開けた視界へ溶け入るよう
そんな
遥か遠くの
壊れぬよう指先をそっと少女の頬へ触れ、
────次の瞬間、水を打ったよう背後を振り返る。
「やはり君の身体と君のエリゴス、僕に良く馴染む素晴らしい代物だね」
「……、妹はこれで解放されるのよね?」
「そう焦らなくでくれよ。君に知らせたくって
影で顔が半分隠れた少年が愉快そうに笑みを貼り付けながらその──
「ついさっき
そう言ってタブレット型の端末を投げ渡して、手にして見れば成人していない少年の写真、それと使用ガンプラや年齢等が表示されていた。
特筆する事の無い平凡な少年。
これが何だと目を細めると、喉の奥で
「……嫌がらせのつもりなら意味は無い。妹を救うためなら私は何だってする。お前に身体を明け渡して、電脳世界でファイターを狩ることに今更罪悪感なんて────えっ?」
言いながら、女性の声が詰まる。
リュウ・タチバナと表示された画面の右上、資料を撮影したであろう画像のそこに赤々と判子が押されている事に気付いた。
──────死亡。
そう、押された資料。
「ごめんごめん、そういえば話してなかったね。今回のLinkで相手をしたのは僕らと
「────ッッ!! そんな話ッ、一言も聞いていないっ! え、あ。……じゃあ、この少年は……?」
いつの間にか耳元へ口を寄せていた少年から逃れるよう
……そもそも電脳世界で負けて現実世界で死ぬという話が
コイツの、
「リュウ・タチバナ……、僕の
「話が違うッッ! あのLinkが最後だと、お前はそう私に言った筈だ!! 妹を治せッッ! 今、ここでっっ!!」
女性が少年へ飛び掛かる形で詰め寄り、激情に任せたまま
口の形だけが別の生き物のよう、ぐにゃりと曲がり。
「君は僕にすがるしか無かった。その君を僕は利用したんだ────10年以上も言うことを聞いてくれてありがとう」
少年の瞳が、大きく見開かれた。
直後、
「妹が起きる……? 改めて告げよう────アレは嘘だよ。目覚める訳ないじゃないか、そこの肉塊は僕とLinkしたんだから。まったく、最後まで抵抗した面倒な人間だったよ」
振りかぶり、女性の
抵抗も無い肌に突き刺さる拳のまま女性は倒れ、鼻から垂れた血が病室の床に一筋と伸びた。
「
横目で今しがた倒れた女性を流し、少年の瞳が月を見る。
片耳に────丁度アウターギアが掛かる位置へ手をあてがい呟くように、念じるように小さく言葉を紡いだ。
月夜しか見ていない室内へ、そっと
「起きろ──────、Nitoro:Nanoparticle」
内に存在する
数秒。しかし言葉は返ってこず、少年のその深紅の瞳を1度
「反応が無い…………? おかしいな、確かにコクピットを貫いて殺した筈だが」
思考するのは一瞬。
それから床に転がるタブレットを乱暴な手付きで操作し、画面が切り替わる。
ノイズが薄く走り、やがて
『何の用かしら』
「僕の中にNitoro:Nanoparticleの反応が無い、すぐに調べて報告しろ」
『調べるまでもないわ。実験は終了、貴方はリュウ・タチバナから吸収したはずよ。…………貴方こそちゃんと上手く起動できていないんじゃないかしら?』
「余り思い上がらない方が良いよ、僕がキミに眼を使わないのは温情に過ぎない。
『………………』
刺すような空気が部屋に満ちる。
しばらくして
「僕はキミには感謝しているんだ。どうかこの
未だ少年を睨むリホの、
突如、暗転する画面からの異変によって僅かに歪む。
「何が起きた」
『さっきの実験へ電力を使いすぎたようね。主電力が一瞬だけ落ちただけよ、すぐに回復するわ」