惑星タルカスと惑星サイレン(pixivにも投稿しています) 作:トーマス・ライカー
副長は自分のコンソールに向き直って、パネルの上で指を走らせ始めた。
「・・!ちょっと待って下さい!・・」
メイン・センサーオペレーターのモーレイ・カラムが声を挙げた。
「・・どうした・・?・・」
「・・あの二つの巨大惑星ですが・・両方とも火星並みの大きさの衛星が・・一番遠い軌道を廻っていますが・・両方とも反物質の衛星です・・・」
「・・確かだな・・?・・」 「・・はい・・」
「・・一番遠い軌道だから・・今まで対消滅破局が起きなかった・・んだな・・」
「・・まあとにかくミーティングだ・・集まってくれ・・」
また(ドリンクコーナー)に言ってジンジャーエールを出して貰って、船長の控室に入った。自分のデスクには座らずにソファーセットの隅に座った。
直ぐにメンバーが入ってきて思い思いに座る。
セバット・ボスカ機関部長・・・メイン・センサーオペレーター、モーレイ・カラム・・・メイン・パイロット、イアン・サラッド・・・ファースト・ナビゲーションコーディネーター、コリン・ユーリィ・・・保安部長、アレジ・ダ・ナシ・・・ドクター、ドゥペル・モノ・コット・・・チーフ・サイエンスオフィサー、シーモン・アヤラ・・・そして最後に、副長のミレーナ・ファルチが入って来て座った。
「・・よし、始めよう・・・協議して決めたいのは、この船に於ける今後の基本方針だ・・つまり、第一次探査を続行するのか・・すっぱり辞めて次の星系に向かうのか・・だ・・考慮すべき要点を出していこう・・・勿論、微妙な差異はあるだろうが・・地球型と観られる【天体】を複数発見した・・・衛星の方だがね・・巨大惑星は、現時点では除外して良いだろう・・情報が少なすぎるし、謎も多い・・・除外しても、3個から4個はあると観て良いだろう・・・だが、先住民がいる・・・送受信のできる、技術レベルにはあるようだ・・・詳細は、まだ不明だがね・・・これが普通のサイズの惑星だったら結論は単純だ・・・もう次の星系に向って出発してる・・・それだけ・・・この惑星系の巨大な規模は・・それだけでも私には魅力だな・・・つまり、先住民に気付かれずに移住・入植する事も不可能ではないかも知れない・・・まあ、かなりハイリスクではあるな・・・また・・移住・入植までは考えなくても・・補給地としては充分に利用できると思う・・・何と言っても火星並みの大きさの反物質の塊が二つと言うのは魅力だな・・・もう少し第一次探査を続行して各種のデータを得てから、またミーティングを開くのもアリだろう・・・他にはあるかな・・?・・」
「・・私は、もう少し調・探査を続行するべきだと思います・・・この惑星系に対しての、今後の基本方針を決定するには・・まだ早いですね・・」
ボスカ機関部長が、言葉を選んで言った。
「・・私も時期尚早だと思いますね・・・もう少し調べて検討するべきです・・」
シーモン・アヤラも肯いて言う。
「・・私も、もっと調べたいですね・・・自分の興味本位の部分が大きいですけれども・・・」
モーレイ・カラムが、率直に言う。
「・・かつての地球上での・・2050年代当時の、レーダー探査波やレーザーセンサーでしたら・・回避できるステルス遮蔽機能が、こちらにはあります・・・もう少し接近して調査しても大丈夫でしょう・・・」 アレジ・ダ・ナシ保安部長も請け合った。
「・・今のところ、あの恒星からも周辺の宙域からも、人体に有害な放射線は検出されていないね・・・」 ドクターも言った。
イアン・サラッドとコリン・ユーリィは、私の眼を見返して肯いた。
「・・君はどう思う・・?・・」 副長の顔を見遣って訊いた。
「・・私もまだ調査を続行するべきだと思います・・・それに本船なら衛星の間を縫って巨大惑星にも接近できるはずです・・・過激な意見かも知れませんが・・・」
「・・過激とまでは言わないが・・・大胆だなとは思うね・・・」
「・・それにこの船なら、大気圏内でも航行できますよ・・・パイロットとしては、一度やってみたいですね・・・」 そう言ってイアンは、悪戯っぽく笑った。
「・・よし、調・探査続行する・・第2警戒配置・・ノーマルドライヴ始動、最微速発進・・先ず電磁波の発信源を特定しよう・・・当面の目標は・・手前に見える巨大惑星だ・・接近してみよう・・・」
そう言って立ち上がり、ジンジャーエールを一口飲んだ。
控室から出て自分のシートに着く。ブリッジが動き始める・・・・。
「・・ノーマルドライヴ始動・・定格起動・・」
「・・最微速発進・・時速250km・・・」
「・・対電磁波探査に入ってくれ・・」 「・・了解・・」
「・・人為的パターンを含むと観られる電磁波を探知しました・・・」
「・・分析して種別の特定と、発信源探査に入ってくれ・・」 「・・了解・・」
「・・第一次分析、終了しました・・・まだ距離がある上に総じて出力が弱いので、曖昧な部分もありますが・・最も出力が強いのはやはり、レーダー探査波です・・・」
「・・遮蔽が必要かな、保安部長・・?・・」
「・・いや、この出力なら、まだ大丈夫です・・探査波のパターンをこちらでも分析しましたが・・あまり高度なものでもないようですので・・捉えられたとこちらで判定できた時点で遮蔽を掛けても、充分に間に合うでしょう・・・」
「・・そうか・・・他の電磁波については・・?・・」
「・・出力の強い順になりますが・・映像や音声の通信波・・ネットワークデータストリームと・・一般の放送電波ですね・・・」
「・・それで、発信源は判ったかな・・?・・」
「・・右から2番目に見える衛星からですね・・・地球型の天体であろうと見受けられますが・・・正確な方位と距離の測定は・・・まだ難しいです・・・」
「・・分かった・・よし、その衛星に接近しよう・・針路設定・・当該衛星に向かう・・ファーストスピードまで加速・・目標は標準周回軌道・・・他の電磁波を精密に分析して、使用されている言語の解析作業に入ってくれ・・・」 「・・了解・・」
ジンジャーエールを飲み干してグラスを片付けると、軽い加速度を感じた。座り直したタイミングで副長が報告した。
「・・船長・・本部から返信が入りました・・短いですが・・・」
「・・何と言ってきた・・?・・」 「・・詳細を送信せよと・・・」
「・・そうか・・現状で判っている事実をまとめて報告してくれ・・・予断させるような予想は入れなくて良いから・・・」 「・・分かりました・・」