冒頭だけどうしても多くなって後半少なくなりますね。
紅葉くんは皆のために!
姉さんとしゅがはさんのパフォーマンスに感化されるかのように、シンデレラプロジェクトの面々や奈緒と加蓮は一層真剣に練習に取り組んでいた。
どうやらプロジェクトではユニット曲とは別に全体曲も新しく追加されるらしいが、初めて全員で歌い踊るというのもあってか悪戦苦闘しているようだった。
何度やってもダンスが揃わないのが俺から見てもわかる。
が、その苛立ちは踊っている本人たちが一番理解しているだろう。
俺が少し気になった点は、なぜ揃わないかを1曲ごとに話し合う場面だ。
何人かで意見を出し合ったり、気になった場面の確認をするのは当然のことなのだろうが、必要以上にユニットで固まり過ぎているように感じた。
ユニットごとにはある程度動きが揃っているようには見えるし、普段一緒に踊らないメンバーと話をした方がいいと素人ながら感じたが、恐らくユニットで完璧に揃わなければ全体でも揃うわけがない……といった理由からだろうか。
新田さんがまとめ、疲れが見え始めた頃に双葉さんが休憩を提案する状況も多く見られた。
どうやら双葉さんは自分の将来のことをしっかり考えているだけではなく、全体もよく見て休むところはしっかり休ませているようだ。
あれで俺と同い年だというのだから尚の事感心させられる。
蘭子や緒方さんは最初男であり、場違いな俺のことを気にしていたようだったが、練習が進むにつれ全く気にしないようになっていた。
その点も踏まえ、ただ姉さんの面倒をみるだけでは申し訳ないと思い、ここと旅館を往復して冷たいタオルと飲み物を用意する。
一緒に配られた三村さんの持参したお菓子で、全体が和やかになる場面もあった。
気温も含め室内の熱気は扇風機だけではとても逃がすことが出来ない。
見ているだけの俺がこれだけ汗をかいているのだから、動き回っている皆の体力の消耗は相当なものだろうな。
本当は皆に持ってきた飲み物があるんだが、好き嫌いがあるというのを加蓮から聞いて知ったのと、それなら冷やしつつアクセントを加えようと思ったので今日はやめておいた。
そして新鮮だったのは姉さんだ。
しゅがはさんだけでなく、初舞台を経験することになる奈緒と加蓮にも色々とアドバイスをしていた。
歌に関する質問にも真面目に答えていたが、ダンスのことになると曖昧で他の話に変えようとしていたのは何故だろうか。
それに困ったからといって俺の方を見られても何もアドバイスなんて出来ないんだが……
「それじゃ、俺は買い物して帰るから」
「ええ。やっぱりお姉ちゃんも……」
「姉さんは疲れてるだろう。先に行っててくれ」
明日の差し入れのために果物を買おうと思った俺は、練習が終わってから宿へ帰る前に新都へと向かうことにした。
帰りのバスの時間だけ確認し、特にここという目的地を決めずに初めての土地を歩く。
スーパーや百貨店ならすぐに見つかるだろうしな。
しばらく歩くと、目線よりも少し高い位置に『夏木商店街』という文字と矢印が記されていた。
矢印通りに角を曲がるとアーチ状に大きく商店街という看板が見え、どこか馴染みの商店街を連想させる風景に自然と足が動き出す。
いつもの商店街と違うところは、活気に溢れ年齢関係なく人が行き来しているところだろうか。
そういえばもう夕方だ。
学生もちらほら見えるのは、夏休みの部活帰りだろう。
いつもの商店街に来る学生は基本アイドルばかりだが……まあ、そっちのほうが普通は驚くか。
どうやらここは以前奏と莉嘉たちを探していた場所にも似ているようだ。
クレープ屋やゲームセンターもあり、だからこそ学生がいるのだと納得する。
その中の1つに当初の目的であった青果店を見つけ中へと入る。
商店街を一周してみたい気持ちはあるが、旅行中とはいえ俺も未成年の学生だ。
あまり遅い時間まで外出しているのは問題だからな。
「いらっしゃいませー」
活気があるとは言っても、やはり店内はそこまで大差ないようで、商品の配置なども似通っている部分がある。
だが値段は多少安いか?
果物のコーナーへ行き、何がいいかを探すことにした。
ちなみに、俺が元々持ってきたものは梅ジュースとアイスだ。
アイスは準備だけしてこっちで冷やす予定ではあったが。
梅は紀州梅で、姉さんの誕生日と収穫時期が合うために6月に青梅が実家から送られてくる。
それを俺が3、姉さんが7の割合で分け、それぞれ好きなように使う。
姉さんはもちろんほとんどを梅酒用に使い、あとは梅干用にしている。
ここが不思議な点だが、梅酒と梅干に関しては昔から俺よりも姉さんが作る物の方が断然旨い。
まあ、梅酒は飲んだことはないが。
そして電車内でこの梅ジュースの話をしたところ、加蓮から梅は好き嫌いがはっきりしていると言われ、奈緒もそれに共感していたのだ。
俺としては物心ついたころから親しみのある食べ物だったため、どこでもそうだと思っていたが違うらしいな。
梅は夏バテ防止にもなるしこの状況に最適だ。
加えて地元和歌山の名物にもなっているし、どうせなら皆に食べてもらいたいという気持ちもある。
だから何か甘い果物と一緒なら大丈夫な人が増えると思いここへ来たわけだ。
「やっぱりこれが一番か」
色々と見たが、誰もが慣れ親しんだ果物がいいだろう。
りんごともう1つ梨を入れることに決め、まずはりんごを手に取ろうとした……
「あ、すみません」
「いえ、こちらこ……お前は!」
「ん?」
偶然にも同じりんごを手に取ろうとしたらしい他人の手がぶつかる。
怪我はないと思うが謝ると、その相手は制服を着た黒髪の少女で歳は俺と同じくらいだろうか。
向こうも一旦手を戻し、なにか言葉を発しようと俺を見た瞬間に、表情が変わり視線が鋭くなった。
「ここで一体何をしているのですか。お嬢さまからは観光だと聞いていましたが」
「何故それを?」
「……」
どうやら俺を知っているようだが……それにお嬢さま?
ああ、この敵意にも似た目は昨日の人か。
あの時もあの金髪の女性にそう言っていたな。
「昨日の人ですよね。駅前で会った」
「……ええ。言っておきますが、お嬢さまはお前のような人間が簡単に話しかけていい方ではないのです。
次にお嬢さまに馴れ馴れしくするようであれば、容赦はしません」
「俺から話しかけたのではないんですが」
「お前の意見はどうでもいいのです」
「今俺が何をしているか聞いてきたのも答えはどうでもいいと?」
「くっ……口の減らない!」
随分と嫌われているようだが、それだけあのお嬢さまという人が大事だということだろうか。
その呼び方や雰囲気からもかなりの身分の人のようだな。
なら返って今以上に怒らせるかもしれないが、俺の状況を正直に話してすぐここを去ったほうがいいだろう。
青果店なら他にもあるはずだしな。
「俺には大事な人がいます。それは姉であり友人であり……その人たちの力になりたくてこの地に来ました。
今俺が出来るのは差し入れくらいなので、ここに果物を買いに来たんです」
「……」
「では……」
「大事な人……ですか。よく恥ずかしげもなく言えますね」
「本当のことですから」
理由を説明して頭を下げ、彼女のいる方向とは逆へと歩き出そうとすると、そんな言葉が聞こえ振り返る。
すると何故か先程までの敵意のある表情が消えており、俺を見定めるかのように目を見て話しかけてきた。
「どうやら"あなた"は普通とは少し違うようですね。そこまではっきりと言える人は中々いませんので」
「今の俺があるのは姉さんや友人のお陰です。その人たちのために何かしたいと思うのは当たり前のことですよ」
「今の自分があるのは……ですか。……"白雪千夜"です」
「え?」
「聞こえませんでしたか?私の名前です。2度は言いませんよ」
「あ、高垣紅葉です。ちなみに姉は高垣楓といって346プロダクションのアイドルをやってます」
「アイドル……」
「宣伝というわけではありませんが、テレビや雑誌で見かけたら応援してくれると嬉しいです」
「そうですか。ところで、果物は買っていかないのですか?」
「白雪さんも同じでは?」
「質問に質問で返すのは感心しませんね。それにここにあるりんごは1つではないのです。私はこちらのりんごを買いますので」
「ありがとうございます」
「別にお礼を言われることでは……それでは高垣紅葉。一応良い旅を、と言っておきましょう」
「はい。白雪さんもお元気で」
よくはわからないが敵意は消えたようだ。
そのまま店を去った白雪さんを見送り、俺はもう1つの梨を買って民宿へと戻ることにした。
???
街の明かりも消え始めた夜。
ここ、ブランツベルン城も入館時間を過ぎ辺りは明かりが消えひっそりと静まり返っていた。
この城はルーマニアにあるブラン城を模して造られたと言われ、吸血鬼のモデルである"ヴラド三世"とも関わりがあると言われてはいるが定かではない。
そもそもヴラド三世はブラン城を居城としてはいなかったという話もある。
そんな観光地となっているこの城の最上階の角の部屋に急に明かりが付く。
扉を開け明かりを付けた本人は、中の様子を見て溜息は吐いた。
「ただいま戻りましたお嬢さま。また部屋を暗くしていたのですか」
「お帰り"千夜"ちゃん。だってこの方が落ち着くんだもの」
「はぁ……今夕食の準備をしますね」
「はーい。って、あれ?千夜ちゃん今日は声に元気があるね。何かいいことでもあった?」
「いえ、特には……ああ、そういえば昨日お嬢さまが話していた少年に会いましたよ」
「え?もしかして喧嘩しちゃった?」
「……高垣紅葉と言う名だそうです。姉がアイドルをしているらしいので、暇な時はテレビでも観るといいのではないでしょうか」
「おお!千夜ちゃんが他人に興味が出るだけじゃなく話もちゃんと聞くなんて!」
「そ、そういうわけでは。普通に話をしただけです」
「うんうん!やっぱりあの子は面白いね!東京かぁ、ちょっと興味が沸いてきたかも」
「ここを出られるのですか?」
「5年もいたから少し愛着はあるけど、借りてるようなものだしね。千夜ちゃんはここを離れると寂しい?」
「いいえ。私のいる場所はお嬢さまがいる場所ですので」
「まあでもすぐってわけじゃないよ。それにしても千夜ちゃんの表情、やっぱり何か変わったね」
「自分ではよくわかりませんが」
「紅葉くんのお陰かな?たった2日で私たちの環境を変化させるなんて、魔法使いみたい♪」
薄暗い城で2つの影がゆらゆらと動く。
それは遠くから見ると闇の住人が踊っているかのようにも見え、都市伝説はさらに信憑性を増していくのであった。
続く!
双葉杏
キュートS
ゲームA
頭脳A+
やる気EX
飴S
対紅葉F
シンデレラプロジェクトのアイドル。
本人の意思と全く関係なく、プロジェクト内ではトップレベルに紅葉に評価されている。
冗談も全く通じない紅葉とは出来れば関わり会いになりたくないと思っている。
●● ●●●
キュートA
クールA
吸血EX
朝E
夜S
千夜ちゃんS+
対紅葉A
謎のお嬢さま。
金髪紅目ということ以外ほとんど情報がない。
今後本編に登場する機会は不明であり、エンディング後のとある2つのオリジナルプロジェクトに大きく関わってくるらしい。(仮)
白雪千夜(アイドル前)
キュートC
クールA+
料理S
お嬢さまEX
対紅葉A
お嬢さまに使える謎の少女。
5年ほど前から一緒にいるらしいが、それ以前の経歴は不明。
紅葉をお嬢さまを害する危険人物と思っていたが、その真っ直ぐな信念に少し共感する。
お嬢さまと同様、エンディング後に関わってくる可能性大。
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キュートA
クールC
パッションB+
やる気E~EX
ケミカルEX
対紅葉S
登場していないのに登場が決まっている可能性が高い人物。
だが今はどこにいるか全く不明であり、本人の性格上いつ現れるかわからないし現れないかもしれない。
本編よりもエンディング後に関わってくる可能性大。というか、Phantom Storyではいることになっている。
?? ??
筋力D
耐久C
敏捷C
幸運E
心=硝子
次の話に出る可能性が高い男性。
この世界の彼は性格、声共に白髪の方であるが名前は漢字である。
セタ師匠とは知り合い。
久々にステータス表を作りましたが若干ふざけました!