この素晴らしい世界に黒旗を!   作:ダサシン

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1735年12月3日夜、イギリス――――

かつてカリブ最強の海賊と謳われたアサシン、
エドワード・ジェームズ・ケンウェイ

彼は仇敵テンプル騎士の謀略によって自身の邸宅で命を落とし、永遠の眠りにつく…はずだった。



Sequence1 memory01 終わりとはじまり

気付けば椅子に腰掛けていた。

胸に突き刺さっていた剣は陰も形もなく、刺された痛みや戦いの疲れもない。

しばらく呆然としていると、不意に語りかけられる。

 

「エドワード・ジェームズ・ケンウェイ様、あなたはこの世界での人生を終えました。」

 

優しげな声のした方へ顔を向けると、大きな翼を広げた天使が佇んでいる。

 

「俺は悪党だぞ?天使様はお呼びじゃない。」

 

「死者の導き手、女神イリアと申します。」

 

慈愛に溢れた笑顔を若干ひきつらせながら答えた彼女は、どうやら本物の女神様らしい。

 

「女神ねぇ… 。ヘイザム、あぁ、俺の息子はどうなった?逃げ延びたか?」

 

「息子さんはご無事です。うまく追っ手をまき、あなたの仲間と合流して生き延びました。

 

「そうか… 。」

 

最期の抵抗は決して無駄ではなかった、と安堵するエドワード。

 

「俺はどうなるんだ?天国に行けるとは思っちゃ居ないが」

 

「あなたは海賊として多くの命を奪いました。アサシンとして、またテンプル騎士として多くの者を救った実績もありますが、残念ながら天界規定に基づき地獄行きとなります。」

 

スペイン軍用ガレオンの甲板すら単騎で殲滅したという伝説の海賊、それこそがケンウェイ船長なのだ。彼が天国に行けるというのなら、きっと地獄行きになる者など居ないだろう。

 

「…まぁいいさ。地獄でも一旗揚げてやる。」

 

「それはご遠慮願いたいのですが…」

 

ひきつっていた笑顔は苦虫を噛み潰したような表情になっている。

 

―――― くだらぬ 働き手は我らに仕え続けるのだ

 

微妙な空気に包まれていた女神イリアの間に声がとどろいた。

 

「干渉!?」

 

―――― 我らの眷属たるアサシン 異界に赴き失われた秘宝を集めよ

 

青い影がエドワードの眼前に現れ、ゆっくりと宙へ浮かんでいく。

 

「どちらさまでしょうか!?上位の神格とお見受けしますが、咎人の転生は天界規定で禁止されています!」

 

「近頃は女神様ですら上のご意向と規定との間で板挟みなのか。全く生きづらくなったもんだ。」

 

「茶化さないでください!ともかくこの方の転生は規定によって…えぇ!?」

 

唐突に魔法陣が現れ、エドワードが宙に浮く。

 

―――― デズモンドの代わりが見つかった今 我が力を取り戻すことが血脈たる者の使命

 

「勝手に転生魔法を起動しないでください!ちょっと!待って!咎人!この人咎人!ねぇ!」

 

―――― アサシンよ 異界にて再び羽ばたくがよい

 

「こっちの意見は受け付けない感じだな。羽ばたくのは結構だが、せめて藁束くらいは置いといてくれよ?」

 

魔法陣によって浮遊させられながらも、目の前に浮かぶに青い影(上位神)に文句を付けると、空間が白い輝きに満たされた。

 

エドワードは消え、青い影も消え、女神イリアの間には、死んだ魚のような目をした女神イリアだけが残される。

 

「なんなのよ…勝手に現れて勝手に違反して勝手に消えないでよ…」

 

沈み込む女神であったがすぐに気を持ち直す。

 

「…ともかくエリス先輩に伝えなきゃ!」

 

 

 

まばゆいばかりの光が消えると、エドワードは見たこともない街の通りに立っていた。

 

「こいつは…懐かしいな。」

 

青と白を基調とした、フード付きのローブ。

カリブで裏切者(元アサシン)、ダンカン・ウォルポールから奪って以来、イギリスに帰るまでの間身に纏っていたエドワードのお気に入りだ。

 

「リストブレードに、煙幕5つ、ロープダート3本か。神様ってやつは気が利くのか利かないのか分からんな。」

 

せめて死ぬ寸前に振るっていたサーベルくらい持ってきたかった、と思いつつ近くの建物によじ登る。

 

「まずは、酒場だ」

 

屋根の上で「鷹の目」を発動する。

 

一通り辺りを見回して酒場(冒険者ギルド)を確認すると藁束めがけて飛び降り、何事もなかったかのように歩き出す。

 

ハバナくらいの規模であろうか、石畳の街並みを進むと足音が小気味よく響く。

 

「らっしゃい!らっしゃい!今朝とれたてのサンマはいらんかね!」

 

「新鮮なカエルもも肉大安売りだよ!いらっしゃい!」

 

「すると、あら不思議こちらのバナナが跡形もなく…」

 

活気にあふれた市を横目にゆけば、子供から老人まで出歩いている。

 

「暮らすにはいい街だ。」

 

この街はナッソー当たりとは比べ物にならないほど治安がいいらしい。

衛兵が少ないうえに、のんきに欠伸すらしている。

 

「くたばれェ邪教徒ォ!」

 

教会らしき建物のあたりから怒号が響く。

見やれば、修道服に身を包んだ中年が教会の壁に卵を投げつけている。

宗教戦争でも始まったのだろうか。

立ち止まり人々を見渡すが、特に慌てた様子はない。

 

「アクシズ教!アクシズ教!アクシズ教をよろしくおねがいします!」

 

卵を投げつけていた中年が何事か叫びながら走って逃げていく。

 

「アクシズ教徒はいつも通りだなぁ。」

「あれで信者が増えると思うのかねぇ?」

 

この街では宗教戦争がいつものことらしい。

 

「…まぁナッソーよりは良い街だ。」

 

街の評価を若干改めたエドワードは、酒場へと再び足を進めた。

 

道中素寒貧であることに気付いたエドワードは、道行く人に片っ端からスリを働いた。

 

 

 

 

 




<エドワード・J・ケンウェイ>:主人公。イギリスのウェールズ出身。海賊稼業に明け暮れていたが、アサシンの大義に触れてからは次第に人々のために働くようになった。
海賊を廃業してからはイギリスに帰り、アサシンでありながらテンプル騎士でもあるという二重生活を送っていたが、テンプル騎士側の策略で命を落とす。享年42。

<女神イリア>:オリキャラ。アサシンクリードの世界において、イギリスの死者を担当している。エリスの後輩で、融通が利かず、想定外の事態に弱い。ほぼ出番はない。

<青い影>:かつて来たりし者。人類の創造主で、細かいことは謎に包まれている。
曰く神ではないらしい。
今回干渉してきたのはジュノー…のつもりです。

<ダンカン・ウォルポール>:テンプル騎士側に寝返った元アサシン。
アサシンクリード4冒頭で戦うことになる。
彼の叉従兄はイギリス初の首相らしい。享年36。

<鷹の目>:アサシンの持つ特殊能力。人、物、場所の情報を正確に見極めることができるある種のチート。多くのアサシンは修行の末に習得し、日々研鑽していくが、エドワードは只のいち船乗り時代から使いこなしていた。

<スリ>:アサシンクリードシリーズの序盤の金策。アサシンクリード4ではフルシンクロ目標に「テンプル騎士3名にスリを働く」といものがある。貪欲ですね船長。
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