でもデレステニュージェネイベントの1話の凛を見てやっぱりやろうと思い一気に書きました。
コミュに関する注意事項はPhantom Story1と同じです。
一部台本形式が問題ないという方だけお願いします。
そして最新話から珍しく投稿が早かったため、本編だと思った方は申し訳ありません!
それと奈緒が演じるもう1人のナオですが、公式イラストの髪色変更したは載せられないし絵心もないので一応ドット絵を最後に載せておきます。
ヴァルキュリア化っぽい何かです。
Two roles played by one idol
都内某スタジオ
舞台出演者全員の顔合わせが終わり、台本の読み合わせが始まった。
長編ということもあり、いくつかに区切って日を変え開始することになる。
今回は序章から2章前半。
346からの参加者も多く、それぞれ別々にスタジオへと入る。
序章で登場する紅葉も撮影後現地へ向かう姉とは別に1人で来ることになった。
紅葉「(いよいよ開始か。さすがに少し緊張してきたな)」
紅葉「(346プロダクションのアイドルはほとんど話したことのある人たちだが、他の俳優の方は初めてだ。失礼のないようにしないと)」
紅葉「(一応顔合わせの時に覚えたから間違えることはないと思うが……)」
スタジオに入り案内を元に目的地へと向かう紅葉。
"Phantom Story"と書いてある張り紙の部屋へと辿り着く。
深呼吸しノック後、まったく緊張してないかのような声で挨拶をした。
紅葉「失礼します」
???「あ、もみ……」
紅葉「失礼しました」
???「ちょ!?」
ドアを開けた瞬間目の前に現れたのは、青白い髪の少女だった。
見覚えのない人物に思わず扉を閉め廊下へと戻る紅葉。
紅葉「(おかしい、部屋を間違えたか?いや、張り紙もあるしここでいいはずだが)」
???「おい、なんでまた出て行くんだよ!」
紅葉「すみません。部屋を間違えまして」
???「合ってるよ!見りゃわかるだろ」
紅葉「え?」
ということはこの人は同じ舞台の出演者だろうか?
紅葉は以前の顔合わせの時を思い出そうとするが、どうしてもこの目の前の人物を思い出せない。
いくら顔を覚えるのに絶対の自信がないとはいえ、さすがにこの特徴のある髪を1度見たら忘れないはず。
そう考えてもやはり思い出せない。
凛「ねえ"奈緒"。もしかして、紅葉が奈緒だって気づいてないんじゃない?」
紅葉「ああ凛か。ということはやはりここで合って……ん?奈緒?」
奈緒(オルタ)「本当にわからなかったのかよ!?あ、このウィッグが原因か。って、それにしてもあんまりだろ!」
青白い髪をした少女は奈緒だった。
普段と全く同じボリュームのある髪に合わせたウィッグをつけていたのだ。
それを外すと、ようやく紅葉は状況を理解する。
紅葉「そうか。奈緒じゃなく、あとから出てくる"ナオ"のやつか」
奈緒「うん。衣装のスタッフさんがさっそく作ってくれたんだ。やっぱり衣装やこういうの被るとさ、ライブ前とは違った緊張感があるよな。よし、頑張るぞ!って改めて思うよ」
凛「そうだね。特に奈緒は衣装も2種類あるし、気持ちの切り替えも大変なんじゃない?」
奈緒「まあな。でもまだまだ始まったばかりだし、少しずつ慣れていくよ」
紅葉「なるほどな。少し驚いたが似合っていたぞ。まったくの別人だと錯覚したほどだ」
奈緒「あ、うん。あ、ありがと……って、それ喜んでいいのか?」
紗枝「仲がええどすなぁ。いつもこうなん?」
凛「まあ、いつも通りなのは認めるよ」
奈緒「そ、そうだな。いつも通りだな」
紅葉「小早川さんでしたよね?お疲れ様です」
紗枝「こうして話すんは初めてやなぁ。噂は聞いてますえ」
周子「やっほー。シューコちゃんもいるよー」
紅葉「お久しぶりです塩見さん。Project:Kroneが初めて参加したライブ以来ですか」
奈緒「紗枝はんと周子とはあたしたち舞台上で一緒にはならないんだっけ」
凛「うん。紅葉のせいで奈緒は卯月たちと別れちゃうからね」
紅葉「俺じゃなく俺の役だろう」
周子「大丈夫大丈夫、奏ちゃんも美嘉ちゃんもあたしに任せてよ。屋形船に乗った気でいてくれていいよー」
奈緒「いや、ツッコミづらい例えするなよ」
物語序盤、冒険者になった王国騎士団長の娘、奈緒。
彼女が受けた初めての依頼は、洞窟に住む魔物を討伐してくれという近隣の村からの依頼だった。
快く引き受けた奈緒は幼馴染である奏、卯月、美嘉を無理やり連れ洞窟へと向かう。
だがそこで待っていたのは新米でも簡単に討伐できる魔物ではなく、大昔に人々から恐れられた4人の魔王の1人、瑞樹。
瑞樹の腹心の部下である楓と紅葉にすら全く歯が立たない奈緒たち4人。
戦いの中奈緒以外の3人は遠い地域へと飛ばされてしまう。
そこで封鎖中の街に入れず困っていた奏たちを助けてくれたのが周子であり、何やらその周子もワケありの様子。
そして周子に裏切られたと思っていた彼女の親友紗枝との戦いもあり、物語は凛と乃々が登場する次の章へと移っていく……
そんな舞台の内容をお互い確認していたところでほとんどの役者が揃い、それぞれ指定された席へと座ることとなった。
演出家「それでは皆さん揃いましたので、さっそく台本の読み合わせに入りたいところですが……実は今回の舞台を制作するにあたってようやく協力することを引き受けてくれた先生をお呼びしています。では、お願いします」
楓「あ……」
瑞樹「あの人ってまさか!?」
美嘉「アタシ実際に初めて会うかも」
紅葉「(ずいぶんざわついているな。有名な人なんだろうか)」
扉がゆっくりと開き現れたのは、全身黒の服につつまれた老年の女性。
長く黒い髪は顔半分も覆っており、その異様な雰囲気に部屋は緊張に包まれる。
演出家「ほとんど皆さん知っているでしょうが紹介します。先の大女優で今は主に役者の講師をしている月陰千種先生です」
先生「皆さんよろしくお願いします。今回はこの舞台の演技指導を担当することになりました」
楓「先生、お久しぶりです」
先生「あら楓さん。あなたの活躍は耳にしますよ。この舞台でも楽しみにしています」
楓「先生にそう言って頂けるなんて光栄です」
紅葉「姉さんはあの人に会ったことがあるのか?」
楓「ええ。以前お芝居をする時に指導してもらったことがあるの。厳しい人ではあるけど、先生の言う通りにすれば間違いはないわ」
凛「なんかすごい人みたいだね」
卯月「うぅ、緊張してきました」
奈緒「あたしだって知ってるぞ。まさかここで会えるなんて」
奏「そんなすごい人に認められるなんて、さすがは楓お……楓さんね」
周子「奏ちゃん、もう皆にバレてるって♪」
奈緒「知らないのは楓さん本人だけだよな」
張り詰めた空気のまま台本の読み上げが始まる。
月陰先生は特に何もいうことはなく、話は紅葉が登場するページまで進んでいった。
紅葉『さて、たかが人間がどこまで出来るのか。少し力を見てやろう』
先生「……」
奈緒『はぁ、はぁ……な、何だこいつら。攻撃が全然通じない』
紅葉『もういい、底がわかった。消えろ……』
先生「楓さんの弟の……紅葉くんだったわね。あなた、お芝居は初めて?」
紅葉「はい」
楓「先生、弟の演技で何か気になるところが?」
先生「ごめんなさい、続けてちょうだい」
楓「紅くん……」
紗枝『なんで?なんでうちを一緒に連れて行ってくれへんかったの!?』
周子『ごめんね紗枝はん。あたし、どんなことをしてでも父さんを止めるって決めたから!』
読み合わせは特に問題のないまま進んでいき、今日のラストへと近づいていく。
奈緒(オルタ)『あれ、ここは……どこ?思い出せない……ボクは……誰だ?』
凛『もしかして記憶喪失ってやつ?はぁ……乃々ったら、厄介なのを連れてきたね』
先生「……」
奈緒(オルタ)『うんわかったよ。妹さんはボクが見てるから、改めてお願いしていいかな?』
凛『じゃあ行って……』
先生「奈緒さん。今のセリフをもう一度」
奈緒「は、はい!」
奈緒(オルタ)『うんわかったよ。妹……』
先生「もう一度」
奈緒(オルタ)『うんわかった……』
先生「もう一度」
奈緒「う……は、はい」
いつの間にか消えていた張り詰めた空気が再び生まれる。
ある者は同情するような視線を、またある者は来たか……という不安を。
そして友人である凛たちは心配した様子で奈緒を見ていた。
先生「奈緒さん、ここはどういったシーンですか?」
奈緒「え、えっと。ナオの記憶の手がかりを探すために凛が森の占い師である志希の元へ向かうシーンです」
先生「それであなたの心境は?」
奈緒「自分も手伝いたいけど今は凛に頑張ってくれ、と」
先生「奈緒ならそうでしょうね。でも今の奈緒は奈緒じゃない。反転した極光"ナオ"です」
奈緒「は、はい」
先生「今のナオは自分のことも何もわからない不安な状態なんです。それなのにそんな明るく振る舞えますか?」
奈緒「あ……も、もう一度お願いします!」
先生「じゃああなたのセリフから」
奈緒(オルタ)『う、うん。わかった……』
先生「だめね。それはただ言い方を変えただけ」
奈緒「う……」
先生「あなたの言葉には気持ちが全く感じられません。ナオの1%も理解できていない。これなら他の人がナオを演じたほうがよっぽどマシです」
演出家「せ、先生。さすがにそれは……」
先生「紅葉くんをごらんなさい。舞台上の紅葉は冷徹で残酷で、人を生物とも思っていない悪魔です。その役を見事に掴んで最初の段階でここまで仕上げています。とても素晴らしいわ」
紅葉「……」
凛「(あれっていつもの紅葉だよね)」
美嘉「(う、うん。確かにいつもより声を張ってるけど、口調も雰囲気も変わってないよ)」
楓「せ、先生……」
瑞樹「楓ちゃん、気持ちはわかるけど今は落ち着いて」
先生「今日はここまでにしましょう。奈緒さん、次までにもう少しナオの気持ちを理解してきなさい」
奈緒「……はい」
ここで解散となり、役者たちはそれぞれ部屋を後にする。
が、座ったまま俯く奈緒を心配する面々はその場に残り、どう声をかけていいか迷っていた。
凛「奈緒、その……」
奈緒「ああっ!くそー!くやしい!」
凛「え?」
急に立ち上がり叫ぶ奈緒に一同驚く。
その目には涙が溜められていたが、隠す様子も見せず自分に言い聞かせるように再び口を開けた。
奈緒「何も言い返せなかった!そうだよその通りだよ。あたしはまだ全然ナオの気持ちを、役を演じるってことがどういうことなのか理解してなかった!」
美嘉「な、奈緒。少し落ち着いて」
奈緒「見てろよ紅葉!絶対この役を完璧に掴んで、お前も!先生も!皆も見返してやるからな!」
紅葉「あ、ああ」
まるで宣戦布告をするように紅葉へ指をさし、涙を拭きながら普段以上に赤くなった目でそう告げた奈緒は、紅葉の言葉に納得したのか大きくうなづいて部屋を出た。
その決意した表情は普段の奈緒でもアイドルの神谷奈緒でもなく、役者としての奈緒の何かが変わった表情の様でもあった。
紅葉「姉さん。奈緒はすごいな」
楓「そうね。私も負けてられないわね」
凛「私も奈緒のパートナーとしてもっと演技の練習をするよ」
美嘉「アタシも負けてらんないなー」
卯月「わ、私も頑張ります!」
紅葉「ところで、よくわからなかったことがあるんだが」
楓「どうしたの紅くん?」
紅葉「さっき俺は先生に褒められたのか?」
楓「……」
全員「……」
紅葉「ん?どうして皆目を逸らすんだ?」
続く?
紗枝はんの口調はお許しを!
この舞台劇の内容、実は10年ほど前に考えていたRPGを元にしてます。
オリジナルとは言え色々なところから話をパク……リスペクトしているので、どこかで聞いた話になってる部分があるかと。
ちなみに元の奈緒と川島さんの役の名前は"アルセス"と"妖魔王ヴァルヴァレス"
サガフロンティアのアセルスとオルロワージュが元になってたりします。
サガフロで一番アセルスが好きなんですよ……