少しずつ原作アニメの内容もまた出てきます。
紅葉くん、再び346プロへ
「さて、どうしたものか」
346プロに着いたはいいが、俺は入口前で入るのをためらっていた。
ここまで来ておいて今更だが、明確な理由もなく勝手に入っていいか迷っていたためだ。
以前は姉さんに会って頼まれていたものを渡す目的があったから問題はなかったが、今回もし社内の人に呼び止められたらどう答えればいいのか。
そもそも凛の言うカフェの場所もわかっていない。
姉さんにはそこは案内されなかったからだ。
凛が入口にいれば問題はなかったんだが・・・
「あれ?ジャーマネ?」
「ん?」
あまりこの場所に留まり敷地内を見つめていても不審がられるなと思った矢先、突然後ろから肩を叩かれた。
聞きなれない単語だったので言葉だけなら自分のことだとは思わなかったが、後ろを振り向くとそこには以前商店街で会ったしゅがはさんが若干喜びの表情で俺のことを見ていた。
「やーん、もしかしてはぁとに会いに来てくれたの?ジャーマネのお陰で話がトントン拍子に進んでホント夢みたい☆」
「いえ、違います。ですが企画は順調のようですね」
「おいおい、また即否定すんなよ☆でもでもぉ、ジャーマネのお姉さんが高垣楓だったなんてね。いきなりユニット組むことになってボーカルレッスンで実力差を見せつけられたけど、すぐに追いついてやるんだから!」
しゅがはさんはやる気十分のようだ。それだけでも部長さんに紹介してよかったと思う。
姉さんの方も家でとても喜んでいた。歌の方はまだ初心者に近いようだがそれはきちんとトレーニングをしていないからとのこと。
その初心者ならではの技術を気にしない高い声量に、姉さんも負けないように練習していると言っていた。
部屋でもたまに美嘉や日野さんの歌を口ずさんでるようで、リビングの方にも聞こえていた。
なぜその選択なのかは謎だが。
と、そうだ。しゅがはさんならカフェの場所を知っているんじゃないか?
「しゅがはさん、346内のカフェが何処にあるかわかりますか?」
「ん?もちろん知ってるわよ。ははーん、なるほどねぇ。はぁとわかっちゃった☆」
「しゅがはさんも知っていましたか」
どうやら前川さんのことは思った以上に大事になっているようだ。外から戻ってきたはぁとさんにすら情報が伝わっている。
「やっぱり最初からはぁとを見る目が違ってたものね。ジャーマネも年上のお姉さんをナンパしたいお年頃、これは仕方ないわうんうん」
「・・・は?」
「いた!紅葉こっち!」
「ん?」
はぁとさんが急に腕組をしてうんうん唸り独り言を言っていると、俺は敷地内から勢いよく手を捕まれた。
そのままこちらを振り返ることなく手を掴んだまま走る少女に合わせて俺も抵抗せず走り出したのは、その相手が後ろ姿で凛だとはっきりわかったからだ。
「おっけー。それじゃあカフェデートに・・・って、いない!?」
「状況はどうなってるんだ?」
「変わってない。私たちは後から来たんだけど、きらりが話しかけても杏を筆頭に話が通じなくて。今未央と卯月がプロデューサーを探しに行ってるとこ」
「そうか」
敷地内を屋内に入らずぐるりと周り目的地にたどり着くと、そこには社員やアイドルと思われる人たちの人だかりが出来ていた。
"MISHIRO CAFE"と書かれたカフェの入口の1つにテーブルでバリケードが設置してあり、中から前川さんが拡声器でこちら側に話しかけている。
息を整えながら少しずつ状況がわかってきたところで、未だに同じように真剣に前川さんの方を見ながら息を整えている凛と手を繋いだままになっていることに気づく。
最も、掴んでいるのは凛の方で俺は全く力を入れていないのだが・・・
さすがに周りに気づかれたら問題だな。
「凛、もう大丈夫だ。手を離してもいいぞ」
「え・・・あ!ご、ごめん」
「いや、場所がわかったし助かった」
「・・・アンタってこんな時でも冷静だよね。それにこういうのって普通立場逆だと思うんだけど」
「逆?俺が案内するってことか?」
「はぁ・・・もういい!」
呆れたようにため息をついた凛になぜか睨まれてしまった。
何も間違ってはいないと思うんだが。
だが今は考えても仕方がない。俺がここに来たのは黙って状況を見ているためではなく、前川さんを説得するためのようだ。
何ができるかはわからないが、まずはカフェに近づいて前川さんと話をしてみよう。
凛をみる限り彼女はここで待っているつもりらしい。自分たちだと悪化するという何かが原因だろう。
徐々に近づいていくと毎日見慣れた後ろ姿があることに気づく。
どうやら姉さんも騒ぎを聞きつけていたようだ。
一応声をかけようとしたが、隣の人と話している声が聞こえた。
「敵の食料補給を断つのは戦略の基本であります」
「食を断たれるのはショックね。うふふふふ♪」
「・・・姉さん」
「こ、紅くん!?ど、どどどどうしてここに!」
声をかけようとせずに離れた場所から近づけばよかったな。
お陰でしばらく聞いていないダジャレを聞いてしまい力が抜けてしまった。
「とりあえず今のは4点。じゃあ急いでるから」
「ま、待って!違うの!今のは本気じゃないの!ちなみに1000点満点ってまだ続いてるの?・・・ねえ?答えてよ紅くーーん!」
今は姉さんに構ってる暇はない。
後ろで未だ叫んでいる姉さんを無視して諸星さんたちがいる場所へと向かった。
紅葉くんとストライキキャット
「にょわ?高垣・・・くん?」
「あ、えと・・・その・・・こんにちは」
「こんにちは、お久しぶりです」
カフェ近くの柱の前で中の様子を見守っていた諸星さん。そして彼女の後ろで気付かなかったが、緒方さんもいたようだ。
この2人とは自己紹介の時以外では話す機会がなかった。李衣菜と違い年齢も不明なので、失礼の無いように敬語で話すのが妥当だろう。
余計な事を言うと新田さんの二の舞になってしまいそうだしな。
・・・こうしてよく考えると、俺はどうやら新田さんからの圧力が相当トラウマになっているようだ。
ここにいなくてよかったと思うべきか。
「凛から聞いて来ました。俺のことも話に上がっていると。前川さんとは昨日会って少し話をしていたのでそれが原因なのかもしれないですが」
「みくちゃん、高垣くんみたいに自分の言いたいことをはっきり言うんだーって叫んでたにぃ。杏ちゃんと莉嘉ちゃんもそれに賛成しちゃって・・・」
「あっ、あの。皆のこと、あまり叱らないでください」
緒方さんはそう言うと俺に頭を下げた。どうやら俺が前川さんたちを注意しに来たと思っているようだ。
関係者じゃない俺がそんなことできる立場じゃないんだが、緒方さんの必死の言葉からとても仲間思いなのだということは伝わって来る。
「安心してください、状況は何となく理解してきましたが叱りに来たわけじゃありません。プロデューサーさんもまだ来ていないようですし、とにかく少し話をしてみます」
「はい!」
柱から顔を出しもう少し近づこうとすると、真っ先に莉嘉が俺の存在に気づいた。
一瞬驚いた様子だったがすぐさま指をこちらに向ける様子を見て、嫌な予感がしたので先手を打つことにした。
「彼氏じゃないぞ」
「あー!お姉ちゃんの・・・って、まだ何も言ってないのにー!」
やっぱりな。こんな大勢が見ている前でそんなことを言ったら信じる人も出てくるかもしれないだろう。
そうなったら美嘉に迷惑がかかる。今回は何とか防げたな。
双葉さんは俺をみて特に興味なさげな表情で隠れてしまったが、前川さんは驚いた表情で口が空いたままだ。
とりあえずは莉嘉と話をしてみるか。
「その美嘉はこのことを知っているのか?」
「お姉ちゃん?ううん、知らないよ」
「お前は美嘉を目指してアイドルになったはずだろう」
「う、うん。そうだよ」
「周りを見てみろ、美嘉は今のお前のように皆に迷惑をかけるようなことをするか?」
「だってだって!Pくんが全然アタシの話を聞いて・・・」
「もう一度聞くぞ。美嘉はこんなことをするか?お前が目指す美嘉は、カリスマアイドルの美嘉は人に迷惑をかけてまでこんなことをするか?」
「・・・しない」
「だったらこの後どうすればいいかわかるだろう。これ以上こんなことをやってたら美嘉が悲しむぞ」
「う・・・うわぁぁん!お姉ちゃんごめんなさぁぁぁい!!」
「ん?」
おかしい、なぜか莉嘉が泣きながら走り去ってしまった。
ごく普通のことしか言っていないはずなんだが。
「!?」
莉嘉が去った瞬間、急に背中に寒気を感じた。
気になって振り返ると、そこには少し涙目になって俺を見ている緒方さんと、それを支える諸星さんがいた。
「ひどいです。叱らないって言ったのに・・・」
「いや、俺は」
「叱らないって・・・」
「ち、智絵里ちゃん。きらりと一緒に莉嘉ちゃんのところいこ?」
「・・・はい」
諸星さんは少し困ったような笑顔を俺に向け、緒方さんを連れて場を後にした。
状況を理解して気をきかせてくれたのだと思う彼女に軽くお辞儀をして答える。
しかしなぜこうなった。
「さすがは先輩にゃ。中学生にも容赦なく冷静に口撃するなんて。みくも見習・・・これはやめておくにゃ」
段々と俺のほうが悪いことをしているように見えてくるんだが。しかも占拠を止めようとしているこちら側に味方が誰もいない。
一体どうなっている?
「前川さん、いつまでそうしているんだ?」
「先輩には関係ないにゃ!」
「その関係ない俺を引き合いに出しているようだが」
「うぐっ・・・みくたちのデビューを約束してくれるまではここを動かないにゃ!」
「ええっ!?じゃあ杏も降りるよ」
「杏ちゃんまで!?」
今まで隠れていた双葉さんが突然顔を出したかと思うと、すぐにやる気のない表情でのそのそとバリケードから出ていく。
前もって同じ考えで集まったメンバーじゃないのか?
だがこれで残りは前川さん1人。
しかしながら前川さんもおかしなことをいう。
デビューを約束?すでにプロジェクトメンバーに選ばれた時点で決まってるものじゃないのか?
「前川さんはオーディションに合格してプロジェクトメンバーになったんだろう?ならデビューは決まってるんじゃないのか」
「・・・それっていつ?」
「え?」
「デビューっていつなの?どうすればアイドルとしてデビューできるの?毎日毎日頑張ってるけどプロデューサーは全然答えてくれない。もっとみくが頑張ればいいの?」
「それは・・・」
「みく、ちっちゃい頃からずっと可愛い女の子になりたかった。憧れてた。そんな時テレビの中でキラキラ輝いてる女の子たちが歌って踊ってた」
「それがアイドルか」
「うん。みくはこれだ!って思ったの。アイドルになって誰よりも一番輝く可愛い女の子になるんだって。オーディションに受かった時は本当に嬉しくて飛び跳ねたもん。でも・・・」
前川さんも小さい頃にアイドルを観て育ったんだな。俺と違うのは、そこからすぐに将来の夢を見つけたというところ。
「でも、後から来た子にも一緒に受かった子達にもどんどん置いてかれて、小さいお仕事を頑張ってやっていけば次はみくが・・・って思ってもそうじゃなくて」
前川さんをはじめこのプロジェクトのメンバーは本当にすごいと思う。同年代でも尊敬できるこの少女に一体俺が何を言える?
「ねえ先輩。みくはどうすればいいの?全然わかんない。わかんないよ!」
とても繊細で真剣な悩みだ。俺がどうこうできる話じゃないのはわかってる。
前川さんだって俺に明確な答えを期待しているわけじゃないだろう。
それでも、的外れな答えでも、今にも泣いて壊れてしまいそうな少女に、姉さんと意味合いは違うがわからなくて悩んでいる少女に、自分の思いを口に出さずにはいられなかった。
「前川さんはすごいよ。子供の頃からの夢を一生懸命に頑張って叶えようとして、後一歩まで近づいてる。俺は前川さんを尊敬する」
「なっ、急にどうしたにゃ!?」
「それに比べて俺は何もないんだ。小さい頃からの夢もない。やりたいこともない。考えるために東京に来たけど、まだ答えのきっかけすら見つからない。前川さんたちを見ていると、尊敬すると同時に少し焦っている自分もいる・・・」
「先輩・・・」
「いや、今は俺のことは関係ないな。もう少しだけ待っていられないか?このプロジェクトが開始してまだひと月ちょっとだ。デビューするにしても同時じゃなく順番がある可能性も考えられる」
「それは、そうだけど・・・」
「それに知ってるかどうかわからないが、姉さん・・・高垣楓がデビューしたのもオーディションに受かってから数ヶ月だ。そしてその時のプロデューサーも武内さん」
「え、楓さんが?」
「それでも不安なら、関係者じゃないが俺がプロデューサーさんに話し合いの場を作れないか聞いてみる。俺がダメなら、迷惑になるだろうけど姉さんにも相談する」
「紅くん・・・」
「俺は前川みくが可愛いアイドルとして活躍できるって信じてる。だから、今日のところはこれでこの場を開放してくれないだろうか」
「先輩、そこまでみくのこと真剣に・・・」
俺は最後に頭を下げて頼んだ。
思わず自分のことまで話してしまったが、改めてアイドルの卵たちと自分の差を実感してしまった。
相変わらず将来が見えない自分自身。焦りと、このままでは前川さんとは違うが凛たちに友人としてもおいていかれるという不安。
この前は友達をやめてやる、なんて姉さんに言ったばかりなのにな。
「みくは」
「前川さん!」
頭を下げたままの俺に前川さんが何か言葉を発しようとした時、後方より低いがよく声の通った男性の声が聞こえた。
周りはざわつき始め俺も後ろを振り返ると、そこには本田さんを先頭に島村さんと凛が武内さんを連れて来ているのが見えた。
今更だが最初以上にこの場にいるのが少し場違いが気がしたので、俺は前川さんを再び見ることなく、何か言いたそうな姉さんの横を無言ですり抜け、プロデューサーさんに言った。
「あとは頼みます。前川さんの悩み、聞いてあげてください」
「・・・わかりました」
「あ、紅葉!」
最後に凛が何か俺に話したようだが、何て答えたかは覚えていない。
気がついたときは部屋のベッドでうつ伏せになっていた。
心臓の音が鳴るのが聞こえ、顔が熱くなっているような感覚がある。
無言でいるとさっきまで自分が前川さんに話していた言葉が一字一句思い浮かんでくる。
不安や焦りとは別の、もう1つの感情が渦巻く。
俺は大勢の人が見る中で随分と恥ずかしいことを口にしていたんじゃないか?
他人に自分の悩みを話すのが身内の時と違いこんなに大変なものだとは。
そのまま俺は寝てしまい、気が付くとすでに夕飯の時間。
材料は買ったが準備をしていないことに気がつきキッチンに行くと、代わりに夕食を作ろうとしていた姉さんのお陰で、周りが散乱した食材と調理道具の地獄絵図と化していた。
凛、紅葉くんを心配する
「あ、紅葉!」
私に目もくれずプロデューサーを話したあとに去ろうとした紅葉を呼び止めた。
まだ彼に伝えてないことがあったから。
「私、CDデビュー決まったんだ。卯月と未央と一緒に」
「そうか」
「うん、それで今度ライブもやることになってさ。紅葉も観に来てくれる?」
「・・・ああ、楽しみにしてる」
その間紅葉は私の方を一切見ることなく、そのまま下を向いて去っていった。
私たちが来た時にはもう紅葉とみくの会話はほとんど終わっていて聞いてない。
みくが何か言った?それともまさか近くにいる楓さん?
あの後みくに聞いても何でもないの一点張り。でも不思議なことに私たちと勝負しようという話は出なくなった。
莉嘉は紅葉の名前を出すと何故か知らないけど「お姉ちゃんごめんなさい」しか言わないし、智絵里は涙を浮かべてしまう。
よくわからないけど、紅葉が暗くなってるのは事実だ。
だったら私がなんとかしなきゃ。ライブを必ず成功させて、紅葉を笑顔にするんだから!
続く!
各メンバーのライブに向けての一言
卯月「が、頑張ります!」
未央「一体どのくらい集まるんだろう!楽しみ!」
凛「こんなんじゃ足りない・・・もっともっと練習しなきゃ」
美波「少し不安だけど、頑張ろうねアーニャちゃん!」
アーニャ「ダー、美波が一緒なら安心です」
紅葉くんの影響が凶と出るか大凶と出るか!