申し訳ない。
エドワードがアクセルに降り立ったころ、天界エリスの間では血相を変えた後輩からの連絡に何事か、と応対する女神エリスの姿があった。
「えぇ!?上位の神格が介入!?」
「はい…転生の魔法陣を勝手に起動されて、咎人を一人そちらに…すみませんエリス先輩」
「それで元海賊のアサシンで貴族になったテンプル騎士なんてレア咎人がこっちに…」
「れ、レア咎人?」
「ん”ん”っ!!上位の神格が介入してきたんならイリアが謝ること無いよ!!こっちで対処してみるから大丈夫!資料送ってくれてありがと!ぜんぜん問題ないから気にしないでね!!」
早口でまくし立て、かなり一方的に会話を終了させる女神エリス。
「最後は人々の為にって改心したみたいだし、話せば分かる類かな…よっし、いってみよう!」
女神エリス。国教としてまつられる慈愛にあふれた幸運の女神。
しかしその根っこは、
◆
鷹の目のおかげで難なく
「なんだこれは、何て書いてあるんだ…?」
[冒険者ギルド]と書かれた看板を前に立ち尽くすエドワード。
どういう訳かアルファベットがさっぱり判らない。
「神様って奴は、気が利くのか利かないのかまるでわからん…」
苛立ちを覚えるエドワードだったが、懐かしい喧噪に心を惹かれたのか、ついには扉をあけた。
入るや否や金髪の青年に因縁をフッ掛けられたエドワード。
カリブの酒場を思い出し感傷に浸りながらも、したたかに殴り倒してカウンターへと向かう。
「高名な冒険者だったりするのかい?ダストを1撃でノしちまうなんて」
「昔を思い出してついぶっ飛ばしちまったが、マズかったか?」
「自業自得さ、誰も気にしちゃいないよ…で、ご注文は?」
「ウィスキーをダブルで寄越してくれ。モルトなら何でもいい。」
「こんな朝っぱらからかい?」
「ウィスキ―は命の水だぞ、乾いてちゃ働けない。それと…いくつか聞きたいことがある。」
グラスの中の琥珀色を豪快に飲み干すと、エドワードは「冒険者」について尋ねた。
「もう一悶着起きちゃってるよ…。話せば分かる、のかなぁ…?」
銀髪でペッタンコな盗賊の少女は登録窓口に向かうエドワードと未だノビているダストとを見比べながら呟いた。
「おお!前衛職系のステータスが高いですね!特に生命力と器用度と敏捷性がずば抜けてます!これなら上級職のクルセイダーやルーンナイトも選択できますよ!」
「ふーむ…」
新米冒険者向けのパンフレットを見つめながら唸るエドワード。
「そのうえ固有スキルまで持ってるんですね!凄いです!」
「ふーむ…(字がさっぱり読めん…)」
案内嬢の語る内容とは全く別の所で悩むエドワード。
「それにアサシンという聞いたことのない職業も…」
「それにしよう。」
パンフレットを懐にしまいながらそう告げる。
「えっと…アサシンですか?一応上級職のようですが情報が皆無ですし、他の前衛職にしたほうが…」
「あいにく騎士ってやつが嫌いでね。」
「…かしこまりました。
冒険者ギルドへようこそ!エドワード・ジェームズ・ケンウェイ様!スタッフ一同今後の活躍を期待しています!」
かくして無事登録を終えたエドワード。冒険者カードを渡されるも、やはり文字が読めない。
目下の問題は2つ。
字が読めないことと、得物がないこと。
剣については(スリ取った)金で解決できる。
しかし文字はどうしたものか…
「そこの初心者クン、なにやらお困りのご様子だね!」
「結構だ、坊や。」
「坊や!?」
坊や呼ばわりにショックを受けて固まる盗賊少女の横を抜け、エドワードはギルドを後にする。
「宿屋、雑貨屋、魔法店…ほとんどの店が大通りだな。」
登録窓口に置いてあったパンフレットにはアクセルの地図が描かれており、店の名前も記されていた。
「アドウェール工房…武具店か。」
かつての相棒と同じ名を掲げる武具店、街はずれの店ではあるが、エドワードが目的地と定めるには十分だった。
◆
エドワードが出て行った後、十数秒遅れで再起動する盗賊少女。
「私は女盗賊のクリスだよ!…ってもう居ないし!しかも財布スられたぁ!」
幸運とはいったい何なのか、哀れな女神の悲痛な叫びがこだまする。
そんなことは気にもせず、鼻歌交じりに歩いていくエドワード。
その手には"坊や"の財布が握られていた。
<アドウェール>:アサシンクリード4の世界にてケンウェイの副官を務めた滅茶苦茶強い黒人。
DLCでは主人公を務め、続編たるローグでは敵役で出演した。
名前の発音はどう聞いてもアドワレだが、公式日本語版準拠でアドウェールと表記する。