人形使いと高校生   作:ツナマヨ

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今回R-15が入るかもしれません。
作者には基準がいまいち解らないので、前書きでの忠告にしておきます。


三日目 夜 彼女の意外な一面

「「ごちそうさま」」

 

 ケーキと紅茶を存分に堪能し、十分すぎる程の満足感を得てお茶会は終了した。安堵するような、紅茶をもっと楽しんでいたかったような、複雑な気持ちである。またあの紅茶を飲みたい、そう思った俺はアリスに頼むことにした。

 

「なあ、アリス」

 

「なに?」

 

 そっけないような返し方だが、アリスと話すときはいつもこのような話し方なので、もう慣れたものだ。初めの頃は随分と気まずさを感じていた。喋りかけるがそっけない返事を返される、その度に黙る俺をどう思ったかは知らないが、アリスから謝られこれが自分の素の話し方なので、気にしないでいいと言われ、今では自然に話せるようになった。

 

「また今度ケーキを買ってくるから、紅茶を淹れてくれないか?」

 

「別にいいわよ。それにあなたが頼めば、いつでも淹れてあげるわよ」

 

 その言葉に内心飛び上がる俺。

 

「けど」

 

「なんだ?」

 

「あなたの紅茶も飲んでみたいわ」

 

「俺は上手く淹れれないぞ」

 

 親父に紅茶を上手に淹れるのには、幾つか手順を踏む必要があると聞かされていたが、その具体的な手順は全く知らない。

 

「別にいいわよ、たまには他の人が淹れた紅茶を、飲みたくなる時があるの。それに淹れ方なら教えてあげるわ」

 

「それならいいけど」

 

「じゃあ、また今度お茶をしましょう」

 

「ああ、よろしく。それと、食器は俺が洗っておくから」

 

「いいの?」

 

 アリスが食器を手に立ち上がろうとするのを止め、持っている食器を奪い取る。そのまま台所に進む俺の背後から、聞こえたアリスの疑問に片手を上げる事で答え食器を洗い始める。

 

「じゃあ私は部屋に戻るわね」

 

「おう」

 

 リビングのドアが閉まる音がし、水の音だけが響き渡る。静かな空間で黙々と食器を洗い、わずか数分で洗い終わった。

 

「ふぅ、俺も部屋に戻るか」

 

 タオルで濡れた手を拭き、自分の部屋に戻る。する事も無いので昨日、宿題として出された魔道書を辞書を片手に読み進める。魔法の勉強は面白く、最初乗り気ではなかった英語の解読も、今では楽しみながら読み進めることができている。

 

「ふぅ、流石に疲れるな」

 

 ただ慣れない作業なので、集中力が続かない。四十分ほどで集中力が途切れるので、そこからは別の事をするようにしている。今日はこの前買った、映画を見ることにする。

 

 俺の部屋にはテレビがあり、その下のテレビ台の中には、俺が買って溜めている映画がいくつかある。その中のアクション映画を見ることにした。

 

「確か奥の方にあったよな」

 

ーーカタン

 

 俺がテレビ台の引き出しに手を掛けると、中から小さなもの音が聞こえた。

 

「……………………」

 

 恐怖のあまり声を失う俺。実は怖いものが苦手な俺は、この中にあるものを封印していた。その正体は親が誕生日に買ってきてくれた映画だ。内容は曖昧だがその映画が滅茶苦茶怖かった事を覚えている。確かその映画を見た後は、一週間ほど怖くて眠れず、倒れたことがある。その時から捨てよう捨てようと思うが、捨てたら呪われそうなので、捨てることが出来ないでいるのが現状だ。

 

 震える足で少しづつ後退していく。ジリジリと肌を焦がすような緊張感に包まれながら、ドアの下までたどり着いた。瞬間

 

ーーコンコン

 

「入ってもいいかしら?」

 

ダッ!! ドゴンッ!!!「痛ってぇ!!!」

 

 即座に右斜め前方に転がりベッドに激突した。

 

「大丈夫?なにかすごい音がしたのだけど……」

 

 体制と服を整え、ずれたベッドの位置を直す。これである程度の体裁を保てると思うので、入ってきて貰う事にする。

 

「大丈夫だ。問題ない」

 

 それにしてもアリスはなんの用があって、俺の部屋に来たのだろうか?

 

「入るわよ、ねえ此処に上h」

 

ーーガタンっ

 

 先ほどの音より少し大きな音が響く。

 

 忘れてた。この部屋には今幽霊がいることを。

 

「気を付けろアリス!!あの引き出しの中に何かいるぞ!!!!」

 

 アリスを後ろに庇い声を張り上げる。

 

「……………………」

 

「……………………」

 

 静まり返る室内。その不気味な静寂を破る音は、俺の後ろから聞こえてきた。

 

「プッ……フフッ……フッ……んぅ……………………プッ……フフフッ」

 

 アリスの必死に押し殺そうとして、盛大に失敗している笑い声を聞き俺はあっけにとられた。

 

「ちょっ……と、フフフッ…………待って……フフッ、頂戴」

 

 それから数分間アリスは笑っていた。緊張感やら恐怖心やらが全部吹き飛んだ俺が、リビングから持ってきたお茶を飲むことで、ようやく笑いが収まったアリスがこちらを向く。

 

「…………フフッ」

 

「もういいよ!!!」

 

 

 

 

 

「ごめんなさい。少し笑いすぎたわ」

 

 あれで少し?

 

「まあ、いい。それでなんの用があってアリスは俺の部屋に来たんだ?」

 

 頭の中では検討がついているが一応聞いてみる。

 

「ええ、上海を連れ戻しに」

 

 やっぱりか。冷静になって考えてみると、それしか可能性がない。魔法講座かとも思ったが、朝に魔道書の進行具合を聞かれたときに、まだ読んでないと答えたから除外、残るはお茶会の途中から姿が見えなかった上海の事だろうと予想はつく。

 

「なんでこんなところに入っているんだよ?」

 

 引き出しを開け上海を引っ張り出す。上海は俺の手から離れ、アリスの腕にくっついた。

 

「ちょっと待ってて、今から上海が見たものを読み取るから。……説明するわね。上海はあなたの部屋のテレビ台の、真ん前に浮かんでいたわ。何を思ったのか、上海は引き出しを開けてその中に入り込むと、下に敷かれていたズタズタになった死体の絵を見て、慌てて奥に飛んで逃げだしたわ」

 

「それで引き出しの奥の壁にぶつかって閉じ込められたのか。ていうか上海はそんなことができるのか?」

 

 ちらりと上海を見ると、エヘンと胸を張っていた。

 

「当たり前よ。この子は特別なの」

 

 心なしかアリスも誇らしげだ。

 

ーークイクイッ

 

 腕を惹かれたのでそちらを見る。いつの間にか横に来ていた上海が、引き出しの中を指している。

 

「何か見たいのか?」

 

ーーコクコク

 

「どれが見たいんだ?」

 

 聞いてから後悔した。好奇心旺盛で、本当に人形かどうかも疑わしい上海が選ぶものなんて限られている。ああ見ろ、やっぱりあの映画だ。

 

「本当に見るのか?」

 

ーーコクコク

 

 ちくしょう。

 

 

 

 

 

 晩御飯を食べ終えてお風呂に入り、アリスがお風呂から出て来た頃に、その時間はやって来た。アリスがいる手前、怖いからなどという理由で断れない俺は、せめてアリスの怖がる様子を堪能しようという、なんともトチ狂った考えのもと、部屋の電気を消した万全の状態で、映画のディスクをプレイヤーにセットしていた。

 

 今は後悔している。怖いめちゃくちゃ怖い。今すぐにでも気絶したい。気を紛らわせるために周りを見てみると、上海がアリスの腕にくっつき小刻みに揺れていた。それを見て少し緊張が紛れた。

 

 アリスはどうなのかと思い見てみた。すると、なんとも落ち着き払っていた。画面の中で小さな女の子の霊が登場する度、ビクッと体を跳ね上げる俺と上海とは対照的に、女の子の霊についてよくわからない考察を立てている。よくわからないが悔しい。

 

 そんなこんなで映画も終盤に差し掛かった頃。上海が俺とアリスを手招きで呼び寄せた。なんだ?と思いながら近くに寄った俺とアリスの間に上海が座り込み、小さな両手で俺とアリスの腕を取った。

 

 なんとなくアリスの方へ顔を向け、アリスも見ていたので、苦笑し合う。

 

ーー仕方の無い子だな。

 

ーーええ、本当にそうね。

 

 などと聞こえてきそうな、ほんわかとした雰囲気だった。

 

 だが、それも長く続かない。物語の終盤とはつまりクライマックスだ。古今東西、どの映画でもクライマックスは盛り上がるものである。それがたとえ悲鳴と絶叫が響き渡り、死肉が踊るホラー映画でも。

 

 先ほどのほんわかした空気も消え失せ。阿鼻叫喚の地獄絵図になっている画面の中とは対照的に、リビングは静寂に包まれている。隣からも息を呑む音が聞こえてきた。どうやらさすがのアリスも緊張しているみたいだ。だが、俺は余裕である。なぜなら思い出したからだ。このあとの展開や、少女の霊がどうなるのかも、この映画は最後には救われるストーリーだったはずだ。ハッピーエンドで終わると分かっている、ホラー映画などもう怖くない。

 

 だから、テレビから響き渡る悲鳴に驚いたアリスが。膝の上に置いている俺の手を握ってきたときも、ニヤニヤとした顔で優越感に浸っていた。いつもの俺なら慌てふためく所だが、余裕を持っている俺には効果がなかった。

 

 映画が終わり、少女の悪霊は成仏した。今はエンドロールが流れている。

 

「結構怖かったな?」

 

 俺の手の上に乗せられたアリスの手を見て、ニヤニヤしながら話しかける。それを見てアリスの顔は一瞬で紅色に染まった。

 

「ちっ!!違うのよ!!!これはえーとっ、とっとにかく違うんだから!!!」

 

「わかったわかった」

 

 ニヤニヤしながら適当に返事を返す。

 

「もうっ!!私は寝るわ!!行くわよ上海」

 

 勝った。

 

 少し大きめの足音を立てて去っていくアリスを最後まで見終えてから。ディスクを出そうとテレビに近づきしゃがみこんだ。

 

『ユルサナインダカラ』

 

「えっ?」

 

 耳元でついさっき聞いた少女の声が聞こえた。顔を上げると顔中に血を付けた少女の顔が俺の視界を埋め尽くしていた。画面に映っていた幸せになったはずの家族の姿は何処にも無くなっている。

 

 そのあとの記憶は無い。ただ、気がついたら朝になっていた。




テストが終わったので、投稿が遅れると思います。
少なくとも今までみたいな更新速度は出せません。
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