世間はGWに入っているのにもかかわらず私は部活の顧問のために羽丘に来ていた。担当は確かに数学だが、部活の顧問は軽音楽部とかいうちょっとおかしな感じではあるのだが、羽丘にはいろいろな部活があり、その中には吹奏楽もあるらしく、音楽の先生は吹奏楽の顧問になっているみたいで、代わりにバンド経験がある私が顧問をしているわけである。そして今、軽音楽部の通しのために来ているという訳であった。
「悪くないよ、でも、ドラムとベースの音にボーカルが合ってない感じがするね、早とちりしてる感じがあるかな」
GW中の部活自体は休みでの活動なので午前中に終わり、そのままCiRCLEへ向かい、ただ一人で練習をすることにしていた。いくら再結成ライブで上手くできていたとはいえ、ブランクによる歌唱力への衰えは感じていたので、ただひたすらにO.Aで演奏する曲の練習をしていた。その中にLoonがあることもあって、アコギも同じように練習しなくてはならなかった。2時間も3時間も、ただひたすらに歌い続けていた。
「さすがにきついだろ?外のカフェでベオーク達が作ってきたドリンクの試作品飲んでリラックスしなよ」
急に入ってきたソエルからそう言われたので、仕方なしに外のカフェで休憩をとることにした。そこにはボーカル全員が集まっていて、ボーカル組の練習の休憩をしていた。
「相当歌ってたけど、前みたいになった?」
「まだまだ、ロングトーンと声域は大丈夫だけど、それ以外がまだ課題が残ってる感じがする」
「そっか、ならRoseliaの友希那さんの練習を見学してきなよ、何かいいヒントが見つかるはずだよ」
「分かった。現役の実力を見て課題消化するね」
そうしてソエルと演奏の課題について話し、休憩が終わってからボーカル組が練習をしているスタジオに行くことにした。
「愛美さん、ネオアスのサビをお願い」
「いくよ」
練習をしている姿を見て、私がさっきまでしていたような練習だったが、1曲1曲やり終わって、ダメだったところを見つけてそれを潰そうと必死になっている湊をみて、私に今足りてないものというのを見つけることができた。早速練習に戻り、課題一つ一つ潰していく感じでできなかったところをできるまで歌い続けた。
「添盛さん、時雨先生の歌い方と練習方法、私達Roseliaに似てませんか?」
「めちゃくちゃ似てるんだよ、エワズも友希那さん達Roseliaも...ただ一つの意地というか、信念みたいなものだよ。自分はそのバンドを背負って演奏しているということ、特にエワズのようにバンドの顔であるボーカルならなおさらその気持ちは大きいものになるわ」
そう話しているうちに私は休憩に入ったので湊と話をすることにした。ただ生徒と先生としてではなくて、同じボーカルとしての話し合いとして。
「Loonの演奏技術は確かに高いのは分かったわ。でも、どうして再結成することにしたのですか?」
「あはは、それは簡単なことよ、ソエルだよ。あいつは昔から周りをよく見てるんだ。バンドを組み始めた子たちのこともしっかりと見てるんだ。だからそんな子たちのためにやれることをしたいからこそ、Loonの再結成をしたのかもしれないな」
「なるほど、時雨先生はLoonはどう思ってますか?私達Roseliaも、頂点を目指してはいますが、その頂点について模索中だったりしているんです。そして、Roseliaの湊 友希那として私ができること...そのために私は歌い続けようと思っているんです」
「そっか、湊にとってRoseliaは互いに認め合い、この場所でしかできない演奏をしているわけね...昔の私達に似ているね」
「Roseliaが、Loonに?」
「ええ、始めの頃は私のために居場所を作ってくれて、それがFWFを経験した後では、ただこの場所が私達の居場所として認知し、全員がLoonとしての自覚をもって演奏をしていた。それで構わないと思うね」
そうRoseliaとLoonの相違点から、私からRoseliaに託したものを伝えることで、私が今何をしなくてはならないかということを知ることができた。
「ボーカルとして、バンドが伝えたいものすべてを声に出して、歌にして伝える。それが私がボーカルとして歌い続ける意地になってるの」
伝えることで分かることもある。私が今こうして新たにLoonとして活動して、私達Loonの想い全てを伝えて私達の跡を継いで演奏してくれる。そう信じて今はただ歌い続けている。
「私達が伝えたいことを歌にして届ける。そのためにも歌い続ける」
次回...ボーカル5人とソエル、そして全体リハーサル
エワズはソエル同様にこのためなら妥協はしたくないという性格をしているので、どう向き合うかという話になりますね、次回はついに全体リハーサルです。最終回はであと少しです。