2話で終わらせられてよかった!
今後も日常編はあると思いますが、メインのアニメの話も早く進めたいですね。
ここで久々にありえる未来を一つ…
凛「見ててね紅葉。さあ、2人とも行くよ!
卯月「島村卯月、この曲を全力で歌います!
未央「2人とも燃えてるねぇ。よーし、私も頑張るぞ!
奏「ふふ、新人とはいえ負けていられないわね。皆準備はいいかしら
フレ「おー!
楓「おー!
瑞樹「楓ちゃん。あなたはこっち。
加蓮を語る紅葉くん
「ところで紅葉先輩。その面白い格好一体どうしたの?アタシたちより目立ってるような気がするんだけど」
振り返り未だ動き回っている奈緒を見たあと、今度は状況整理が追いついていない俺を下から上まで不思議そうに見ている加蓮が質問した。
バイトを始めたということと、その理由が姉さんへの誕生日プレゼントだと簡潔に答える。
が、加蓮はなぜかまだ納得していないようだ。
「その格好で大漁の旗持ちながらナンパするのがバイト?何それおっかしい!随分変なバイト始めたね!」
「いや・・・・・・」
やはり他の目からもそう見えていたのか。
師匠の接客を自分なりに変えて思ったままを相手に伝えるだけでこうなってしまうとは。
知り合いなら笑い話で済むだろうが、そうでなければ4月に現れたという不審者と同一だと思われる可能性があったな。
最初に会ったのがこの2人でよかったと思う。
とりあえず誤解を解いておこう。
信じてもらえるかわからないが、加蓮に魚屋のバイトだとどう分かるように説明しようかと考えていたところ・・・・・・
「あははは!はぁ~面白かった!それで?アタシには言うことないの?」
「ああ、今言おうと思ってたところだ」
ひとしきり笑った加蓮が呼吸を整え少し冷静に告げた。
先にそう言ってもらえるのはありがたい。これなら普通に話すだけで良さそうだ。
「魚屋のバイトを始めたんだ。店の人とは知り合いだったからすぐ話がまとまってな」
「違う違う。そうじゃないってば。そんなの見ればすぐわかるよ」
どういう意味だ?
魚屋のバイトだとわかってナンパのバイトだと言ったのか?
ああ、俺も奈緒と同じように単にからかわれただけか。
だがそれだと加蓮の問いの説明がつかないんだが。
「だから、アタシにも奈緒と同じようにナンパみたいなやつやってみてよ♪」
「・・・・・・」
一体何を言い出すんだ?
急にやれと言われても少し困るんだが。
さっきは誰かわからずに思ったことを口にした。
だが今目の前にいるのは友人である加蓮だ。
魚を買ってくれるよう頼む言葉がいいのか、思ったことを口にするのがいいのか・・・・・・
加蓮はとても期待するような目で俺をずっと見ており、その後ろでは奈緒が未だ何やら呻いている。
やはり加蓮が望むのは思ったままを口にすることだろうか。
そういえば直接言う機会はなかったな。
姉さんに俺が何を考えているかわからないと言われてから少し考えていたことでもある。
他人に何と思われようと俺にはどうでもいい話なのは変わらないが、近しい人には少しでも自分の考えを知ってほしい。
そんな感情が芽生え始めていた。
なら今はちょうどいい機会だ。
俺が加蓮のことをどう見ているのか話すのもいいかもしれないな。
「加蓮は最初会った時、昔の姉さんと同じ表情をしていたと言ったな。だが改めて考えるとそれ以上に儚く、今にも壊れそうなそんな状態だった。
だから話かけたんだ」
「う、うん。確かにそんなこと言われた気がするけど何か思ってたのと違うような・・・・・・そ、それで続きは?」
「今はあの時に比べて顔色も良くなって良い表情をするようになった。元々加蓮自身が備え持った性格なのかもしれないが、今みたいに加蓮が笑って奈緒が怒って追いかけて・・・・・・そんな空間にいるのが俺は悪くないと思ってる」
「先輩も同じ気持ちだったんだ。アタシも3人でふざけあってるのが今は一番好きかも・・・・・・って、そうじゃなくて!」
「俺はお前が人知れず努力しているのを知っている。過去のことは詳しくは聞いていないが、それでも悔しさや負けたくない気持ちが人一倍強いのも知っている。だから俺は隠れて必死に頑張っている北条加蓮の力になりたい。何がわかると否定されればそれまでだが」
「ちょ、ちょっと先輩!?い、一体何の話を」
「その透き通るようなきれいな声は絶対武器になる。加蓮がアイドルとして歌えば皆注目するはずだ。
そしてその皆の視線の先のお前が、努力を糧に得た自信のある表情で歌えばきっと魅了されてファンになると思うぞ」
「わ、わかった!わかったからもう降参!ごめんなさいアタシが悪かったから許して!」
「何だ?言われた通り思ったことを言っただけなんだが」
「あぅぅ・・・・・・皆の見てる前で真っ直ぐこんなこと言われるなんて。恥ずかしすぎてもうダメ」
両手で顔を隠す加蓮の表情は読み取れないが、隠していない耳はあの公園の時のように真っ赤だ。
怒ったわけではないというのはわかるが、正直に話すと加蓮も奈緒もなぜこうなるんだ?
「ふむ・・・・・・」
それまで静観していたプロデューサーさんだったが、顎に手を置き俺の方を見て何やら考えているような素振りを見せる。
一方加蓮は回れ右をして奈緒に急に顔を隠すように抱きつき、そのお陰か奈緒の方は冷静さを取り戻したようだ。
「あの、何か?」
「ああごめん。いや、よく2人のことを見てるなと思ってね」
「友達ですから」
「キミ、誤解されることばかり言うといつか刺されるぞ?」
苦笑しながらずいぶんと物騒な事を言う。
あまり本当のことでも思ったことを口にするものではない。そういった助言だろうか。
奈緒がよくわからずも抱きついている加蓮を撫でているところ、プロデューサーさんは落ちたポケットティッシュを拾い始める。
それを手伝っていると、今の状況を改めて説明してくれた。
「2人に会ったのは日曜日。ニュージェネのライブの日だよ。
加蓮ちゃんをスカウトして、彼女を探していた奈緒ちゃんも合流して一緒にスカウトしたんだ」
「なるほど、そういうことでしたか」
加蓮は元々アイドルに憧れている口ぶりだったから何となく分かるが、まさか奈緒も了承するとはな。
つまり了承したものの、まだ気持ちの整理がつかないためにしばらく学校で上の空だったというところか。
全てのティッシュを拾い終わる頃には2人も落ち着いたのか、俺たちの前にやってきた。
それでもまだこちらを見ずに下を向いているが。
そうか、2人はアイドルになったのか。
自分たちがやりたいことが見つかり、実現しているんだな。
つまり今後は姉さんや凛たちのようにデビューする日が来る。
さっき加蓮にも言ったことだが、ライブで歌う日が来る。
その時俺は1人で応援しに行くだろう。今後3人で笑いながら会場へ向かう日は来ないかもしれない。
2人のことを嬉しく思うと同時に、何故か心に穴があいたような・・・・・・そんな気分に一瞬なってしまった。
「!?」
「加蓮?どうかしたか?」
「ううん。何でもない。それよりも奈緒、まだもう少し時間あるんだし、仕事しないと」
「お、おう」
2人の会話は小さい声だったためよく聞こえなかったが、仕事という単語だけは聞こえた。
プロデューサーさんが奈緒にティッシュの入ったカゴを渡す。
つまりあれを配ることが仕事というわけか。
それにしても最初見た感じ上手くいってなさそうだったな。
「プロデューサーさん、2人の仕事はティッシュを配ることなんですよね」
「うん、俺はタケ・・・・・・武内みたいな一般のコネはあまりないんだけど、英会話教室とか携帯会社とかゲームや雑誌関係の知り合いは多くてね。
そこから新人の仕事に良さそうなのを回してもらったんだよ。今回は見られることに慣れてもらうのが目的」
「そうでしたか」
だがティッシュ配りは無視されるケースも多い。
俺もあまり関わりたくない場合、遠くから見つけたら迂回する時もある。
加えて、加蓮は大丈夫そうだが奈緒は渡すのに躊躇していた。
せっかくだし2人のことを覚えてもらいたいんだが、何かいい手はないか・・・・・・
「な、なあ紅葉。何か真面目そうに考え込んでるところ悪いんだけどさ、その旗持ってるせいで違和感しかないというか」
「絶対アタシたちより目立ってるよね♪」
「紅葉くん、俺もさっきから思ってたけど、よくそんなの持ってて疲れないね。重くない?」
「いえ、仕事ですので大丈夫です」
「そ、そう。やっぱり少し変わってるねキミ」
一瞬忘れかけていたが、俺もバイト中だった。
さすがに初日から真面目に行わないのはまずいだろう・・・・・・そうか、この手があった。
「プロデューサーさん、1つ提案があるのですが」
「うん?なんだい?」
「場所を変えませんか?自分としてはやはり2人のことを少しでも皆に覚えてもらいたいので」
「いいよ。この商店街はキミの方が詳しそうだ。2人もそれでいいかな?」
「うんいいよ。先輩なら間違ったこと言わなそうだし」
「あたしは何か嫌な予感がするけど、ここは素直に従うよ」
「こっちです。付いて来て下さい」
客引きは出来なかったが大丈夫だよな?
師匠には悪いとは思うが、時間も俺向きになってきたしあの場所を利用させてもらうことにしよう。
紅葉くんの作戦開始!
「師匠、戻りました」
「おう、早かったな・・・・・・って、おいおい。本当に連れてきたのかよ」
何故か驚いた顔をしているんだが。仮に3人がお客さんだった場合は普通喜ぶんじゃないのか?
「いや悪いな。まさかいきなり上手くいくとは思わなくて驚いちまった」
「いえ、すみません。実はお客さんじゃなくこっちの2人は知り合いなんです」
「ほう、知り合いね」
先ほどのプロデューサーさんのように、顎に手を置き奈緒と加蓮を見る師匠。
加蓮はいつも通りに見えるが、奈緒は師匠の様子に緊張しているのか背筋をまっすぐ伸ばしている。
「初めまして、北条加蓮です」
「か、神谷奈緒です!」
「おっと挨拶が遅れたな。俺はセタンタ。セタでいいぜ」
「セタ師匠とは俺が東京に来た頃からの知り合いなんだ。魚の捌き方なんかも教わってる」
「なるほどねぇ。だから師匠なんだ」
「ああ」
「で、どっちがお前さんのコレだ?まさか両方か?やるじゃねぇか紅葉!」
「は?コレ、とは?」
音が鳴るほど勢いよく俺の肩を叩く師匠の手が地味痛いんだが。
笑顔で小指を見せているのには一体どんな意味があるのだろうか。
「さあ、どっちでしょう?ね、奈緒?」
「は、はぁ!?あ、あたしに聞くな!紅葉、お前は知らなくていいからな!」
2人は知ってるようだが知らなくていいらしい。
師匠の小指に一体どんな秘密があるのだろう。
「ま、それはそれとしてだ。一体これから何しようってんだ?」
「はい。実は・・・・・・」
2人がアイドル、男性の方がプロデューサーであることを伝えると、プロデューサーさんの方が師匠に名刺を渡す。
それに納得したあとに今回のことを説明した。
内容は簡単だ。
魚屋へやって来たお客さんにティッシュを配るというだけ。
しかもこの時間帯は商店街の一部は店を閉め逆に買い物客になる人も多い。
そうなると俺はお客さんがほとんどが知り合いになるため、挨拶をしつつ確実に2人のことを話すことが出来るのだ。
「ほう、そりゃ面白ぇな。なら店の前はお前に任せるぜ。俺は明日の仕込みを始めるから困ったら聞いてくれ。出来るか?」
「はい、ありがとうございます」
「なるほど、良い案だね」
「あ、すみませんプロデューサーさん。勝手に決めてしまって」
「いや、俺も面白いからいいと思うよ。じゃあ2人ともそこに立って始めようか」
『はい』
2人が返事をして店の横に立つ。
まだ少し緊張しているようだが、自分たちで相手を探すよりは楽になるだろう。
あとは俺が上手く相手に話を出来ればいいだけだ。
「おや、さっき見た時もしやと思ったけど、やっぱり紅葉くんじゃない」
「おばさん、お疲れ様です。っと、いらっしゃいませ」
早速知り合いである商店街のおばさんが買い物に来てくれた。
今はすぐ隣に奈緒と加蓮が立っていて、少し離れた場所でプロデューサーさんがそれを見ている状態だ。
「バイトを始めたんです。短い間ですがよろしくお願いします」
「なんだ、それならウチに来てくれても良かったのに。じゃあ今日は奮発して少し多めに買おうかしら」
「ありがとうございます。それと隣にいる2人なんですが」
「そう、ちょっと気になってたんだけど、この子たちも売り子さんなの?」
「いえ、実は2人とも俺の友人なんですがアイドルになりまして。346プロダクションってご存知ですか?」
「もちろん知ってるわよ。あなたのお姉さんのことは家族揃ってファンなんだし」
「ありがとうございます。こちら、神谷奈緒と北条加蓮。姉さんと同じく346に所属することになりました」
『よろしくお願いします!』
同時に頭を下げてティッシュを渡す。
おばさんはそれを笑顔で受け取ると、2人に話しかけた。
「あらあら、2人とも可愛い子ねぇ。絶対人気になるわよ。息子と娘にもちゃんと伝えておくわ」
『ありがとうございます!』
「じゃあまたね紅葉くん。セタさんもまたよろしくね」
「おうよ!オヤジさんにもよろしく言っといてくれ。また皆で飲もうってな」
こんな感じで続いていき、何人かの商店街の人たちと交流したあと、時計を見たプロデューサーさんが仕事の終了を告げた。
何とか上手くいったようで安心した。
奈緒も加蓮も最初はぎこちなかったが次第に慣れていったようで、たまにお客さんと談笑する姿も見受けられた。
元々俺と違いコミュニケーション能力が高い2人だ。
普段通りであれば初対面の人とも普通に会話できるのは道理だな。
「いやぁ助かったよ紅葉くん。今日は思った以上の成果をあげられた」
「お役に立てたのなら良かったです。俺も初めてのバイトということを忘れて上手く出来ましたし」
「キミはやっぱりあれだね。人をちゃんと見ている。そして今どんな状況かを素直に言葉にすることが出来る。ある意味それは才能だよ」
「いえ、先ほども言いましたが2人が友人だったからです」
人を見ているなんて初めて言われたから驚いたな。
元々他人に興味はなく、まともに見ずにいたし他人に対してそれは今もほとんど変わらない。
周りに人たちに対しては今まで見ていなかった分必死なんだと思う。
それに単なる俺個人の感想だ。奈緒や加蓮が本当はどんな人間なのか。俺にはわからない。
わからないがわかりたいとは思う。
姉さんの時のように悲しい顔を見るのは御免だしな。
「お陰で俺も2人のことを少しわかった気がしたよ。キミが言ったような声に関することもね」
「声、ですか?」
「うん、ちょっと伝手を当たってみる。さあ、2人とも今日は帰ろう。明日からはボーカルトレーニングだ」
「ボーカルトレーニング?ダンスレッスンじゃないのかよ」
「バックダンサーなんだし歌わないんじゃないの?」
「もちろんそっちもやってもらうけどね。ちょっとサンプルが必要になるかもなんだ」
「美嘉の言ってるように急なんだな・・・・・・」
「でも、今は1つ1つ言われたことをこなしていくしかないんじゃない?」
3人が集まって話し始めたので、仕事の話もあると思いあえて聞かないことにした。
ちょうどよく普通のお客さんがやって来てそれに対応すると、再びプロデューサーさんが俺に声をかける。
「それじゃあ俺たちはこれで失礼するよ。またね紅葉くん。今日はありがとう」
「はい。お疲れ様です」
「また明日学校でな紅葉」
「ああ、また明日」
手を振る奈緒の隣で加蓮は何か考える素振りを見せ俺に近づいてきた。
そのまま普通に別れの挨拶をするのかと思っていたんだが、その表情は少し暗い感じがした。
「どうした加蓮」
「その・・・・・・先輩、大丈夫?」
「ん?何がだ?俺は何ともないが」
「そう・・・・・・そう、だよね。アタシの思い違いかな」
「何のことだ?」
「ううん、何でもない。じゃあね紅葉先輩。また明日!」
「ああ」
3人が帰ったあとしばらくして俺の初バイトの時間も終了となった。
師匠が言うには仕事は問題ないらしく、これからも頼むとのこと。
家に着いた瞬間、今までなかった疲労感が急に押し寄せてくる。
だが不思議と悪くない。初めてバイトをした達成感のようなものがあるからだろうか。
しかし、2人がアイドルか。
せっかくのチャンスだ。このまま上手くデビューしてくれるといいんだが。
プロデューサーさんは良い人そうだし、美嘉もいるなら安心か。
そちらはあまり気にせず、残り2週間もない姉さんの誕生日までバイトを頑張ろう。
加蓮が見た紅葉くん
一瞬だった。
本当に一瞬だったんだけど、先輩が悲しい顔をしたように見えた。
本人に聞いてみたけど何でもなさそう。アタシの勘違いかな?
それならそれでいいんだけど、もし勘違いじゃないのならあんな顔はして欲しくない。
今のアタシがあるのは先輩の、紅葉さんのお陰でもある。
アタシが今こうして笑っていられるのは、この時間をくれたのは神様でも何でもなく紅葉さんだと思ってる。
この時間は絶対零さないし零したくない。
紅葉さんと、それに奈緒との出会いは運命だと思う。
アタシたちがアタシたちでいられるため、今まで以上に頑張るよ。もちろん、倒れない程度にね♪
まずは美嘉先輩のバックダンサーとしてデビューして、一歩一歩確実に渋谷さんに近づいてみせる。
あんな恥ずかしいことを目の前で言われちゃったら、期待通りに皆を魅了するアイドルになるしかないじゃない?
続く!
今回ちょっとした新しいアンケートがあるので興味のある方はぜひ。
お遊びのようなものなので軽い気持ちでどうぞ!
この作品、当初思ってた以上にたくさんのUAを頂いて物凄く感謝しております。
その分評価の幅が多く、主人公も変わっているため下がっていくのは仕方ありませんがw
感想もそこまで多くない作品なのでこのまま進めて行っても大丈夫かなと思う時がたまにあります。
とは言え否定的な意見が多かったらそれはそれで困るんですが。
変な愚痴を語ってしまい申し訳ありません!
ちなみに、一人称とか極端にアイドルの話し方が変だと思ったら報告してくださると助かります。