人形使いと高校生   作:ツナマヨ

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ちゃんとした小説としての文(になっているといいなぁ)では初投稿となります。

色々と至らぬ点があると思いますが、よろしくお願いします。


一日目 夕方 俺と彼女の出会い

 いつも通りの日常。朝起きてご飯を食べ学校に行く。退屈な授業を聞き流し友人との多相のない話をし放課後には家に帰る。そんな退屈でぬるま湯に浸っているような日常を過ごしていた俺は自分の家であるマンションの外から自分の部屋の窓を凝視していた。

 

 もちろん理由はある。俺は至って普通の男子高校生だ、自分の部屋の窓を見ながら妄想するような特殊な嗜好は持っていないのであしからず。それで俺が窓を凝視している訳だが理由は二つある。一つは俺の家の電気が点いていること、俺の両親は同じ会社に勤めている会社員で俺とは別の場所で住んでいるので家には居ない、たまに帰ってくるときがあるがそのときはきちんと連絡をする報、連、相ができる会社員だ。

二つ目は俺の寝室である部屋の窓、その窓の隅に小さな人形みたいな物がちょこんと腰掛けているのだ。俺に人形を集める趣味が無ければ自分の部屋に人形を置いたこともない。なのに小さな可愛らしい人形が窓越しに見えるのだ。

 

 あそこに見覚えのない人形が置かれているという事は誰かが俺の部屋に入ったということだ。まあ、どっかの映画みたいに人形が凶器を持って独りでに動くことがあるのなら俺には人形に恨まれるような事をした覚えはないのでお引き取り願おう。しかしここは現実である、映画みたいなことにはなるはずが無いのでこの考えは捨てておこう。そうなると考えられることは一つ、俺の家に泥棒が入ったもしくは入っているという可能性だ。だがそうすると泥棒の意図がわからない。何故あんな場所に人形を置いているんだ?まさか見張り役なんて事はあるまい、見張りなら仲間かカメラでも置けばいいはずだ。なんで人形なんて置いているんだ?その理由をかれこれ十分程考えているが全くわからない。

 

 というか他の人たちから見たら俺はどう映っているんだ?マンションの外から自分の部屋の窓を凝視している高校生、これじゃあまるで自分の部屋の窓を見て妄想している変態じゃないか。俺は普通の高校生だ、断じてそんな嗜好は無い。

 

「警察の者ですけど。先ほどこちらのマンションの住民の方から通報がありました。何でも怪しげな高校生が部屋を覗こうとしているとのことです。失礼ですがあなたは何をしているのですか?」

 

「なるほど、そっちか」

 

 そっちかじゃねーよ俺!!何通報されちゃってんの?端から見て自分の部屋を見て妄想してるなんてわかる訳ねーだろ!!そりゃそうなるよなぁマンションを凝視している高校生なんて覗きをしているエロガキにしか映らないよな。警官がこっちを見てる何か言い訳しないと。

 

「あーっとえーっとお、俺はここのマンションに住んでいる者で自分の部屋に見慣れない物が置いてあるのを見てどうしてそんなものが置いてあるのか考えていただけです」

 

 緊張のしすぎでかなりの早口になったが聞き取れたか?

 

「なるほど、ではあなたの家の住所が書かれている証明書はありますか?」

 

 証明書?えっと免許や資格は持ってないし生徒手帳は家に置いてある、管理人さんの所へ行くしかないのか?

 

「えっと住所が書かれている物は持っていませんが、ここの管理人さんが俺の事を知っているのでその方が証明してくれると思います」

 

「では、その管理人の所へ案内してください」

 

「わかりました」

 

 心を落ち着け警察の人を案内する。

 

 管理人室に着き警察と管理人さんのやり取りを聞き流す。晩ご飯の献立が決まったところで話し合いが終わったようで警察の人は帰っていった。管理人さんに礼を言い、そのままエレベーターの中に入り五階のボタンを押す、動き出すときの浮遊感を体に感じ少しした後五階に着いた。ポケットから鍵を出しドアの鍵を開ける。警察の重圧から解放されたからか気分は軽く、エレベーターの中からずっとルパン三世のテーマを口ずさんでいた。

二つある鍵穴を両方とも開け家の中に入る。そのときに毎回思うのはこのマンションのセキュリティの高さだ。玄関や各階の廊下、エレベーターの中にも監視カメラがあり、ドアには鍵穴が二つさらにドアチェーンはチタン製という徹底ぶり。俺の親が選んだマンションだが少し豪華すぎないか?仕送りとは別に家賃を貰っているけど正直高いと思っている。まあ、毎月お金は十分すぎるほどに貰っているし、たまに会いに来る両親を見る限り、無理してお金を稼いでいる様子は無いので文句はない。元々両親に無理を言って一人暮らしをさせて貰っているので、文句を言おうものなら罰が中りそうだ。そんな事をつらつらと考えながら家に入り、靴を脱いで屈んだ所で俺の体は固まった。口ずさんでいた歌は丁度終わりの部分でルパンの名を二回呼ぶ所だった。

 

 何がいけなかったのか。家の前であれこれ悩まずにさっさと警察に相談すればよかったのか、もしくは管理人さんと警察の人が話している横で晩ご飯の献立なんか考えずに部屋にある人形のことでも相談しておけばよかったのか、はたまたルパン三世のテーマを口ずさんだのがいけなかったのか。俺の目の前には見覚えのない靴が綺麗に揃えられていた。忘れていたよ、泥棒のこと。しかもセキュリティの高いこのマンションに侵入するとはルパンみたいだな。助けて銭形警部。

 

 俺が現実逃避している間にも時間は進む。パタパタと廊下を歩く事が聞こえる。大して大きくない音なのにイヤになるほど耳に響いた。俺は固まったまま動くことが出来ず、黙って何者かがこっちに近づいてくるのを待つしかなかった。脳内では様々な憶測が飛び交い消えていく、思考がだんだんと悪い方へと進み、それに連れ冷や汗が浮かび息が乱れる。

この場所から逃げようと後ろ手にドアノブを握ったところで廊下とリビングを仕切るドアが音を立てて開いた。

 

 リビングにある窓から光が差し俺の目を焼く、泥棒の姿はぼんやりとしか見えずただ分かることは泥棒が女性だということだ。

 

「あなたがここの住人?」

 

 未だに姿がハッキリとしない女性が話しかけてきた。その声は透明感がありいつまでも聞いていたいと思える声だった。

 

 しばらく経ちようやく眼が光に馴れたのか少女の姿がハッキリと映し出される。

 

 少女は美しかった。西洋人形のような顔の造形や青いドレスを纏っているからか本の中から飛び出してきたかのような錯覚を覚える。幼く見える容姿は落ち着いた雰囲気と合わさってかわいいよりも綺麗といった言葉があてはまっていた。

 

 息をするのを忘れ、ただただ少女の姿を眺める。眼球は限界まで見開かれ美しき少女を鮮明に記憶しようと躍起になる。全身に鳥肌が立ち目の前の少女に圧倒されていた。

 

「聞いてるの?あなたはこの家の住人よね?」

 

 いつまでも固まったままの俺を不振に思ったのか若干眉を顰めて同じ質問をしてくる。

 

「お、おう。俺はこの部屋の住人だ」

 

 どもりながらも質問に答えると少女は居住まいを正した。

 

「まずは勝手に家に上がったことを謝罪するわ」

 

 そういって頭を下げる少女に俺は黙っているしかなかった。ていうかこの子泥棒じゃないのか?

 

「それで私が何故あなたの家に居るのかだけど……あなたはこの世界とは別に他の世界があることを信じられるかしら?」

 

「…………」

 

 この世界とは別の世界?何を言っているんだこの少女は

 

「まあ、いきなりこんな事を言っても信じられないでしょうけど本当なのよ。別の世界はこの世界で失われたもので溢れていて、その中に魔法があるの。私は魔法を操る魔法使いで私がこの世界に出ることになった原因も魔法にあるわ」

 

 一息で言った彼女はこちらの反応を伺うようにじっと見つめてくる。

 

「魔法なんてあるはずがないだろ。それで、あんたは何が目的でこの家に忍び込んだんだ?」

 

 俺が否定の言葉を言うと目の前の少女は少し息を吐きひょいっと腕を振った。

 

「言葉だけでは信じれないみたいだから、証拠を見せるわ」

 

 そう言った少女は後ろを振り返り飲み物を貰ってもいいかと聞いてきた。俺は反射的に頷き、直後目を見開いた。何故なら小さな二つの人形が扉を開けお茶とコップを持ってきたからである。人形達は少女と俺にそれぞれにコップを持たせお茶を注いでくる。

 

「…………」

 

「ありがとう」

 

 馬鹿みたいに呆ける俺とは裏腹に少女はふわりと微笑んだ。かわいい。

 

「んっ……こくっ……こくっ…………ふぅ」

 

 少女はコップを傾け中の液体を飲みこんでいく、陶磁器の様な白い色をした喉がお茶を燕下していく様に目が釘付けになっていた。正直に言おう人形が持ってきたお茶を飲む姿はとてもエロかった。

 

「さてと、これで信じた?」

 

 少女の言葉で我に帰り落ち着くためにお茶を飲む。一息吐くことで落ち着いた俺は今までの事を振り返り、詳しく話を聞く必要があると判断し少女を促した。

 

「なあ、詳しい話が聞きたい、リビングで話さないか?」

 

 それが俺と少女、アリス・マーガトロイドとの出会いだった。




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