする。がんばれ俺!負けるな俺!そうだ、これがラストミッション!

 

『ふんがあああああああああああああああ!!!』

 

―――ガッシ。

 

『NoOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOn!!』

 

パンツをつかまれたような感触が下半身を刺激する。

火事場の馬鹿力と言うものだろうか、全身に今までに感じたことの無い感覚が広がると急激なスピードで天井に亀裂が入り、かなりの轟音を立てながらガラガラと天井全体が崩れ去った。

 

 

尻餅をつきながら床へと落ちた俺は埃まみれになっていて頭から白い粉を被っている。口の中にも入ったようでざらざらとした質感が口の中を這いずり回った。

 

「ぺっ、ぺっ……あー……やりすぎた」

 

さすがに弁償しなくてはならないなと暢気な事を考えていると、目の前で急に衝撃波の嵐が舞い上がり周りの埃を全て吹き飛ばした。

 

その嵐の中心には二人、凪紗と千冬姉。当然のごとくその拳を交えていた。

 

「きっさまあああああああああああああ!!よくも私の邪魔をおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

「自業自得だアホ!!私に八つ当たりしてんじゃねえええええええ!!」

 

「貴様が邪魔をしたから私は一夏のしいたけを咥えることが出来なかっただろうがあああああああ!!」

 

「そもそもなんでそんな事を考えたとあんたに小一時間ほど問い詰めてやりたいッ!!」

 

「理由は簡単……私が一夏を愛しているからだ!!」

 

「知ってる」

 

「ならなぜ邪魔をしたああああああああ!!」

 

「作品的にだあああああああああ!!」

 

「意味わからんわあああああああああ!!」

 

ドカンドカンともはや怪獣の頂上決戦を思い出させる熱戦だった。とりあえず警察早く来てくれ。

 

 

 

 

「ほう……なるほど、教官とするにはあのようなテクニックが必要なのか。これは是が非でも調べねば」

 

いつの間にか居なくなったラウラは、吹き飛んだ水着の山でひょっこりとモグラのように顔を出してこの惨状を目にし、なにらやろくでもないことを口にしていた。

 

 

……やはり弁償代は凪紗の懐から支払われた。

 

 

 




うーむ……千冬さんのブラコン度がもう無視できないレベルになってる。マズイなw


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