惑星タルカスと惑星サイレン(pixivにも投稿しています) 作:トーマス・ライカー
新超光速航法を開発して探査範囲を拡大した。
H S S C 218が、人跡未踏の惑星系に入った。
350年目に掛けて、H S探査船は30隻が建造され、外宇宙探査に送り出された。
大進出時代の始まりだった。
342年目に、ほぼ同じ大きさで2個目の反物質岩塊が太陽系に侵入してきた。
今回は初回時ほどには苦労せずに、土星を周回する軌道に乗せる事が出来た。
360年目が終るまでに、雑駁ながら太陽系から半径300光年の宙域で地球型惑星の探査が行われたが、人類が永住するのに適していると判定できる惑星は発見できなかった。
探査範囲拡大の方針は出されたが、大進出当初の頃の積極性は、その動きからは観て採れなかった。外宇宙探査にも、人々は疲れ始めていた。
大進出当初には期待されていた外宇宙知的生命体とのファーストコンタクトが無かったことも、人々の意欲にブレーキを掛ける要因の一つになっていた。
さて、重力場が駆動転位してH S(ハイパースペース)に入ると、その先はいくらM B H Mの回転数を上げても、スピードは上げられない。
その改善策として亜空間航法の研究開発が、363年目から開始された。
危険ではあるが相当量の反物質を探査船に積み込み、対消滅反応炉の中で正物質と反応させ、急激に発生する莫大な対消滅反応エネルギーをそのまま推進力として噴射し、船体を急激・急速に加速するのと同時にM B H Mの回転数を上げると、船首前方に発生する慣性重力場と船体との中間で亜空間が開く事が判った。
そのまま船体を亜空間に入らせ(亜空間転移させ)ると、亜空間の中でならモーターの回転数を上げればそれに応じて加速が効く事も判った。
実験が繰り返されて犠牲も払ったが、372年目の半ばには重力場次元駆動転移航法が実用化された。
新型の探査船はH S S C(ハイパー・サプスペース・シップ)として区分され、20隻が建造された。378年目の事だった。
そして472年目の5月半ばに、H S S C218が、ある恒星系に到達した。
物語は、これより始まることになる。
「・・あっ船長、お早うございます・・・」
「・・おはよう・・いつも早いな・・・大してやる事も無いだろう・・?・・」
「・・そんなことありませんよ・・このタイプの船は初めてなんで新鮮です・・」
私はトマク・ラオ・シン・・このH S S C218のキャプテンだ。
(ドリンクコーナー)に言って、アイスコーヒーを出して貰った。
今話した彼は、キミル・ユマ・ゼタス・・フォース・ナビゲーションコーディネーターだ。
研修期間が明けて2ヶ月経ったばかりの新人だ・・・張り切ってる。
一口飲んで腕時計を見る・・予定時刻まで5分だ。
シートに着くと続けて6人が入ってきた・・中の1人と眼が合ったので、お互いに左手を軽く挙げた。
彼はイアン・サラッド・・メイン・パイロットだ。サード・パイロットのラフ・ロモロからpadを受け取って、代わりにパイロットシートに着いた。
二口目を飲んでカップをホルダーに置いたところで・・・「・・遅くなりました・・」
振り向くといつの間にか副長が座っていた。
「・・いや・・まだ3分ある・・・」
彼女は、ミレーナ・ファルチ・・ファースト・オフィサーとしてのキャリアは6年目になるベテランだ・・・本船の副長としては18ヶ月目に入る・・・次の人事では間違いなくキャプテンだ・・・。
「・・全乗員に通達・・こちらはチーフ・エンジニア・・間もなく予定時刻です・・全員着席してベルト着用・・・減速スタンバイ・・・」
セバット・ボスカ機関部長が全船に通達した。
残り2分と少し・・アイスコーヒーの味を楽しんで過ごすのにはちょうど良い・・。
ちょうど飲み終わったくらいの頃合いで、警戒警報が響いた・・。
「・・10秒前です・・モーター回転数を4ヘ・・サブ・スペースアウト・・・更に回転数を1へ・・・ハイパー・スペースアウト・・・慣性重力場消失・・・通常空間に復帰しました・・・」
「・・お見事、機関部長・・続けて全員で全船・全システムのフルチェックを頼む・・」
「・・船郭、船体構造異常なし・・」「・・推進システム、異常なし・・」
「・・メインパワー、補助パワー、動力系異常なし・・」
「・・メイン・コンピューター、異常なし・・」「・・循環系、生命維持システム、異常なし・・」「・・センサーシステム、異常なし・・」「・・マイクロブラックホールモーター、異常なし・・」「・・対消滅反応炉、異常なし・・」「・・ノーマルドライヴ、異常なし・・」「・・全船・全システム、異常ありません・・」
「・・ご苦労さん・・・それじゃ・・全天座標確認・・」
「・・了解・・アルファ・クアドラント・・357A J269セクター・・・697マーク214・・目標恒星系の外縁部に侵入しています・・・目標恒星は、方位220マーク137、距離・・3億8千8百40万km・・」
「・・目標恒星に向けてコースをセット・・ノーマルドライヴ始動・・ファーストスピードで発進!・・続けて惑星探査行動に入る・・・」 「・・了解・・」
「・・目標恒星の近傍に惑星系を二つ探知しました・・・しかし、これは・・・・・」
「・・?・どうした・・?・・」
「・・奇妙です・・・二つの惑星は、物凄く巨大です・・・しかし、比較して恒星は・・明るさは強いものの・・二つの巨大惑星を引き留めておけるだけの重力がありません・・・」
「・・?・・二つの惑星の軌道は・・?・・」
「・・?・・こ、これは・・二つの惑星の軌道は・・・全く同一です・・・恒星を挟んで・・・いや・・中心点として、点対称に・・いつも反対側にいます・・・恒星の光が強いので・・・一方の惑星からもう一方の惑星を・・肉眼では確認できない筈です・・この惑星系は、一つです・・・共通の重心の周りを・・お互いに廻り続ける・・共通重心連星です・・・」
「・・そして、その共通重心に・・あの恒星がある・・」
「・・そうです・・しかもあの惑星は二つとも、ガス状惑星ではありません・・あれ程に巨大なのに、岩石惑星なのです・・・」
「・・大きさの概略を出してくれ・・・」
「・・はい・・大きさは二つとも凡そ・・?!木星の550倍?!・・そんなバカな!!?・・・」
「・・岩石惑星がどうしてそれ程の大きさを維持できるんだ?・・たちまち重力崩壊を起こしてしまうだろうし・・・そもそもそんな大きさにまで成長できない筈だ・・・」
「・・うーん・・謎ですね・・もっと接近して様々な観測を精密に行い・・データを取得しないと・・・」 「・・惑星に大気はあるのか?・・」
「・・大気の反応はありますが・・まだ遠いので、組成までは何とも・・・」
「・・衛星の反応はあるのかな・・?・・」
「・・ありますね・・双方とも少しはっきりしない部分はありますが・・30個弱の衛星があるようです・・・中には大気と豊富な水の存在を示す岩石質の衛星もあります・・・」
「・・何れにしろ、もっと接近して観測しないと、詳しい事は判りませんね・・・」
「・・人工的・人為的な電磁波は検知できるか・・?・・」
「・・はい・・人為的なパターンを含むと観られる、電磁波を検知しました・・・これがレーダー探査波か、通信波か、データストリームなのかの判別は、まだできません・・・もっと接近して観測する必要があります・・・」
「・・よし分かった・・ノーマルドライヴ停止・・船首逆噴射10秒・・減速してくれ・・・副長・・地球型惑星探査推進本部に宛てて・・ここの位置情報を添付の上、第一報を頼む・・・『地球型と観られる【天体】を発見した』で良い・・・直ぐに問い合わせが来るだろう・・・それじゃあ、メインスタッフは全員、私の控室に集まってくれ・・・ミーティングを開く・・・」
そう言って、立ち上がった。
メインスタッフによるミーティングが始まる。
若干、補足しました。