楓さんの弟はクールで辛辣な紅葉くん   作:アルセス

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あと残り1話で以前の予告まで終わるはず・・・!

それぞれのアイドルのペンライトの色を番号以外で表現するの難しいですね。
単純に赤や青だけでいいのかな。

投稿日火曜なので1つ…
まだ火曜かよう~


紅葉くんとプロジェクトメンバー

 紅葉くんと未来の蒼ノ楽団のアイドル達2

 

 

「みくちゃん、他のお客さんの迷惑になるからそこまでにしましょう。ね?」

 

「う・・・み、美波チャンが言うなら仕方ないにゃ」

 

両手を挙げ今にも後ろの席から襲いかかってきそうな少女だったが、俺と少女の間の席にいた女性の言葉ですぐに席に座り直した。

 

それを確認した女性が今度は俺の方を見る。まるで子供に言い聞かせるような落ち着いた優しい声と同様、落ち着いた雰囲気の顔立ちで、姉さんと比べると随分大人に見える。

 

美嘉の妹がいるということは、ここはシンデレラプロジェクトメンバーの席ということなのだろう。つまりロックな子を含め皆凛達の仲間だ。それならプロデューサーさんがくれた席の理由も多少納得がいく。

 

「みくちゃんと李衣菜ちゃんの知り合いなのかな?だったら私も自己紹介しないとね」

 

自己紹介・・・という言葉に少し緊張が走る。今までは特に何も考えずにいたが、相手の言葉を聞き逃さず集中しないといけない。

奈緒が言うには普通の人なら特に気にせず出来ることらしいが。

 

「初めまして、新田美波です。346プロダクションの新人アイドルとして新しいプロジェクトに参加しています。ここにいる11人・・・全員合わせると14人になるけど、その中では一応お姉さんかな。よろしくお願いしますね」

 

「に・・・にった・・・新田さん、ですね。予想通り姉さんと年齢が近そうだ。改めまして高垣紅葉です。高2ですので敬語は不要です」

 

ふう・・・なんとか覚えることが出来た。新田さんの反応を見る限り間違ってはいないだろう。

姉さんと同じ事務所内に新田さんのようなしっかりとした女性がいるのは安心できる。姉さんが俺のいない所でハメを外しすぎた時は遠慮せず叱ってもらおう。

 

「えっと、お姉さんがいるのね。ちなみに聞くけど、お姉さんはいくつなの?」

 

名前を覚えることに集中して肝心なことを伝えていなかった。今後のこともあるから失礼の無いようにしないとな。最初が重要だ。

 

「今年25になります。何かあった時、新田さんは頼りになりそうですね」

 

「うわぁ・・・先輩最低にゃ」

 

「ふ、ふふ、フフフ。そう、そうなの」

 

「あー、ミナミ?どうしました?」

 

新田さんが奇妙な笑を浮かべ俯くと、何故か場の空気が変わった気がした。先ほどの少女は呆れた様子でこちらを見ており、新田さんの隣にいる銀髪の子は不思議そうに彼女の様子を窺っている。何だ?何もまずいことは言ってないと思うんだが。

 

「・・・高垣くん?あとでちょっとお姉さんとお話しましょうか?」

 

「!?」

 

「ひぃっ!」

 

それを見た新田さんの前の席にいるリボンや服が黒い少女が悲鳴を上げる。

新田さんは笑っている。顔は笑っているのだが、声に感情が入ってはおらず不思議な気配を纏っている。

俺は何故か急に膝が震え止まらなくなっていた。

 

これがもしかすると、恐怖・・・というものなのだろうか。

 

 

『おおー!』

 

タイミングが良いと言うべきなのかはわからないが、突然内部が暗くなり人々の声がざわめきから歓声に変わった。

 

すると新田さんを含め、プロジェクトのメンバーも一斉に表情が変わりステージ上を見るようになったので、俺は自分の席へと向かい同じようにステージを見下ろす。いよいよか。

 

「ついに舞踏会の幕開けか!」

 

右隣に座る黒い少女が興奮気味で叫ぶ。舞踏会・・・確かにそうだな。346はシンデレラをモチーフにした物がいくつもあるし、彼女たちのプロジェクトもそうだ。

今はまだここにいる11人はシンデレラで言う城へ憧れる町娘かもしれないが、いずれ姉さんや美嘉と一緒に城での舞踏会で歌い踊ることになるのだろう。

先に一歩踏み出した凛達と共に。

 

紅葉くん、本当の意味で初めてライブに参加する

 

 

ステージの幕が少しずつ上がっていき、中から5人のシンデレラがそれぞれ特徴的なポーズのまま現れる。その中心には美嘉がいて、堂々とした様子で客席へと目を向けていた。俺と話す時のような挙動不審な様子とは違うカリスマアイドル城ヶ崎美嘉だ。

 

ライブ開始1曲目は346ではおなじみの曲、お願い!シンデレラ。

特に誰の曲とは決まっておらず、ライブによって歌うアイドルが変わり中心になるアイドルも変わるのが楽しい・・・らしい。

そういえば前は姉さんが中心で歌っていたな。

 

歌が終わると拍手と歓声の中、美嘉が一歩前に出た。

 

「会場のみんなー!今日はアタシたちのライブに来てくれてありがとー★」

 

「今日はこの5人で精一杯歌います!」

 

「まだまだ夏は遠いですが、この会場だけは夏以上に熱く!燃えていきましょう!」

 

『わああああああ!!』

 

美嘉に続く小日向美穂さん、日野茜さんの言葉で会場が一体となる。奈緒曰く、日野さんとは会ったことがあるらしいんだが・・・いつだ?

 

「それじゃあ早速次の曲に行きましょうか!」

 

「美穂ちゃん、準備はいいですか?」

 

「う、うん。大丈夫!」

 

川島さん、佐久間まゆさんの言葉に続き小日向さんが答えると、他の4人はステージから去っていった。

小日向さんがステージ中央で目を瞑り人差し指を交差する。すると会場のペンライトがピンクやそれに近い牡丹のような色に変わったため、俺も習って奈緒に借りたペンライトの準備をした。

 

 

その後に佐久間さん、川島さんと続いたがやはり前とは違う。曲を知り、歌うアイドルを知って聴いていると、俺も会場の皆と一体になったような感覚を覚えた。

下の席をみると奈緒と加蓮を見つけることができ、加蓮は奈緒に釣られながら思い切りペンライトを振っている。

 

それを見て自然と笑みがこぼれたのに気づき自分で驚いてしまった。周りはたまに俺の笑顔が・・・などと言うが気づいてはいなかった。自分で笑ったと実感したのは一体いつぶりだろうか?初めてか?

 

 

川島さんの曲が終わり舞台から去ると、歓声と共に新たな曲が流れる。この曲は・・・いよいよか。

 

誰を見るわけでもなくペンライトをオレンジに変える。美嘉が現れ男性女性関係なくさらに大きな歓声が聞こえる。そして歌が始まる数秒前に、美嘉の後ろの床から一斉に3人の少女が現れた。

 

凛に島村さん、本田さんの3人だ。出てきた時の表情は一瞬だったが、美嘉に負けない輝きを放っているように感じた。

 

隣や後ろからも声が上がる。仲間の登場に他のメンバーも喜んでいるんだろう。歌が始まりペンライトを振っているうちに、気が付けば俺も他のファン同様立ち上がり美嘉の曲を口ずさんでいた。

 

「本当の私を見てね・・・」

 

美嘉は真っ直ぐな性格で、学校ではクラスの皆から慕われ本人も男女関係なく明るく接している。が、俺と話すときはたまに目を逸らしカタコトになる。この事に関して奈緒や加蓮に聞いては見たが、ため息をついて自分で考えろというばかりだ。

 

俺の方に問題があるということか・・・

 

そして姉さん。やはり本当の姉さんを俺は知らない。一昨日のような表情をする姉さんを知らない。本人に聞いても何でもないと言うだけだ。俺が今後姉さんや美嘉にしてあげられることは何か、よく考えてみようと思う。

 

会場の盛り上がりは最高潮になり、後半のアルファベットの場面ではプロジェクトメンバーも一体となって声を出していた。俺も一緒になって声を出し、美嘉達のTOKIMEKIの文字が終わると同時に曲が終了。

 

歓声が最大となり気分が高まっていく。やはりアイドルはすごいな。こんな俺の気持ちまで変えてくれるのだから。

 

川島さん達同様すぐに次の曲に変わると思っていたが、美嘉が話をし始めた。ファンへの感謝の言葉の後、後ろを見ながら話を続ける。

 

「ところで今日、バックを勤めてくれたこの子達!まだ新人なんだけど、アタシが誘ってステージに立ってくれたんだー★」

 

『おお!』

 

なるほど、凛達の紹介か。3人にとっては突然の事だったようでぼーっと立ったままだ。今まで練習した成果を失敗せずに出し切ったんだ。これで終わったものだと思っているだろうな。

 

美嘉が島村さんに感想を聞くも、慌てて何を喋っていいかわからない様子。多少彼女と面識がある側としては息を呑む展開だが、どうやら問題なさそうだ。

 

島村さんが凛と本田さんを見るとお互いがお互いに応えるかのように表情が変わった。そして・・・

 

『最高ーーーー!!』

 

『わあああああ!!』

 

3人が両手を挙げて喜びを表現すると、観客側もそれに答えるかのような大声援。

よかったな凛、お前達の初めての舞台は大成功だ。

 

続いての日野さんの曲の後に全員での曲がいくつか続き、最後にこのライブの為の新曲"Happy Princess "が披露され全プログラムが終了した。

 

ペンライトを持った手や体から汗が出ている。疲労感はあるがそれがとても心地いい。本当に奈緒には感謝しないといけないな。

 

「じゃあ、俺はこれで」

 

「待って」

 

プロジェクトメンバーに軽く挨拶をして去ろうとしたんだが、新田さんに止められてしまった。

まさか、さっきの続きなのだろうか。額からライブの時とは違う汗が出てくる・・・

 

「はい、はい・・・今一緒にいますけど。え?わ、わかりました」

 

新田さんは電話をしていたようだ。何かに驚いているが、俺と関係あるのか?

 

「高垣くん、今から私たち卯月ちゃんたちに会いに楽屋へ行くんだけど、プロデューサーさんがあなたもぜひどうぞって」

 

「俺が、ですか?」

 

「あなた関係者だったの?」

 

「いえ、確かにプロデューサーさんとは先日知り合いになりましたが俺は無関係です。姉は関係していますが・・・」

 

「そういえばさっきもお姉さんがどうとか言っていたわね」

 

「美波チャン、先輩の苗字をよく思い出すにゃ」

 

「え・・・あ!」

 

少女の言葉に新田さんが一瞬で戸惑いの表情から驚きの表情に変わった。そういえば姉さんの名前を言っていなかったな。

 

以前は姉さんがいたから楽屋へ入れたはずなんだが、こんな簡単に一般人がアイドルの楽屋へ行っていいのだろうか。

俺は奈緒に連絡し状況を報告したあと何故か2人の夕飯を奢ることになってから、新田さん達の後に付いて楽屋へと向かった。

 

続く!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




Happy Princessという曲はアニメにないはずなのでオリジナルということになります。
最も歌詞等は全く作っていませんが、属性は全タイプです。

初対面の美波を怒らせる紅葉くんはさすがですね!

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