天を衝く光
雨が降っていた。空を覆う鉛色の雲から絶えず雨粒が降り注ぎ地表を濡らす。雲間から時折、幾重にも折れ曲がった稲妻が世界を照らし轟きを上げる。
ここはデ・ネブラ。ニュード戦争の発端となった研究施設エイオースの残骸があちこちに点在する山岳地帯である。
山岳の至る所に崩壊したエイオースの一部が存在しており、時と共にその表面は苔や蔦状植物に覆われてさながら自然の芸術作品と化している。
至る所が切り立った崖になっており、一歩足を踏み外せば奈落の底へと転落し、容赦無い死が待ち受けている危険極まりない山岳地帯。そんな場所でも幾重もの火線が重なり、幾つもの爆発があちこちで巻き起こる。
『よくもまぁ、こんな場所で派手にやってるな』
『戦争に場所や時間も関係ないだろ、ゴダン』
デ・ネブラの東側、戦場を見下ろすことが出来るGRFベースから、あちこちで繰り広げられている戦闘を見ながらゴダンが呟く。ここは山岳地帯であることに加えてエイオースの残骸、更にはニュード回収設備も点在しており元から狭い戦場が更に狭くなっている。
当然ながらそのような場所で戦闘を行おうものなら必然的に戦闘は激しくなる。だが、バーコフが言ったように戦争に場所も時間も関係ない。そこにあるのは撃つか撃たれるか、殺すか殺されるか、勝つか負けるかの二者択一のみ。
撃った者が、殺した者が、勝った者だけが生き残り。撃たれた者が、殺された者が、負けた者は容赦なく死ぬ。どこまでもわかりやすくシンプルで極めて単純な結果が残る。それが戦闘であり戦争である。
『ようし、俺達もそろそろ行くぞ。今回の任務はサテライトバンカーを運ぶためのルートの確保だ』
バーコフが搭乗するスコープドッグが右手のショートバレルマシンガンで今回の任務目標――サテライトバンカーを指した。
楕円形の形をした衛星砲の誘導装置となるサテライトバンカー。威力は絶大の一言であり、GRFはこれをEUSTのコアに直撃させようと考えている。
しかし、衛星砲はサテライトバンカーを中心に発射されるため、これをコアに直撃させるには当然ながら敵のベース、しかもコアの真下でバンカーを起動させなければならない。
そこで今回のバーコフ達に与えられた任務は、敵を撃破しサテライトバンカーの運搬ルートの安全を確保するというもの。
バーコフのATが右手を振り上げると、それに応えるように彼の後ろに並ぶ四機のスコープドッグが同じく得物を持った右手を振り上げる。
先頭のバーコフ機が足裏のホイールを回転させるとATの足元からが泥が撒き上がり始めた。ホイールの回転数が一定を超えるとバーコフのスコープドッグは雨水と泥を撒き散らしながらベースを滑るように飛び出し、その後に続いて残る四機の同型のATもベースを後にした。
山肌の緩やかな斜面を滑らかに下り、狭いルートを一列に並んで縫うように走り抜ける。間もなくしてGRFのベースから最も近い位置で行われている戦闘エリアに到着した。
谷の向こう岸と手前に二つの建築物、間には建築物を繋ぐ橋が架かっており、EUSTにとってここは抜ければ目標のGRFベースまでのショートカットとなる重要ポイント。当然ながらGRFもこの場所を死守するために必死に抵抗している。
バーコフ達が到着すると同時に建築物の陰から飛び出して箸を渡ろうとした一機のブラストランナーが、向こう側から飛んできたロケット砲の直撃を胴体に浴びた。
胴体――つまりはコックピットに命中したロケット砲は爆発し、破片と爆風を撒き散らす。上半身を失ったブラストランナーは橋から崖に転落し、あっという間に霧の向こうに姿を消す。
バーコフは転落したブラストランナーの姿を一瞥するとすぐさま壁に張り付いた。後続の四機もそれぞれが物陰に隠れ得物を構える。
バーコフのスコープドッグが橋の向こうの様子を窺がう為に顔を出そうとした瞬間、弾丸の嵐が壁を穿った。鉄筋とコンクリートで出来た頑丈な壁も次々と襲い来る弾丸によって削られて行き弾痕を残す。何発かの弾丸は壁を貫通し、バーコフのATを掠めた。
暫くの間、橋の向こうから幾つもの火線が通り抜ける。やがて火線が収まるとバーコフはその隙を逃さず命令を下した。
『撃て!!』
物陰からバーコフ達のATに加えGRFのブラストランナーも合わせて顔を出し、銃火器のトリガーを一斉に引く。今度は逆にこちらが火線を放ち、橋の向こうに居るであろうEUSTのブラストランナーに向けて攻撃。
今度は反対側のコンクリートの壁を弾丸が穿つ。弾幕の中でも果敢に反撃を試みようとした数機のEUSTブラストランナーが、弾丸を浴びて動かなくなった。
マガジン一つ分を撃ち切ったバーコフが空になった物を取り外し、新たなマガジンを装着しつつ部隊員であるキリコに指示を飛ばす。
『キリコ、ここは俺達が押さえておく。お前はザキを連れて別の部隊を援護してくれ!』
『了解した』
『了解!』
バーコフは即座にこの場所での戦闘が長引くことを確信し、キリコとザキの二人を別の場所に向かわせることにした。ただでさえ現在のGRFは押し込まれている状況、更にこのデ・ネブラは幾つものルートが存在するために混戦に紛れてベースに向かう機体は十分に考えられる。
だとすれば、一箇所に戦力を集中するのは危険。どこでも良いのでとにかく前線を押し上げなければならない。キリコとザキが乗るスコープドッグは建築物を離れると、すぐ隣の小高い丘に向かう。
エイオースの残骸が巨大なトンネルの様に覆いかぶさる地点、ここでも戦闘が行われておりGRFのブラストランナーは岩場に隠れながら応戦していた。対するEUSTの機体も岩場やエイオースの破片に隠れながら一進一退の銃撃戦を繰り広げている。
キリコとザキは到着すると即座に手近な遮蔽物にATを移動させ、相手の攻撃が収まるのを待つ。銃声が幾分か収まってきた所で隠れている岩から機体の上半身を乗り出し、ATのマニュピレーターがマシンガンのトリガーを引く。
一定のリズムで鉛弾が吐き出され、回避が遅れたブラストランナーに数発の銃弾が浴びせられる。その隙を逃さずキリコの隣に隠れているザキがブラストランナーの弱点――メインコンピューターが収められている頭部に照準を合わせ、躊躇うこと無く引き金を引いた。
キリコのATが装備する物よりも銃口が短いマシンガンから同口径の銃弾が吐き出され、容赦無くブラストランナーの頭部を破壊する。
機体の全ての制御を行うコンピューターが破壊されたことにより、EUSTのブラストランナーは仰向けに倒れた。全身を人間の様に痙攣させ、関節や破損箇所から緑色のニュードの煙を吹き出し、やがて動力源であるニュードドライブが暴走し木端微塵となり消えた。
それに続くようにGRFの機体達も一斉に遮蔽物から身を乗り出し、得物を吼えさせる。負けじとEUSTも遮蔽物から銃火器だけを出して反撃。
キリコはマガジン半分ほど撃つと一端身を隠して相手の動きを観察する。相手は遮蔽物に身を隠しており、こちらの攻撃は中々通らない。榴弾砲や重装砲を持っているブラストランナーに砲撃支援を要請しようにも重装砲を持つ機体はここにはおらず、榴弾砲も相手の上には天井代わりにエイオースの残骸があるため無意味であろう。
エイオースの残骸――ふと、キリコはその残骸にターレットレンズを切り替えてピントを合わせる。よくよく見て見れば、残骸は長年の間に風雨に晒されたことによってあちこちが今にも剥がれ落ちそうになっているではないか。このまま大きな衝撃を加えれば残骸からパーツが剥がれ落ちるのは想像するに難くない。
キリコは火器管制で自身が搭乗するATの肩に装着されたミサイルポッドを選択。ロックオンをフリー状態にし、スコープに映る照準をエイオースの残骸に合わせ、発射。
十二発のミサイルが収められた長方形の箱から、二発のミサイルが推進剤の炎を噴き出し、噴射煙を残しながら残骸に向けて飛翔する。二つのミサイルは着弾すると即座に爆発、朽ち果てて老朽化が進んでいるエイオースの残骸に強烈な衝撃と振動を与えた。
それが発端となり始めはパラパラと小さなパーツの破片が、次に剥がれかけていた幾つかが、終いにはそれが連鎖となってブラストランナーを押し潰すほどの巨大なパーツが次々とEUST勢の頭上に降り注ぐ。
頭上の爆発にEUSTのブラストランナー達は思わず見上げる。そこには目前に迫る巨大なパーツの数々が。
あっという間に数機の機体が押し潰され、落下物を避けようと物陰から飛び出した機体は瞬時に弾丸の嵐によって屑鉄に姿を変える。
『分隊長、丘の上を制圧した。そちらの敵の横から攻撃を仕掛ける』
『よくやった、直ぐに頼む!』
動く敵機がいないことを確認すると、キリコは先頭に立ちATの左手を振って「ついて来い」とジェスチャー。GRFの部隊は右手を上げて応えると、ローラーダッシュで走り出したキリコのスコープドッグを追う。
バーコフ達と対峙している敵部隊の横を突く形で、幾つもの銃火器が火を噴いた。敵の部隊は丁度攻撃の手を休めている最中だったらしく、無防備な背中や頭部に幾つもの弾丸が襲い掛かった。
空になった弾倉を取り替えているため反撃することもままならず、殆どの敵は成すすべも無く命を絶たれ。僅かな敵は辛うじて武器を持ち替えて反撃を試みるも、構えた時には集中砲火を浴びて同じ末路を辿った。
建築物側の敵部隊の殲滅を確認するとバーコフとゴダン、コチャックを先頭にGRFの部隊が橋を渡ってキリコ達と合流する。
『助かったぜキリコ。このまま一気に敵を押し込むぞ』
バーコフ隊が先陣を切って前進、それに続けと言わんばかりにブラストランナー部隊も続く。次に彼らが向かったのは建築物から少し離れた位置にある塔。
円形の輪を三つ重ねたような三階建ての構造になっており、それぞれの階から顔を出して攻撃が可能という籠城戦にはうってつけの構造になっている。
GRF隊は岩やニュード回収設備等の遮蔽物に身を隠し、出来る限り姿勢を低くして反撃の機会を窺がっていた。
高所からの攻撃によりたとえ姿勢を低くしていても時折、銃弾が機体を掠める。更にはそれぞれの階がローテーションを組んでお互いの隙を埋めるように攻撃を仕掛けているためGRFは反撃に出ることが出来ない。
既に幾つかの僚機は撃破されており、時間と共にジリジリと数が減って行く。バーコフ達が歯痒い思いをしていると突然、耳に通信が入った。
『こちらGRFブラストランナー、遅れてすまない。只今より援護に回る』
『こちらバーコフ分隊、そちらに榴弾砲やエアバスターを持った機体はいないか? いたら大至急、戦場の中央にある塔に砲撃を頼む! このままでは全滅する!』
『了解、戦場中央の塔だな』
通信が終わるとバーコフ達の遥か後方。GRFベースから複数のくぐもった音と火の玉が撃ち上げられた。火球が鉛色の雨雲に消えてから数秒後、甲高い音が塔の周辺に響き渡る。
塔に籠城する敵機は何事かと辺りを見回し、GRFの部隊は塔の上空を睨んでいた。甲高い音は徐々に大きなり耳が痛くなるほどに大きくなると塔の上、雨雲を突き破り、空から三つの火の玉――榴弾が落ちてきた。
榴弾は積み重ねられた三つの輪を潜り、寸分違わず中央に着弾した。三発の榴弾が一斉に着弾したことで巨大な爆風と爆発が塔を揺るがす。
後に続くように雨雲から次々と榴弾の雨が塔に降り注いできた。榴弾群は塔の最上階から階層を破壊し、その階に潜んでいたブラストランナー、更には下の階の機体も巻き添えにして破壊の限りを尽くす。
榴弾の雨が止むと、後に残るはコンクリートの瓦礫の山にそれに埋もれたブラストランナーだった残骸が。
『助かった、礼を言う』
『気にするな。俺達はサテライトバンカーを運ぶ、その先に居る残りの敵は任せたぞ』
『ああ、任せておけ』
バーコフは通信を切るとちら、と空の様子を窺った。雨は着実に強くなっており雷もベースを出発した時よりもかなり激しくなっている。
「こりゃ、大雨になるな」とバーコフは小さく呟くと、足元のペダルを踏み込んでスコープドッグを走らせた。
戦局はEUSTからGRFに徐々に傾いていたが、遂にGRF部隊は敵ベース目前にまで迫った。彼等から見て右にそびえ立つ崖から流れる滝、その下を流れる川に架かる巨大な鉄橋を渡れば目的地であるEUSTのコアに辿り着ける。
敵は余計な戦力の消耗を避けるためか橋の向こうからじっと此方の様子を窺がっており、攻撃の気配は感じられない。既に戦意を喪失したか、あるいは抵抗を続けるのか。
どちらにせよGRFは既にEUSTの喉元に刃を突き付けた。あとはほんの少しだけ力を加えるだけで相手に決定打となる一手を打つことが出来る。
『ようし、行くぞ。一斉攻撃だ!』
バーコフの声を合図に数機のブラストランナーと五機のATがベースを目指して橋を渡る。相も変わらず敵に動く様子は無い。
ブラストランナーとATの混成部隊が橋の中程に到達した所で敵が動きを見せた。
装備しているグレネードランチャーやバズーカ砲であるサワードキャノン、更には固定砲台であるロケットターレットやミサイルターレットを撃ってきたのだ。橋の脇を流れる滝に向けて。
幾つもの爆発物が滝の頂上に着弾し瓦礫と水しぶきを撒き散らす。敵の突然の攻撃に警戒したGRF部隊は、その見当違いな方向への攻撃に思わず足を止めた。
『あいつら、何を考えてんだ?』
『血迷ったか?』
バーコフ分隊のコチャックとゴダンが疑問を口にすると、彼らの足元から振動が伝わってきた。
「地震か?」とザキが訝しがると揺れが徐々に大きくなってくる。それだけでなはい、それに合わせて明らかに地響きとは違う音が大きなってきた。
橋の中央で固まっているにも関わらず、EUSTのブラストランナーは滝を攻撃してからまたもや動きを見せない。まるで何かを待っている様に。
敵の意図に気が付いたのかバーコフはあらん限りの大声で叫んだ。
『橋から逃げろ!!』
彼の声に直ぐ反応したバーコフ分隊はATをその場で反転させて来た道を全速力で戻った。その動きを見て何かを感じた数機のブラストランナーも同じように来た道を戻る。
そして行動が最も遅れたブラストランナーは次の瞬間、崖から押し寄せてきた土石流に飲み込まれた。
大量の水と土砂に押し流されて、橋と共にブラストランナーは崖の下へとあっという間に流されていった。
『クソッ、これが目的だったか!』
『まんまと誘い込まれたか……』
ゴダンが悪態を吐いてバーコフは苦虫を噛み潰したように顔で呟く。
今、彼らの眼の前には激流が絶えず流れている。敵ベースへの唯一のルートである橋も流されてしまったため、完全に遮断されてしまった。
このままでは敵のコアを破壊することが出来ない、ヘリでベースに乗り込むという方法もあるが、この悪天候でヘリを飛ばすのは危険すぎる。仮にヘリを飛ばせたところで敵も迎撃してくることは確実なので、やはり危険であることに変わりは無い。
なんとかしてこの状況を打破し、サテライトバンカーを敵のコアの真下で起動させなければならない。
ブラストランナーやATに空を飛べる装備でもあればこの問題は解決するのだが、当然ながらそんな都合の良い物はあるわけがなかった。
『分隊長、カタパルトを使って敵のベースに乗り込むのはどうだ?』
『カタパルト? ベースに乗りこめるようなカタパルトなんてあったか?』
『ああ、あそこにある』
キリコのスコープドッグが指差した先。そこには崖から突き出たエイオースの残骸があり、その先端は丁度スキージャンプのジャンプ台の様に反り返っていた。
『キリコ、お前まさか……』
『ああ、そのまさかだ。ザキ』
◆
「キリコ、本気でやるんだな?」
「ああ、今更になって変更する訳にもいかない」
バーコフの問いにキリコは迷いなく答える。橋が流されてからおおよそ十分後、GRFの部隊は敵ベースを見下ろせる崖の上に居た。
キリコの提案した作戦は実に単純で分かりやすく、そしてどこまでも無謀極まりないものであった。
崖から突き出したエイオースの残骸をカタパルト代わりに使い、サテライトバンカーを持ったままジャンプ。そのまま敵のベースに乗りこんでコア下でバンカーを起動するという作戦。
この作戦に最適なのはアサルトチャージャーを装備した強襲兵装の軽量ブラストランナーであるが、生憎にもその二つの条件を満たせる機体は居なかった。
その代わりに作戦を立案したキリコ自身が自ら実行に移すと言い、誰も反対するものが居ないためそのまま作戦の準備が行われている。
キリコは自身の機体を極限まで軽くする為に取り外せるものは全て取り外していた。武装は勿論のこと、取り外せる装甲や右手アームパンチの弾薬、更にはポリマーリンゲル液も駆動に必要な最小限の量にまでするほど。作戦を成功させる為にもありとあらゆる手を尽くし、手順も綿密に練られた。
サテライトバンカーを持ったキリコのスコープドッグが走り出すと同時にGRFの部隊はEUSTベース内の敵機を攻撃、可能な限り露払いを行い少しでも安全にキリコが着地、バンカーの起動を行えるようにする。
失敗は許されない、極限の緊張と不安がGRF部隊の間に流れていた。
キリコはスコープドッグの軽量化を終えると降着姿勢の機体に乗り込んでハッチを閉めた。バーコフも同じく自分の機体に乗り込み、通信で準備が整ったことを知らせる。
狙撃銃を持つ者は崖の縁にしゃがんで敵ベースをスコープ越しに睨み、榴弾やエアバスターをもった物はディスプレイに映る座標と着弾地点の計算。他の武装を持った機体も崖の縁に並んで照準をベース内の敵機に合わせていた。
キリコはATにサテライトバンカーを持たせると、準備が出来た旨をバーコフに伝える。
『敵さんは俺達が撤退したと思っているらしい。チャンスは今しかないぞ、準備は良いか?』
『問題ない』
『頼んだぞ……。作戦開始!!』
バーコフの声を合図にキリコのスコープドッグが走り出した。それに合わせてバーコフ達とブラストランナー隊も攻撃を始める。
キリコはATを全開まで加速させて十分な助走を付けている。その間にEUSTのベースに向けて狙撃と砲撃、爆撃が一斉に降り注ぐ。
スコープドッグが残骸に乗った、足裏のホイールが極限まで回転し火花を散らす。目の前には反り返った先端が徐々に迫ってきた。
敵ベースに降り注ぐ一斉攻撃は、油断していたEUST勢に容赦なく襲い掛かった。次から次へと機体が破壊され、あっというまにベースの内部は火の海と化す。
そして、キリコの機体は残骸の反り返った先端をジャンプ台代わりに踏み切り。曇天の空を跳んだ。煤けた緑色の機体が白い楕円球を手に空を舞う。
一瞬の浮遊感のあとに下に強く引っ張られる感覚。目の前に降りたスコープに映る視界が下にさがって行く。
弧を描いて徐々にベースへと近づくスコープドッグ、十秒にも満たない飛翔の末。ベースを囲う壁の縁を掠めるようにして着地した。
雨でぬかるんだ地面を長々と惰性で滑り、壁にぶつかって停止。体勢を立て直してバンカーをしっかりと持つと目標であるコアに向けて走り出した。生き残っていた敵機が阻止しようと銃器を構えるが、崖の上から狙っている機体がその頭を貫く。
キリコは台座の上で緑色に輝くコアの下に到達すると、サテライトバンカーをしっかりと地面に固定し起動させる。座標が衛星に送信されたことを確認すると、素早くコアから離れた。
バンカーはまるで花が芽吹くように傘を開くと、中央のレンズから一筋の桃色の光が上に伸びる。光は徐々に太くなりバンカーを覆い隠しやがてはコアの傘を飲み込むほどに太くなった。
光が極限まで肥大化すると、空を覆う鉛色の雨雲を突き破って桃色の極太の光柱がコアに突き刺さった。光柱はコアはおろか、それを隠す傘もろとも破壊し尽くし安定していたニュードコアを暴走させる。
暴走したニュードコアは行き場を無くしたエネルギーが内部で徐々に高まり、それに合わせて穏やかだった光が乱舞する。
サテライトバンカーによる衛星砲が収まると、エネルギーを収めきれなくなったコアが暴発した。巨大な火柱を上げて、真上の雨雲に開いた穴に届くかと思うほどの火柱が噴き上がる。
その様子をキリコとバーコフ分隊、GRF部隊は静かに見つめていた。