そしてついに楓さんの2曲目が!
等身大の楓さんの素晴らしい曲。
さあ3曲目はいつに!?
紅葉くんと楓さん
「おまたせ紅くん。どうかしら?」
「良く似合ってるよ姉さん」
凛の店で花束を受け取りレストランへ置いてきた後、急いで家へと帰ったが時間に少し余裕があったせいか、姉さんの方の準備はまだ出来ていなかった。
そのため後から来た俺の方が着替えが早く終わりしばし待つことに。
普段とは違い髪をまとめ、黒のドレスを着た姉さんは元モデルであったこともあり、歩き方、佇まいは一般人のそれとはかけ離れているように見えた。
「ありがとう。紅くんも素敵よ」
俺の方は滅多に着ないカジュアルスーツだ。
ちなみに服に関してはほとんど姉さんに任せている。
いや、別に俺自身は特に気にしないんだが、基本的に否定しない姉さんが唯一と言っていいほど俺の服のセンスにだけは難色を示しているからだ。
タクシーが着いたとの連絡が来て家を出る。
珍しく姉さんはサングラスをかけていた。
タクシーで向かうのもそうだが、今日は誰にも自分のことを気づかれたくないそうだ。
都内にある静かな音楽の流れるレストランに着いて席へと向かう。
黄昏時、5階の窓側の席ということもあり、外はとても良い眺めだった。
「ね、ねえ紅くん。ちょっと値段の高そうな場所なんだけど大丈夫なの?」
「貰ったバイト代で十分払える場所だよ。ただコースは決めてあるからそこはごめん」
「そんな、謝ることじゃないわよ。紅くんに全部任せるわ」
「ちなみに言ってなかったけど、アルコールの方は飲み放題だ。選べるのは少ないけどね」
「!!!」
その言葉に子供のような純粋な目を輝かせる姉さんが、なぜか一瞬にして我に帰る。
普通に喜ぶかと思ったんだが。
「そ、その。気持ちは嬉しいけどあまり飲み過ぎると紅くんが・・・・・・」
ああ、いつもの説教を気にしていたのか。
普段俺は飲みすぎて周りや俺に迷惑をかける点と体のことを心配しての注意してるだけなんだが。
姉さんには言ってないが、実のところ姉さんが酒を飲むのは嫌いではない。
酒の匂いがきつかったり、必要以上に絡んでくるのは別だが、飲んでいる時の姉さんはとても幸せそうで見ているとホッとする部分があるから。
「今日は姉さんの誕生日なんだ。怒らないし気にせず楽しく飲んでよ」
「そ、そう?じゃ、じゃあ今日はリミッターを解除するわね♪」
・・・・・・何だって?
普段あれで制限してたとでも言うのか?
余計なことを言っただろうか。
先に飲み物が来てグラスに注ぐ。
当然俺は普通のお茶だ。
グラスを持ち、笑顔の姉さんは俺の言葉を待っていた。
「姉さん、誕生日おめでとう。今日は思いっきり楽しんでくれ」
「ありがとう紅くん。お姉ちゃんとっても嬉しいわ」
グラスのぶつかる音が小さく鳴り、タイミングよく料理もやってくる。
普段食べない料理に選んだ俺自身も満足の内容。
姉さんは終始笑顔で、料理を食べる数倍のペースで次々酒を飲んでいった・・・・・・
「楽しい場所だと
「・・・・・・61.4点」
「そんな!誕生日なのに!?しかも小数点付きなんて初めてよ!」
「誕生日だから少し甘くしたんだ。点数も今日に合わせたんだし」
「だ、だったら別に614点でも・・・・・・」
「それは10年分の誕生日プレゼントになりそうだな」
「そこまで!?」
普段と変わらない会話もしつつ時間も後半に差し掛かった時、不意にBGMが小さくなり誕生日の音楽が流れ出す。
その状況に姉さんが俺を見る・・・・・・が、演出のことは全く聞いてないんだが。
普通にケーキと花束を持ってきて渡すだけだと思っていたのに、照明が消えレストラン内の人々が一気に静かになり、照らされたライトが俺たちの席にあてられて一気に注目を集める。
台車を引きやって来る従業員。そこには当然というべきかケーキが置いてあり、もう1人が花束を持ってやって来る。
・・・・・・ちょっと待ってくれ。なぜマイクを持っているんだ?
そういえば川島さんが特別な演出がある店だと言っていたが、まさかこれのことか?
ケーキに刺さったロウソクに一つ一つ火がつけられテーブルへと運ばれる。
従業員の人は俺に花束を持たせ、笑顔でマイクも渡してきた。やっぱりそうなのか。
困ったな。セリフなんて何も用意してないぞ。
まさかこんなことになるとは全く思ってなかった。
が、姉さんは期待の眼差しで俺を見ている。それを今日裏切るわけにはいかない。
なら仕方がない。師匠のもとでやったように、自分の素直な気持ちをここで伝えてみるか。
普段は言わないがちゃんと名前も呼んで・・・・・・
「楓姉さん。改めて誕生日おめでとう。姉さんはいつも俺の傍にいてくれた。それが当たり前のように感じていたかもしれない。そしていつも甘えてばかりだ」
「そんな、紅くん。お姉ちゃんなんだから当然じゃない」
「俺は姉さんのように目標や夢をまだ見つけていない。でも東京に来て、姉さんと一緒に暮らせて本当に良かったと最近実感してる。
楓姉さんが俺の姉で本当に良かったと思ってる。まだまだ未熟な弟だけど、困ったことがあったら何でも言ってくれ。俺はこれからも姉さんの力になりたい」
「紅くん!ありがとう・・・・・・本当にありがとう!今日は一生で一番嬉しい日よ!」
周りから一斉に拍手とおめでとうの言葉が送られた姉さんは、少し涙ぐんでいたようだった。
マイクを戻し、花束を姉さんへとプレゼントする。
「中心にある花はグラジオラスって名前らしい。今日の誕生花なんだ。ピンクの方は『たゆまぬ努力』『ひたむきな愛』。紫の方は『情熱的な恋』」
「努力、愛・・・・・・」
「アイドルとして頑張ってる姉さんにはぴったりだと思う。と言っても俺も今日初めて知ったんだけど」
「ふふふっ、そこは別に言わなくてもいいのに。紅くんらしいわね」
花束を受け取った姉さんがロウソクに息を吹きかけ、あたりが暗闇に包まれる。
その瞬間再び拍手が起こり、しばらくして照明と音楽も元に戻った。
ケーキを食べている間、短い時間だが姉さんは何か考えているようで、ほとんど会話はなかった。
食べ終わりグラスを一気に飲み干すと、ようやく考えがまとまったのか俺に話し始めた。
「紅くん、いずれやろうと思っていたことがあるんだけど、聞いてくれるかしら?」
「うん」
「私がアイドルとしてデビューした思い出の場所があるの。以前渡した写真の場所よ」
「ああ、ゾフマップ・・・・・・だったか」
「ええ。そこで機会があればまたライブをやろうと思ってたの。小さくても関係ない、始まりの場所だから」
「そうか」
「そのライブを必ず今年中にやるわ。そして、紅くんにも来て欲しい。私と一緒に思い出を共有して欲しいの」
酔いながら顔の若干赤い姉さんが真面目な顔で何を言い出すかと思ったら・・・・・・そんなの、答えは決まってるじゃないか。
「もちろん行くよ。呼ばれなくても行くつもりだ」
「ありがとう♪それじゃあ、時間も迫ってきたことだし、じゃんじゃん飲んじゃいましょう!」
「あ、ああ」
俺の想像以上に限界を越えた姉さんは最後の最後まで飲み続け、会計の頃にはほとんど眠ってしまっていた。
若干苦笑いの従業員に申し訳なく思いながらも、姉さんをおぶって迎えのタクシーに乗り込む。
家に着く頃には完全に眠りについた姉さんの寝息が聞こえ、そのまま部屋のベッドに寝かせても全く反応がなかったが、その寝顔はとても安らいでいた。
「おやすみ姉さん。もしかすると途中から記憶がなくなってるかもしれないけどな」
そういえば今日は仕事を休みにしたようだが明日はどうなのか聞いてなかった。
俺は普通に学校だし、一応朝食を用意して出発する時に起こしておくか。
紅葉くんとアイドル再び
姉さんの誕生日からしばらく日が経ち、シンデレラプロジェクトの面々は徐々にメディアに進出し始めていた。
奈緒と加蓮は未だ完全なデビューとはいかないが、それでも小さな仕事やレッスンはこなしているようだ。
7月になりますます日差しが暑い祝日。
あれ以降も日数は少ないが続けているバイトがない日に、美嘉から連絡が来た・・・・・・が、様子がおかしく話がまとまっていない。
『お願い高垣くん。莉嘉を助けて!』
「どういうことだ?」
一体莉嘉に何が起こっているのか。
また以前凛から連絡があった時のように、ストライキでも起こしているのだろうか。
次回 Our world is full of joy!!~side紅葉~
「渋谷凛さん・・・・・・だよね?」
続く!
ということで次の話はまた少し時間が飛びます。
それと以前のコミュアンケート結果もあるので、少し早めに美城常務と紅葉くんの部分ちょっとやりたいですね。