惑星タルカスと惑星サイレン(pixivにも投稿しています)   作:トーマス・ライカー

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半舷休息と地球型惑星探査推進本部での最高評議会議

「・・と、言う事は・・レベル1の遮蔽シールドだけで、孫衛星軌道の内側に入れば・・たちまち発見されるか・・アレジ・・本船が孫衛星軌道に掛かる10分前から・・遮蔽シールドのレベルを2へ・・それに加えて、光学迷彩も掛けてくれ・・・」

「・・ミラージュ・コロイドも使いますか・・?・・」

「・・いや・・そこまでは必要ないだろう・・」  「・・分かりました・・」

機関部長が報告した・・。「・・探査機の準備が完了しました・・・」

副長が報告した・・。「・・第4報の送信が完了しました・・・」

「・・よし、アレジ・・GS1に向かわせる探査機から順に射出してくれ・・副長、それが終ったら交替で半舷休息だ・・君と私とでは最初、2時間ごとに交替しよう・・君が先に休んでくれ・・」    「・・分かりました・・お言葉に甘えます・・」

最後に保安部長が報告した・・。「・・探査機10基、射出終了しました・・・」

「・・よし・・ありがとう・・それじゃあ、全船、半舷休息だ・・全員、勤務スケジュールに従って行動してくれ・・シーモン・アヤラとモーレイ・カラムは・・両名ともそれぞれ、勤務に復帰するたびごとに、GS1に対しての観測・分析のレポートを上げてくれ・・宜しく頼む・・以上だ・・ああ、ミレーナ・・食堂に言って、今日の日替わりモーニング・プレートを一つ、届けて貰ってくれ・・ここで食べるよ・・2時間で交替しよう・・・」

太陽系・・木星圏・・

木星の衛星ガニメデを周回するコロニー『ガニメデ003』とタイタンを周回するコロニー『タイタン002』の両方に、『地球型惑星探査推進本部』は設置されている・・。

二つのコロニーに機能を分散しているのではなく、規模の上でも機能の上でも全く同じものが二つのコロニーに設置されている・・。

木星圏が破局的変動に見舞われた場合を想定しての、防衛措置としてそのようにされている・・のだが、おかげで何をするにも手間が2倍掛かるようになった・・尤も今ではどちらの推進本部のスタッフも、それに馴らされている面があるのは否めない・・・。

今二つの推進本部は、亜空間通信で直結されている・・同じ惑星圏の中なのだからレーザー・ラインでも不都合は無いのだが・・ほんの僅かなタイムラグも、もどかしく感じて仕方ないらしい・・ちなみにガニメデの本部は『A』と、タイタンの本部は『B』と呼称されている・・。

推進本部最高評議会議室は、どちらのコロニーにも設置されている・・『A』の会議室では『B』の最高評議会メンバーの姿がホログラムで投影されていて・・『B』の会議室では、『A』のメンバーが同じように投影されている・・。

「・・やはり・・H S S C218が送信してきたレポートデータの信憑性は・・充分に信頼し得るレベルのようですな・・」

と、『A』の評議委員、マッシュ・ガーバルドがPADのデータを上下にスクロールさせながら言う・・。

「・・しかし・・このレポートデータを3回読み直した上でも、まだ信じられんよ・・このような惑星系が実際に存在するとは・・しかも二つも・・」

と、『B』の評議委員、ファレス・ルーガンが左手で顎を撫でながら言った。

「・・それは・・ここにいる全員の共通認識の一つでしょうね・・」

と、『B』の評議委員、マライカ・ナーグラがブロンドのロングヘアを煩わしそうに掻き揚げて言った。

「・・それで・・先ず何を討議する・・?・・」と、『A』の評議委員、テッド・ウィンディが腕を組む。

「・・調査続行か否かでしょ・・それが決まらなければ、何も決められませんよ・・」

と、同じ『A』の評議委員、ウルミラ・シャルマがテッドを流し目で見遣って言った。

「・・よし・・調査続行か否かを討議した上で決議しよう・・評議委員諸兄にはそれぞれに想うところもあるだろうから、意見は忌憚なく述べて欲しい・・初めに私から言わせて貰うが、調査続行に賛成だ・・移住候補地やら資源候補地やらについてはもっと先に置いて・・今は更に多方面に及ぶ詳細なデータの収集が急務であろうと考える・・消費資源の状況から見て、H S S C218が現地に留まれるのはあと2週間と言う事だから、続けて探査船を派遣するか・・調査船団の編成と派遣を、この場で決議しても良いと思う・・」

と、『A』で評議会議長を務める、リムスレーア・ファレナスが言った。

「・・しかし、我々にはまだファーストコンタクトの経験が無い・・無いから手順も何も無い・・先住知性体の存在する惑星系に、長く居れば居るほど偶発的に接触する可能性が増大するし・・接触してしまった場合、手順の無い段階では・・意志疎通の行き違いから収拾できない事態に陥ってしまう可能性も高くなる・・離脱した方が良いのではないか・・?・・」

と、『B』で評議会議長を務める、マイロ・ヴィンティミリアが整然と述べた。

「・・先ず接触は、どのようなレベルに於いても厳禁とする・・偶発的に接触してしまう可能性も、出来得る限り想定して可能な限り排除しながら、一にも二にも慎重に時間を掛けて詳細なデータの収集・・調・探査を続行する・・調査船団の編成と派遣にも賛成ですが・・調査に於いて2隻以上で惑星系に侵入する事は禁止する・・これで良いと思うがね・・」

と、『A』の評議委員、ラビル・イスヤノフがテーブルを右手の指でタッピングしながら言った。

「・・確かに・・これ程の惑星系を、先住知性体が居るからと言う理由だけで見捨てていくのは・・あまりにも惜しいですわね・・」

と、『B』の評議委員、アーシア・アルジェントが軽く一息吐くと、少し肩を竦めて言った。

「・・しかしこの惑星系は・・あまりにも異常だ・・異常すぎる・・どうも嫌な感覚が拭えない・・議決とは別に・・いやその前にH S S C218に指示して・・緊急に確認すべきと思える事項がある・・どうだろうか・・?・・」

と、『A』の評議委員、ケフィ・アナンがその場の一同を見渡しながら言った。

「・・具体的には・・?・・」と、リムスレーア・ファレナスが先を促す。

「・・今からでもこの惑星系から脱出できるかどうかを確認すべきだと思う・・もしかしたら既に取り込まれてしまっているのかも知れない・・」

「・・そんな・・それは考え過ぎじゃないんですか・・?・・」

と、『B』の評議委員、ロクサーヌ・ギノーが少し引きながら言う・・。

「・・いや、この惑星系が既に存在しているのだから・・その可能性もあり得るだろう・・なに、確認すれば済む事だ・・別に何の不都合もあるまい・・通信室!・聴こえるか?・マイロ・ヴィンティミリアだ・・H S S C218に対して、私の名前で緊急通達を出してくれ・・内容はこうだ・・H S S C218へ・・緊急に通達する・・貴船は現在調査中の当該惑星系に・・既に捕獲されている可能性が指摘されている・・それを払拭して否定する為に・・直ちに一旦、惑星系から可及的速やかに、完全に離脱せよ・・繰り返す・・直ちに一旦惑星系から完全に離脱せよ・・これは緊急指令である・・・以上だ・・・」

言い終えてマイロ・ヴィンティミリアは、ケフィ・アナンに向って(これで良いのか?)と言う風に軽く両手を広げて見せた・・。

 


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