インフィニット・ストラトス 転生者は双子の姉   作:夜光・陽炎

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今日、YO☆U☆YA☆KU休刊が発売されました。さくっと購入してもくもくと読書。


読み終わって一言

「………マジで黒騎士出ちゃったよ」


第五十三話・私のストレスマッハだZE。

花月荘・二階

客室エリア最端・教員室(とラベルが貼られた部屋)。

 

その室内には、八人という三人部屋にしては人口密度が高く、少し蒸し暑い。更にはエアコンが壊れているので蒸し暑さが加速していた。その証拠に、全員の体から汗がたっぷり出ている。特に正座している女子五人は背中や首に大量の汗が付着している。

 

だがこれは完全に冷汗だ。

 

「―――ほうほう、それで?」

 

「ええと………結論から言いますと」

 

「……見に来たというか」

 

「潜入ミッションの練習といいますか」

 

「ぶっちゃけ覗き?」

 

「「「「ちょっ!?」」」」

 

円夏の一言ですべてが区切られた。

四人はこう思った。「この裏切り者ぉ!」と。しかし、円夏にはその脅威がない。なぜならば―――

 

「そーかそーか、気になって覗いたんだな円夏。すまんな、お姉ちゃんが正座なんてさせて。楽になっていいぞ。ついでに冷蔵庫にジュースあるから好きなものとって飲んでくれ」

 

「うん、ありがと♪」

 

予想通り。五人の正面にいた人物、その姉織斑千冬は果てしなくそこがないほどの弟妹大好き姉なのである。それはもう常時弟の○操を狙うほど。

 

「ご、ごめんねみんな」

 

円夏がこちらに振り向いた。

 

その時円夏が浮かべた笑みは、四人にとって嗜虐的な、そして不吉な笑顔に感じられた。

実際は無邪気な笑顔なのだが。

 

「あ、そうだな……円夏、すまんがデュノアの奴を連れてきてくれるか?」

 

「え?別にかまわないよ」

 

と言われた円夏はすぐに先ほどぶち破られて、凪紗の手によって直された戸の障子を引き、部屋を出ていく。その後、部屋に残ったのは静寂。気まずい雰囲気だけだった。

 

そしてその空気が数秒漂った頃、ついに誰かが口を開いた。

 

「……あー、なんだ……つまりアレか?」

 

口を開いたのは凪紗だった。皆この空気を踏破してくれるのかと期待した。

徳碁、その期待は斜め上を通り過ぎて聞くことになった。

 

「私のうめき声でお前らは耳を覚ませてあれやこれやとナニかを想像したのか?ん?」

 

「…………」

 

四人は黙るしかない。凪紗のいうことが的中していたのだ。実際あんなうめき声を出されたら誰だって、とは言わないが少なくとも余暇なることを想像するはずだ。

 

ラウラは想像していたことを思い出したのか鼻息を荒げている、がしかし凪紗はスルー。がっくしと肩を落として俯いた。

 

「というか、結局あの声の原因は、その……なんでしたの?」

 

「ああ、マッサージだよ」

 

「「「「マッサージ?」」」」

 

四人同時にそう返して首をかしげる。そりゃそうだろう、マッサージなどであんな声を上げるなど聞いたことのないだろうし。

 

その辺の詳しいことは、先ほどから黙っていた千冬が語りだした。

 

「ああ、何というか………一夏はマッサージが上手いのだ。凄く、な」

 

「へー、って、どんだけ上手かったらうめき声を上げさせられるのよアンタ」

 

鈴がそう問いただす。一夏は困ったような顔でうーんと髪の毛を掻き回した。自分でもわからないのか。もしそうだったら転生のマッサージ士だなと鈴は思った。

 

「んー、意外と簡単だぞ?」

 

「だからその方法を聞いてるのよ」

 

「………えーとまず、指で適当なこと所を押す」

 

「それマッサージっていうの?」

 

「しょうがないだろ。マッサージの知識はほぼ皆無なんなから我流でやるしかなかったんだ。あと最後まで聞け」

 

「が、我流……だと?」

 

マッサージの我流。聞いたこともない。むしろなぜ我流にしようとしたんだ。そう四人とも思った。

 

「で、次は、相手の反応を見る。反応によって判断を左右させるけど、基本何かしら声を上げたらそこがウィークポイントだ」

 

「うぃ……は?」

 

「で、指でその個所の感触を確かめる。柔らかかったらそこは単に本人の弱点。硬かったらそこが凝っているってこと。あとはそこをぐいぐい攻めるだけで…………え?なんでみんなそんな顔してんの?」

 

一夏の話を聞いた皆(ドヤァ顔千冬さん除く)は全員絶句、もしくは茫然としていた。そしてこう思った。

 

――――どんだけ女性の扱いに手馴れていれば反応で見分けがつくんだ。

 

と。まさに天性の天然ジゴロである。

 

「あ、そういえば、セシリアに部屋に来てくれって言ったな、俺」

 

その一言で皆の視線がセシリアに集まる。

 

「え、ええ、そ、そうですわ……でも、この状況じゃやることもやれないですし……」

 

「大丈夫、布団に寝るだけだろ?」

 

「っ――――!?そ、それはそうですが!」

 

「へーきへーき。ほら、ここに寝てくれ」

 

一夏はセシリアにそう促した。全員の目線がある中でアレをやれと?周りを見てみると全員無言でセシリアを凝視しているだけだった。セシリアはまるで背中に蛇でも入れられたような気分になる。

 

(やれるわけないでしょうにッ!!)

 

だがこのままじゃあ埒があかない。目の前にいる一夏は早く早くと笑顔でセシリアの見ている。更に後から円夏やシャルロットまで来て混乱状態になる。

セシリアにとってこの状況は「積み」だった。

 

「………ほい」

 

そんなセシリアを見るのに飽きたのか、いつの間にか後ろに回っていた凪紗がセシリアの背中を押す。それで見事バランスを崩し、前にあった布団にポスンと飛び込んでしまった。

 

「っ!?篠ノ乃さん!?なにを―――」

 

「ほいっと。じゃあ、始めるぞ」

 

「ま、待ってくださ―――」

 

「よいしょ」

 

「ッ――――――――!?」

 

急に腰に硬い物がのしかかる感覚にセシリアは悲鳴を上げそうになり、同時に心臓が破裂寸前のように締まる。そして―――

 

ギュウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!

 

「―――――!?!?い、いたっ、いたたたたたたたたっ!い、いい、一夏さん!?ななな、何をして………うぅぅぅっ!」

 

「何って、指圧マッサージ」

 

「し、あつ……え?」

 

「そう、腰の」

 

「腰の………」

 

予想はもはや右斜め心か真横に行ってしまってセシリアは言葉を失う。そのせいか無意識に一夏の言葉をオウム返ししてしまった。

 

「えーと、一夏さん?私を部屋に誘ったのはもしかして……」

 

「ああ、疲れているみたいだし、ちょっとサービスしようと思ってな。明日はISの点検もあるし、疲れるだろうからちょっと、な」

 

……………。

 

二度目の静寂。そして心の中でセシリアは泣した。

 

「ぶ、無様です………わたくし……」

 

「え?ど、どうした?もしかして痛かったか?」

 

「ええ、とても、心に致命的な………」

 

「は?……よくわかんないけど、できるだけ優しくしてみるよ」

 

「もう、好きにしていいですわ………」

 

もうあきらめたように深い深い、虚無のように空っぽで底のないため息をついたセシリア。そして後ろではほぼ全員が口を押えて俯いている。きっと爆笑するのをこらえているのだろうが、凪紗だけは畳をパンパンと掌でたたいておりとても笑いを隠しきれているとは言えなかった。

そんな皆の反応に、セシリアのハートはまた一つ傷を増やした。ほんとに涙を流してもいいぐらいである。

 

「それにしても、気持ちいいですわ~………」

 

あまりの気持ちよさに目の前がぼやける。ちょうどいい力加減がセシリアに眠気を与えているのだ。そして思考も次第に緩やかになってゆく。

もうこれで寝てもいいか。そう思って睡魔に身をゆだね、眠りにつこうという所で――――急に尻をつかまれた。

 

「ひっ!?」

 

悲鳴を上げて上体を上げる。お尻を鷲掴みされたので睡魔はもうどこかに吹っ飛んでしまったようで眠気も来ない。

 

「い、一夏さん!?いったい何をして―――ッ」

 

鷲掴みということはマッサージではないのは確かだ。いや、そうなのかもしれないが、公然、恋敵の前でそれをされると後で空気が気まずいことになりかねない。最悪の場合集団リンチ。

 

(いや、でもこのままでも別に―――って、え?)

 

冷静になって感覚を確かめてみる。先ほど腰に二つの感触があった。そしてその『最中』にお尻をつかまれた。そして一夏はあたりまえだが腕が三本あるわけではない。残る可能性は、第三者の介入。

 

そう即座に判断し後ろを振り向く。そこには――――

 

「おー……いいものを持っているようだなマセガキ」

 

「この年でこれとは、ちょいと気が早いんじゃない?セッシ―」

 

千冬が、凪紗が、遠慮なくセシリアの尻を握り、浴衣をたくし上げて中を見ている。しかも二人の顔はまるでいいものを見たような『有』邪気な笑顔だった。しかもたちの悪いことに子供っぽさがかけらもない。二人に子供っぽさを探すのは砂漠で針を探すより難しいだろうが。

 

「しかし、何を期待していたのか。その上黒ときた」

 

「ぷっ……ギャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!」

 

「え……きゃああああああああああっ!?」

 

もう笑いを堪えられないのか凪紗は腹を抑えながら床をのたうち回っている。しかし一夏は「え?え?」と現状を理解していないような顔であり。どうやら二人の影で何が何だかわからないらしい。後ろの三人も同様だった。

 

「せ、せっ、先生ッ!離してください!」

 

真っ赤になってそう叫ぶと、思いのほかあっさりと千冬はどいた。

 

「やれやれだぜ。教師の前で不純異性交遊をやれると思うなよ?しかも本人の姉を前にしてな?」

 

「ふじゅ、せ………ッ!?」

 

千冬は笑っていた。それはもう満面の狂気の笑顔で。セシリアは「ああ、死んだな」と理解した。先ほど手を出すなと言われたばかりであるのに、もうこの人が許す理由が見当たらない。

 

「ふ、ふふふっ………明日、生きてるといいな?」

 

凪紗が本気か冗談かわからない考察を飛ばしてきた。

 

「お姉ちゃん、呼んできたよ」

 

「おお、ナイスタイミング」

 

障子の向こうから声がして二つの影が障子を引いて入ってきた。もちろん、浴衣姿の円夏とシャルロットであった。

 

「一夏、マッサージはもういい。ほれ、全員好きなところに座れ」

 

今先ほど来た二人に千冬はぐいぐいと手招きして、座っている三人と同じように座らせる。セシリアも赤面しながら元の場所に戻り正座をした。

 

「ふ……。まさか三人連続とは、親指がやばいな……」

 

「少しは手を抜いたらどうだ?」

 

「いや、いい。これはもう性分だよ、せっかく相手してもらっているのに手を抜くのは失礼だろ?」

 

「そうか、なら別にいい―――それはそうとして、汗をかいているな一夏。もう一回風呂に入ってきたらどうだ?失礼だが、エアコンがないので匂いが広がってしまう」

 

「えっ!?」

 

全員が一同にそう思う。

あのキング・オブ・ブラコンの千冬が弟を部屋から追い出そうとしているのだ。当然?だろう。

 

「ああ、そうさせてもらうよ。―――んじゃ」

 

千冬の言葉にうなずいた居tん多雨は、タオルと替えの浴衣を持って部屋を出た。出る際に「気楽にしてくれ」と言い残して。

そして全員が

 

((((((――――くつろげる気がしない))))))

 

そして部屋中の誰もが何をすればいいのかわからない顔をして、その場で鎮座している。唯一千冬を残して。

 

「おーいおいおいおいおい。いつものバカ騒ぎやドロドロの口喧嘩はどうした?」

 

「い、いえ、その……」

 

「安心しろ。今は怒らん。なんでもしゃべってもらって構わん」

 

「い、いえ、そうじゃなくて……お、織斑先生とこうして話すのはその」

 

「は、はじめてですし……」

 

「ちっ………ったく、しょうがないな。飲み物おごってやる。何がいい?」

 

「あ、私C○レモン」

 

「ないわそんなもん。貴様には後で渡してやる」

 

凪紗と千冬はそんな短いやり取りをし、即座千冬は備え付きの冷蔵庫から飲料水類を片っ端から取り出した。

 

「ほれ、午○の紅茶とコカ・○ーラ。ポカ○にファン○、あと三ツ○サイダーとコーヒー牛乳」

 

ピー音五連続という新記録を達成とともに千冬はすべての清涼飲料を六人の目の前に置く。千冬は「嫌なら周りと交換しろ」といったが、そもそもすべて味は折り紙付きなので全員適当に飲み物をとった。

 

「い、いただきます」

 

全員(凪紗除く)が同じ言葉を口にして、飲み物を口にする。全員(ry)ののどが少し動いたのを確認した千冬はにやりと笑った。それこそ仕掛けた罠に獲物がかかったように。

 

「飲んだな?」

 

「は、はい?」

 

「そ、そりゃあ、飲みましたけど………」

 

「ま、まさか自白剤を」

 

「んなわけあるか、ちょっとした口封じだ」

 

さりげなくとんでもないことを言ったラウラに軽いツッコミを入れてから、千冬は冷蔵庫に手を突っ込んで自分が飲むためであろう飲み物を取り出した。表面には「ASAH○生」とロゴが書いてある。そう、千冬が取り出したのは缶ビールだった。しかも生ビール。

千冬はリングプルをひねりふたを開けると、勢いよく飛び出した泡を口で受け止め、そのまま気持ちよくゴクゴクと喉を鳴らした。

 

「え……ちょ」

 

全員が唖然としながらそれを眺める。しかし唯一凪紗だけは少し引き摺った顔を掌で隠しながら「なにやってんだアンタ……」とつぶやいた。

 

「ぷはぁぁぁ………摘まむものが欲しいが、まあ今は我慢するとしよう」

 

「あ、あの、織斑先生?」

 

「なんだ?」

 

突如シャルロットが口を開き、訪ねてくる。ま当然だろう。仕事中に酒を飲むのはかなりマズイことなのだから。

 

「い、いまは仕事中なんじゃ……」

 

「あ?私の役目はもう終わったんだ。後は休むか寝るか遊ぶかの三択だけだろう?」

 

「休むは後の二選択ですけどね」

 

「硬いことを言うな。それに口止め料はもう払っただろう?」

 

そうにやりと千冬は笑う。そこで女子一同はようやく飲み物を渡された理由を察し「あっ」という声を漏らした。

 

「私はもらってないんですけどね」

 

「ちっ、つくづく嫌な奴だ――――ほら」

 

千冬は冷蔵庫から新たに缶を取り出し、それを適当な力加減で凪紗に投げ渡す。パシッといい音を出しながら缶は凪紗の手に渡った。

 

「ま、私も悪魔じゃないですし?ここは私の慈悲深~い心に免じてもらっておいてやりますよ」

 

「………殴っていいか?」

 

「山田先生にチクっていいですか?」

 

「―――チィッ」

 

「―――ぷっ」

 

凪紗は千冬から盛大な舌打ちを受取りながら缶を開ける。

 

―――しかし、なぜか蓋からは 白い泡が噴水のように飛び出した。

屋のように発射されたそれはあっけにとられる凪紗の顔へと見事命中。凪紗の顔はビール(・・・)で顔がずぶぬれになって、下に泡がしたたり落ちている。

 

「…………ああ、キレたよ。頭ン中で何かが切れたよおい――――――生徒にビール渡すか普通おい教師いいいいい!!!」

 

「ぷっ、調子に乗っているからだ。ザマァ、という言葉を贈ろう」

 

「ッ――――くっそがぁぁっ………!!アンタ相手してるとほんとストレスがマッハで溜まってくるよ………ちっ」

 

軽い舌打ちしながら凪紗は、何の躊躇もなしにビールをのどに流し込んだ(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)。その光景に女子一同はまたまた唖然としながらながめ、そのままスルーしようとした。が

 

「―――――っっっって、ちょっと待ってくださいまし!?」

 

「あ?なんだよ?」

 

不機嫌そうに―――話しかけてきたセシリアが原因ではないだろうが―――返事をする凪紗。しかし、女子全員がセシリアの行動を少しもおかしく思っていなかった。そのため鈴も入り込む。

 

「あ、アンタなにナチュラルに酒飲んでんのよ!?」

 

「だめなの?」

 

「だめに決まってるでしょおおおおおおお!?!?!?」

 

そう、お酒は十八になってから。しかし凪紗はまだ十六。明らかに歳不相応の行動であった。

 

「大丈夫大丈夫、私酒には強い体質だから」

 

「そーゆー問題じゃないのよ!?」

 

「そうですわ!いくらなんでもこれは見過ごせないです!」

 

「……面倒くさいなぁぁぁぁぁぁぁ………学生が酒飲んだって構わんだろう」

 

「構いますわよッ!?」

 

凪紗はめんどくさそうに耳を小指でかっぽじる。明らかに面倒くさがっている証拠である。いや、もう口に出してしまっているが。

 

「私もアルコールなしではやっていけないってことだよ………それに、飲んだのははこれが初めてじゃないよ」

 

「な、なにこの凪紗……ほんとに十六歳?」

 

「外見は、な」

 

「は?」

 

「いや、なんでもない。ま、スルーしてくれ。私が急性ストレス障害で倒れないようにするためなら」

 

「え、ええと………」

 

「………あ、うん、もういいや」

 

もう全員があきらめ気味につぶやく。もう彼女らの頭の中では「凪紗なら仕方ない」という方程式が出来上がりかけていたのを、本人は知らない。

しかも本人もそんなに深入りしないようで膝に頬杖を突きながらビールを一口飲んでいた。

 

「とにかく、そんなことはどうでもいい。そろそろ肝心の話をするぞ」

 

「そんな話って……」

 

学生が酒飲むのを「そんなこと」などで片づけていいのか。それでいいのか教師。

凪紗が酒をチビチビ飲んでいるのを気にも留めず、三本目のビールを飲み終わり、四本目に入ろうとしていた。こんな短時間でアルコールを大量摂取していいのだろうか。

 

「あー……単刀直入に言うが、お前ら、一夏のどこに惚れたんだ?」

 

「はぁっ!?」

 

もはやプライバシーとか関係ないらしく、千冬は「言え言え」と連呼してくる。当然女子全員は赤面しており、どうすればいいのやら黙りこくっている。

 

そして、最初に口を開いたのは箒。

 

「わ、私は……その、私を守ってくれるところ、でしょうか……」

 

飲み物を回しながら、俯いてしゃべっている。顔を見られたくないのだろうか。

 

「あたしは、えーと………無駄に気を使ってくれてるところ。なんか、照れるし………」

 

髪をワシャワシャとかぎながら、鈴がもこもこと言う。

 

「わ、たくしは……好奇心、ですわ」

 

「好奇心?」

 

一見、恋とは関係なさそうな単語だったが。その理由をすぐにセシリアは語った。

 

「気になるんですの……あの人がどこを目指しているのか。そしてどこにたどり着くのか。それで……まあ、惚れてしまいました……というわけです」

 

「……哲学的だねぇ」

 

「こ、言葉で説明するのが苦手なんです……!」

 

照れ隠しにプイッと誰もいない方向を向くセシリア。自分の言ったことに恥ずかしさを感じたのか。しかし千冬やほかの女子も納得してしまう理由だった。

 

「僕は、その………優しいところ、かな?」

 

「……あいつは誰にでも優しいぞ?」

 

「そ、そうだけど……そこがいいんだよ。誰にでも笑顔を振りまいてくれるから、そんなバカみたいなお人好しだから、好きになったんだ。……ちょ、ちょっと悔しいところだけど」

 

あははと照れ笑いを浮かべながら顔がりんごみたいに真っ赤に染まる。暑くなった頬を手で作ったセンスで仰ぎ覚まそうとするが、一向に熱は下がらない。それでもシャルロットは笑顔を崩さなかった。

そして次に、円夏。―――――は?

 

「わ、私は、その………残念だけど、自分でもよくわからな」

 

「待て待て待て待て!!ちょ、お前も惚れたの!?」

 

そう凪紗が尋ねると円夏はもじもじしながらうなずいた。

 

「う、うん……いや、だめって事はわかっているんだけど……」

 

「………まさか兄弟まで………もう女たらしのレベルじゃないぞあいつ………」

 

「――――残念ながら、私は惚れてはいない」

 

と、雰囲気ぶち壊しの一言が部屋中に響き渡す。言った者はもちろん―――ラウラだった。

 

「私が惚れているのは凪紗教官、ただ一人だ」

 

腕を組んで自慢げにそう語るラウラを、凪紗はドン引きしながら引きづった顔で誰かに命じる。

 

「おい、誰かこのガチレズを追い出せ」

 

「ま、まあまあ」

 

とシャルロットが熱を覚まそうと凪紗をあやす。まずは自分から冷まさせなければいけないというのに。

 

「教官は、強い、美しい、カッコいい、三拍子そろった完璧超人なのだあああああああああ!!!」

 

「でかい声で変なこと口走ってんじゃねえええええええええええええええええ!!!」

 

飲んでいたビールの缶を握りつぶしながら凪紗は叫んだ。中身がこぼれることも目に入ってない様である。

 

「そうだ、一年前、私は教官の下着を盗んだことがあった」

 

「―――おいいいいいいいいいいいいいいい!!?!?!?!?なにとてつもない過去暴露してんだああああああああああああああ!!??つかあれお前だったのかよッ!?」

 

一年前からもうすでに手遅れらしかった。

 

「そうだ、ボディーソープと洗剤の匂いが混じっていたが、かすかに残る体臭で私はもう濡」

 

「それ以上言うなあああああああああああああああああ!!!第二の千冬さんになりたいのか!!」

 

「千冬教官になれるなら本望!そうだ私はあの時理性が吹っ飛び、無意識にこか」

 

「コカ・コー○だなっ!?そうだよな!そうに違いない!」

 

もうここで作品に出れなくてもいいという覚悟ッ……!もうこれで終わってもいいという覚悟ッ……!

他人からしてみればいい迷惑なのだが。というか、今この瞬間、女子全員は凪紗がどうしてアルコール飲料を飲んでいるかなんとなく察してしまった。

 

「お前の下着はどうでもいいが、一夏の下着ならクンクンしたいむしろprpr――――そうだぁっ!今から脱衣室に行こう!すぐにいこう!」

 

「やめろっつってんだろおおおおおっ!!??」

 

「………ちっ」

 

「いや私に非はないからなっ!?」

 

「……まあ、あいつは』いい男だ。私の中ではお婿にした男№1だ」

 

「一夏一人しかいないだろ!」

 

「なぜバレたし。でだ、家事も料理も得意、性格もいい、しかも頼りになるしお人好しでたまにマッサージもしてくれる。これ以上の男はいないだろうな。どうだ、欲しいか?」

 

え?と凪紗&ラウラ&円夏(苦笑)除く全ての女子が顔を上げる。そして全員同時に

 

「「「くれるんですか!?」」」

 

「かッ……やるかバァ~~~~カ」

 

「「「え~~~~~………」」」

 

「あはは………」

 

「変わらないな……お前らは」

 

と、この話は円夏の苦笑と凪紗のつぶやきで幕を閉じたのであった。

 

 

 

 

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