「そう、私は昔から歌うことが好きだったからボーカリストとしていけれたけど、あの時に笑うと言う感情が固まったんだ」
私は特にそこまで何かに長けているとは思っていなかった。強いて言えば他より歌が上手かっただけだった。両親も一つしたの弟も買いかぶりすぎだと思っていたのは事実で、「和澄(お姉ちゃん)は凄いんだから自信持とうよ」と言ってくれてはいた。
そんな私も中学になり新しい環境に馴染もうと思っていた。その時に出会ったのが井住田 綾...つまりはイースであった。イースは何かと一人でいることが多く、周りからも変な目で見られていた。でも私は私と似ているところがあると思っていた。それは実際本当のことであり、私とイースは特にこれという長けているものがあまり無く、音楽に関しては長けているということが似ていた。
私の場合、家族がとあるロックバンドが好きで、その影響もあって自分自身もロック系の曲はよく聴いていた。家族でカラオケ行ってもロック系しか歌ってもいなかったし、次第にライブへも足を運ぶようになっていた。
ちょうどイースも同じバンドが好きという事もあってかライブチケットを二枚用意して行ったり、イースを家に呼んでライブ映像や曲を聴いたりはしていた。もちろん一緒に遊んだりはしていた。そのライブハウスの『Stand』でイースがベースをしているのを見て遊び半分だったがアコギをレンタルしてコード表を見ながらだけど弾いたりはしていた。まさかそれがきっかけで後にLoonを結成して『Loon』という曲でやるとはこのときは思わなかったわけだし...
そんな楽しい中学生活も終わり、高校生になる準備をしていた時に悲劇が起きた。家族で食事をしていた時に強盗団が家に入ってきたのだ。
「動くな、動いたら殺す」
そう脅され、何も身動きがとれなかった。両親は金持ちでもなくただ公務員として全うに仕事をしていただけだったからこうなるとは思わなかった。そうして家は荒らされ、目ぼしい物を見つけれなかった強盗団は遂に私を誘拐しようと企てた。
「ここには目ぼしい物はないな、だったらこの嬢ちゃんを貰っていくぜ」
それを止めようと父親が動いたが、私の目の前で刺されて殺された。そして母親、さらには弟を殺害した。私は縛られる前に110番をしていたために異変に気付いた警察が駆けつけたおかげで助かったが、目の前で家族を殺されたことによって相当ショックを抱えた。そのショックによって私は笑顔を失い、笑うという感情は当分の間戻らなかった...
私はそのまま高校生になるまで叔母の家に預けられ、高校生になった時には叔母の援助を受けながらでも一人暮らしをしていた。もちろんそのことは新聞にも載り、高校に入るまでマスコミが必要以上に追いかけてきていた。それが嫌で家かStandのスタジオにいることが増えた。もちろんのことイースにはその事件のことは筒抜けで、よく一緒にスタジオでセッションをしたりして気をそらしてくれていた。
その時に違うスタジオから物凄く魅入られるギターの音を聴いて私はそのスタジオに足を運んでみたこともあった。それがソエルの演奏で、初めての出会いだった。
「あんた、江藤さんですよね?ニュースになってますけど体調大丈夫ですか?」
少しの会話でも気を使ってくれてとてもありがたかった。そして同じ高校へ入学すること、同じようにこれまでの経緯を話し合ったりとソエルとの出会いがきっかけで変わった。
「いつかはバンドをしてみたいんですよね、でもいいメンバーがいなくて」
ソエルはバンドを組みたいといっていた。その時はどうしてか一緒にやろうと言えなかった。振り切れないことがあったからかもしれないけど、一番に大きかったのはもうすぐで高校生になるからということが大きかったのかもしれない
そう話していたらなぜか私の目から涙がこみ上げてきた。私だけではなく話を聞いていた生徒の皆や花女の生徒もこみ上げてきていた。
「エワズ、お前は強いよ、そんな過去があったにしろそれを乗り越えて今ここに立っているんだから」
今思うとイースはいつも私を見ていたし、ソエルは辛い過去を忘れれるように色々と配慮してくれていた。私の過去を知っているからこそ何をしたらいいのか分かっているからこそ動いているのかもしれない...
「すまない、でもこれが私なんだ」
「そうだね、そんな中で悪いけど、次は私が言う番だから話すね」
そう言ってべオークがハンカチを差し出してきた。
「まず始めに言うけど、私は神奈川の人間じゃないんだ」
エワズは悲しい過去を持ちながらも仲間という強い味方のおかげで強く生きている。そして先生として教える立場となった。
次回はキーボード担当のべオークのお話。