楓さんの弟はクールで辛辣な紅葉くん   作:アルセス

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今回は少し駆け足ですが一気に書けたので投稿します。

やっと以前に登場人物紹介したアイドル全員を・・・


紅葉くんとスウィーティー

紅葉くんと商店街

 

 

「なんだか今日は騒がしいな」

 

346プロでの見学を終え、いつも通り夕飯の食材を買うために商店街へやって来たんだが人の数が多い。

 

それも見慣れた主婦やお年寄りではなく、10代~20代くらいのこの場所ではあまり見かけない人ばかりだ。

 

「皆同じ方向へ向かってるようだな」

 

「ようボウズ!お前さんも他の連中と目的は同じか?」

 

魚屋のおじさんが店の前で声をかけてきた。商店街が賑わうのはおじさんたちにとって良いことだと思うんだが、その表情は逆に不機嫌そうだ。

 

「こんにちは。何かあったんですか?俺は何も知らないんですが」

 

「ああそうか、いきなり悪かったな」

 

いつもの表情に戻ったおじさんは、腕を組みながら少し遠くの方に視線を移した。その先を俺も見てみると、さっきの人たちが一斉に集まっている。

 

「撮影だとよ。なんでも有名な芸能人のドラマ撮影だってんでたくさん集まってきてんだよ。ったく、久々に客が増えたかと思ったら店の前通るだけで魚臭いだのボロい店だの、近頃の若いのは礼儀がなっちゃいねぇ」

 

「・・・それは、すいません」

 

「いやこっちこそすまん。ボウズが悪いんじゃねぇんだ。それよりも商売だな!さあ、今日はどうする?」

 

「そうですね。今日は・・・」

 

 

 

 

夕飯と明日の朝食、弁当分の買い物を済ませたあとに少し気になったので、俺も周りと同じ野次馬になろうと人が集まる先へ行ってみることにした。

 

以前は芸能人に特に興味はなかったが、今は姉さんを含めアイドルの知り合いが増えている。付け焼刃になるのは分かっているが、特にまだデビューしていない凛に自分が今後どう声をかけるべきなのか・・・何か答えが見つかるきっかけになるかもしれないからな。

 

「カット!カァァット!」

 

「うわ、あの人まただよ」

 

「誰なのあれ。エキストラだよね?」

 

撮影している通路の中で比較的人が少ない場所を選んで様子を伺ってみると、遠くから監督らしき人の大声が聞こえ撮影が中断された。

周りの人の話を聞く限りだと、同じ場面で何度もやり直しているらしい。

 

「またキミか!キミだよキミ、そこの変な服の子!」

 

「ん?はぁとのこと?やぁん、もしかしてカントクジキジキの特別指導受けられたり!?おねがいしまぁーす☆」

 

「キミは一体何なんだ!?わかってるのか?キミはエキストラなのエ・キ・ス・ト・ラ!」

 

「もちろん知ってまーす☆はぁとは今かけだしの女優。トップを目指すため演技の一つ一つに命をかける女!どう?どう?はぁと輝いてた?」

 

「だーかーら!キミはエキストラなの!セリフなんて一言もなくヒロインたちの横を普通に歩くだけでいいの!」

 

「だからぁ、すこーしアレンジして一つの場面をちょー盛り上げようとしてみたり?ねぇそこのキミ。はぁとの演技よかったっしょ?」

 

「・・・」

 

運がいいのか悪いのか、エキストラの女性と目が合ってしまった俺はいきなり話しかけられてしまった。演技といっても今来たばかりだから何も見ていないんだが。

 

「おいおい、引くなよ☆」

 

「はぁ、もういい。ここにだけ時間かけるわけにいかないから次いくぞ」

 

「はぁい、がんばりまーす☆」

 

「・・・いや、キミはもういいから。お疲れ様」

 

「え、え?ご、ごめんなさーい☆マジで許してー?次はもっといい演技するから☆マジでマジでマージーでー☆」

 

ドラマの撮影っていうのは思っていたイメージと全然違うんだな。エキストラは目立たずに主演や名前のあるキャストの後ろでサポートする役割とばかり思っていたんだが・・・

 

こうなると、美嘉のバックダンサーをする凛たちも何か目立った動きをして会場を盛り上げる役割を担っているのだろうか?

そう考えると姉さんの言う通りに、スカウトされてすぐにデビューするアイドルが担当するには大変な役だ。だからこそ凛が他のメンバーに負けないよう練習しているのもわかる。

 

芸能界という物を少しだけだが理解できたので、おじさんたちには悪いが俺にとってはいい刺激となった。

食べ物以外の雑貨をいくつか買って、姉さんが帰ってくる前に夕飯を作ってしまおうか。

 

 

 

 

30分ほどではあるが、全ての買い物が終わった頃にはいつもの人通りの静かな商店街に戻っていた。店の人の話ではこの商店街での撮影箇所は全部撮り終えたらしい。

 

商店街の出口へ向かって歩いていると、横の路地で変わった服を着てうなだれている後ろ姿の女性がいた。背中に羽が生えているような・・・

 

「もぉー、ちょっと張り切りすぎただけなのになー。また失敗か。」

 

「・・・」

 

もしかするとさっきのエキストラか?なんとなく声に覚えがある。誰もいない場所で撮影が終わっても自主練習をしているのはたいしたものだ。やっぱりプロは違うな。

 

「これ以上失敗したら切るって言われてたし、明日からどうしよっか」

 

「失敗?成功じゃないんですか?」

 

「え、誰?」

 

思わず声をかけてしまった。まずいな、変な奴だと思われる前にどう説明すべきか。

 

「あ、キミってさっきの子。なになに?もしかしてはぁとのファンだった?いやーん、はぁとってば人気者☆」

 

「いえ違います」

 

「オイ、即否定すんなよ☆」

 

「切るって、クビってことですか?」

 

「ぐっ・・・いきなり現実を突きつける怖い子だわ。確かにはぁとは今の事務所をクビになった。でもそれは逆に言えばもう自由!そう、はぁとはこの翼で新たなセカイへ飛び立つの!」

 

「・・・」

 

「何か言えよ☆」

 

何か言えと言われても、どこまでが演技でどこまでが素なのかよくわからない会話に対して一体何を言えばいいのか・・・

だがクビになたっというのは確かなようだ。

 

ドラマで目立ってクビ?なぜそうなのかはわからないが、このままこの変わった人がここで終わってしまうのはもったいない。

いつかデビューした凛やまだドラマ出演のない姉さんと共演したら楽しそうな気がするんだが・・・そうか。

 

「あの、いきなりですがアイドルに興味ありませんか?」

 

「ん?キミってばスカウトの人だった?それともはぁとを変なとこに勧誘するヤバイ人?後者だったらぶっとばすぞ☆」

 

「いえ、俺はスカウトする側じゃないんですが知り合いにプロデューサーがいるんです。346プロなんですが」

 

何かあれば連絡していいと言っていたし、346にアイドルが増えるのは悪いことじゃないはずだ。とりあえず前に受け取った名刺を目の前の女性に見せてみよう。

 

「これです」

 

「・・・わぁお☆これホンモノ?346って超大手じゃない!はぁとアイドルにスカウトされちゃった?ていうか、し・ろ☆」

 

「いや、だから俺がスカウトするわけじゃないんですが」

 

「だったら早くその名刺の人に連絡・・・あ、待てないからはぁとから電話ちゃおう☆ピ・ポ・パ・っと」

 

ピポパ?

 

「あ、もしもーし。アナタのはぁとをシュガシュガスウィート☆さとうしんことしゅがーはぁとだよぉ☆え?誰かって?もうっ!じゃあもう1回やるからちゃんと聞いてね。ていうか、聞け☆」

 

情報量が多すぎて何が何だか全くわからない。自分から誘っておいてあれだが、この人一体何者なんだ?

これではプロデューサーも困るはずだ。何もせずにこの人を不採用にするわけにもいかないし、俺が話をしてみないと。

 

「すいません、えっと・・・」

 

「だーかーらっ。アナタのはぁとをシュガシュガスウィート☆さとうしんことしゅがーはぁとだぞ☆」

 

「し・・・しゅが・・・しゅがは・・・さん?」

 

「うーん、まいっか☆で、何?」

 

「俺に代わって下さい。・・・もしもし高垣です」

 

『ああ、高垣さん。急なことで驚きました』

 

「いきなりすみませんでした。実は・・・」

 

その後なんとか話が終わり、しゅがはさんは後日346のアイドルオーディションに参加できることが決まった。

 

オーディションがあるのかとしゅがはさんは不満そうだったが、プロデューサーの話ではなぜか俺が選んだのならとある程度合格が決まっているらしい。

ただの高校生の俺の判断がそのまま通るのかと疑問に思ったが、姉さんや凛のプロデューサーであるあの人の言うことだ。きっと別のちゃんとした理由があるに違いない。

 

 

そしてこの時の俺はまだ、このしゅがはさんが着物を着て本当に姉さんや他のアイドルたちとユニットを組んで歌い、踊ることになるなんて夢にも思わなかった。

 

 

続く!

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