インフィニット・ストラトス 転生者は双子の姉   作:夜光・陽炎

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相変わらずの週一投稿。


第五十四話・穴があるなら吐きたい。

合宿二日目。今日は午前から夜まで丸一日各種装備試験運用とデータ取りに追われる。特に専用気持ちは大量の装備を持っているので他の生徒よりかなり苦労に見舞われるので大変だ。

 

そしてその例外、篠ノ乃凪紗と織斑円夏は二人で集合場所の隅っこにいた。

なぜ例外とかいうと、まず二人のISはともに『正規の手続きを完了または申請していない』ものであるので所属している国がない。

 

円夏の場合は至急でイギリスへの手続きが行われようとしているが、残念ながら他国がそれを妨害。おそらくイギリスが欧州連合の『イグニッション・プラン』に参加しているがゆえに他国から「技術を独り占め」されるのを防ぐために妨害をかけられているのだろう。更にはその他国達から「内包技術をすべて提供しろ」と念を押されているらしい。

 

しかし残念ながら、そこは凪紗ががっちりとプロデクトを掛けており、たとえプロのハッカーが百人集まろうが千人集まろうが破られることのないように一秒一秒ごとに億桁を超える解除パスワードを変更するよう仕組まれている。つまり解除方法は『一切なく』、仕掛けた当人の凪紗にも破れないものだった。だが当の本人は解除する気は全くなく、むしろ内包されている情報含む所持しているすべての技術は別の場所に保管しており、一切問題ないようだった。

 

さらに前述したもののせいで参加国すべてが頭を悩ませ『織斑円夏』の待遇をどうするか検討中らしい。

ついでにかなり今更で紹介してはいないが、円夏の『ホワイト・グリント』は第五世代というものに属するもの―――最新技術の固まりでできたもので、本人のポテンシャルと合わせれば純金どころか1000カラットダイアモンド以上の価値をたたき出すことになる。

そのせいで各国の首脳は頭を死ぬほど悩ませているらしい。

 

 

次に凪紗。

本人はどこの国にも属する気は一切、決してなく、中立を貫く気らしい。しかし、他国からしてみればそういうわけにもいかない。彼女が所持して「いた」第六世代型IS『黒桜』や篠ノ乃凪紗の持つ数々のオーバーテクノロジー。これを価値で表すとすれば、外宇宙や異世界から来たエネルギー改善につながる多様性万能エネルギー生産永久機関。またはそれを手にするだけで世界の支配者になれる宝具。そして一瞬にして地球を四十六億年前の姿に戻せる兵器(つまり地球の表面を消し炭にする兵器)。たとえを出したらきりがない。

 

もちろんそんなものを国が放っておくわけがなく――――といっても、凪紗の場所を知っているのは三国だけであるが。もし存在が知れ渡ったら第三次世界大戦の開戦に繋がりかけない。

 

日本政府はこちらに入るようアピールを四六時中しているが、凪紗からしてみればコンクリートの道にくっついているガムが靴裏についてうっとおしいとしか感じられないらしい。当然拒否を続けている。万が一承諾しても協力する気は一切ない模様。

 

ドイツ政府は彼女に一切手出しする気はないらしく、そもそも十分に技術が手に入っているので特に関与する気はないらしい。ある意味凪紗と友好的といえよう。

 

アメリカ政府―――は一切存在に気付いていない。というか、気づいているのはただ一人の男、『エレン・O(オブリヴィオン)・クリストファス』という協力関係の人物しか知らない。彼と凪紗の関係については、またいつか。

 

 

―――そして、その二人であるが、今どうしているかというと。

 

「―――うぇぇぇぇぇぇ…………ごほっ、うっ、おぇぇぇぇぇぇぇぇ……」

 

凪紗は岩陰で吐いていた。その隣ではそれを介抱する円夏。

 

「な、凪紗?大丈夫?」

 

「だ、だいじょうぶ、じゃな……おぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ」

 

ゲボゲボと胃の中の液体をすべて地面にまき散らす。更に凪紗は頭に脳をちくちくと刺すような痛みと嘔吐感がからだ中に広がっていた。原因は、おそらくアルコール大量摂取のせいだと思われる。その証拠映像、どうぞ。

 

 

『おい……ひっく……そんなちびちび飲んでないで……ひっ……もっとぐいっっといけ』

 

『あ?アンタ私にアルコール推奨してくるだけでなく一気飲みも勧めんのか?ほんとに教師かよアンタ』

 

『あ~?………いいからやれオラァぁ。見てるこっちが……ひっく……忙しないんだよ……ほらくいっと』

 

『……?おい、千冬さん?あんたビール何本飲んだんだ』

 

『ん~~~?大体、ひっく……八本?程度かな?』

 

『――――!?ちょ、アンタ完璧に酔ってんだろ!うわ酒臭ッ!?』

 

『お~~~~~~~い……年長者からの勧めだぜぇぇぇ~~~~?悪いことはないからさっさとやってみろぉぉ~~~~』

 

『ちょ、ほんと近づかないで!臭い!めっちゃ臭い!』

 

『いいからやれっつってんだろこらぁぁぁああああああああああ~~~~~~~~!!!!』

 

『ま、マジで勘弁してくれ―――ッ、や、やめ』

 

『ヒィィィィィィィィィャッハーーーーーーーー!!!!』

 

『きゃああああああああああああああああああああッ!!!???』

 

 

台詞だけで察しが付くだろう。ついでにこの後凪紗は酔った千冬に三、四本飲まされてダウンしたとさ。

 

「こほっ………くそっ、まさかナノマシンを切っていたのが仇になるとはっ……おぶっ………も、もう二度とあの人と一緒に飲んだりしない……」

 

「あ、あはは……お姉ちゃんも一応反省はしているみた」

 

千冬の様子を見に円夏が振り向いてみる。すると―――

 

「おぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼ」

 

「…………」

 

バケツに吐いている千冬が見えた。しかも吐いている量が半端ではなく、バケツは五リットルほど入れそうなのに積はもう半分を切っていた。

そりゃ350ml分のビールを八本も飲んだのだから、これだけ吐くだろう。だぶん。

 

「の、飲み過ぎおぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼ……たっ。くそっ、まさか完全に酔うまで飲むおぼろろろろろろろろろ……」

 

「お、織斑先生!?まさか、飲んだんですか!」

 

「や、山田先生、これはちがおろろろろろろろろろろろろ……」

 

さすがの山田先生もこれにはドン引き。しかしちゃんと声をかけるあたり聖母並に優しいと見える。もちろん整列している生徒は誰一人手口を開こうとしない。いや、できないのだろうか。

 

 

そしてそのまま、三十分ほど時は流れた。

 

 

「――――さて、それでは各班ごとに振り分けられたISの装備試験を行うように。専用気持ちは専用パーツのテストだ。………あー、頭痛い……」

 

皆気まずい雰囲気の中で「……はーい」と静かに返事をする。一年生全員が整列して集まっているのに、音量は一人で叫んだほうが大きいと感じられた。そしてそのまま皆は解散。自分たちのやり場へと行く。

 

ちなみに現在位置はIS試験用のビーチで、四方を切り立った崖に囲まれていて、まるで学園のアリーナのようにドーム状になっている。それと大海原に出るには一度水面下に潜って、水中のトンネルから行くらしい。

 

「ふぅぅぅ………鎮痛剤とアルコール急速分解剤……効くなぁ……」

 

そこらへんの岩に腰かけていた凪紗は鎮痛剤をガリガリかじりながら頭を抑える。

実は彼女、専用機持ちながらも一切やることがない(・・・・・・・・・)。何故なら、今は専用機がないからだ。彼女の専用機『黒桜』は『金色桜』をダメージレベルAの状態で使ってしまい、オーバーロードを起こして大破してしまった。

 

あの時凪紗は身体能力がひどく落ち込んでおり、VTシステムで生み出された化け物からラウラを救出するにはそうするしかなかったのだ。凪紗にとっては苦難の選択だったが、黒桜は選択を受け入れ、実行した。

 

そして大破後、黒桜のコア―――黒騎士のコアは秘密のラボに保管・管理している。ISのフレームがない今ではコアを持っていても仕方のないことなのだから。

だが、いつでもこちらに転送できるように細工をしているので、盗難の心配はないと思われる。

 

「……じゃあ、なんでフレーム開発を移送でいるのかねぇ……」

 

自分に自問してみた。

答えは……わからなかった。嫌な予感がするからか?いいや、訓練機、最悪生身で行けばいい話だ。じゃあなんだ?

 

「………はぁぁぁぁぁぁ」

 

深いため息をつく。物事が分からないということはこんなにも気持ちをもやもやさせるものだったのか。と、凪紗はもう一度「はぁぁぁ」とため息をつく。

 

「ああ、おい篠ノ乃。お前はちょっとこっち来い」

 

「え?なんですか?」

 

「はい」

 

俯いていた凪紗は千冬の呼びかけによって立ち上がり、千冬のいる場所へと向かった。同じく箒も向かっている。

 

「お前は呼んでいない」

 

と、着た途端千冬から凪紗へと呆れの言葉が放たれる。

 

「……仕方がないでしょうが。苗字が同じなんだから」

 

「そ、それはともかく。織斑先生、私に何か用でしょうか?」

 

気まずい雰囲気になりかけていたものの、箒が渾身で話をずらして千冬に問いかける。

 

「そうそう。お前は今日から専用機―――」

 

「ち~~~~ちゃ~~~~~~~~~~ん!!!凪っち~~~~~~~~~~~~!!」

 

かなりデカい声が耳に入り、そちらを向いてみる。

するとどうだろう。砂煙を巻き上げながらこちらへと猛突進してくる人影がある。並の人間ならISか何かをつけているのだろうかとおもうだろうが、千冬と凪紗は違った。この声の持ち主は知っている、それが確かならなら生身だろうと。その人物は――――

 

「……ね、えさん?」

 

あの人にとって立ち入り禁止という概念は道端のゴミ同然。篠ノ乃箒、篠ノ乃凪紗の姉にして世界的指名手配犯。稀代の天災・篠ノ乃束は遠慮なく臨海学校に乱入してきた。

 

「千冬さん」

 

「ああ」

 

意気投合した二人は、片腕を肩の位置まで上げて構える。

 

「やあやあ!会いたかったよぉぉぉぉぉ~~~~!!ちーちゃん、凪っち!!さあ、ハグ、ハグハグしよぉ~~~~!!それ、愛のラブラブタック―――るっ!?」

 

とびかかってきた束の頭をガシッと二人。頭蓋を捕まれた束は走ってきた勢いのまま、二人の背中にあった崖へと投げ飛ばされる。

 

「プ―――――――ッ!!??」

 

そんな行動に箒は心底驚愕したらしく吹いていた。当然といえば当然だろう。

 

そしてドカァァァァァン!!!と束は崖の壁にたたきつけられた。蜘蛛の巣のような模様のクレーターを作りながらずりずりと剥がれ落ちて地面に顔から全身を叩き付けられる。

というコンボを喰らったにもかかわらず、束は何事もなかったかのように飛び上がる。当然のように傷一つ負っていなかった。

 

「いたたた………もーひどいよちーちゃん、凪っち~~……」

 

「いきなり飛び込んでくるやつが悪い」

 

「いきなりハグしようとしてきたやつが悪い」

 

と完全に悪いほうは二人のはずなのに、なぜか皆には正論に感じられた。強者ゆえの説得力というやつなのだろうか。

 

「ちぇ~~~~………隙ありーーーーーッ!」

 

どこに隙を見つけたのだろうか。束は再度とびかかる――――がしかし、やはりというかなんというか、千冬に顔面を鷲掴みされてしまった。更に千冬の指は顔に思いっきり食い込んでいる。

 

「うるさいぞ、アホが」

 

「くぬぅぅ……相変わらず隙が無いし、友人に対して容赦ないアイアンクローとは」

 

「お前はどちらでも変わらんだろうが」

 

「まぁそうなんだけどね―――とうっ」

 

誰もが抜け出せないであろう千冬からの拘束を何の苦も無く抜け出す束。もうこの時点でこの者の人外さが知れるだろう。空中で一回転して着地した束は、今度は箒の方を向く。

 

「やあやあ箒ちゃん。元気~?」

 

「……はい」

 

「にへへへ、久しぶりだねー。こうして会うのは何年振りだろうね。おっきくなったね、とくにおっぱ」

 

ドガッ。

 

発言が終わる前に箒が持っていた鞘が束の頭を叩いた。それでもダメージにはなっていないだろうが。

 

「殴りますよ」

 

「な、殴ってから言ったぁ………。しかも日本刀の鞘で殴った!ひどいよ箒ちゃん!ひーどーいー!」

 

頭を押さえながら涙目になる束。そんなやり取りを、山田先生含む全員は唖然として眺めていた。

 

「え、えっと、この合宿は関係者以外―――」

 

「んんんんん???変なことを言うね。ISの関係者というなら、一番はこの私だと思うけどなぁぁぁ~~~~????」

 

「えっ、あっ、す、すいません、そ、そうでしたね」

 

急に顔を近づけられた山田先生は気押され、おろおろとしながら黙ってしまう。束という人間は基本何を言っても聞かないので、放っておくことが一番である。無理に関与しようとしたら、どうなるか分かったものではない。

 

「おい束。自己紹介ぐらいしろ。うちの生徒が反応に困っているぞ」

 

「え~~~?めんどくさいなぁ。んじゃ、私が天才の束さんだよ、はろー。ご機嫌いかが~?はっぴーうれぴーよろぴくねー。さあ一緒に」

 

「「「……………は、はっぴー……」」」

 

改善するどころかさらに悪化している。もうあきらめたのか、千冬はこめかみを抑えて唸っていた。

当の本人は「ノリ悪いなー」とつぶやいて、もう興味を失ったように後ろを向く。

 

そしてそこでやっと女子一同は、目の前にいるのが最初のIS開発者、篠ノ乃束であることに気づいたらしくはっと我に戻った。――――だが、騒ぎはしない。なぜかって?

 

((((いや、いつも開発者みているんですがそれは………))))

 

一同が同時にそう思い、凪紗のほうを向く。

全員の視線を受けた凪紗は何事か?と首を傾げた後「ああ」とつぶやき現状を理解した。

 

「ちっ……ったく、もう少しまともにできんのか、お前は………おい一年、手が止まっているぞ。手を休めるな!こいつは無視して構わないからテストを続けろ」

 

「こいつ~?こいつとはひどいなー。らぶりぃ束さんか世界一かわいい束さんと呼んで」

 

「五月蠅い、黙れ」

 

そんな旧知の間柄である二人のやりとりに、間に割って入ったのはいまだにおろおろとしている山田先生だった。

 

「え、えっと、こういう場合どうすれば……」

 

「無視を貫いてください」

 

即答だった。

 

「え?あ、はい、わかりました」

 

「むむむ、ちーちゃんが優しい………。束さんは激しくじぇらしぃ。このおっぱい魔人め、たぶらかしたな~!」

 

言うなり、山田先生の豊富な胸のふくらみを手にしようと飛びかかる束。その手は豊満なふくらみを鷲掴みにする――――直前。

 

パァァァァンッ!!

 

束の脳天に日本刀の鞘が直撃し、真下の地面に束の顔面は埋まった。

すぐに束は埋まった顔を抜いて、後ろを振り向く。

 

「ひ、ひどいよ凪っち~!痛いよ硬いよ怖いよー!」

 

「…目を離した途端これだから来るなって言ったのに………大体、胸なら姉さんのがあるだろ?」

 

「むふっ、凪っちたら束さんより胸がないからって―――」

 

「死ね」

 

パァァァァァァァァンッ!!!

 

先ほどより強烈な一撃により、またまた束は砂浜に顔をうずめる。これがたった二人でISの基礎理論と実証機、果てには今の今まで使われている汎用性激高OSの開発者(厳密に言えばOSの八割は凪紗が開発したようなものだが、それを言うと基礎理論自体は束一人で開発したようなものである)とは他人が見たらとても思えないだろう。

 

「姉さん、それで、頼んでおいたものは……」

 

「――――は?」

 

凪紗が一瞬箒の言葉を疑う。しかし同時に地面に埋まっていた束はガバッと顔を上げて目をキラキラと光らせた。そのせいで質問するタイミングを失ってしまう。

 

「うっふっふ。それはすでに準備済み。さあ、みんな上を向いてごらん!」

 

びしっと遥か上空を指さす束。そのとこ場に従い、皆が空を見上げると――――正八面体の物体がこちらに向かって急速落下してきていた。

 

即座に空気抵抗と落下速度、角度から落下位置を見出した凪紗は、すでに握っていた拳を緩める。束もどうやらちゃんと考えていたようで、全然笑みを崩していなかった。

 

そして落下してくる物体は地面にぶつかり轟音を立てる。かと思いきや、ブオンと何らかの抵抗が生じたように地面ぎりぎり五センチのところで静止した。だがさすがに追い風は消えないようで女子数名が「きゃっ」と小さな悲鳴を上げる。

 

「反重力装置でも積んでるの?」

 

「んー、ちょっと違うかな。慣性やら衝撃やらを多次元に逃がしているだけで――――ああ、ここは凡人だらけだから言っても無駄かー。ま、凪っちならこんなものすぐに開発できるだろうし、わざわざ説明しなくていいよね?」

 

束からさりげなく毒舌が放たれたが、凪紗は気にとどめることもなく、落ちてきた正八面体の表面を触っている。

 

「……で、これはどいういうこと?」

 

「え?箒ちゃんから言われてなかった?」

 

「……箒、説明」

 

口数をできるだけ少なくした質問が箒に放たれる。それを苦しい顔で受け止めた箒はかなり口が重くなる。しか口を開けるしか道はないのを理解した箒は、少しずつ口を開く。

 

「……ISの製作を、束姉さんに頼んでいたんだ」

 

「理由は?まさか、私に頼んだらまずいことでもあったの?」

 

「違う。ただ……最近、姉さんが疲れているみたいだったから、少し、抵抗が……」

 

疲れている。その通りだった。現に凪紗はここ一か月間まともに食事や睡眠をとっていなかったことで、疲労は臨界点寸前に達している。だからこそ、死人に鞭打つ気にはなれずに仕方なく束に頼んだのだろう。

 

さすがにこの理由は理になっており、納得せざるを得ないことに困惑しながら凪紗は顎を撫でる。

 

「……別に、頼んでくれてもかまわなかったんだけどね。………まあいいや、私のためを思ってくれたみたいだし。――――専用ISを得たい理由については深く追及にないことにするよ」

 

「っ………」

 

かなりの図星だったらしく、箒は唇をかんでいる。

 

(……別に責めているつもりはないんだけどなぁ)

 

自分の表現力が足りないのかと、凪紗は自分のコミュニケーション能力について、もう一度見直すことにした。

とここで、雰囲気ぶち壊しの明るい声がこだまする。

 

「じゃじゃーん!これぞ箒ちゃん専用機ごと『紅椿』(あかつばき)!――――のつもりでしたが。新たなテクノロジーによって昇華したので、改めその名も『紅蓮華』(くれないれんげ)!全スペックが現行ISを今は(・・)上回っている束さんお手製の、人というモノが乗れる(・・・・・・・・・・)限界スペックを保持したISだよ!」

 

正八面体の金属の固まりが一瞬にして周りの壁が剥がれ落ち、その中身をあらわにした。

それは、真紅。全身に真紅の装甲まとわせた機体。表面には花のような絵が金色で描かれており、たださえ美しいそれをもっと際立てている。更に新品なのだろうか、表面は何の汚れもなく、ただただまぶしい光を反射し続けていた。

 

―――っておい、今さらりととんでもないことを言わなかったか?人というモノが乗れる限界スペックを保持した?バカ言え。

 

そう、いくらスペックが高くても、操縦者がそれを使いこなさなければ意味はない。しかしこの場合は逆だ。操縦者が機体の力を引き出せば引き出すほど、操縦者の体は破壊という枷に蝕まれていく。つまりは、引き出してしまったら戦闘で不利になってしまい、高スペックの意味はないのだ。そんなものを自分の妹に託すとは、馬鹿げている。いくら箒の身体能力が人間の境地付近に達しているとはいえ、彼女はまだ人間なのだ。

 

「姉さん、ちょっと―――」

 

「だーいじょうぶだいじょうぶ。箒ちゃんにこの機体の力をフルに引き出すなんて、できるわけないでしょ?(・・・・・・・・・・)

 

「………なんだと?」

 

一瞬束が何を言っているのか凪紗は理解できなかった。

 

「ISっていうのはね、いくら長時間乗っている奴でも、力を引き出すのに必要不可欠な洞調律―――つまりIS適正いうのが60%(適正S)を上回らないんだ。ISってのは本来そういうもの(・・・・・・)なんだよ。もし、この壁を突破した人はよっぽど互いに信頼、いや、愛し合っているか。それでも70の壁は超えられないんだけどね。もし超えてしまったら………最悪、『融合』しているだろうね。凪っちもさ、適正EX、つまり69,999999etcetc止まりでしょ?」

 

「……理論上の話だろう、それは。万が一」

 

「たしかに、万が一そんな事態も起こるかもね。でもさ、それは涅槃静寂分の1%を下回っている。ここまでくるともう0%との違いはほとんどないよ?それに――――そんな危ないものに妹を乗せるわけないでしょー♪?ちゃんと制限装置(リミッター)は掛けてあるからだいじょーぶっ☆キラッ」

 

「……ちっ」

 

「まったく、心配性なんだから~。さ、箒ちゃん、今からフィッティングとパーソナライズをはじめようか!私と凪っちが補佐するから一分かからないよん♪」

 

「……それでは、頼みます」

 

「堅い硬い~。姉妹同士、少しはキャッチーな呼び方で――――」

 

「さっさとやるぞ姉さん。私もやることがあるんだから」

 

傍から見れば、とても姉妹のやり取りとは思えなかった。それほどに、三人の間に入った亀裂は深く、大きいものなのだろう。

 

「ん~。まあ、そうだね。じゃあはじめようか」

 

ポチッと束はリモコンのボタンを押す・すると紅蓮華の装甲が割れ、操縦者を受け入れる状態に移る。しかも自動的に膝を落とし、乗り込みやすい姿勢へと変わった。

そして全身に何かのケーブルが繋がれる。

 

「箒ちゃんのデータはある程度先行してあるから、あとは最新のデータに更新するだけだね。さてさて、凪ちゃん」

 

「了解っと」

 

二人が掛け合った刹那、計三十二面(・・・・)もの投影型ディスプレイが現れる。半分はキーボード、半分は画面のようで、二人は高速で画面に目配りをする。それと同時施行で、二人の指が神速で動き、それぞれ八面ずつのキーボードを叩いていった。

 

「ったく、人間てなんて腕が二本しかないんだ?不便極まりない」

 

「神の趣味かもねー。戯言はこのぐらいにして、っと。近接戦闘を基礎に万能型に調整してあるから、すぐに馴染むと思うよ。あとは自動支援装備もつけておいたからね。お姉ちゃんが!」

 

「……って、この自動支援装備、射撃精度がひどくない?なにこの十発中八発しか当たらないような精度」

 

「それだけ当たれば十分だと思うよ~?」

 

「しかもこれ静止している敵に対しての結果でしょ。いくら近接戦闘がメインだからって敵に「当たらなければどうということはない」とか言わせるつもり?」

 

「んもー、細かいなぁ。射撃武器の開発なんてほとんどしたことないからしょうがないにゃーん」

 

「はぁぁ……私が調整するから、自動防御アシストと姿勢制御装置の微調整、頼んだよ」

 

「りょーかいりょーかい!」

 

そんなやり取りを交わし、二人の指の速さはさらに早まる。もう残像を残しそうな勢いで、画面の文字の羅列が高速で流れていく。

 

「ん~、ふ、ふ、ふふふ。箒ちゃん、筋肉ついたねぇ~。剣の腕も上がったみたいだし、お姉ちゃん、感・服!」

 

「…………」

 

「あっちゃ~、無視されちった♪――――はい、セッティングかんりょー。おっつー、凪っち」

 

といいつつ、二人の手はまだ動いている。まだ微調整は終わっていないのだろうか、その証拠に、箒の体を包んでいる装甲が激しく震えて大きさを変えている。

 

「あの専用機って、篠ノ乃さんがもらえるの……?身内ってだけで」

 

「だよねぇ。なんかずるいよねぇ」

 

ふと、群衆の中からそんな声が聞こえた。それにまず一番に反応したのは、なんと束だった。

 

「おやおやぁ~?歴史の勉強を一からやり直したほうがよさそうなバカがいるぞぉ?有史以来、世界が平(・・・・・・・・・)等であったことなど一度もないよ(・・・・・・・・・・・・・・)。いや、そもそもこの世界に平等なんてないよ(・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

「姉さん、滑稽なことは放っておいてさっさと作業して」

 

「おっとごめんごめーん」

 

ピンポイントに指摘を受けた女子は傷を深くえぐられたような顔をして作業に戻る。それをどうでもいいというように緩めた手を加速させながら束は作業に戻った。

そしてそれもすぐに終わり、束と凪紗はすべてのディスプレイを閉じていく。

 

「あとは自動処理に任せておけばパーソナライズもすぐに終わるね。あ、いっくん、白蓮見せて。束は興味津々なのだよ」

 

「え、あ、はい」

 

全ての作業を終えた束はぐるっと片足を軸にして振り返り、一夏の方を向く。それに応えて一夏が即時に白蓮を展開。体が粒子に包まれ、すぐに白蓮に身を包んだ一夏の姿があらわになる。

 

「んじゃ、ちょいと失礼。――――ぶすっとなっ」

 

束はスカート中に手を突っ込み、円柱状の何らかの装置を取り出して、先端についたコードを白蓮の装甲に刺す。すると、先ほどのと同じディスプレイが現れ、束の体を包んだ。

 

「………ふーん、ちょっと不思議なフラグメントマップを構築しているね。なんだろ?見たこともないパターン。いっくんが男の子だからかな?」

 

―――フラグメントマップとは、各ISがパーソナライズにより独自に構築・発展していく道筋らしい。簡単に言えば、人間のDNAのようなもの。

 

「束さん。そのことなんですけど、どうして男の俺がISを使えるんですか?」

 

「ん?ん~………どうしてだろうね。私にもさっぱり。……もしかして、いっくんがいっちゃんだったり?」

 

「いや、それはない」

 

「なははは。まあ、考えられる原因はいくつかあるんだけど、ありえないしね。まどうでもいいよ。問題は乗れるか乗れないかの結果だけだから」

 

「そ、そういう問題なんですか?」

 

結局答えは得られず、一夏は頭をポリポリとかいでいる。

 

「ちなみに、後付武装ができないのは何でですか?」

 

「そりゃ、IS自身が拒んでいるからだよ」

 

「え?」

 

「うーん、拒んでいるというよりも、容量がパンパンでもうこれ以上入れられないって感じかなぁ?ワン・オフ・アビリティを使うために容量の半分以上を使い切っちゃってるからね。雪羅を入れられただけでも奇跡ってもんだよ」

 

「そ、そうなんですか!?」

 

「そうだよー。ちなみに、作ったのは私と凪っち。魔改造しまくって原型をとどめさせなかったのはいい思い出だなー」

 

とそこで異論を言いに凪紗が割り込む。

 

「八割姉さんがやったんでしょうが。私は武装の改造しかやってないんだけど」

 

「まったまたぁー。装甲とか部品を限界まで減らして雪羅搭載の容量を確保しようって言ったの、凪っちじゃなかった?」

 

「………そこは、否定できんが」

 

図星のように額に脂汗をかぐ凪紗。

しかし、そこで一人の女子が束に声をかけてきた。

 

「あ、あのっ!篠ノ乃博士のご高名はかねがね承っておりますっ。もしよければわたくしのISを見ていただけないでしょうか!?」

 

と、完全に上ずった声で話しかけてきたのはセシリアだった。世界的有名人である束を前にして興奮しているのか、緊張しているのか、はたまた両方か。

―――しかし、束は。

 

「はぁ?誰、君。知らないなぁぁぁぁ?私って金髪の知り合い、いないんだけど。ねえ、いないんだよ?そもそも今は四人で仲良くお話し中なの。空気読んでよ。久しぶりに箒ちゃんといっくんに再開したの。凪っちと団欒しているんだよ。なのになんで部外者が顔出してくるのかなぁ?ねえ、馬鹿なの?そんな判断力もないほどの屑なの?どんな筋合いで君はしゃりしゃりしゃりしゃり出てくるのか理解不能だよ。わかる?君は家族と食事中に赤の他人がその場に乱入してきたみたいなものなんだよ?っていうかもう消えてほしいな」

 

突然吐かれた毒舌の数々。その視線は液体窒素並に冷たく、口調も完全に苛立ちを覚えたものだった。

 

「え、あの……」

 

「………え?聞こえなかった?消えてほしいって言ったんだけど?二度も言わせないでよ?」

 

「う…………」

 

ここまで明確に拒否されると、さすがのセシリアも苦しい顔をして引き下がった。いきなりの態度がほかの三人と月とスッポンほどの差ほどの違いに驚いている暇もなく追い返され、かなり落ち込んでいる。

 

束当人いわく『人間の区別がつかないね。わかるのはいっくんとちーちゃんと箒ちゃんと凪っちとまどっち。あとは……あの両親ぐらいだね。うふふ。他の人間?屑と滓の固まりだし興味はないね』だそう。

とはいえ、昔と比べればかなりマシになった。昔は他人を本気で無視していたらしい。(一夏談)

 

「はー、やっぱ外国人は嫌いだよ。くっさい香水なんてかけててさ。ほんと、何様?急に話しかけないでくれない?て思うほど図々しくて仕方がないよ。あー、臭い臭い。やっぱ日本時、日本人だねー。日本人サイコ―。ま、日本人もどうでもいーんだけど。というか世界がどうでもいんだけど。一週間で火の海にしてやりたいよ。いっくんと箒ちゃんと凪っちとちーちゃんとまどっち以外は」

 

「あと、父さんと母さんでしょ」

 

「え?……あー、そうだね。そうそう」

 

束の答えは、妙な感じだった。そう、まるで両親に興味がないように。

 

「まあ、どうでもいいでしょ。それよりさあ、いっくんさー、白蓮改造しない?しようよしようよ」

 

「え、えーと……ちなみに、どんな改造ですか?」

 

「えーとね、いっくんがふたな」

 

「却下!ノー、断固ノーですっ!」

 

「ええええ………?いいじゃーん、ちょっと又に違和感ができるだけだよ?」

 

「だからノーなんですよっ!」

 

「ええ~~~?」

 

「う、上目づかいしてもダメです!」

 

「ちぇー、けちー」

 

「あー、こほんこほん」

 

急に箒がわざとらしい咳ばらいをして、二人の間に割って入る。

 

「こっちはまだ終わらないんですか?」

 

「んー?凪っちー、終わった?」

 

と、束はディスプレイを眺めている凪紗に問いかける。答えはすぐに帰ってくる。

 

「ああ、今ちょうど終わったよ。オールグリーン、問題なし」

 

その答えを受けた束はすぐに指をパチンと鳴らす。刹那、紅蓮華に刺していたケーブルがパシュッ、パシュッと音を立てながら抜かれていく。

 

「んじゃ、試運転もかねて飛んでみますか。どう箒ちゃん、手足は動かせる?」

 

そう問われた箒はすぐに手足を動かし、手を握ったり開いたりしてみた。

 

「……はい。まるで自分の体みたい……」

 

「ふふっ、凪っちから渡された金属繊維人工筋肉と関節、役に立ってるみたいだね。じゃああとは―――飛んでみて」

 

「了解ッ!」

 

箒は瞼を閉じて意識を集中させる。刹那―――――紅蓮華は砂を盛り上がらせながら飛翔した。ともに爆風と轟音がビーチ中に響き渡る。

 

「きゃああっ!?」

 

「おわっ!?」

 

「………へぇ」

 

その急加速により発生した衝撃波に、周囲の生徒が悲鳴を上げる。それから皆箒のいるであろう上空を見上げ――――その姿を見失った。

唯一見失かったのはISのハイパーセンサーを使っている一夏と、その他人外三名だけだった。動体視力が高い専用機持ちでも、残した残像を見るのに精一杯。

 

「どうどう?箒ちゃんが思った以上に動くでしょ(・・・・・・・・・・・・・・・・)?」

 

「ええ、すごい!」

 

かなり上機嫌になったのか、楽しげな箒の声が、オープンチャンネルから凪紗の耳に入ってきた。

 

(そんなにうれしいのか………?しかしどうして専用機を欲しがったんだ?)

 

一人でうーんと悩んでいると、束の声が脳内に入ってくる。どうやらこの状態では集中もくそもないのを理解し、凪紗は上空を見据える。

 

「じゃあ刀使ってみてよー。右のが『雨月(あまづき)』左のが『空裂(からわれ)』ね。武器特性のデータ送るよん」

 

そういって多弁は空中に指を躍らせる。武器データを受けとった箒は、金属同士がこすりあう音を出しながら両腰にマウンドされている鞘から刀を抜いた。

 

「親切丁寧なお姉ちゃんからの解説~。雨月は対単一仕様の武装で打突に合わせて刃部分からエネルギー刃を放出、とりあえず簡単に言うと、攻撃に合わせて射撃できる武器だね~。射程は、大体アサルトライフルぐらいかなー。本当はレーザーにしたかったんだけどなかなか燃費がね~」

 

束からの開設に合わせ、箒は試しに右の手に持っている雨月で突きを放った。そして説明された通り、先端の刃からビームが放たれ、そのビームは遠くにある砂浜の砂が舞い上がらせた。

 

「つぎは空裂ねー。こっちは対集団仕様の武器だよん。斬撃に合わせて帯状の攻性エネルギーをぶつけるんだよー。こっちも簡単に言えば……飛ぶ斬撃と思って構わないよー。というかそのまんま。そんじゃ、これ、撃ち落としてみよっか」

 

言うなり、束は指を鳴らす。

同時に後方から強い光が発生。すぐに光は消え、包んでいたものが現れる。現れたのは百二十連マイクロミサイルポット。次の瞬間にはもう一斉射撃が行われていた。

 

「箒!」

 

「―――やれる、この紅蓮華ならッ!」

 

そう箒は気合を入れ直し、空裂を一回転するように一閃。束が言った通りに、斬撃の後から放たれた赤いレーザーが帯状に広がり約半数のミサイルを撃沈した。

だが残り半分がそのレーザーを避けて箒へと突進。しかし箒は冷静に今の状態を分析し、どうするかを関上げる。それは即座に決まり、決まったと同時にもう行動に移していた。

 

箒は急加速で後退。その最中に雨月を連射して向かってきたミサイルをまた半数減らす。そして一回ターン。前を向いてミサイル群から一旦逃走。それに応えるようにミサイルも加速していた。それを知ると箒は今度は急減速し、後方下に向かって加速。その結果、ミサイルは箒の上を通過することになり、一発たりとも箒には掠らなかった。そしてその隙を見逃さず空裂をまた一閃。今度はすべてのミサイルを巻き込む形ではなたれ、予想通りすべてのミサイルは鉄くずと化した。

 

「すげぇ……」

 

爆炎が空を包む中、その真紅のISと箒は爆炎より一段と赤く輝いていた。ほぼ全員がそのスペックに驚愕し、言葉を失って空を見上げている。

そんな光景を、束は満足して眺め、うなずいた。

 

「…………っ」

 

だがしかし、凪紗は違った。

 

(専用機が与えられたことで、箒は国々から引っ張りだこになる。しかも最新鋭機。見逃す理由はない。最悪、日本政府の傀儡になりかけない………それを理解したうえで、与えたっていうのか?姉さん)

 

そんな苦心を心に、凪紗は箒を見ていた。いくらいいものを与えたいからと言って、争いの原因となるものを妹だけには与えたくなかった。それも――――自意識過剰になりやすい、妹にだけは。

 

「た、たっ、大変です!お、おお、織斑先生っ!」

 

いきなり慌てふためく山田先生の声が聞こえ、凪紗と千冬は空から一旦視線を外し、向き直る。

いつも慌てている山田先生だが、今回はその様子が尋常ではなかった。

 

「どうした?」

 

「こ、こっ、これを!」

 

山田先生から渡された小型情報端末をみて、千冬の表情が曇る。

 

「特命任務レベル………S!?………っ、現時刻より対策を始められたし……」

 

その言葉に、凪紗が目を大きく見開き戦慄する。

 

「そ、それが、その、ハワイ沖で試験稼働をしていた―――」

 

「貸してッ!」

 

凪紗は即座に千冬の手から情報端末を奪い取るとその内容を目を配らせる。

 

「ハワイ沖で試験稼働をしていた軍用IS七機が突如暴走………現在進行で編隊飛行しており、約一時間後この地点を通過………そちらで対処しろ………って、おい、ちょっと待て!」

 

「っ……山田先生、急いで他の教師たちに連絡を入れてください。空域と海域を封鎖します」

 

「りょ、了解しましたっ!」

 

そう千冬に促された山田先生はすぐに走り去ってゆく。そして、凪紗の手から端末を奪え返した。凪紗もそれに反応し、千冬をじっと見つめてくる。

 

「おい、ふざけてんのかこれ?訓練機数機と生徒だけでこんなふざけたことに対処しろって、上層部は頭のねじが飛んでいるのか!?」

 

「おちつけ!今から即席で作戦会議を行う。お前も集まれ、いいな!?」

 

「っ………!?わかりました」

 

「よし――――全員!注目!」

 

千冬はパンッ!!と手を強くたたき、全生徒をこちらに振り向かせる。

 

「現時刻によりIS学園教師は特殊任務行動へと移る。今日のテストは中止。各班、ISを片づけて旅館に戻れ。連絡があるまで各自室内に待機すること。以上だ!」

 

「え……?」

 

「ちゅ、中止?なんで?特殊任務行動って………」

 

「状況が全然わかんないんだけど………」

 

不足の状態に、皆が困惑を顔に出して騒がしくなる。

しかしそれを、千冬は一括。

 

「とっとと戻れ!以後、許可なく室外に出たものは我々で身を拘束する!貴様らのために簡単に言おう―――――部屋から出たら身の自由は保障できないと思え!!」

 

「「「「はっ、はいぃ!!」」」」

 

全員が慌てて動き始める。接続していたテスト装備を解除、ISも起動終了し即座にカートに運ぶ。その姿は完全におびえているようで、原因は千冬が今まで命令形だったのに対し、今回は脅しに近い形だったからだろう。

 

「それから、専用気持ちは全員集合しろ!一夏、円夏、オルコット、凰、デュノア、ボーデヴィッヒ、凪紗――――それから、篠ノ乃、お前も来い」

 

「はい!」

 

妙に気合の入った返事をしたのは、今現在空から降りてきた箒だった。

 

しかしその隣にいた一夏は、嫌な予感を覚える。紅蓮華の圧倒的なスペック、そして箒の実力。どれをとっても怖いものはない。だが、それでも、一夏は嫌な予感をぬぐえないのであった。

 

(箒、お前、どこかおかしいぞ………?)

 

そして、その予感を覚えたのは、一夏一人だけではなかった。




さて、今回からシリアス(かも)展開が始まります。正直めっちゃぶっ飛んだ展開になると思います。(たぶん)

そういや、滅茶苦茶今更ですが、《強さ表》って一回もやったことないな、とほんとに今更思いました。折角ですし、一回書いてみようと思います。

《????》>『神の壁』>千冬>凪紗(本来)>束>>>>>凪紗(現在)>>>>>>>>『人だと越えられない壁』>>>>>>>>>>>>>ラウラ(その他大勢のシュヴァルツェ・ハーゼ隊員)=一夏>>円夏>箒>>>>>『人類限界域への壁』>>>>>>>鈴>>>>>>>『限界の壁』>>>>>>>『常人域の壁』>>シャルロット=セシリア>>『凡人の壁』>(その他大勢の生徒+一般人)。

……インフレにもほどがある。
正直人外三人がチート杉て笑えない。おかげでよっぽどピンチにでもさせないとまともに戦闘にも繰り出せないというね。
そして凪紗(現在)はある理由があって本来の力が出せない状態。理由については後々本編で出てくると思うんですが………それでも千冬に紙一重足りないってどういうこと?w。《????》についても本編で。

では、また来週。
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