楓さんの弟はクールで辛辣な紅葉くん   作:アルセス

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今回名前に関しての話の一つを繰り上げて作成しました。

感想にあったように、このままだと不快に思う方が増えると思ったので。
一気には無理ですが1人1人やっていきたいと思ってます。

ちなみに服装や顔などの記憶の話ですが、実は私の実話なのです。
多少周りに無関心な部分があったための結果ですが、その辺もこの作品に少しつながっているかもしれません。


紅葉くんの真実?

長い勘違いだった紅葉くん

 

姉さんの泊まりがけの仕事から幾日か過ぎ、4月ももうすぐ終わろうとしている。

あの仕事の出発の日以来、相変わらず姉さんは俺が起こさないと朝起きてこないし、夜は仕事やレッスンで忙しいと思いきやたまに酔って帰ってくる。

 

別に大人なんだし飲むのは悪いことではないんだが、帰ってきてからの俺への絡み方がとてもしつこい。

正座させて説教をすると、最近は特に喜んでいるように見えてわざと絡んでいるのではと疑いたくなるほどだ。

 

だがそんな酔っぱらいで朝弱くて家事も出来ない困った姉さんが、テレビではとても凛々しく世間では歌姫などと言われている。

ドラマの出演も増え、たまにゲームアプリなどの声優もやるそうだ。世の中何が真実なのかわかったものじゃないな。

 

プロデューサーとアイドルの卵たちと会って以来、特に変わったこともなく平和な・・・家以外では平和な日々が続いていた。

唯一違うことはカリスマがたまに学校を休むようになったことだろうか。

 

「美嘉?今度ライブがあるんだってさ。それ以外のスケジュールもギリギリだから、学校休んで仕事頑張ってるらしいぞ」

 

カリスマとクラスで一番仲が良い奈緒は彼女の情報にとても詳しい。当然学校外でも連絡を取り合っているのだろう。

俺はカリスマのことを友達だと思っているが、まだ俺が話しかけた時の彼女の対応はぎこちない。それにアイドルという立場上一般の、しかも異性との連絡先のやり取りは問題や迷惑になるかもしれないと交換もその手の話もしていない。

 

「先輩って変なところ真面目だよね。いや全部真面目なんだろうけど」

 

「この変に真面目な性格と勘違いが美嘉を悩ませてるんだけど、本人は絶対気づかないからなぁ」

 

「何の話だ?」

 

カリスマに悩みがあるなら力になりたいが、俺が話すといつもの状態になるし結局何もできないということになる。

・・・ん?いつの間にコロネがいたんだ。

 

「だーかーらー!高垣が美嘉の名前を覚えて・・・って、なんでまたお前がここにいるんだよ!?」

 

「いいじゃん休み時間なんだし。それに奈緒先輩だっていつでも遊びに来ていいってこの前言ってくれたじゃない」

 

どうやら奈緒も同じことを考えていたようで、俺の心の声を代弁してくれた。この二人もすぐに仲良くなり、先輩後輩という距離感をあまり感じさせない。

 

それよりも奈緒が気になることを言っていたが、この件前も話していたな。あの時は意味が分からずそのままにしていたが、一応聞いてみるか。

 

「奈緒、一つ教えて欲しいんだが」

 

「珍しいな高垣が質問なんて。なんだ?あたしに答えられること?」

 

「前にも言ってた気がするんだが、カリスマが俺にぎこちないのと名前に何か関係があるのか?」

 

「大アリだよ。美嘉のことをいつまでたっても覚え・・・あれ?何か変だな」

 

話の途中で奈緒が腕を組んで考え事をし始めた。それほどの難解なのだろうか。やはり、友達と思っているのは俺だけだったのか?

 

「ねえ紅葉先輩、アタシも気になったから質問。今の話の流れ、美嘉先輩イコールカリスマって認識してるように聞こえたんだけど」

 

「そう!それだよそれ!」

 

「どれだ?」

 

「あたしも美嘉がいる時に気を使って聞かなかったけど、というかこんな質問普通しないからきちんと聞くのためらってたけど・・・」

 

「俺に答えられることなら答えるぞ」

 

「高垣ってもしかして、城ヶ崎美嘉って誰かわかってる?」

 

「・・・」

 

一瞬奈緒が何を言っているのか理解できなかった。確かにこんな質問はクラスメイトや友達同士で聞くことじゃないな。

 

「誰って、カリスマのことだろう?」

 

『ええええええ!?』

 

俺の答えに奈緒とコロネが一瞬口を開けたまま動かなくなり、同時に大声を上げた。元々休み時間は何人かの視線を感じていたが、今回はクラス中が一斉にこちらを見てきた。

2人は何を驚いているのか。

 

「知ってたのかよ!なんだよーあたしの苦労を返せー!」

 

「それであの対応だったなんて、先輩ってかなりドS・・・」

 

「加蓮、みなまで言うな・・・」

 

今度は同時にため息をつく二人。今の話とカリスマのぎこちない対応に何か関係があるのか?

 

俺は人の名前が覚えられない。その件に関して昔姉さんには小さかっためよく分からず興味がないと話した。

確かに他人に関してあまり興味がなく、無関心だ。名前に関しても記号のようにしか捉えられず、人のこともよく覚えられない。

 

それ以外で小さい時苦労したことがある。家族でデパートに行った時にはぐれてしまったんだが、家族を探す時に顔ははっきり覚えてるのにその日皆がどんな服を着ていたのか全然思い出せなかったんだ。

あの時は姉さんが俺のことを見つけてくれたが、少しだけ焦ったのを覚えている。

 

 

カリスマに関しては、そう。確かに去年の途中まではその他のクラスメイトと同じ認識だった。それでもカリスマJKという話は周りから聞こえていたので呼び名だけは知っていたが・・・

本当に彼女を認識できたのはあのライブの時だ。彼女は舞台の上で輝いていた。周りのアイドルに引けを取らずに堂々とパフォーマンスを見せてくれるのを見て、同じクラスメイトとしても少し誇らしかった。

 

その時のパンフレットに顔と名前が出ているのを見てはっきりと認識し、敬意を込めて改めてカリスマと呼んでいたんだが・・・

 

「カリスマにカリスマだろう?と聞いたときも否定しなかったから問題ないと思ったんだが」

 

「問題しかないよ・・・高垣は去年今以上に言葉少なかったからなぁ。あたし、最初はアレだったけどよく覚えられたな」

 

「目の前で叫ばれたからな。実はあの時顔がぶつかるんじゃないかと心配だった」

 

「なっ!あたしそんな顔近づけてた!?くぅ~急に恥ずかしくなってきた」

 

「奈緒先輩ってば大胆だねぇ。ちなみにアタシのことは?」

 

「・・・コロ」

 

「ストーップ!」

 

「・・・ちっ

 

「お前が変なこと言うとあたしがいじられるんだからな!加蓮も舌打ちしない!」

 

「まっ、アタシは"まだ"いいけどね。色々と面白いし♪」

 

「くっそ~・・・誰かあたしが勝てる相手はいないのか」

 

カリスマはカリスマなのにカリスマと呼ぶと問題がある?だが周りはカリスマをカリスマと尊敬の眼差しで見ている。

俺と他の人たちと何が違うのか・・・

 

「あのさ高垣。確かに友達はあだ名で呼び合ったりするけどさ。女の子は名前で呼んでもらったほうが嬉しい時もあるんだよ」

 

「・・・そうなのか?」

 

「うん。だから今度美嘉に会った時は、ちゃんと名前で呼んであげて欲しい。お願いだ」

 

「わかった」

 

「まあ、美嘉先輩の場合違った意味でまた固まるかもしれないけどね」

 

「ぷっ!確かに!」

 

周りの視線が集中してる中、それに全く気づいてない様子の2人は相変わらず仲良く笑い合っている。

その笑顔は、アイドル達に引けを取らない純粋な良い笑顔だった。

カリスマを"美嘉"と呼ぶだけ。そんな簡単な話だったのか。

 

「・・・失礼します。ここに北条加蓮って子は・・・あ」

 

「げ・・・"前川"さん」

 

休み時間がもうすぐ終わるという時に教室の後ろのドアが開き、そこには見知らぬ少女が誰かを探している様子だった。

 

 

 




次回は紅葉くんを346プロに突入させる予定です。
アイドルの新規参戦は少ないですが。

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