イースが荷物を持ってくるまでに時間があったので、ゆっくりと自分のことを考えた。
あのFWFに出場し、そこから一躍人気のバンドになり、いろんなライブハウスで演奏するようになり、プロへの誘いも何度かあった。でも全て私もソエルも実力不足だからとパスしていた。周りからはかなりのストイックなガールズバンドとして知られ、次第には『伝説の高校生ガールズバンド』なんて言われるようになっていた。
一年という歳月の中で数多くの有名バンドとの交流やライブハウスの人たちとの交流があったからこそ今までやってこれたのだと思う。
「なんかいろいろあったな、それこそあのライブを見て少し悔しいと思えたんだよな...プロの演奏を聴くことが多かったけど、あの人たちはプロ中のプロだなと思えたからこそ嫉妬してしまって守りに入ったような感じの歌詞しか書けなくなっていったんだよね」
冷静に自己分析をしていくとどんどんと自分が原因で今の騒動が起きているんだなと感じた。だからこそ自分が原因で起こしたことなら自分がケリをつけなくてはならないを改めて自分に言い聞かせた。
「自分が蒔いたタネなら自分でケリをつけよう、それにはソエル...愛美の協力が必要だ。なら明日、ソエルに話をしよう」
そう思い、イースが戻ってきて荷物を届けてくれたので、早速改めて歌詞を書いていくことにした。それこそ時間をかけてでも良いものを作ることにした。それをイースに報告してから作ることにしようと思い携帯メールで連絡をすることにした。
『ありがとう、おかげで目が覚めた。明日ソエルに全てを話すことにするよ。あとさ、改めて一から新曲の歌詞を書くことにしたよ』
翌日の休み時間に曇天の空の屋上でソエルが来るのを学食で売ってあった焼きそばパンを食べて待っていた。だが、待っていても一向にソエルが来なかった。まああのような出来事があったなら仕方ないのかもなと思い、その日は教室に戻った。
「明日なら大丈夫かな?次は数学Ⅱの授業だし急いで戻らないと...」
翌日、そして翌日とソエルには会えずにライブの日まで近づいてきた。そんなある日、ついにソエルと会うことがあった。
「久々だね、ソエル」
「エワズ...随分と表情が良くなってるけどどうしたの?」
「私はさ、やっぱりLoonの皆といるのが好きなんだ。あの日悩んで悩んで悩み続けた」
こうしてあの日のライブ以降守りに入った歌詞ばっか書いていた全てを話し、全ての原因は自分にあるからと謝った。
「そういうことね、それなら話が早いよ、別に一人抱えなくても皆がいる、行き詰っていたり、そのような感覚になったのならそれを伝えてくれれば少しでも役には立ってたはずだし」
「そうね、本当にごめんなさいソエル...でもおかげでいい歌詞が出来ているの、これは文化祭ライブではせずにツーマンライブでやりたいの」
「いいよ、今その作曲で悩んでいるところだったし、歌詞が出来たら言って」
これで元に戻った。それと同時に長く振り続けていた雨は止み、久々の晴れ空が二人のいる屋上に光が射していた。
「私はLoonの誇り高き歌姫エワズ...いえ、江藤 和澄よ、だからこそ私の歌声、みんなの演奏...全てがなくてはLoonではない。だからこそ、ソエルには本当に感謝している。こんなことになっていても咎めずに私のことを思って全てやっていたのだから...」
「だからそこ、ごめんね愛美...貴女に全ての負担をかかせさせてしまって」
全てをソエルに伝えることでエワズはまた前に進むことができた。次回はそんなエワズを支え、自分のことを考え始めたイースの話です。
次回、停止