今日は文化祭の翌日なので学校は休みだった。私は案の定、昼からのシフトだったのでゆっくりとStandへ向かうことにした。昨日、姉さんに背中を推されたことがありがたく、私は昨日言えなかったあの一言を伝えるために...。5人ともが今日はバイトがあるために集まるのが夜の7時にStandのスタジオで落ち合うことになった。私は分かるとおりStandのスタッフ、ウルズはコンビニ、イースは父親の反対を振り切ってファミレスのウェイト、べオークは喫茶店で、エワズはCDショップでそれぞれバイトをしていた。
「愛美、Aスタジオのアンプ確かめておいてくれないか?さっきのお客が壊したかもしれないって言ってたから」
「分かりました。てか、その人達出禁にしたほうがいいですよ、他のところでも迷惑かけているみたいですし」
「そうか?普通そうに見えてたけどな、次やったらそうするよ」
今日に限っては他のところでも迷惑をかけているいわゆるブラックリストの人達が入ってきたので、後始末がとてつもなくめんどくさかった。
「...ッチ、アンプ死んでるし...エフェクターもアウト、しまいにはシールドが見るに無残なことになってる」
舌打ちばかりでストレスマッハでぶっ倒れるんじゃないかと思うこともあったが、オーナーが気を使って休ませてくれた。もちろん他のスタッフからも働きすぎと注意されたわけだが...そんなこんなあって気付けば19時前になったので、メンバーもどんどんスタジオに入ってきた。
「入ってきてすぐで悪いけど、皆に話したいことがある。FWFについてだ」
「てことは決心が付いたのか?」
「ああ、私達Loonは夏にあるFWFに参加しようと思う。参加するには一曲だけだはダメ、あと二曲はほしいし、精度を上げないと無理だ。オーディションで落ちたら元も子もないからな」
「ふふふ、ソエル、莉奈さんと何かあったでしょ?幼馴染だから隠そうとしてもバレバレだよ?」
ウルズには全てお見通しだった。姉さんから後押しされ、何もしないで前に踏み出さずに後ろ向いてはいけないこと、今はこの5人で出来る最高のステージを目指して歩んで行こうと姉さんに言われた時に思い、そのことを皆に伝えた。あの言葉と共に...
「皆は私のために、私は皆のために最高の演奏をする。そのためにも私をしっかりと支えてほしい...私も皆のことを支えるから」
その一言で皆はどうして行けばいいのか考えることとなった。ウチはソエル...愛美がそう決意したのならそれに合わせてしっかりと土台を作らなければならないと感じた。もちろんこれまで積み重ねた愛美とのセッションと母の指摘、今こうしてバンドを組んだイースとべオーク、エワズとしっかりとしたコミュニケーションを取らなければならない。簡単なことではない、結成してわずか1ヶ月だ。深くまではお互いが知り合ってない、ならやることは一つしかない。
「だったら明日の代休使って皆で出かけない?もう少し親睦を深めたらさらにより良い演奏ができると思うんだ」
ウルズの考えることは全うだった。あんなことを言われ、大きく踏み出さないけないと思ったが、どうすればいいのか分からなかった。決意をしようにも何も浮かばなかった。ウルズはヒントを出すのが上手いとその時は思った。私もLoonのボーカル...つまりはバンドの顔を勤めているんだ。恐らくはソエルはそれぞれがしっかりと役割を務め、誰一人欠けてはいけないとそう感じたのだと思った。だからこそ最高の歌姫として....Loonのボーカル、エワズこと江藤 和澄としてセンターに立つという決意が芽生え始めた。
翌日にはそれぞれ落ち合う予定のデパートに向かっていた。集合場所には携帯をパカパカと開け閉めしていた(10年前なので、ガラケー)ウルズがいた。というのもエワズとイースは早く到着していて、トイレ中だということで、ソエルが呼んでも完全に爆睡して起きる感じがなく、早めにいって電話を待っている状態だった。
「愛美のやつ、あと1分で時間だというのに何してんだよ」
ウルズがそうぼやいている時に駐車場の方から物凄いエンジン音をしながら青いRX-7(サバンナ)がこっちにやってきた。その車内には見覚えがある銀髪の女性と紅みのかかった茶髪の女性がいた。そう、ソエルとソエルの姉の莉奈さんだった。
「悪い悪い、起きたら時間の1時間前だったから姉さんのFC乗せてもらってきたy...グホッ」
ジャストソエルの腹に一発いい音を立ててウルズの蹴りが入ってソエルがもがいていた。
「朝起こしに行ったのに起きないってどういうことや」
「ごめんって、寝る前に作曲していたら夜の3時になってたんだって...ふわぁ~」
とぼけーとした欠伸をしたソエルにウルズは「どんな理由があってもちゃんと起きろよ」とツッコミを入れた。それを見ていた私とイースとエワズは「あはは...」と失笑した。
ウルズは買い物で服などを買って、ソエルは新譜が気になるからとCDショップへ、イースとエワズも見たいものがあるからと映画へ行く予定を立てていた。私は特にやりたい予定はなかった。それを察したのは紛れもなくソエルだった。
「それぞれ周る中でやりたいことを見つければいい」
だたそれだけの簡単な一言で私は今日を楽しむということ、Loonのキーボードとしてそうしていけばいいのか考えることにし、考えた結果、広島にいる時と変わらずに世話焼きをして5人の関係、奏でられる音楽を調律させていこうと大きく決意を胸に抱いた。
家に帰り、変わらない食事、変わらない日常を皆と送ればいいと思っていたが、4人ともが大きく前に踏み出していく姿を見て、私も大きな決断をしないといけないとそう感じながら入浴をしていた。風呂から上がり、着替えて部屋に戻る時に執事に大きな決断をすることの大切さを聞くことにした。もちろんそれは自分で考えることは分かっていた。それ以外で私はそうすればいいのかを見出せていなかった。
「綾様、大きな決断は簡単なことではありません。一度綾様は体験しています。それを思い出してみてはいかがでしょう?」
その一言で私ははっとさせられた。両親に自分のことを叫んだあの日、私は大きく決断をしてぶつかったことを...それを思い出して私はどうしたらいいのかはすぐに見つけることが出来た。
「私はLoonのベース、イースこと井住田 綾よ、こんなことでうじうじしてられないわ。ソエル...あんたは流石リーダーだね」
翌日の学校ではLoonのことで持ちきりだったのでお昼休みに騒がしくない屋上に5人で集まり、それぞれ決意を抱いた目をしていることに気が付き、2週間後にあるオーディションに向けて動くことになった。それは屋上をひっそりと見ていたファンの子達にしっかりと見られていたのだが...
私達の決意...それぞれがLoonのメンバーであるという決意、そのためにはどうすればいいのかを考えた。次回はついにFWFにLoonは参加します。