人形使いと高校生   作:ツナマヨ

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 サブタイトルの標記?を少し変えました、何度もすいません。

4月17日 内容を少し変えました。アリスはだいぶ歳上→質問をはぐらかす。


五日目 朝 上海人形の変化

 凄まじく眠い。ベッドの上に寝転がったまま三十分以上が経っている。アリスはもう朝ごはんを作っているだろう時間帯で、俺もいつもなら起きてリビングでテレビを見ている時間だ。もうすぐご飯ができるだろう、そのことを思い出しても起きれない、このままでは学校に遅刻してしまうだろう、と自分を追い込んでみても体は反応せず、むしろだんだんと意識が遠くなってきた。眠る直前の感覚を感じ、まずいなぁと思うものの結局は睡魔に負けてしまい目を閉じた。

 

「まあ、いいか。おやすみ」

 

 小さく呟いた瞬間、意識が覚醒した。勢いよく体を起こし首をかしげて自問する。

 

 なんで今、唐突に目覚めたんだ?

 

 いくら頭をひねっても原因がわからない。まるでつながっていたものが、突然切れたような…………。奇妙な感覚が胸の中を支配する、その感覚が何なのか意識を胸の内側向けた時、アリスがドアを開けて入ってきた。

 

「あら、起きてるじゃない。ご飯、もうすぐ出来るわよ」

 

「ああ、分かった」

 

 返事をするとアリスはドアを閉め、歩いて行った。

 

 アリスが来たことでさっきまで感じていた奇妙な感覚が消えてしまい、モヤモヤとした感覚だけが残った。

 俺は何を感じていたんだろうかと思い返すこと数分、結局は分からずにアリスのノックの音で目が覚めたんだろと自己完結した。

 

「ご飯、できたわよ、早くきなさい」

 

 考え事をしているとアリスに呼ばれた。慌てて着替え、学校の用意を持ってリビングに行く。

 

「遅かったわね」

 

 ドアを開けカバンを置いた所で声をかけられた。これは多分起きるのがという意味だろう。

 

「逆にアリスが早くに起きていることが不思議だよ、昨日は遅かっただろ?寝るの」

 

「言ったでしょ、魔法使いは研究職だって。下手すれば一週間徹夜なんてこともあるくらいよ」

 

 話をしながら席に着く、傍から見れば打ち合せでもしてるのかと疑いたくなるであろう、同じタイミングで手を合わせた。

 

「「いただきます」」

 

「……………………」

 

「……………………」

 

 食事中はいつも静かである。アリスは受け答えはしてくれるが、基本的には自分から喋らない。俺も食事中は静かに食べるのが好きなので、あまり喋りかけない。なので必然的に静かになる。だが、そんな俺たちの視線は同じ場所を向いており、見つめる先には上海が踊っていた。いつの間にか覚えたダンスをテーブルの端で踊りだしたのがさっきの事だ。始めは俺とアリスの間をフヨフヨと浮かんでいたのだが、少し目を離した時にテーブルの端で、テレビで流れている踊りを踊り始めた。いつも見ている天気予報を見たいのだが、楽しそうに?踊っている姿を見ると、チャンネルを変えづらい。

 

 思考を釣り糸のように垂らしながら無言で上海ダンスを見ているのも辛くなってきたので、アリスに話しかける事にする。

 

「なあ、アリス」

 

「なに?」

 

「微笑ましいな」

 

「ええ、そうね」

 

 視線は上海に固定したままだ。

 

「なあ、アリス」

 

「……なに?」

 

「毎日続くのかな」

 

「あの子が飽きない限りね」

 

 上海がくるり回る。その足は宙に浮いており、今や踊っているというより舞っていた。

 

「なあアリス」

 

「…………なに?」

 

 返事までの間が長くなってきたが構わず質問を続ける。

 

「上海って人形だよな」

 

「ええ、まだ自律には至っていないはずよ」

 

 少し前から疑問に思っていた事だ。いくらなんでも人間に近すぎないか?

 

「そうね、今日は上海を見てみましょうか」

 

 自分の名前を呼ぶのが聞こえたのか、上海が首をかしげながら近寄ってきた。

 

「ごちそうさま」

 

 アリスは食器を持ちテーブルを離れた、それに伴う上海も俺の食器を持って行ってくれた。まあ、食器を洗うのは俺だから、持って行ってくれなくても良かったのだが、折角の行為に水を差すのも忍びないので、口には出さない。その代わりに感謝の気持ちを述べようと思う。

 

「ありがとうな上海」

 

――フリフリ

 

 アリスと一緒にリビングを出る所だった上海が振り返り、手を振るのを見てから席を立った。台所へ向かい食器を洗ってアリスたちに遅れること五分、俺もリビングを出た。

 

 自分の部屋に着き、家を出るまでの時間を何で潰すか迷った。最近はアリスの人形劇を見ているとちょうどいい時間だったが、今日はしないみたいなので時間が余っている。アリスが来るまでは何をしていただろうかと思い、記憶を探るが思い出せない。それだけアリスたちが印象的なのだろう。数分ほど何をするか考えるが思い付かなかったので、日記を昨日教わった魔法の復習も兼ねて読んでみようと思う。

 

 アリスは紅茶の入れ方には大分うるさかった。茶の葉の分量や湯の温度、紅茶を抽出する時間にカップへの注ぎ方など細かい部分まであれこれ言われた。ただ、アリスが言うにはこれでも基本中の基本らしい。本当は紅茶の季節や、紅茶の違いによる抽出時間の違いなど覚えることはたくさんあるみたいだ。

 とりあえずアリスに教わりながら入れた紅茶は、コンビニなどで売っている紅茶には勝るが、アリスのいれた紅茶には遠く及ばなかった。そう言うとアリスには年季が違うと言われた。

 そういえばアリスの年を知らないなと思い訪ねてみると、女性に年を聞くのは失礼な事だと、ありがたい助言を貰った。ただ、魔法使いには年齢の概念があまり無いらしい。それに疑問を持った俺が質問し、夕方にも行われた魔法講座が始まった。

 それによってアリスには捨食の魔法により、食事や睡眠などが必要ない事が分かった。捨食の魔法とは食事で得られるエネルギーなどを魔力で補う魔法らしく、それを会得したときに種族が人間から魔法使いに変わるのだと教わった。

 

それともう一つ捨虫の法というのもあるらしい。

これは魔法により成長を止めるもので、成長を止めるつまり寿命を無くす魔法である。

まあ、簡単な説明だったので詳しい事はわからない。

 

 アリスは捨虫の法を習得しているが、使用はしていないそうだ。だが、捨食の魔法を使い人間から魔法使いになったのだが、人間の時の感覚が残っており、未だに食事や睡眠をとっているみたいだ。

 気になる事を聞いたり、色々な事を教わっている内に時間が経ち、気づけば午前二時になっていたので、眠ることにする。

 

 ここまでが昨日書いた日記の内容だ。この前から毎日書いているが、自分でも何故日記を書き出したのか分からない。何故か書かないといけないと思ってしまい、学校の帰りに日記を買い、数日前から書き続けてるのである。まあ、特に書くのが煩わしいというわけでもなく、むしろ魔法の勉強の時に見返すと、教えられた時の状況や経緯が細かく書かれていて、勉強の助けになるので書き続けることにしている。

 

 ふと、思いついたので日記の裏表紙をめくり、最後のページに文字を書いておいた。アリスがいる限り毎日書くであろう日記に書かれた文字を見て、今更ながらに恥ずかしさがこみ上げてくる。だけどなんとなく消す気になれないので、鍵がついている机の引き出しに入れておく。机を買った時から使っていなかったので半分以上忘れていたが、今は感謝の念でいっぱいだ。アリスが勝手に入ってきて盗み見るなんてことはないと思うが、この家には上海がいるので油断は出来ない。もし上海を通してアリスが見てしまう、なんてことになったら目も当てられない。恥ずかしさでどうにかなってしまうだろう。鍵を自転車の鍵と同じ場所に着けポケットに入れる。これで見られる心配はなくなった。

 

 時計を見るとちょうどいい時間なので家を出ることにする。カバンを持って、部屋を出る。今日は弁当を作っていないので、リビングには向かわずそのまま玄関に進む。俺の部屋から右にリビングがあり、左に進むと途中でアリスの部屋を横切るので、声をかけておく。

 

「アリスー俺は学校に行ってくるからなー」

 

「行ってらっしゃい」

 

 俺の部屋とアリスの部屋の向かいにある部屋には、両親の部屋があるが今は誰も使っていないので週に何度か掃除をするだけになっている。

 

 玄関につき靴を履く。ドアを開け少し振り返るも、そこにアリスと上海の姿は無い。少し寂しさを覚えるが、ごまかすように声を張り上げた。

 

「行ってきます」




甘い話が書きたい、読んだだけで砂糖を吐くような。

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