手近なフィールドに飛んだレンとロータスの二人は、モンスターが出現するまでのんびりとお茶をする事にしました。
「レンさんって全身ピンクなんですね」
「これはね、最初は可愛いからって理由でそうしてたんだけど、砂漠だと上手く保護色になってね」
「確かにそうですね!……ただ私が可愛い格好してるみたいで少々複雑ですけど」
「それはこっちもそうだよ!スーツにシルクハットって……格好つけすぎ!」
そうなのです。ロータスの格好はレンの全身ピンクにピンク色に塗装したP90ことピーちゃんを装備したいつもの姿とは対称的に全身黒のスーツに黒いシルクハットを装備した決めた容姿をしています。
仮に色はピンク色だとしても戦闘用の服のレンとは違い、さながら映画のヒットマンの様な出で立ちです。
背の高いモデル体型のロータスが来ていると男装の麗人といった表現が相応しく思えます。
「普段私ってモンスターとか対人戦よりGGOの遺跡探索がメインでして……」
「あ、そっか。だから軽装の方がいいのか」
「そうですね」
GGOはMMORPGでは珍しく銃が主流の世界であり、その特異さがコアな人気を博しているタイトルです。
しかし、銃の世界という事だけが人気の理由なのではなく、その世界観やデザインがその手のSF好きや廃墟好きを惹き付けている要因でもあります。
廃墟に惹かれる人は一定数存在します。
自分の住んでいる場所の近くや遠出した旅行先で朽ちた民家やボロボロの遊園地、病院、ホテルなどを探検してその自然の回復力の凄さを知り、またそれに掛かった時間に思いを馳せて楽しむのです。
しかし、廃墟探索が趣味です、とはおおっぴらには言えません。
不法侵入に当たる場合もありますし、時には怪我をするかもしれません。
なのでそんな廃墟探索をゲーム内で安全に出来るGGOはそういう層からの人気が非常に高いのです。
「探索者って奴かな?」
「そうですね。たまに武器とか見つけて売ったりして稼いでます」
レアな武器をドロップ以外で見つけてくるのも探索者ならではの面白さです。
勿論装備を買うのにお金は必要なのでモンスターを狩って経験値とお金はある程度貯めてます。
ロータスの場合は同業の探索者を狩っているので懐具合は結構裕福です。
「私は最近は対人戦ばかりかな~」
「SJって大会で一位だったんでしたっけ。凄いです」
「いや~たまたまだよ」
モンスターがまだ罠に掛からないみたいなので、二人ともどんどん話を続けていきます。
レンがSJに参加した経緯やそこでの活躍ぶり、ロータスは自分が今までどんな場所の探索をして珍しい武器を発見したか。
その流れでお互いの武器に話が移りました。
「レンさんのP90って面白い形してますね。何か銃みたくなくて可愛いっていうか」
「分かる!?可愛いよねピーちゃん!はぁ~嬉しいなぁー!」
「私のはちょっとダサいかもしれないんですけど……」
そう言ってロータスがメニューを操作してストレージから出現させたのはリボルバーの銃でした。
「これは……リボルバー?珍しいね」
GGOは対人戦闘がメインであり、拳銃の中でサイドアームとして選ばれるのは当然装弾数が多いオートマチックです。
しかし、GGO内ではしっかりとリボルバーは存在しています。
それらは主に熱狂的なファンやロマンを追い求めている人に使われているのですが……
「珍しいと思いますよ。これはSAAって種類で西部劇の映画によく出てくるんですけど……」
SAAはシングル・アクション・アーミーの略称です。
特徴としてシリンダーと本体が一体化している事です。
シリンダーを横に飛び出させて銃口を上に向けて撃ち終わった薬莢をバラバラと床にばら蒔く一般的なリボルバーと違い、この銃は一発ずつイジェクターロッドを引いて排莢し、一発ずつ装填します。
その為リロードには時間が掛かりますが別に問題ありません。
込めるのは魂、撃ち出すのは銃弾ではなくロマンです。
「リボルバーって装弾数が確か……」
「六発ですね」
レンのP90は毎分90発もの弾丸を発射します。
それに比べてかなり火力が足りない気がします。
「火力が足りないのは分かってるんですけどね。探索時の護衛用なんで私はこれでいいんです」
「あ、そっか。ナルホド」
目的が違えばそれにあった銃を使うのは当然です。
遺跡探索にわざわざエムの持っているようなシールドを持ち込む必要が無いのと同じです。
「対人で使うと相手が油断してくれるので割と勝率は高いですよ」
「おぉ凄い」
二人の会話はお菓子を摘まみながらモンスターが掛かるまで続けられました。
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そして、仕掛けておいた手榴弾が作動した爆発音が聴こえてきました。
「掛かった!」
「行きましょう!」
駆け寄った黒煙立ち上るその場所に居たのは硬い外皮をした甲殻類の様な生体兵器でした。
レン達に気付いて両手の鎌の様な爪を掲げて威嚇してきました。
まずはレンがその素早さを生かして弾をばら蒔き牽制します。
そこにレンの到着から少し遅れてロータスがやって来ました。
「さぁ!お前の罪を数えろ!!」
レンの耳には一発の銃音しか聴こえませんでしたが、見ればモンスターの体には六ヶ所の被弾マーカーがついていました。
両目と両手両足の関節です。
「凄い!!」
レンはAGI特化の敏捷型です。
ロータスもレン程では無いにしてもそこそこAGIに振っていますが最大は……DEX、器用さと命中率とクリティカル率です。
ロータスはこの装弾数の少なさをこのクリティカルで稼ぐ戦法を取っていました。
関節を撃たれて動きの鈍った敵にレンがP90を当てて着実にHPを削っていきます。
「私のリロードはレヴォリューションだ!!」
リロードを終えたロータスが今度は一発ずつ狙いを定めて先程撃ち抜いた箇所と同じ箇所に攻撃を当てていきます。
敵もいよいよHPを削られて最後のあがきとばかりに両手の鎌を大きく振り回します。
「当たらないよ!」
「さぁ、地獄を楽しみなぁ!!」
二人の敏捷値の前ではそんな大振りの攻撃は当たりません。
最後の攻撃を避けられ二人にありったけの銃弾を叩き込まれたモンスターは、動きを止めた直後、ポリゴンの破片となって飛び散りました。
「……ロータスって戦闘中性格変わる人?」
「テンション上がると昔見てた特撮の影響が出て……つい」
(……まぁ私も人の事言えないケド)
身長は違えど案外似た者同士な二人でした。