惑星タルカスと惑星サイレン(pixivにも投稿しています) 作:トーマス・ライカー
副長はまた自分のコンソールに向った。
「・・船長・・目標当該衛星まで距離・・187万8千6百kmです・・規模は地球と比較して・・96%程です・・重力はほぼ1Gと言う事でも良いでしょう・・陸地と海の比率は・・65対35ですが・・大陸と呼べるほどの陸地は無いようですね・・・大気組成は・・1970年代の地球の大気に・・よく似ています・・孫衛星と言えば良いんでしょうか・・?・・ありますね・・ざっと見た限りでは月によく似ています・・・距離は、126万4千kmです・・・相対的に、接近中です・・・規模は月と比較して86%程ですね・・・それでその孫衛星の表面になんですが・・・人工の建造物が認められます・・・まあいわゆる月面基地と言っても良いでしょう・・あります・・検知されたレーダー探査波は・・この基地からのものです・・ですが、出力は強くないので・・40万kmまで接近しても・・捉えられるような事は無いでしょう・・・それと・・目標当該衛星の圏内で飛び交っている電波を解析中ですが・・・既に7種類の言語を確認しています・・・多民族社会のようですね・・・」
モーレイ・カラムがコーヒーカップを左手に、モニター上のセンサーデータをスクロールさせながら説明した。
「・・分かった・・ありがとう・・コース・速度はこのままでいこう・・・各言語の解析と翻訳作業を別系統で始めてくれ・・・これにはメインコンピューター内のワンブロックを割り当てても良いから・・・」 「・・分かりました・・・」
副長が立ち上がって来た。送信が終ったようだ。
「・・キャプテン・・送信終了しました・・」
「・・ああ・・副長、補給物資の残量から、我々はここでの調・探査をどのくらい続行できるだろうか・・?・・ここは恒星系として大きくはないが、2つの巨大惑星を含めれば居住可能と観られる天体は、7.8個は発見できるだろう・・・総てを充分に調査するには、もう物資が足りないのは明らかだからね・・・」
「・・そうですね・・・調べて報告します・・・」
「・・頼む・・・今送信した第2報が、推進本部のお偉方の興味をかなり引くだろう・・・もしかしたら本部内がかなり色めき立つかも知れない・・・そうなれば、第2陣の調査船か調査団が編成されて・・ここに派遣される事になるかもな・・・地球圏でのュースネットのフォローも頼む・・・もしかしたらどこかがスッパ抜くかもな・・・」
「・・分かりました・・・」
「・・キャプテン・・天体測定ラボにお願いします・・・」
シーモン・アヤラからコールが入った。
「・・すぐ行く・・」それだけ答えて左手で副長によろしくと合図をすると、ブリッジを出た・・・・・。ラボに入ると、既に全システムがフルに稼働していた。
「・・報告してくれ・・・」
「・・ああ、キャプテン・・レベル2でのセンサースキャンが現在進行中です・・・現在接近中の巨大惑星系を・・取り巻く衛星の周回軌道高度のエリアごとにまとめました・・・低高度軌道エリア・・・中高度軌道エリア・・・高高度軌道エリア・・・超高高度軌道エリア・・です・・・超高高度軌道エリアに属しているのは、反物質衛星だけです・・・現在接近中の地球型天体と観られる衛星は・・・高高度軌道エリアに属するもので・・軌道高度の高い方から数えて・・3個目です・・・高高度軌道エリアに属する衛星は・・・13個です・・・中高度軌道エリアに属する衛星は・・・16個です・・・低高度軌道エリアに属する衛星は・・・12個です・・・反物質衛星を含めれば・・この巨大惑星を取り巻いている衛星は・・42個です・・・全く信じられない惑星系ですね・・・レベル2なので、まだ雑駁なセンサースキャンですが・・一次判定で地球型と観られる衛星が、現在接近中の衛星も含めると・・5個見付かりました・・・」
「・・・ああ・・全く凄い所だな・・・この場にいても信じられないよ・・・今聞いた話をそのまま推進本部のお偉方に聞かせて・・どんな顔をするのか観てみたいね・・・ただ、その場で調査船団の編成と派遣が決定される事だけは確実だろうな・・・反対側の巨大惑星系については・・?・・」
「・・とてもじゃありませんが、まだそこまで目も手も廻りません・・・レベル2のスキャンですから、この時間でここまで調べられたんです・・その代わり、精度は少し粗いですがね・・・それでも・・反対側の巨大惑星も、40個以上の衛星を持っているぐらいは分かります・・・」
「・・そうか・・そろそろ仮称を付けた方が良いだろうな・・接近中の巨大惑星をBP1(ブルー・プラネット・ワン)と呼称しよう・・向う側の巨大惑星はBP2だ・・・こちら側の惑星系で、地球型と観られる天体衛星は、惑星からの距離が遠い順でGS(グリーン・サテライト)1・2・3と呼称していこう・・・ライブラリー・ファイルにも取敢えずそう名付けていってくれ・・・」 「・・分かりました・・・」
その時、ラボに副長が入って来た。
「・・船長・・概算ですが、帰還航程も考慮すると、この恒星系に滞在できるのは2週間ほどですね・・・」
「・・そうか・・今レベル2でこちらの惑星系をスキャン中だが・・一次判定で地球型と観られる衛星が、この惑星系の中だけでも5個あると判った・・・この5個の衛星についてのデータをまとめて・・推進本部に第3報として送ってくれ・・それで調査船団の編成とここへの派遣が決定されるかも知れない・・・」
「・・分かりました・・その船団が到着すれば、補給が受けられますね・・・」
「・・ああ・・補給が受けられなければ、本船は2週間後に帰還航程に入ると添えてくれ・・」
「・・了解・・」
「・・アヤラ・・地球型天体に対しては、レベル3のスキャンを始めてくれ・・副長、ブリッジに戻ろう・・」 そう言って一緒にラボから出た。
「・・正直、推進本部の判断がどっちのベクトルを向くかは、微妙かもな・・・」
「・・どう言う事でしょうか・・?・・」
「・・先住知性体のいる天体を調査対象にすべきでない、と言う考えも根強い・・」
「・・でも、調査は続行されるでしょう・・?・・」
「・・そうだな・・移住候補地からは外れても、資源開発候補地にはなるだろうね・・・」
「・・反物質天体がありますからね・・・」
「・・木星型・土星型のガス状巨大天体も、ゴロゴロあるみたいだしね・・・ただ・・調査は一旦切り上げて・・帰還しろと命じられる可能性もかなりある・・まっ、その時はその時だね・・・」 そこまで言ってブリッジに入った。
ミレーナは自分の席で作業に入る・・私はパイロットに指示した。
「・・イアン・・コースはこのままでセカンドスピードまで加速しよう・・目標は衛星から高度500キロでの周回軌道だ・・・」 「・・了解・・」
また船体がグンと加速された・・。
「・・アレジ・・孫衛星表面にある人工建造物から、40kmに入る手前で、遮蔽シールドをレベル1で展開してくれ・・・」 「・・分かりました・・・」
「・・今現在の衛星までの距離は・・?・・」
私はモーレイ・カラムの右側に立って訊いた・・。
「・・185万2千8百kmですね・・現在のスピードで衛星の地表から高度500kmに到達するまでには・・72時間弱です・・」
私はキャプテン・シートに座ると、左肩越しに半身で振り返って訊いた・・。
「・・アレジ・・この宙域でサード・スピードまで増速したら・・外からはどう観える・・?・・」
「・・ちょっとした彗星のように観えるかも知れませんね・・望遠鏡で捉えられれば、ですけど・・」 「・・まあ焦っても・・リスクを高めるだけだしな・・」
「・・セバット・・デルタ4クラスの自律航行探査機を10基用意してくれ・・GS(グリーン・サテライト)1~5にかけて2基ずつ先行して発射させる・・本船は外からどう観えるのかも考慮しなければならないから、これ以上増速できない・・コリン・・GS2~5に向かわせる探査機のコースは、他天体の重力の影響を極力受けないような設定で頼む・・いいかな・・?・・」
「・・了解しました・・」 「・・10分で用意します・・」
「・・それとセバット・・直通リンクを保持するのは、GS1に向かう探査機だけで良い・・他の探査機は一定時間ごとに探査ログを記録して・・後でこちらに転送しよう・・それと勿論探査レンジの設定はフル・オープンだ・・」 「・・了解です・・・」
「・・探査機の呼称はGS1・A、B・・GS2・A、Bとする・・それじゃ、15分後に発射だ・・ミレーナ・・今の決定をシーモンに伝えて、GS1・A、Bと天体測定ラボとの間に、通信リンクを確立するように伝えてくれ・・ついでにGSの最新スキャンデータを貰って・・本部に第4報として、送信してくれ・・」 「・・分かりました・・・」
「・・それが終ったら交替で半舷休息だ・・GS1を周回する軌道に入る2時間前まで・・5時間ごとに交替しよう・・保安部長から全乗員に通達してくれ・・副長と機関部長とで、勤務スケジュールを編成して発表してくれ・・」 「・・了解しました・・・」
「・・モーレイ・・GS1での各言語の解析と翻訳作業はどうなってる・・?・・」
「・・それなりに進んでいます・・主に使われている言語は、やはり7種類ですね・・似通っている部分もありますが、違う部分もあります・・他にあまり使われない言語を3種類、確認しました・・あまり使われないので解析・翻訳はそれほど進んでいません・・7種類の言語の解析と翻訳については・・43%・・と言ったところでしょうか・・もっと接近すれば、データストリーム・ネットワークにも入れるでしょうから・・入れてデータのダウンロードが出来れば・・解析・翻訳共にもっと進むでしょう・・」
「・・GS1上での・・国際情勢・・と言うのかな・・?・・何か判るか・・」
「・・名称が判明している・・国・・でしょうかね・・?・・9個、確認しています・・それぞれ・・同じような見解や主張の面もあるようですが・・対立していて係争しているような見解や主張の面もあるようです・・国同士での交流や貿易などは・・活発に行われているようです・・孤立して疎外されているような国とか・・自ら交流を断って鎖国しているような国などは・・確認されていません・・各国ともそれなりの規模での軍隊を、保持しているようです・・」
「・・印象として・・我らの母星であった地球での・・どの年代に相当すると思う・・?・・」
「・・ちょっと難しいですが・・現状で総合的に考えると・・2010年代の地球に近いんじゃないでしょうか・・?・・宇宙開発での技術レベルでは・・かつての我々の地球よりも先行しているようです・・孫衛星の表面に、基地を建設しているくらいですからね・・ただ・・自然環境の汚染レベルは・・我々の地球よりも軽い状況です・・しかし、地震と火山噴火の発生状況は・・2010年代での我々の地球のそれよりも・・数としては多いです・・ですが、それがD層の浮上に因るものなのかどうかについての判定は、まだ出来ません・・もっと接近しての調査が必要です・・・」
「・・了解したよ・・そのまま続行してくれ・・それと、君のチームの中で割り振っても良いし・・シーモンのチームと合同で調査しても良いが・・GS1から孫衛星基地へは、定期便が出ている筈だ・・どのコースを通ってどの程度の頻度で出ているのか・・調べてくれ・・」 「・・分かりました・・」