人形使いと高校生   作:ツナマヨ

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ふぅ~難産だった。
やっぱり素人が独自設定なんて出すべきじゃなかったのか。


二日目 夜 アリスのパーフェクト魔法教室

 シチューを食べ終えノートとシャーペンを持ちアリスの部屋へと赴く。待ちに待ったアリス先生の魔法教室の時間だ。

 

「アリス、入ってもいいか?」

 

 アリスの部屋の前に立ちドアをノックする。中から入ってもいいとの返事が帰ってきたのでドアを開けて入った。

 

 アリスの部屋は人形が所狭しと並んでいて、一見女の子らしい部屋といったような印象を受けるが、よく見ると部屋の中にある人形一つ一つが精巧であり、完成度も高いので人形の専門店に入ったかのような印象を受ける。

 

 だが、アリスの部屋には二、三度入ったことがあるので、ある程度はこの雰囲気にもなれており、気後れするようなことはない。

 

「椅子と机を用意したから、そこに座って」

 

 言われた通り座る。アリスは本棚からいくつかの分厚い本を取り出した。

 

「まずは基本を教えるわ。魔法を使うには魔力と理解が必要なの、魔力は誰でも持っているけど量は少ないわ。たまに生まれながらにして魔力を多く持っている人もいるけど……あなたは少な目ね」

 

 少し落ち込む。

 

「理解は魔道書を読んだり、魔法使いに魔法の事を教えて貰ったりして、知識を深め理解する事よ」

 

 さっきアリスが使った魔法陣をそのまま書いてもだめなのか。教わったことをそのままノートに書いておく。それと少し気になったので聞いてみる。

 

「アリスが今朝言っていたマナはどういう物なんだ?」

 

「そうね。一般的に魔法を発動するときは自分の魔力であるオドと、世界に備わっている魔力、マナを組み合わせて使うの。マナはオドと比べられないほど多く、マナを上手く運用する事で大規模な呪文を使えるようになるわ」

 

「なるほど、マナの少ないこの世界では大きな魔法が使えないのか」

 

 アリスの説明は分かりやすく、俺みたいに事前知識が無くてもすんなりと理解する事が出来た。

 

「ええ、理解が早いのね」

 

「いや、アリスの説明が分かりやすいからだ」

 

 お世辞抜きでアリスの話は分かりやすい。きっと教師に向いているだろう。メガネを掛けたアリス……ありだな。

 

「コホン、魔法は詠唱や術式を使って発動させるんだけど、私が使うのは魔法陣を使う魔法よ。魔法陣を使った魔法は回路を組み上げて、そこに魔力を通すことで発動する事が出来るの。魔法陣を使った魔法の利点は予め用意できたり、複数の魔法陣を掛け合わせて効果を増幅させたり、上海みたいに魔法陣を組み込んで自立行動を取らせたりと多様性があるわ」

 

 アリスの咳払いで意識を戻す。

 

「勿論欠点もあるわ。ある程度魔法のことに詳しい者に魔法陣を見られると次に何をするのか見破られる事、それに魔法陣を組む時に邪魔されたりして形が崩れると全く別の魔法に変わってしまうこともあるわ。私が外の世界に出ることになった原因もこれよ」

 

「何があったんだ?」

 

 アリスが魔法陣の組上げをミスするとは考えられない。多分何かがあって失敗したんだろう。

 

「私が転移の魔法を使おうとしたときに、天狗が通り過ぎていき、その時の風のせいで魔法陣の形が崩れたの。風が凄くてあまり見えなかったけど、魔法陣の転移場所を描いていた所が崩れていたわ」

 

「そりゃ災難だったな」

 

「まだあるわよ。転移魔法を使おうとした場所が無縁塚で、昨日話したでしょ?紫の桜が咲く場所のこと。そこからどこかに転移する時に結界が揺らいで、外の世界に出てしまったという訳。多分霊夢が紫を呼ぶために揺らしたのよ、今度会ったら文句言ってやる」

 

「不運だな」

 

 顔が引きつって上手く笑えない。笑ってもいいのか分からないが。

 

「そう?地面の中とか石の中に出る可能性も有ったわよ。そう考えるとここに出たのは、ある意味幸運だったかもしれないわ。外の世界には前から興味があったし」

 

「*いしのなかにいる*」

 

「何か言った?」

 

 おおっと、危ない結構小さく呟いたのに。

 

「じゃあ話を戻すわね。一番やってはいけない事が魔法陣を間違えて書くことね。例えば魔法を発動させる向き、これを間違えて自分の方に発動させてしまうと…………言わなくてもわかるわね?」

 

 それは恥ずかしいな。自信満々に魔法を発動させる俺、そして吹っ飛ぶ、俺。死にたくなるな。

 

「魔法陣には一画一画に意味が込められていて、それを理解し、正しく組むことで魔法が発動するようになるわ」

 

 今までの事をノートに書き写す。そこから自分なりの解釈を加えて纏める。こういった作業は好きなので、ペンがどんどん進む。

 

「つまり魔法陣を使う魔法は、魔法陣の中に組む記号の意味を理解し、それを正しく組み立てて、魔力を通す。この三つの工程を踏んで魔法を発動させる、わかった?」

 

「ああ。一つ疑問があるんだが、魔法陣に魔力を流す時に、流す量を多くしたらどうなるんだ?威力が強くなったりするのか?」

 

 マナの量が少ないと魔法は発動しない。じゃあ逆はどうなんだ?

 

「…………あなた、魔法使いに向いてるかも」

 

「俺が?」

 

 俺って魔力が少ないんじゃなかったっけ。

 

「魔力自体は後から増やせるからあまり関係ないわ。私が向いてると思った理由は着眼点の良さよ。初めて聞くはずの法則を自分なりに解釈して考察を立てる、研究者の思考よ。魔法使いは総じて魔法というものを研究しているわ。あなたは目の付け所がいいし、あなたが魔法の事をもっと深く知れば面白い事になるかもしれないわね」

 

 ベタ褒めだ。正直恥ずかしいので話題をそらそう。

 

「褒めてくれるのはありがたいんだが、俺の質問に答えてくれ」

 

 どうだ?俺の精一杯の照れ隠しは。うまくいったか?

 

「照れなくてもいいのに」

 

 筒抜けでした。何故わかったんだ?

 

「ふふっ秘密」

 

 俺、声に出してねーよ!!

 

「顔に書いてるわよ。それで、魔力を多く注ぎとどうなるかだったかしら?限界量を超えれば魔法陣自体が破裂するわ。風船みたいなものよ、多すぎれば破裂するし少なすぎてもダメ。けど、限界ギリギリまで入れると威力が上がるわ。あなたの考えは的を得ているわ」

 

 なるほど、疑問も解けたところで、時間も寝る時間だし。

 

「今日はここまでにしましょうか」

 

 ちらりと時計を見てアリスの方を向く。それだけでわかったようでアリスは授業の終わりを告げた。

 

「初心者用の魔道書を貸してあげるから読んでおきなさい」

 

 アリスは授業が始まる前に用意していた本を差し出してくる。俺はそれを受け取りパラパラと捲った。

 

「…………英語、読めねーよ」

 

「辞書くらいあるでしょそれを使って読みなさい。これは宿題よ」

 

 アリス先生は結構スパルタだった。いきなりこれは難しすぎないか?

 

「頑張りなさい」

 

 項垂れる俺といい笑顔を浮かべるアリス。もういいや。

 

「わかった、やってみる。お休み」

 

「ええ、おやすみ」

 

 二日目の夜はこうして更けていった。




サブタイは此しか思い浮かびませんでした。

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