上はどこなのか、下はどちらなのか、ここはどこなのか。
時間さえ不確かで、ここが広いのかどうかも分からない暗黒の空間に“リュウ”は存在していた。
辺りを見渡しても代わり映えの無い
……目。そういえばと身体を確認しようと胸に手を当てるも、そこに胸はなくあるべき身体も無かった。
───そして、リュウはこの場所を知っていた。
ナナと初めてLinkをした際に訪れた精神世界のような空間。
そして、ふと至った。
だとしたら、ここは
ナナが居た白の世界を仮にナナの精神世界と仮定するなら、ここはリュウ自身の精神世界ということなのだろうか。
だとするなら、──
思い
その証拠に、前回来たときは幼い頃の記憶が辛うじて
「…………? ……あ、れ? 覚えてる……、覚えてるぞ? 俺……」
幼少の頃エイジと出会って次にコトハと知り合って、ガンプラで仲良くなるうちにコトハが
全部、全部覚えている……!?
あれだけ意識に
『どうか、彼女の事を責めないで欲しい』
「────ッッ!!? 誰だッ!!」
転瞬、背後から聞こえた声に振り返る。
『久し振り、とだけ伝えておこう。……大きくなったな、リュウ』
見渡していた黒の世界がいつの間にか白の世界へと変わっていた。
白の世界と言ってもナナが居た場所ではなく、広大な円状の世界の背景に様々な映像が映し出されている。草原で戦闘をするガンプラや模型を組み立てている子供、それら膨大な映像の切り取りの中に幼い頃のリュウを見付けた。
その、空間の中心。
「アン……タ、は?」
男が立っていた。
白のフードを深々と被った、長身の男が。
『フードコートでコトハちゃんに言われただろ? “ヒーロー”って。それでピンと来ないのなら俺の事は思い出せない』
声は知っている。知っているが思い出せない。
全てを包み込んでくれる優しい声も、後ろを付いていきたくなる大きな姿も、全て知っている筈なのに思い出す事が出来ない。
『時間が無いから手短に行くぞ。リュウ、お前の肉体は今確実に死んでいる』
「そ、────そうだッ!! Link中に撃墜されたんだ、意識がロストして死ぬって言われたのに!」
『それを、俺のおまじないでどうにかする。あと、あれだ。今は記憶が全部戻っているけど意識が返ったらまた忘れてる状態になる。だからここでの事は記憶に残らない』
「は──────?」
『記憶も1つだけ返してやる。そうだな……、多分これが一番
Linkの制約である死を取り除いて、それでここでの記憶は残らない──?
加えて何らかの記憶は戻るらしいが、何よりも気になるのがこの
『んじゃま、状況も理解出来ていないと思うがそろそろ時間だ。────ここで言っても仕方の無い事だが、良いか? リュウ』
『今のお前が精神的に酷い状況なのは、あの娘が
声が遠ざかる。
男を中心として世界が収束していくように線となり、白の世界が色を強める。
轟音が耳をつんざき耳を抑える中、男の声だけはリュウの頭に響き続けた。
『リュウっ! ──────あの娘を、……ナナを頼んだぞ!!』
その声を最後に、まるで映像が終わるを告げる際一瞬画面に白が
再び暗黒がリュウの意識を覆い尽くした。