楓さんの弟はクールで辛辣な紅葉くん   作:アルセス

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今回はまた普通とは違った内容を入れてみました。
頭の中で想像している動きを文字にするのはかなり難しいですね。

お気に入り、感想ありがとうございます!
たくさんの方に見てもらえて嬉しいです。

通常楽曲になったガールズ・イン・ザ・フロンティアがフルコンできない・・・


相変わらず楓さんには人一倍厳しい紅葉くん

紅葉くん商店街へ

 

 

コロネと別れたあとは、まっすぐになじみの商店街であるこの場所へやってきた。

 

マンションの近くにあり、安くて新鮮な食材が揃っている便利さ。そして俺が最もこの場所を利用する理由は、商店街の人には悪いが人通りの少なさだ。

東京は人が多くたまに視線を感じることもあって、人ごみが苦手な俺は1年住んでも中々慣れることができない。そういった意味でもここは家の次に落ち着ける場所であるとも言える。

 

「あら紅葉くんいらっしゃい!」

 

「おう紅葉。お前の姉ちゃんの番組観たぞ!」

 

行く先々で声をかけられるのは、人が少ない以外に若い子がここによく来るのが珍しいからだそうだ。人付き合いが下手で苦手な俺でも、この場所の人たちは普通に接してくれる。皆が親戚のおじさんおばさんたちのようであり、食を学ぶ上での先生でもある。ネットなどでは得られない実際に役立つ知識がここには数多く存在した。

 

 

今日のメインは肉か魚どちらにしようか考えていると、ちょうど魚屋の前で店のおじさんに声をかけられた。

 

「ようボウズ!今日も活きのいいのが入ってるぜ!」

 

「こんにちはおじさん。今日のおすすめは?」

 

「もちろん全部・・・と言いたいところだが、今日は特にこれだな」

 

魚屋のおじさんが指差す方向に、色鮮やかな大きな鯛が並べられている。確かにこれは食べごたえがありそうだし姉さんも喜んでくれそうだが、さすがにちょっと高いな。

 

「お前には特別に、これくらいでどうだ?」

 

そんな俺の考えを読んだのか、どうしても買ってほしいのか、電卓を取り出し新たな金額を提示してきた。今店頭に書かれている値段より3割は安い・・・迷うな。

 

「うーんいい匂い。こんな場所があったなんて知らなかった・・・うげっ!お魚にゃ・・・なんかみくの方見てる気がする」

 

「ん?」

 

ここでは珍しい俺と同い年くらいの少女が、この魚屋の前を通った時に嫌な顔をしてすぐに立ち去った。あまり大きな声じゃなかったので他の人には聞こえなかっただろうが、魚を見てその態度は失礼だ。・・・仕方ない。人に食べられるために捕られた彼らのためにも、ここはおじさんの厚意を受けて鯛を買う事にしよう。

 

「まいどあり!どうする?捌いてやろうか?」

 

「何度かおじさんに教えてもらったし、今日は自分でやってみるよ」

 

「おおそうか、今度感想を聞かせてくれ。」

 

「ありがとう。じゃあまた」

 

あとは他に必要な食材をいくつか買って帰ろう。急げば姉さんが帰る時間にじゅうぶん間に合いそうだ。

 

紅葉くんのお魚講座

 

 

「ただいま」

 

家に着いて早速準備に取り掛かる。まずは先に米を研いで昆布を入れた出汁に浸けておき、鯛を準備する。

 

「刺身にするのは半分だな」

 

焼いて食べるのもいいが、せっかくだから刺身と鯛めしにしようと思っていた。まな板を縦にしてシンクの上にセット。こういう時のために、うまく蛇口の下にはまるまな板を買っていたんだ。

 

鯛は水を流しながらの鱗取りから始める。水を流しながら取るのは前の経験からだ。あの時は台所中に鱗が飛び散って片付けが大変だった。

 

「おっと、忘れるところだった。こっちだけでいいんだ」

 

しっかり取るのは鯛めし用の片面だけで、刺身用の半分は頭と背びれ、腹の部分の鱗だけを取る。刺身にする半分は皮を引かなければならない。キレイに取るには多少力を入れても大丈夫なように鱗が必要だ。

 

「よし。次は・・・」

 

おじさんから教わったことをゆっくりと思い出す。頭を左、尻尾を右にして胸ひれと腹びれを取る。180度回転させてからひっくり返して、反対側も同様にひれを取る。

 

その後、えらの部分に包丁を入れて開いていったら内臓を取る作業だ。腹の部分の鱗はとっているから、少し力を入れるだけで包丁がうまく通る。えらの中央付近から縦にしっかりと包丁を通し、えらと一緒に内蔵も取る。そしてカマの部分も一緒に頭を落とす。

 

「ここまでは上手くいったな。ここから先が問題だ」

 

内蔵を全部取ったら腹の中をしっかりと洗って水を止める。あまり水を身につけすぎるのも良くないそうだ。

 

次に三枚に卸す作業に入る。頭を右、尻尾を左にして腹の下の部分に身を出来るだけ残せるように中骨の上に沿って包丁をあてる。一気に尾の付け根付近まで包丁で切ったあとに、同じように中骨の下の部分も切る。

 

その後は頭と尻尾の向きは変えずに縦に回転させ、背の部分を切る作業だ。ここは何度やっても上手くいかなかったために、おじさんがこんなやり方もあるぞと俺にとってやり易い方法を教えてくれた。

 

「・・・上手くはまるか?ここだな。よし、このまま」

 

鯛の背びれの部分はよく見るとすこしだけ隙間がある。そこに包丁を入れると中骨に近い部分に上手く包丁が入った。ここで大事なのは逆刃に包丁を持ち、頭からではなく尾から包丁を入れること。そして包丁を手前に引くのではなく、尾から頭にかけて包丁の中骨に当たった部分の向きを変えないよう、すーっと頭まで奥に引いていくことだ。

 

「・・・きれいに身が取れた。今日は成功だな」

 

恐る恐る包丁を鯛から離して中を覗くと、きれいに骨の断面が見え身が骨にほとんど付いていないことが分かる。結局骨も味噌汁用に使うから身は残っててもいいんだが、まあ気持ちの問題だな。

 

そのあとは一気に包丁を突き刺し二枚卸しに。ひっくり返して同様のやり方をすれば三枚卸しの完成だ。

 

鱗の取った半身は軽く火で皮を炙り、塩を振って手軽な大きさに切る。そしてそのまま浸けておいた米の中に入れて炊飯器のスイッチを押す。

 

次は刺身用の半身だ。鱗のおかげで多少力を入れても皮を引いた時に途中で切れることはなかった。それにあまり包丁を上に向けすぎると身が一緒に切れてしまって、きれいに取れないから注意だ。

 

「・・・ふう。こんなこと毎日やってたら肩が凝りそうだな」

 

鍋とやかんに水をいれお湯を沸かす。その間に頭を半分に割って取った骨も程よい大きさに切る。2つの半身の腹骨も一緒に洗ってからボウルに入れ、沸騰したお湯をかけて少し冷水を。味噌汁の他の具材はネギだけじゃ物足りないので、じゃがいもと大根を入れることにした。

 

 

楓さん帰還する 

 

 

「あとは待つだけだ」

 

片付けをして皿を用意していると、タイミングよくチャイムが3回鳴った。誰かを確認するまでもなくこの鳴らし方は姉さんだ。

 

「おかえり姉さ・・・」

 

「ただいま紅くん!元気だった?」

 

扉を開けるとすぐに姉さんが抱きついてきた。高校生にもなって姉に抱きつかれるのは恥ずかしいのだが、この姉さんの嬉しそうな顔を見ると何も言えなくなる。今後も誰かに見られないよう願うばかりだ。

 

「お姉ちゃんに会えなくて寂しかったでしょう?」

 

「いや、全然」

 

「うっ・・・小さい頃はいつもお姉ちゃんのそばを離れなかったのに!」

 

「そんな記憶はないけど。離れなかったのは姉さんの方じゃないか?」

 

「ぐ・・・そ、そうだったかしら。そうとも言えなくもないかもしれないわね」

 

「そんなことはどうでもいいから、早く手を洗って着替えてきなよ」

 

「そ、そんなこと!?数日家を空けてもいつも通りの反応でお姉ちゃん悲しい!」

 

全然悲しそうな顔をしていないんだが。むしろ喜んでいるようにも見える。けどやっぱり姉さんがいないと静かすぎて物足りないよな。改めて、おかえり姉さん。仕事ご苦労様。

 

 

「「いただきます」」

 

ご飯が炊けたのでお互いのここ数日の出来事を話しながらの夕食になった。俺の方はほとんど変わらない日常だから、話す内容は姉さんの方が多いが・・・そうか、これは失敗したな。

 

「ごめん姉さん」

 

「え、急にどうしたの紅くん」

 

「姉さんは温泉街での仕事だってことすっかり忘れてた。刺身は食べ飽きたよな」

 

姉さんが帰ってくるからいつもと違う料理を、と考えたのが裏目に出た。姉さんの仕事は一般じゃなかったんだ。

だが姉さんは肯定もせず、優しい顔で俺に話す。

 

「何言ってるのよ。紅くんが作ってくれる料理に飽きるなんてことあるわけないじゃない。それにこのお味噌汁も・・・うん、美味しい。やっぱり紅くんの作ってくれる料理が一番あたたかくてほっとする」

 

「姉さん・・・」

 

「鯛のご飯が家で食べられるなんて一人暮らしの時は考えられなかったわ。今日の鯛づくしの料理最高よ。紅くん、何かめで()()ことでもあったみ()()ね♪」

 

油断してるとすぐこれだ。この状況で無理しなくていいのに。

 

「いや、何もないよ。店のおじさんが安くしてくれたから買っただけ。それと、今のは普通すぎて点は付けられないから」

 

「くふっ!?ふ、普通だなんて!低い点数よりも残酷よ!」

 

 

 

ひと通り姉さんの話が終わったあと、俺は今日の夕方の出来事を話すことにした。やっぱり姉さんからも話を聞いてみようと思ったからだ。

 

「今日帰りにプロデューサーさんに会ったよ。例のプロジェクトの人」

 

「そう・・・」

 

「姉さんの最初の舞台の話も聞いた」

 

「・・・そう」

 

「姉さん、何か隠してることないか?言いにくいこととか」

 

「え?」

 

「俺は姉さんのことをよくわかってるようでわかってないんじゃないかと思ってさ」

 

俺の問いに姉さんは何か考えているようだ。やはりアイドルになった理由には何か他の真実が隠されているんだろう。

 

「・・・言っても怒らない?」

 

「当たり前だろ。どんなことがあっても姉さんは姉さんだし、俺は応援するよ」

 

俺の言葉に安心したのか、姉さんは深呼吸をして下を向きながら話した・・・んだが。

 

「ごめんなさい!実はいつものお酒とは別に、部屋に秘蔵品を隠していました!」

 

「・・・は?」

 

何を言っているんだこの酔っぱらいは。いや、まだ飲んでないか。

 

「最近レッスンで遅くなるって言った3分の1は行きつけの居酒屋で飲んでいました!」

 

「・・・」

 

「でもね紅くん勘違いしないで。確かに『しんでれら』のお酒もお料理も美味しいけど、紅くんの料理の方がね」

 

「何言ってるかよくわからないんだが、俺が聞きたかったのはそれじゃないぞ?」

 

「ええ!?紅くんの事だから、全部知ってて私から謝らせようとしてたんじゃ・・・」

 

「そんな事わかるわけないだろう。俺は姉さんの部屋に入らないし、伝言も疑わないの知ってるだろ」

 

「はっ!?そうだった!わ、罠に嵌ってしまったわ!」

 

やっぱり俺の考え過ぎか。姉さんが前に話したように、新しいことに挑戦したいだけなんだろうな。けど、知りたくないことまで知ってしまった以上、このまま終わって甘やかすわけにはいかない。

 

「姉さん」

 

「な、なあに紅くん?」

 

「3日間アルコール禁止。もちろん外でもだぞ」

 

「そ、そんなぁ!お姉ちゃん死んじゃう!」

 

「そんなわけないだろう。健康になっていいじゃないか。もちろん部屋にある酒も没収ね」

 

「あぁ・・・私の楽園が・・・でも数日ぶりに紅くんの厳しい言葉に触れられて嬉しい自分も・・・どうしたらいいの!?」

 

やっぱり姉さんはどこまでいっても姉さんだ。余計なことは考えず、これからも姉さんのアイドルとしての活動を応援しよう。

 

つづく!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




商店街に現れた少女は一体何川さんだったのか・・・謎に包まれています。
そして良いダジャレが思いつかない!
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