アマゾンズチャレンジ!~千翼は仮面ライダーになれるのか!?~   作:エボルアマゾン

18 / 18
風都編はっじまっるよー⤴


第17話

「一体どういうことだね・・・・・・!」

「こっちが聞きたいくらいですよぉ・・・・・・!なんなんすかこの動画ァ!」

 

〈4C〉の無駄に広い局長室に困惑した声と怒鳴り声が響く。橘、黒崎、札森、加納の四名はモニターに映し出された昨日の正面ゲート監視カメラの映像を前に頭を抱える。

 

「賊が侵入したのは、まあいいとしよう。新型のドライバーが賊の手に渡ってしまったのも百歩譲ってよしだ。それを追った千翼と賊が戦闘になったのもまあ仕方ない。が!最後ぉ!賊ごと千翼が消えたのはどういうことだね!?」

「こっちが聞きたいっていってんだろぉ!―――ッァ、頭、痛え・・・・・・!」

 

苛立ちを隠すように室内を行ったり来たりしていた橘だったが、限界を迎えたのか声を荒げる。同じく既に限界を迎えていた黒崎が橘に対し怒鳴り返し、持病の頭痛が発生したのか片手で額を押さえ、ピルケースから取り出した錠剤を飲み込む。

 

「いやぁ、でも正直これは僕らの手に負える問題じゃ無さそうですよ・・・・・・?」

「ええ、私もそう思います。腕輪の信号はあの銀色のオーロラを潜った瞬間から完全に消失しています」

「何ですかねあのオーロラ。あの世にでも通じてるんですかね?」

「くだらない冗談を言ってる場合かね、札森!捕獲したアマゾンが脱走したとでも一部の政府関係者に知られてみたまえ!妙な横やりを入れられてこちらの足を引っ張ろうとするのは目に見えている!」

「やっぱ国家権力ってサイテーなんですね」

 

他人事のようにのたまう札森に「君の出向元だろう!」と顔を真っ赤にして怒鳴ろうとした橘だったが、すんの所で思いとどまり、一度深呼吸を行い気持ちを落ち着け「兎も角だ」と切り出す。

 

「先ほども言ったように千翼が行方不明となった事は、政府には報告しない。業務は通常通り行い、選抜した最小メンバーで千翼の捜索を行う事とする。黒崎、先日の事件だが千翼がいなくとも解決は出来るだろうの?」

「・・・・・・はぁ。ええ、問題無いです。元々、アイツが来る前からチームは問題無く機能してましたから」

「それならいいが、今回ターゲットは透明なアマゾンという報告を受けてるが・・・・・・」

「藤尾隊がバロンにヤツの匂いを追わせてるとこです」

 

頭痛薬が早くも効いてきたのか、米神を揉みながら答える黒崎。

 

「なるほど。姿が消せても匂いまでは、と言うことかね」

「バロンに大体の居場所を特定させてドローンで塗料をぶちまけて、ターゲットを視認可能状態にする。そのうえで特殊ペイント弾をぶち込んで、万が一逃がした場合も継続してバロンが追跡出来るようにしてやりますよ」

「よし。では引き続き進めてくれ。千翼の件は追って連絡する」

「了解、行くぞ札森」

「失礼しまーす」

 

黒崎と札森が局長室より退出し、後には橘と加納が残される。モニターには正面ゲートでの千翼と侵入者の戦闘がループ再生されている。

加納は感情の読めない目でそれを見ながら呟く。

 

「無事だといいのですが、千翼君」

「全くだ」

 

でなければ自分の立場が危うくなる、橘はそう独りごちた。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

≪Aが駆け抜ける!/風の街より≫

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

この街では風が様々なものを運んでくる。幸福、不幸、喜び、悲しみ―――力。

風が運ぶものたちはときにすれ違い、ぶつかり、混ざり合って新たな風になる。悲しいかな、それがいい物とは限らないのが世の常ってやつだ。

そんな『良くない風』は時としてこの街の住人を傷つけ、悲しみの涙を流させる。じゃあ誰がその涙を拭うか、分かるか?

警察?ああそうだな。大概の事件は警察が何とかしてくれる。けれど―――それでもどうにもならないとき、街の住人はこの事務所のドアを叩く―――この『鳴海探偵事務所』のドアを!

そしてまた、今朝の爽やかな風が一人の依頼人を運んで来た―――

 

「―――と、いった感じのモノローグをしていたね、翔太郎?」

 

二十歳よりかは下だろうか、髪をクリップで止めハードカバーの本を持った美青年の指摘に、ブッと飲んでいたコーヒーを吹き出す帽子を被った青年。ゴホゴホと咳き込みつつ、くつくつと笑う美青年を睨み付ける。

 

「おいフィリップ!お前いつから人の頭ン中が読めるようになったんだ!?」

「フフッ、実は昨日新しい検索対象を見つけてね・・・君は知っているかい?『読心術』というものを!」

「読心術ゥ!?」

「ああ!顔の表情の動きや仕草、体の筋肉の動きなどから相手の考えを直感的に相手の心の中を読み取る術さ。特に君とは長い付き合いだから僕との相性もバッチリだ。考えていることは手に取るように分かったよ。さらにこの読心術を使えば―――」

「分かった!分かったからちょーっと黙っててくれるか相棒!依頼人の前だから、な!?」

 

渋々といった様子で部屋の中央にある椅子に腰掛けるフィリップを横目に見ながら、ッンンっと咳払いをしながら対面のソファーに腰掛ける女性に意識を戻す翔太郎。二十歳前半の気の弱そうというか儚そうな印象を受けるスカーフを巻いた女性だ。二人のやりとりを聞いてナニを想像したのか顔を赤らめながら、両手で包み込んだコーヒーカップを啜っている。

 

「失礼、お嬢さん。相棒は優秀なんですがちょっとばかり変わってましてね」

「いえその、た、大変『仲がよろしい』んですね・・・・・・?」

「お嬢さんが想像しているのとは多分、いや絶対違うと思いますけど!?」

 

慌てて疑惑を否定する翔太郎。ただでさえイレギュラーズから疑惑の視線を向けられる事があるのだ。勘弁して欲しい、自分も相棒もノーマルだ。

翔太郎の力強い否定に驚いたのか縮こまり、「す、すみません・・・・・・」と小さく謝罪の言葉をこぼす女性。

 

「ええっとそれで、どこまでお話したんでしたっけ・・・・・・?」

「ウチに依頼をしたいってところまでですね。良ければ美しい貴女の名前を教えてくれませんか・・・・・・?」

「う、美しいなんて・・・・・・私は『崎下あや』といいます」

「あやさんですか、美しい貴女にぴったりの名前ですね」

「翔太郎、話が進んでないよ。それと彼女は僕の『読心術』によれば、君に媚びを売って―――」

「シャラーップ、フィリーップ!お口チャーック!いやーすいませんね、ウチの相棒が!続きをどうぞ!」

「は、はい。左さんは数日前に起きた殺人事件をご存じですか・・・・・・?」

「数日前っていうと、確か夜の人通りの少ない路地で男性が殺された事件のことですか?確か目撃者がいたって話でしたけど」

「・・・・・・その目撃者が、私なんです。殺されたのは私の会社の上司なんです・・・・・・!」

 

彼女の話はこうだ。

普段から良くしてもらっていた上司にお礼のつもりで、あるバーに案内していた途中で襲われたこと。

上司が自分をかばってくれ、凶刃に倒れたこと。

何とか逃げ出し、人通りのあるところで助けを求め、駆けつけた警察と現場に戻ると犯人の姿は既に無く、冷たくなった上司だけが残されていたこと。

そして、彼女が目撃した犯人は『怪物』だったこと。

 

「突然だったんです・・・・・・!青い体に、真っ赤な目をしたトカゲのような怪物が暗がりから襲いかかってきて・・・・・・!彼が私の盾になってくれて・・・・・・!ナイフのような指が彼の体を・・・・・・!」

「それは・・・・・・お辛かったでしょう。愛する人を目の前で・・・・・・」

「スン・・・・・・いえ、彼とはそういう関係じゃなくて・・・・・・彼は結婚していて、奥さんと共にお酒が大好きだそうで・・・・・・。だから私、お礼のつもりで奥さんと一緒にお酒を楽しめる所を紹介しようと・・・・・・!でもそのせいで、彼は・・・・・・!」

「あやさん、貴女のせいじゃない。貴女は善意から行動しただけだ。本当に悪いのは彼の命を奪った怪物だ」

「左さん・・・・・・ありがとう、ございます。警察にも相談したんですが、その後の事件の進捗が著しくないようで・・・・・・私いてもたってもいられれなくなって・・・・・・」

「ウチに来た、というワケですか」

「はい。この探偵事務所はそういった事件の専門家だと聞いて・・・・・・左さん!」

 

突如、話を聞いていた翔太郎の手を取り、自分の両手で包み込むあや。

 

「お願いです!彼を殺した犯人を見つけてください!」

「・・・・・・もちろんです。必ず犯人を見つけて、あやさん貴女の涙を止めて見せましょう!このハードボイルド探偵、左翔太郎にお任せください!」

「・・・・・・翔太郎さん・・・・・・!ありがとうございます・・・・・・!」

 

潤んだ瞳で見つめられ、崩れそうな表情筋をキリッと引き締め、そう告げる翔太郎。その後、あやは勤めている会社や被害者の名前―――『杉山野憲次』を告げ、進捗があれば連絡をお願いします、と言い残し事務所を後にした。まだ精神的なショックが大きく会社は休んでいるそうだ。

 

「彼女が目撃したという怪物、恐らくは―――」

「ああ、『ドーパント』だろうな」

 

この街に潜む力『ガイアメモリ』!人を超人―――いや怪人に変えてしまう魔性の小箱!これを使って怪人となったものを『ドーパント』と呼ぶ。ドーパントとなった人間は異能の力を手に入れ、警察でも手に負えなくなる。

顎に手をやりながらフィリップが翔太郎に問いかける。

 

「通り魔、怨恨。翔太郎、君はどちらだと思う?」

「俺は怨恨の可能性が高いと思うぜ」

「なるほど。通り魔なら逃げた彼女も追いかけるだろう。彼女がドーパントから逃げられる程の脚力を持っているようには見えなかったしね。彼女が見たのはあくまでドーパントとしての姿だ、変身前の犯人を見たわけではない」

「だから態々追って殺害する必要は無かったって事だな。よっし、早速捜査開始だな。俺は杉山野さんが務めてた会社に行ってくる」

「僕は使用されたメモリを検索するよ。といっても、見た目とナイフのような指だけで絞りきれるとは思えないけど」

「何か情報を掴んだら連絡するさ。じゃ、亜樹子が来たら伝えといてくれ」

「春奈ちゃんを幼稚園に連れて行ってからだから、お昼頃かな?兎も角、伝えておくよ。いってらっしゃい」

「おう」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

「全然ッ、分からねえ!」

「なーにが『全然ッ、分からねえ!』よー!」

「あ痛ー!」

 

『真面目にせい!』と書かれたスリッパがスパーンと翔太郎の頭を叩く。ふんすとふんすと鼻息荒くスリッパを翔太郎に突きつけ、問い詰める鳴海探偵事務所所長である彼女。

 

「朝に依頼を受けて、もう午後4時です!そんだけ調べて全然分からないとは何事じゃー!弛んどるぞー!」

「いや亜樹子、違うんだよ!被害者に恨みを抱いてそうな人間を調べたんだけどよお」

「え・・・・・・もしかして」

「ああ。みんな口を揃えて『あんないい人いない』ってよ。実際聴けば聴くほど、出るわ出るわいい人エピソード。上にも下にも慕われるいい人だよ。奥さんとの仲も良好そのものだ。社内にはファンクラブもあったみたいだぜ」

 

頭を抱えて告げる翔太郎。怨恨殺人だと思っていた事件だが、被害者に恨まれる要素がまるでなし。無論、本人の与り知らぬところで恨みを買っている線も考えたが―――

 

「少なくとも会社内には殺す程恨んでる人間はいねえ。事件があった次の日、警察の取り調べがあったらしいんで刃さんに聞いてみたんだが、奥さんと社内の人間はほぼ白だそうだ。全員アリバイが確認出来たってよ」

「うーむ。・・・・・・閃いた!じゃあさ、杉山野さんを襲ったドーパントは!依頼人が姿を見てるって!」

「そっちもダメだ。襲われた路地に防犯カメラの類いはなかったし、他に事件当時周囲で怪しい人物を見たって証言もねえ」

「そんな~・・・・・・そだ!フィリップクン、メモリの正体、分かったの?」

 

ペラペラと白紙の本をめくっていたフィリップに一縷の望みを掛けて、亜樹子が問いかける。が、フィリップは首を横に振った。

 

「ダメだ・・・・・・崎下あやの目撃証言だけでは絞りきれない。殺害方法も特殊なものじゃないから、そこからメモリの能力を割り出すことも出来ない」

「手詰まりだな・・・・・・。しゃあない、明日また現場に行ってみるか!」

「うん、そうだね!まだ諦めるには早い!現場百編だ!オー!」

 

気炎を上げる亜樹子と翔太郎。と亜樹子が思い出したかのように二人に告げる。

 

「あ、そうだ翔太郎クン、フィリップクン。竜クンがね、また手を貸して欲しいって」

「照井竜が?何か別の事件かい、アキちゃん?」

「まだ人が襲われたってワケじゃないけど、廃車置き場の車が一晩で全部ぺしゃんこになってたんだって!こっちは防犯カメラで犯人がドーパントで、メモリの正体まで分かってるそうなんだけど」

「なるほど、んで?何のメモリなんだ?」

「『ビースト』だって!」

 

亜樹子の言葉に翔太郎は顔をしかめ、フィリップは納得がいったと頷く。

 

「なるほど。『ビースト』は怪力と強力な自己再生能力のメモリだ。照井竜は『エクストリーム』による短期決着をお望みのようだね」

「『ビースト』かぁ。体は青っぽいけど、目は赤くねえしなぁ。今回の事件とは別口だな」

「世の中そー上手くはいかないよー。使用者と居場所が分かったら連絡するって!」

「りょーかい。ま、依頼とは別とはいえ、街を泣かせるヤツを野放しには出来ねえからな。ところで亜樹子、そろそろ春奈ちゃん迎えに行く時間じゃねえのか」

「おろ、もうそんな時間!?翔太郎クン、送っていって!」

「はぁ?歩いてすぐの所じゃねえか」

 

何言ってんだコイツ、といった顔で自分を見る翔太郎に対し、何言ってんだこのハーフボイルド、といった顔をする亜樹子。

 

「あのねー翔太郎クン、正体不明の殺人鬼と居場所不明の野獣が彷徨いてるのよ!うっかり帰り道でそんなのと出くわしたらどーするのよ!」

「あーはいはい、わかったわかった。春奈ちゃんになんかあったら照井が街ひっくり返す勢いで犯人探し出しかねねえからな。つーワケで、ちょっといって来るぜ、フィリップ」

「ああ。そうだついでにミックのキャットフードを買ってきてくれ」

「あいよ。亜樹子、どっか寄ってく予定とかあるか?」

 

買い物の予定をお互い確認しながら事務所を後にする二人を見送るフィリップ。事務所に一人となった彼は隠し扉を開き、自身のラボへと引っ込んだ。そこで彼は今回の依頼について整理する。

 

「犯人を見たのは崎下あやのみ。被害者の杉山野憲次は人に恨みを買うような人間ではなかった。・・・・・・そういえば彼女について検索していなかったな」

 

ホワイトボードに事件の要点を書き込むのを止め、白紙の本を片手に目を閉じ意識を集中するフィリップ。

 

「さあ、検索を始めよう」

 

次の瞬間、彼の意志は膨大な数の本棚が存在する空間『地球の本棚』に存在していた。ここは地球の全てが記録された場所。

 

「キーワードは『風都』『女性』『崎下あや』」

 

膨大な本の中から必要な情報を閲覧するため、キーワードで情報を絞り込む。該当しない情報が除外され、数冊の本のみが残った。その中から一冊を手に取ると、お目当ての情報だったようでフィリップは顔を綻ばせ―――

 

「・・・・・・なるほど。興味深い情報だ」

 

自身の『読心術』が間違っていない事を確信した。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「お兄さん、ちょっとすいませんね?私たちこういうものです」

「警察・・・・・・?刑事さん?」

「風都署超常犯罪捜査課の刃野です」

「同じく超常犯罪捜査課の照井です、君はここで何をしているんだ」

「え、これ職質ってやつ?」

「俺に質問するな」

「えっ」

 

風都にある公園で一人の少年が二人の刑事に職質を受けていた。赤い革ジャンを着た若い男とツボ押し器をもった中年の男だ。

少年は赤いストールを巻き、左腕に鳥の横顔をモチーフにした腕輪を付けている。トングで空き缶をビニール袋に詰めている。よく見るとスチールとアルミに分別されている。

 

「なにって、空き缶拾いですけど。小遣い稼ぎです」

「はあー、若いのに感心ですな課長」

「ああ、今時珍しいな。君、名前と住所を教えてくれるか」

「千翼です。住所はちょっと・・・・・・今はホームレスやってます」

「はあー、若いのに大変ですな課長・・・・・・ってホームレス!?お兄さん歳幾つ?」

「5歳です」

「・・・・・・馬鹿にしてるのか?」

「え、あ、ごめんなさい、(肉体年齢は)15歳です」

 

そんな会話を繰り広げているところに新たに一人近付いてくる人物がいた。身なりからしてホームレスであろう男性は、刑事二人にフレンドリーに話しかけた。

 

「刃野刑事に照井刑事じゃあありませんか。坊主が何かしましたか?」

「ああ、秀造さん。この子ホームレスってホントかい?」

「ええ、数日前からの付き合いですよ」

 

そう言って千翼が来た時のことを説明するホームレスの男性、秀造。

 

「数日前にね、ホームレス狩りみたいな目に遭いましてね。相手は一人だったんですけど大柄なヤツで金属バットまで持ってましてね」

「おいおい、物騒だなぁ。大丈夫だったのかい、秀造さん達」

「そこにこの坊主がやってきてね、『止めなよ、怪我じゃ済まないよ』って相手を止めようとしたんだよ。そしたらそいつ顔真っ赤にしてなんか喚き散らして、坊主に殴り掛かったんですよ!」

「おいおい坊主、大丈夫だったのか?」

「大丈夫だからここにいるんだけど」

 

それもそうだと納得する刃野を尻目に秀造に先を促す照井。

 

「俺たちも危ない!と思ったんですけど次の瞬間、坊主が振り下ろされた金属バットを片手でパシッと受け止めたんですよ!んでグイッと手を捻ってバットを奪い取ると、呆気にとられた大男を持ち上げてポーンと投げ飛ばしたんですよ!」

「へーこんな坊主がねぇ・・・・・・?」

 

疑うような目で見る刃野に対し千翼は近づくと、腰を掴みよいしょと持ち上げて見せた。

 

「高い高ーい」

「あ、コラ!降ろしなさい!降ろして!」

「おお・・・・・・どうやら本当のようだな」

「ね?でその投げ飛ばされたヤツ、その後もまだ喚いてたんですけど坊主が取り上げたバットをぶん投げて、そいつの頭の上の壁に突き刺さったの見たら、顔真っ青にしちまって『怪我じゃ済まないって言ったよね?』って坊主が言うと泡食って逃げ出したんですよ!」

「なるほど。だが何故君はホームレスを?親は心配しているんじゃないか?」

 

刃野を高い高いしていた千翼は照井の言葉にピタリと動きを止めると、刃野を地面に降ろし困ったような表情を浮かべる。

 

「いやぁ高い高いなんかされたの何十年ぶりだろうな、親父にやってもらった頃思い出しちまったぜ。・・・・・・どうした坊主?」

「・・・・・・親はもういません。母さんは少し前に死んで、父さんとは会ったこともありません」

「ッそうか、すまない軽率だった」

 

照井からの謝罪に「大丈夫です」と困ったような表情で答える千翼。若干重くなった空気を払拭するように刃野がわざとらしく「あーそうだそうだ!」と声を上げる。

 

「課長、秀造さんの話に聞き入ってこっちの話忘れてますよ!ほらほら!」

「ああ、そうだったな。すまない刃野刑事・・・・・・二人ともこの男に見覚えはないか」

 

そう言って照井が懐から取り出したのは画質の荒い一枚の写真だった。夜中に取られたのか暗い写真だが、はっきりと大柄な男が移っている。横顔しか見えないが、千翼と秀造には見覚えがあった。

 

「俺が投げ飛ばしたヤツだ」

「ああ間違えねえ!コイツ、なんかしでかしたんですかい?」

「ああ。この男にはガイアメモリ違法所持の疑いと器物損壊の疑いが掛かっている」

「ガイアメモリ!コイツそんなとんでもねえモンを!」

「非常に危険な男だ。見かけたら直ぐ警察に連絡を。特に千翼君、君に逆恨みしている可能性もある。十分に気をつけてくれ」

「わかりました(わからない)」

「(わかって無さそうだな・・・)君は―――」

 

どことなく話を理解していなさそうな千翼に照井が注意を重ねようとしたとき―――

 

「パパー!」

「おーい、りゅーくーん♡」

 

公園の入り口から照井を呼ぶ声が聞こえてきた。そちらを見ると小さな女の子と亜樹子が走ってきていた。

それを見た照井は仏頂面を一気に崩し、そちらに駆け寄り女の子を抱き上げる。

 

「春奈ちゃ~ん、どうしたんだこんな所で?幼稚園からの帰りかい?」

「うん!しょーたろーおじさんがママといっしょにむかえにきてくれたのー!」

「そっかー、よかったねー。」

 

デレデレ顔からスッと表情を戻すと翔太郎に向き直り

 

「礼を言うぞ、左。態々所長と春奈ちゃんの護衛をしてもらって」

「お、おう。いいって事よ。ていうかお前、急に真顔になるの止めろよな!ちょっと怖ぇだろ!後春奈ちゃん、翔太郎『お兄さん』だよ」

「おじさーん!」

「諦めろ左。君もそういう歳だ」

「まだ若ぇよ!」

「所長、すまないが今夜は遅くなりそうだ。安全の為、左とフィリップを夕食に招待するのはどうだ?」

 

無視かよ!と荒ぶる翔太郎をスルーして亜樹子に春奈を渡す照井。夫の過保護ぶりに苦笑いしながら春奈を抱きかかえる亜樹子。

 

「りゅーくんは心配性だなー。春奈ちゃーん、今夜は翔太郎おじさんとフィリップお兄ちゃんに遊んでもらおーねー」

「わーい!」

「おじさんっていうなぁ、亜樹子ォ!ていうかなんでフィリップはお兄ちゃんなんだよ!」

「うーんと、若さ?」

 

無慈悲な亜樹子の言葉に大ダメージを負う翔太郎。

 

「ところで左、所長から話は聞いているか」

「・・・・・・ああ、聞いてるよ。『ビースト』だろ?居場所がわかったら連絡してくれ・・・・・・」

「そう落ち込むな。大人びて来たと考えればいいだろう」

「大人びて・・・・・・そうだよな!ハードボイルって考えれば、悪くねぇよな!」

「翔太郎、お前・・・・・・」

「翔ちゃん、相変わらずだね・・・・・・鳴海の旦那、翔ちゃんは翔ちゃんのままですよ・・・・・・」

「あれ、秀さん。いたんですか?それにそっちの坊主は・・・・・・見ない顔だな」

 

空き缶をクシャクシャと潰していた千翼に気づいた翔太郎。新顔だなと声を掛ける。

 

「よう坊主。この辺じゃ見ない顔だな。俺は左翔太郎、鳴海探偵事務所のハードボイルドな探偵さ」

「探偵?すごい、初めて見た!俺は千翼です。よろしくお願いします、左さん!」

 

生まれて初めて見る探偵という職業の男。本やテレビの中でしか見たような所謂探偵ファッションに目を輝かせる千翼に気をよくする翔太郎。

 

「ああ、よろしくな。なんか困ったことがあれば、ウチのドアを叩きな。この街は俺の庭みたいなもんだ。どんな依頼でもたちどころに解決してみせるぜ」

「格好いい・・・・・・!これがハードボイルドってヤツかぁ・・・・・・!」

「~~~ッ!よせよせ、俺なんてまだまださ」

 

慣れない褒め殺しに帽子のツバを引っ張って緩んだ表情を隠す翔太郎。本当は飛び上がるほど喜びたいがグッと我慢だ、ハードボイルドってのはそういうもんだろ?と考えていることは照井たちには筒抜けであるが、初対面の千翼にはニヒルな口元しか見えず、格好いい大人だな、橘は見習え、と思っていた。

 

「おじさんうれしそー」

「そうねー春奈ちゃん。ハーフボイルドも初対面にはハードに見えるのかー。フィリップクンに教えてあげなきゃ!」

 

「―――へえ、じゃあ千翼はこの街の出身じゃないのか。風都には何をしにきたんだ?」

「ちょっと、追いかけてるヤツがいて。そうだ左さん、こういうヤツ見たことありませんか?」

 

と手に持ったトングで地面に絵を描く千翼。何枚ものプレートが突き刺さった人物―――ディエンドだ。

 

「なんだコイツ。人間か?」

「多分人間です。銃を使って変身してました」

「いや、見たことねえな・・・・・・なんでコイツを追っかけてんだ?」

「大切なものを盗まれちゃって・・・・・・それを取り返すために追いかけて来たんです」

 

なるほど、と納得する翔太郎。この世界にはガイアメモリ以外にも危険なテクノロジーが蠢いている。コイツもその類いだろうと判断した。

 

「すまねえな、今は別の依頼を受けててな。それが済んだら、俺たちがコイツを探してやるよ」

「本当!ありがとう、左さん!」

「まーた安請け合いして。目の前の依頼に集中しなさいよー」

「わーってるよ亜樹子。このハードボイルド探偵、左翔太郎に任せときな・・・・・・ってあれ、照井と刃さんは?」

「もう行っちゃたわよ、ビーストの居場所をさがすんだって。さ、私たちも帰るわよー。事務所でフィリップクン拾って、今夜は鍋パーティーよ!」

「おう。じゃあな秀さん、千翼」

「またね、左さん」

「じゃあな、翔ちゃん。さて坊主、俺たちも空き缶換金して帰るか」

「・・・・・・ねえ秀造さん、ちょっとお願いがあるんだけど―――」

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

斯くて、日は落ち、夜がくる。野獣唸り、火花散らす出会いと戦いの夜が―――!

 




一万字オーバーでバトルシーンどころか変身シーンすら無しとはたまげたなぁ。
ライダー二次創作作者の屑がこの野郎・・・!

次話も来週中には投稿したいですねぇ!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。