泡のような儚い恋   作:ぬっくん丸

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6章 人魚と初めての買い物

「明日ショッピングモールに行こう。」

 

夕食を取っている最中に坂本が呟いた。

 

「ショッピングモール?テレビでやっていた所?」

 

渚は坂本に訊ねる。

 

「そう、建物の中に色んなお店があるところだよ。」

 

ショッピングモールに行く理由は家の物を買うことと渚の服を買うことだ。

 

渚自身、服はあまり待っていない。

 

ばあちゃんの家から持ってきた1着と通販で買った服が少しと部屋着に坂本がジャージを貸している。

 

渚はあまり外に出ないがこれだけだと少ない。

 

家の物の補充と一緒に買って来ようと坂本は考えている。

 

「私も行ってみたい!」

 

外を少し怖がっていた渚だったが、目を輝かせて坂本を眺めてきた。

 

(良かった、渚も行く気満々だ。社会見学にもなるしいい経験になるな。)

 

「じゃあ、今日は早く寝よう。」

 

────────────

 

翌日、ショッピングモールに到着。

 

坂本は車を駐車場に停めてから助手席の扉を開ける。

 

助手席から渚が恐る恐る出てきて、目の前の建物を見上げる。

 

「おっきい建物……ここがショッピングモール……。」

 

眩しいくらい目を輝かせ「サカモト!早く行こう!」と、坂本の腕を引っ張って来る。

 

「ちょっ、落ち着いて!」

 

(力強っ!引っ張る力半端ない!)

 

普通に歩けるようになっただけでなく、足腰の力の使い方も上手くなったようだ。

 

…………腕がもげそう。

 

────────────

 

「サカモト、あれは何?」

 

「サカモト、あれは?」

 

サカモト……サカモト……サカモト……

 

 

(いやすげぇテンション。)

 

とても楽しそうで良かったです、まる。

 

本来の目的の日用品と渚の服を買いに行く前に色々見て回ることにしたが、渚が水を得た魚のようになった。

 

かれこれ2時間半歩き回り坂本は少し疲れてしまった。

 

(なんで渚は元気なんだよ……。)

 

渚もずっと歩いているが疲れている様子は見られない。

 

このままでは潰れると思い、フードコートで休憩兼昼食を取ろうと坂本は考えた。

 

「な、渚さーん……。少し休憩しよう……。」

 

「うん!」

 

────────────

 

フードコートに着き、席を取ってから食べ物を買いに行く。

 

「サカモト、あれはらーめん?であっちはたこやきだったよね?」

 

「そうそう、食べてみる?」

 

「うーん……もうちょっと考える。」

 

ここのフードコートは結構種類があるから目移りしてしまったようだ。

 

(うちでも色々食べさせてあげよう。)

 

そんなことを坂本が考えていると…………。

 

「あれ?先輩じゃないですか!奇遇ですな!」

 

…………ここはスルーだ。

 

「え、ちょっ、無視しないでくださいよ!」

 

…………何を言われようがスルーだ。

 

「可愛い後輩の杏子ちゃんですよー!」

 

………………。

 

「ドチラサマデショウカ?ワタシ、アナタノコトワカリマセーン。」

 

「た、他人のふりをしないでくださいよ!あとなんでカタコト!?」

 

なんでバイト以外でこいつに遭遇しなきゃならんのだ……。

 

「サカモト…………?」

 

「ん?そっちのかわい子ちゃんは誰ですか?」

 

(しまった……。渚のことを忘れてた。なんて説明したら……。)

 

「あっ、その子は、その、アレだ。名前は渚。訳あって一緒に住んでる。」

 

我ながら苦しい言い訳だと坂本は後悔した。

 

詮索されたら非常に不味い。

 

「渚ちゃんって言うんだ!私は川藤杏子だよ!よろしくね!」

 

(アホで良かった。)

 

「な、渚です。よ、よろしく……。」

 

杏子のハイテンションに少々たじろぐ渚だった。

 

────────────

 

「で、先輩はなんでここに?」

 

食べ物を買い、ちゃっかり相席にしてる杏子が聞いてくる。

 

「日用品と渚の服を買いに。」

 

(そういや最近の女の子の服について全くわからないな……。)

 

今日渚が来ているのは通販で買ったシンプルなワンピースだった。

 

出来たら違う感じの服を買ってあげたい。

 

「そういうお前は?」

 

「実は今日、最上階に新しくアニメショップが出来たのでそこに行こうと思ってたんですよ。」

 

確か案内板にそんなのがあったような気がした。

 

「しかもその店、コスプレも出来ちゃうらしいんですよ!」

 

「コスプレ?」

 

杏子は何かのイベントとかでコスプレをしている。

 

以前、写真をいくつか見せてもらったことがあった。

 

「で、先輩と渚ちゃんも一緒にどうっすか?」

 

「コスプレか……。」

 

坂本自身、コスプレには興味は無いがあまりできる体験じゃないからやってみようと考えている。

 

「やってみるのも悪くないな。」

 

「サカモト、コスプレって何?」

 

もちろん渚はコスプレがなんなのかわからない。

 

「テレビでアニメは見たことあるでしょ?コスプレって言うのはアニメのキャラの服を着ること。」

 

「私もやってみたい!」

 

どうやら渚もやりたいようだ。

 

「じゃあ、先輩達の買い物終わってから行きましょう!私も渚ちゃんの服を見ますよ!」

 

一緒に来てくれるのはありがたい。

 

坂本だけでは服を選ぶのに自身がなかった。

 

「助かる。今までで1番お前が頼もしく見える。」

 

「どういうことっすか!」

 

「フフッ……。」

 

杏子とアホなことしていたら渚に笑われた。

 

────────────

 

フードコートで昼食を取ってからレディース服の店に着いた。

 

店頭に並んでるだけでも種類がたくさんあるようだ。

 

店の奥から女性店員がニコニコしながら出てきた。

 

「いらっしゃいませ!本日は何をお探しで?」

 

「今日はこの子の服を買いに。」

 

渚を見るといろんな服にまた目をキラキラさせていた。

 

「まぁ、可愛らしい彼女さんですね。」

 

店員が変な勘違いをしている。

 

「いや、彼女じゃ……。」

 

と否定しようとしたら杏子が口を開く。

 

「ねぇねぇ先輩、勝負をしませんか?」

 

「は?勝負?」

 

いきなりこいつは何言ってんだ?と坂本は呆れた。

 

「渚ちゃんに1番合うコーディネートをした方が勝ちってことで!審査員は店員さんがやってくれるってことで!」

 

ほんとこいつ何言ってんだ。

 

店員にも迷惑掛かるだろと店員を見ると親指を上げ、サムアップしていた。

 

…………え?やれと?

 

…………どうやら逃げ道は無いみたいだ。

 

────こうして渚のコーディネートバトルが始まった。




ちょっと間が空いてしまい申し訳ありません!

これからも出来るだけ早く上げられるようにがんばります!


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