今回は色々と条件が変わってきて一体どうなるのか。
とりあえず総選挙の間に1度投稿出来てほっとしてます。
そして今回あとがきに紅葉くんプロトタイプを載せました。
この作品が出来る前に書いたもので、今とは全く違いますしなぜここから今のようになったのか全く覚えてません!
が、書き直して今の状態になったのは良かったと思ってます。
ちなみに、『……』の表示だけ今と同じにしただけで他は編集してません。
すぐ終わる上にぶつりと話が切れます。
紅葉くんと民宿の主
民宿へと向かうバスの中は行きよりも乗客が多く、席が空いていなかったため結局立ち乗りとなった。
仕事帰りの時間かとも思ったが、周りの雰囲気はそうでもないようだ。
スーツを着たサラリーマン風の男性はほぼ乗っておらず、俺に近い年齢から姉さんくらいまでの男女が多い。
こんなことは普段全く気にならないのだが、初めて訪れた土地だからだろうかその土地で初めて話す人が増えたからだろうか、周りの景色だけではなくそこに住む人たちにも目がいくようになっている気がするな。
そのほとんどが新都と住宅街の間にある夏木大橋前で降りたため、車内が急に静かになった。
民宿近くのバス停で降り帰り道を歩いていると、またもや合宿所へ向かうときとは違い歩いている人が多く見られた。
浴衣を着ている人もいるということは、以前の*(Asterisk)のデビューのときのようなイベントでもやるのだろうか?
「おかえりなさいませ。お荷物お持ちしましょうか?」
「いえ、大丈夫です」
民宿のインターホンを押すと、また慌てたような足音が聞こえグレイさんが丁寧にお辞儀をして出迎えてくれた。
グレイさんなら何か知っているかもしれないな。
「夏木大橋周辺に人が集まっているようですが、何かあるんですか?」
「橋ですか?すみません、拙は何も……」
「そうですか」
そう言ったグレイさんだったが、玄関を開け廊下へと足を一歩踏み出した時、そう言えばと口を開けた。
「今日の日付、確かクラスメートに誘われた日と同じです。仕事があるからと断ったのですが、その時何かがあると言っていたような」
「もしかして俺たちが原因でしょうか」
「い、いえいえ!お客様が原因だなんてそんな!元々拙のことを嫌いなのでは?と思っていた人から急に誘われたので……いつも話しかけると慌てたり目を逸らしたり逃げ出してしまいますし」
普通嫌いな相手をどこかへ出かけるのに誘うだろうか?
だがその相手の行動は心当たりがあるな。
俺の場合、こちらから話しかけるのではなく向こうから話しかけてきて似た状況になっていたことが多いが。
グレイさんに改めて部屋に案内されながら、最後にお役に立てず申し訳ないと再び謝られてしまった。
最近海外から来たばかりだしわからないことが多くても仕方がない。
却って申し訳なくなってしまったな。
しかし彼女は屋内でも相変わらずフードを被ったままだ。
まさか学校でも同じなのだろうか?
そんなことを考えながら部屋の戸を開けようとすると、中から話し声が聞こえてきた。
姉さん、1人だからって昔みたいにエア友達と会話をしなくても……
「ただいま」
「あ、お帰りなさい紅くん」
「あらお帰り。お邪魔してるわよ」
なるほどそういうことか。安心したよ姉さん。
姉さんが話していたのは女将さんだったようだ。
しかし仕事の方は大丈夫なのだろうか。
「滅多にない機会だから、芸能界のこととか色々教えてもらってたの。ごめんなさい、長居しちゃったわね」
「いえ、私も凛さんの話は楽しかったので。ねえ紅くん。あの合宿所、765プロのメンバーも使っていたらしいわよ」
「765プロ?ああ、確か奏に聞いたことがあったな。有名って話だったけど」
「……やっぱり紅くんほとんど知らなかったのね」
「なるほど、これは確かに手強いわね」
何故か姉さんと女将さんが意気投合してため息を吐いているんだが、この様子だと奏の言った通りかなり有名なようだな。
「これならウチのグレイの方が詳しいんじゃないかしら。あの子、中でも高坂海美のファンらしいわ。シンパシーを感じるとか何とか」
「最近出来た劇場で人気が出ている子ですね。765プロのアイドルは皆トップレベルで、私も共演する度に勉強になります」
その後再び2人の話は続くが、横で聞いていると全く知らない名前ばかりが出てくる。
どうやら全員アイドルの名前らしいのだが、一体どれだけのアイドルが世に出て活躍しているのだろうか。
そしてこの中に一歩足を踏み込んだ奈緒と加蓮。さらに少し前にいる凛、姉さんと同じく活躍している美嘉。
彼女たちの立ち位置を確認するためには、身近なアイドルの名前を覚えるだけでは足りないのかもしれないな。
「まったく、姿が見えないと思ったらここにいたのか」
「うげっ、し、士郎……」
突然男性の声が背後から聞こえ一瞬の沈黙。
その声に反応した女将さんは、しまったというような顔でゆっくり振り返った。
そこにいたのは入口よりも高い身長、日本人離れした体格に白髪で褐色の肌、そしてエプロンという一度見たらさすがの俺でも忘れない男性だった。
「挨拶が遅れました。私は衛宮士郎。この民宿の主です。ウチの者が大変失礼をしまして申し訳ありません」
「べ、別に失礼なことなんてないわよ!それに2人ならセタの知り合いだし、普通に話しても大丈夫なんだから」
「はぁ……凛」
「うぅ……だってぇ」
額に手を置き呆れた様子でため息を吐く衛宮さんに、女将さんは返す言葉が見つからず戸惑っていた。
俺たちはここに来たときに言ったように、楽に話してもらったほうがいい。
姉さんに視線を送ると俺の言いたいことがわかったのか、女将さんの前に立ち衛宮さんへ話しかけた。
「初めまして、高垣楓です。こちらは弟の紅葉。凛さんにはとても良くしていただいています。私たちとしても普通に話しかけてくださった方がいいので気にしないで下さい」
「紅葉です。衛宮さんのことは少し師匠から聞いていました。短い間ですがよろしくお願いします」
「師匠?そういえばあいつがそんなことを言っていたな。昔から極端に運のない男だ。魚を捌くつもりがうっかり包丁で自分を……なんてこともあるんじゃないのか?」
「い、いえ。そういった場面は見ていません」
「そうか」
沈黙がしばし流れるが、衛宮さんの表情を見るに女将さんに対して怒っていはいないようだ。
なら2人が部屋を出ていく前に夏木大橋の件を聞いてみよう。
昔から住んでいるなら今日何があるかわかるはずだしな。
「1つ聞きたいことがあるんですが、新都からの帰りに夏木大橋前で人が集まっている姿が見えました。何かあるんですか?」
「ああ、今日は夏の花火大会だ。そこまで大きな物ではないが、多少の屋台もあって賑わっているよ」
「私の家でも寄付してるのよ。最近はここで眺めるだけだけど、最後に寄付者の名前は出てるんじゃないかしら」
「ちなみに、家と言ってもここではなく凛の実家だ。今は彼女の妹が家を継いでいる。遠坂……といえばわかるかな?」
遠坂?有名な偉人か何かの家系なのだろうか?
俺は全く心当たりはないので姉さんに聞こうと思ったが、それよりも早く驚きの声で姉さんは答えた。
「もしかして遠坂桜さんですか?遠坂CCC株式会社の」
「有名なの?」
「ええ、宝石関連の会社では日本トップよ。私、実は1度企画でお会いしたことがあるんです」
「そういえば桜、テレビに出るって言ってたわね。ジュエリーデザインの番組だったかしら」
「はい。桜さんとは同い年ということもあって意気投合して。"サクラファイブ"という新しいデザインの企画だったんです。
そのうちの1つの"メルトリリス"のデザインを任されまして……白鳥をイメージしたんですがみんなからペンギンと呼ばれてしまいました」
「……」
姉さんのデッサンは独特だからな。
人によって見方が変わる不思議な絵が多い。
俺は嫌いじゃないが、その絵がなにか当たる確率は高くはない。
半分冗談なのか本気なのか、暗い表情で俯く姉さんだったが、次の衛宮さんの言葉を聞き一瞬で目が輝いてしまった。
はぁ……相変わらずだな。
「サクラファイブの名前はここの地酒にも使われていてね。私が学生時代酒屋でバイトしていたこともあって、贔屓にさせてもらっているよ」
「お酒ですか!?」
「あ、ああ。と言っても扱っているのはその中の1つだが、その他にもここは変わった酒が造られているんだ。大吟醸・愉悦と約束された勝利。
それにサクラファイブを模して作られたワイン・メルトリリ酒は女性に一番人気だ」
「まあ!それは楽しみです!」
「どうせなら先に花火大会を見学してきたらどう?夜はこれからなんだし、その後に夕食でもいいんじゃないかしら。ね、士郎?」
「ふむ。せっかく遠くからお越し下さったお客様だ。ならばこの街を十分に楽しんでいってほしいのは道理。たまにはいいことを言うな凛」
「たまには余計よ!」
随分と仲の良い夫婦のようだな。
人柄も良いし、師匠に選んでもらって正解のようだ。
それに花火大会というのは直接見に行った経験がないし興味がある。
せっかくだし、他の3人も誘ってみるのはどうだろうか?
プロジェクトのメンバーはさすがに無理だろうが、あの3人なら問題ないだろう。
「姉さん、どうせなら一緒に来た3人も誘ってみないか?向こうは花火のことを知らないかもしれないし、聞いてみるだけでもいいんじゃないだろうか」
「そうね。滅多にない機会だもの、皆で楽しみましょう。ここで花火を見ながら一杯……も捨てがたいけど、楽しみを後に取っておくのもいいわよね」
姉さんはもう飲む気だったのか?
楽しみなのが花火なのか酒なのかよくわからなくなっているな。
そして俺が連絡しようとするよりも素早く姉さんがしゅがはさんに連絡を取ったようだ。
3人とも参加することになったようだが、一向に話が終わる気配がない。
酒の話は合流してからで良いと思うんだが。
「そうだ、紅葉くん。浴衣着てみない?」
「浴衣ですか?」
先に外に出て待っていうようかと思っていた矢先、女将さんが思いついたように両手を叩き提案してきた。
「ねえ士郎。あなたの学生時代の浴衣、せっかくだし着ていってもらったら?楓さんの方は身長の関係でサイズが合わないから1人だけになっちゃうけど」
「そうだな。今のは無理だが、昔のならサイズ的にちょうどいいか」
どうやら浴衣を着るのは決定のようだ。
姉さんを残して部屋を移し、衛宮さんに言われるがまま浴衣を着る。
無地一色のシンプルな物ではあるが、袖を通すと心地よく、冷房がない部屋でも何となく涼しくなった気になる。
下駄も勧められたがこちらは断った。
慣れない地に慣れない履物では何が起こるかわからない。
だが靴は一応念の為に持ってきておいたサンダルに履き替え、しばらくすると姉さんがやってきたため一緒にバス停へと向かった。
紅葉くんと夏の夜の花火
「わぁ!先輩浴衣!?どうしたのそれ、とっても似合ってる!」
「そうか?」
「う、うん。まあいいんじゃないの?あたしも持って来ればよかったなぁ……」
姉さんとしゅがはさんにも似合っていると言われ、ありがとうと返す。
周りを見ると同じ格好の男女が多いため、特に目立つということはないようだ。
「ねえねえ先輩、奈緒。ちょっと屋台見てみない?アタシポテトが食べたいなぁ」
「だからお前は屋台やライブ会場に何を求めてるんだ?ここにそんなものあるわけ……」
「あるな。ポテト」
「はぁ!?どうなってんだここ!?」
俺が指を差した先に見えるのはポテトの文字。
と言っても、螺旋状の串に刺してあるフライドポテトのようだ。
普段とは違い旅行中だし、俺が健康面に気を使ってとやかく言う立場でもないだろう。
奈緒共に黙って加蓮について行き、3人でポテトを買うことにした。
「ん~~~!ポテトおいし~!生きてるって感じがするよね」
「ポテト1つで大げさだな。そんなお前に食べられるならポテトも本望だろうけどさ」
揚げたてではない微妙な温度のポテトは味はともかくとして思ったよりもボリュームがあった。
姉さんが夕食やお酒が飲めなくなると言ったのはあながち間違いじゃないようだ。
「ふぅ、お腹いっぱい。ねえ奈緒、お願いがあるんだけど」
「はやっ!?だから一番大きいのはやめておけって言ったんだ!あたしだって自分ので手一杯だぞ」
「うーん、捨てるのはもったいないし。じゃあ先輩、これ……」
「あっ!」
加蓮の言葉を遮るような奈緒の声と同時に、すっかり暗くなった夏木大橋の土手が大きな音とともに眩く光る。
空を見上げると次々花火が打ち上げられており、周りからも歓声が聞こえてきた。
「た~まや~♪」
「か~ぎや~☆」
後ろから姉さんとしゅがはさんの元気のいい声が聞こえてくると、それに習って奈緒と加蓮も同じように叫び始めた。
「ほら先輩も」
「俺も言うのか?」
「当たり前だろ。こういうのは皆で楽しまないとな」
両端から期待するかのような目で見られ、次の花火が上がる。
声を出しているのは周りも同じようだし、確かにライブのように見る側も盛り上げる必要があるか。
「た、たーまやー」
『た~まや~♪』
俺の言葉の後に2人が同時に叫ぶと自然と笑みが溢れる。
こうやって同じ場所に立てるのはあと何度だろう……そんな考えが一瞬よぎったが、今は気持ちを切り替え花火を楽しむことにした。
紅葉くんと君の知らない蛍火
「じゃあ紅くん、私たちは一足先に衛宮さんの民宿へ向かうわね」
「あんま寄り道すんなよ☆」
「ああ、わかった」
花火が終わり周囲から少しずつ人がいなくなった時、俺たちも同じように帰ることにしたんだが、加蓮の提案を受け二手に別れることとなった。
「せっかくだから少しこの辺りを歩いてみない?あっちの方とか、田んぼがあってちょっと楽しそう」
「あたしは別にいいけど」
「俺も構わないぞ」
「紅くん、私たち電話で話していたのだけど、民宿で心さんと一緒に飲もうと思って……その」
「衛宮さんたちの許可は取ったのか?」
「え、ええ。1人で飲むのもあれだし、地元のお酒を楽しんで欲しいって」
「なら問題ないよ」
「いいの!?」
何故か保護者の立場が逆転しているような気がするんだが。
姉さんが酒を好きなのはよく知っているし、俺じゃ相手出来ないからな。
ライブの練習を兼ねての旅行だ。姉さんにも良い思い出を作って欲しい。
3人で互いの宿泊先の話をしながら歩いていると、確かに加蓮の言う通り田んぼ道が目の前に現れた。
新都と違いこちら側は少し田舎のような雰囲気の場所が多いようだ。
周りには人がおらず、夏特有の虫の鳴き声がそこかしこで聴こえてくる。
都会では中々見られない風景に2人が少し感動しながら歩いていると、前を歩いている加蓮の髪の一部が急に光りだした。
そのことに加蓮も隣を一緒に歩いている奈緒も気づいてないようだが、これは言ったほうがいいか?
「加蓮、ちょっと前を向いたまま止まってくれないか?」
「え?急にどうしたの?」
疑問を投げかける加蓮だったが、俺の言葉に素直に従い動かず待っている。
ゆっくりと手を伸ばし光の正体を掴むと、逃げもせず俺の手に収まった。
「これだ。これが加蓮の髪についていて気になったんだ」
「ん?ああ、これ蛍か?実際に見るの初めてかも」
「アタシも。そっか、これが本物の蛍……」
加蓮には何か思う所があるのか、優しい眼差しで蛍をじっと見つめていた。
何かあるのかと奈緒を見ると、こちらは同じように蛍を見ながらも考え事をしているようだ。
「あっ」
加蓮の声で再び手に目を移すと、俺が目を離した隙に蛍は飛び立ったようだ。
それに呼応するかのように周囲が一斉に光り始め、蛍が空へと飛んでいった。
「わあ!きれい!この光1つ1つに命が宿ってるんだよね。これが蛍火……ううん、消えていく儚い光じゃなく、きらきら輝いてる」
「そうだな」
「あ、あのさ!ここだけの話なんだけど、聞いて欲しいことがあるんだ」
「ん?」
「いいよな?加蓮」
「もちろん。アタシはもっと早く言うつもりだったけど?」
「何の話だ?」
さっきの考えているような表情と関係があるのだろうか。
奈緒は1回、2回と深呼吸をして意を決したように話を始めた。
「実は、あたしと加蓮のソロデビューが決まったんだ」
「それは美嘉のバックダンサーとは別ということか?」
「うん。今度アニメの映画をやるんだけどさ。それぞれその主題歌ってことで、映画より先行してCDも出ることになってる」
「すごいじゃないか。おめでとう2人とも」
「ありがとう紅葉先輩♪」
「うん、ありがとう。正直まだ信じられないけどな。アイドルのことも半信半疑だし、実は夢なんじゃ……って思う時があるんだ。美嘉の友達としてアイドルの近くにはいたけど、まさか自分自身がなるなんて思わなかったし」
確かに、ここまで全てが上手く進んでいるからな。
もしかすると、今後の不安な気持ちも昼間のダンスに表れていたのかもしれない。
「あたしは紅葉と加蓮に出会えて良かったと思ってる。もちろん美嘉もだけど、2人がいなかったらアイドルになってなかったと思うし」
「奈緒……それはアタシだって同じだよ」
「うん。今まではアイドルを追う立場だったし、スカウトされてからも仕事にちょっと否定的でちゃんと向き合ってなかったかもしれないんだ。
でも、このままじゃダメなんだよな。皆真剣にアイドルやってる。自分のために、ファンのために必死に輝こうと努力してる。
だから、あたしはやるよ。あたしも真剣にアイドルと向き合うよ。だってこれは、あたしだけの物語なんだから!」
奈緒の表情はいつになく真剣で、加蓮も普段のような冗談を言わずしっかりと聞いていた。
その言葉は俺たちへ向けたと同時に、自分自身の決意表明なんだろう。
2人が今までに増して眩しく、遠くへ行ってしまうような感覚に再び襲われる。
が、今は俺のことはどうでもいい。
この2人のため、姉さんやしゅがはさん、美嘉や凛たち大事な友人のために俺が出来ることは何か。
ただただ迷っているだけでなく、そのことについて俺も真剣に考えてみようと思った。
続く!
俺の名前は高垣
中学まで和歌山の田舎で普通に暮らしていたが、都会に憧れて高校は東京の高校に進学した。まあ、理由は他にもあるが……
小さい頃は色白で女っぽい顔をしていたため、年の離れた姉に『
とはいえ、東京に来ても遠くで女子がヒソヒソと俺の悪口を言ってる気がしてならない。結局どんなに頑張っても日焼けしない白いこの肌と、右目が青、左目が緑のオッドアイが目立つのだろうか。毎日胃が痛い。
一人暮らし2年目ということもあり自炊も慣れてきた今日この頃、夕飯にパスタとスープを作りテレビをつける。
いただきますとパスタを口の中にいれテレビ画面を見た瞬間、思わず吹き出してしまった。
「ぶほっ!ゴホッゴホッ!」
は?なぜあの人がテレビに出ているんだ?しかも歌番組?おかしい、あの人はモデルの仕事をしていたはずだ。
「ね、姉さん……だよな?」
さすがに実の姉を見間違うはずがない。8つ離れたとは言え25歳とは感じさせない俺とよく似た容姿、俺とは逆の色のオッドアイ。
なぜあんなに人見知りで子供の頃の遊び相手がほとんど俺だった姉さんが人前であんなに堂々と歌っているのか。
咄嗟に携帯を取り出し本人に電話をしようとしたが、すぐ我に帰って無理だとわかった。俺が携帯を買ったのは高校に入学してから