「さっきの一回で六ヶ所当てたのってどうやったの?」
小柄なレンがロータスを覗き込むような姿勢で質問します。
「あればファストドロウとかクイックドロウって言われてる早撃ちの技の一つです」
「へー!リボルバーってそんな事が出来るんだ……」
昔の銃も侮れません。
実際オートマチック拳銃が開発されてもリボルバーが滅びなかったのにはそれなりの理由が有るのです。
現実世界で行われている早撃ち大会の参加者はリボルバー使いが殆どを占めています。
また、気軽に銃のメンテナンスが出来るGGOでは殆ど効果を実感する事はありませんが、リボルバーの耐久率はエムの盾などの防御用のアイテムを除いてぶっちぎりの耐久度を誇ります。
「私はレベルアップのボーナスは大体DEX……器用さとクリティカル率に振ってるので弾が少ないけど当たりは大きいって感じです。レンさんは殆ど敏捷値に振ってますよね?」
レンの戦いぶりを見たロータスは一発でレンがAGI特化型であると見抜きました。
「うん、そのお陰でこないだの大会勝てたって言っても過言じゃないかも」
「SHINCの子達からは人間の速さじゃないって教えて貰いました」
「あーボスかー……」
「誉めてましたよ。あのレンとまた再戦したいって」
「……そだね」
もし第二回SJが開催されるとしてもレンは乗り気じゃないのですが、アマゾネス集団SHINCのメンバーはやる気まんまんのようです。
「というか蓮ちゃん大学生だよね」
「そうですね。というか同じ大学ですね」
身長故に勘違いされがちですが、蓮はれっきとした大学生です。
敵は倒したので、帰るターミナルに向かいながら大学の話をしていると、その途中で香蓮が受けている講義を蓮も取っている事が分かりました。
「あの教授毎回レポートが多くて大変だよね」
「確かに。しかも過去の書かれたレポート全部暗記しているので先輩のレポート写しても必ずバレるらしいですね」
「あーそれで怒られてる人達居たねー」
教授の愚痴を言い合っていると、レンからロータスにおずおずと声を掛けました。
「もし良かったら一緒に受けない……?」
大学ではぼっち気味の香蓮にとってはかなり大胆な提案でした。
実際言ってから結構焦ってます。
「あ、でも他に知り合いが居るとかだったら別に断ってくれて構わ……」
「いいですね!一緒に受けましょう!」
聞けば蓮も香蓮と同じく身長コンプレックスで、回りを避け気味で気づけばぼっちだったとか。
見事ひとりぼっちーずはふたりぼっちに進化しました。
次の日。
「香蓮さ~ん!」
「お、来た来た」
大学に入って少し歩いた場所にある休憩用のベンチに座っていた香蓮を遠くから呼びながら駆け寄ってきたのは、つい昨日知り合ったばかりの蓮です。
小さな手足をパタパタ動かしながら香蓮の場所まで駆け寄りました。
「すいません、待ちました?」
「今来た所だよ。それにまだ待ち合わせの時間より全然前だし」
「待たせちゃ悪いと思って早めに着こうとしたんですけど……香蓮さんの方が早かったですね……」
「気にしない気にしない。じゃあ行こうか」
「はい!」
コロコロと表情の変わる蓮は香蓮から見て大変可愛らしく映って、香蓮は『いいなぁ……可愛くて』と思いました。
逆に蓮は待ち合わせより早く着いて、こちらのフォローもしてくれた香蓮のクールな対応に『いいなぁ……大人っぽくて格好いい……』と思ってました。
ままならないものですね。
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二人が知り合って数日後。
「お待たせ、蓮ちゃん」
「ふふふ、今日は私が早く着きましたね!」
「うんうん、えらい」
「えへへへ……」
香蓮と蓮は今までろくに友達も居なかった事、共通してる身長コンプレックス、そして共通のゲームをプレイしている、その3つで倍率はドン!で一気に仲を深めていきました。
お互いがお互いの理想である事もそれに拍車を掛けています。
やたら高身長な香蓮と小学生並の低身長である蓮は最近は一緒に行動していて大学内で微笑ましい光景をよく見かけるようになりました。
そして大学生活とは別にGGOでは……
「お待たせしました。ちょっと今日の課題は難しかったです!」
「私もさっき終わったよ。結構時間掛かるよね……」
「まぁ終わったので問題無しです。行きましょうレンさん!」
SJ以降はGGOから離れていたレンですが、ロータスという友人が出来てからは前と同じくらいGGOで遊ぶようになりました。
「じゃあ今日は約束通り遺跡探索にレッツゴー!」
「GGOならではの景色を見せてあげますよ!」
「楽しみだなぁ!」
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そんな香蓮と蓮の付き合いは大学も一年目が終わり、2月17日まで続きました。
17日に何かが起きて決定的な破局が起きた訳ではありません。
単に香蓮が実家の北海道に帰省するというだけです。
それを告げると蓮は少し残念そうにしていましたが、笑顔で送り出してくれました。
帰省している間はアミスフィアは持って行っていかないのでGGOにはダイブ出来ません。
最近は蓮とGGOやリアルで遊んでいたので少々暇を感じた香蓮でした。
蓮から送られてきた近況報告ではSYINCの六人とGGOでの遺跡探索の楽しさを味わって貰っているらしく、またその途中で超レア銃を手に入れたらしいです。
何でもボスから凄く感謝されたとか。
名前を聞いても香蓮にはさっぱりでした。ピトさんかエムさんなら詳しいので分かったのかもしれませんが。
また別の日に送られたメッセージではSYINCのメンバーに対人戦闘のノウハウを教えて貰っているらしく、ボスから送られてきたメッセージにも最近蓮と遊んでいる。SJ二回目早く開催しないかな、レンさん撃ちたい等物騒な事が書かれていたのでお互いに高めあっているようでした。
「いいな~楽しそうで」
「お?例のコヒーのアバターそっくりの娘からかい?」
「うん、それと別の知り合いから。あー……私もアミスフィア持ってくれば良かったかなー。でも親に見つかったらGGO出来なくなっちゃうしなー……」
そう香蓮が呟いて顔を上げると、地元の友人である篠原美優は目を丸くして驚いてました。
「コヒーがそこまで言うなんて珍しいな……」
「そうかな?」
「そうだって。こないだメッセでSJで吹っ切れてからGGOログインしてないって言ってた奴が……ねぇ?」
「うっ……確かにハマってるかも」
「しっかし大会の動画見たけどあのレンそっくりの娘がリアルにねぇ……ちょっと紹介してくれよ」
「……いつかフラれたショックで百合に生きるとか言ってたけど本気だったの?」
「失敬な!私はキチンと男も好きだ!女の子もイケるだけだ!」
「え、私も入ってるの」
「ぐへへ、ネーチャンイイ身体してんねー」
「きゃー」
そんなふざけたやり取りが出来るのも気心知れた友人ならでは。
話している場所は個室のカラオケなのでそろそろ歌を歌うのを再開しようかとリモコンを手に取って選曲していると美優がふと話掛けてきました。
「一つ真面目に言わせて貰うとだな、その蓮って奴。中途半端に対応しているととんでも無い事になりそうだから注意しておけよ」
「……?どういう事?」
「まぁ女のカンさ。レンは吹っ切れたけど蓮はまだだからな」
「レン?蓮?」
どっちも読み方は"レン"なので美優の言わんとする事を香蓮は理解する事無くその日は好きな歌手である神崎エルザの曲を歌い通して終わりました。
美優のその言葉の意味が分かるのは北海道から香蓮が帰ってきた、その日でした。
次回 エム、暁に死す
「香蓮さんに手を出す男の人なんて死んじゃえばいいんです」
「え、エムさーん!?」