ガンダムビルドアウターズ   作:ク ル ル

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5章20話『同じ景色を見せたくて』

「アンタが、俺達をここへ呼んだのか?」

 

 リュウ自身確かめながら男の目を見て問いただす。

 この世界が3人を除いて停止した現状、事情を知っているのは明らかにこの男だ。

 

「それにアンタ、ナナの事も知っているようだし……何者なんだよ」

 

 前回電脳世界(アウター)で男と離れる際、ナナを頼んだと、そう言った。

 リュウの過去を知りナナの事情も把握して、目の前の男が何者なのかリュウには図りかねて、ただじっと男の黒瞳を見る。

 少年の剣幕を笑みを浮かべながら黙って受け入れる男はやがて腕を組んで重く閉じた口を開いた。

 

「……で、どうだ。思い出したか」

 

「あぁ。思い出したよ。俺はアンタからガンプラバトルを学んで、あの連中を店で倒した。…………その場にアンタは来なかった」

 

 記憶の続きは、この後教えられたガンプラバトルの基本を習得して店に居た集団を倒し、以前から知っていた被害者を集めるという結果に落ち着く。

 全て覚えている。仲間を募っている最中にコトハとエイジに出会って意気投合したことも。

 ただ()()()()()()()()()()()()()()()()

 記憶から男が消えたリュウは根拠の無い使命感に駆られて仲間を集め、幼い少年は一躍町のヒーローと呼ばれるようになった。

 

「俺の記憶に、何か細工をしたのか? アンタの部分だけ切り取られたように今まで思い出せなかったんだ」

 

「少しばかり弄らせて貰った。俺は本来干渉してはいけない側の人間だ。この世界でいうリュウやナナちゃんのような存在なのさ。だからリュウと出会ったこの日自体が俺にとっては事故だった」

 

「良くわかんねぇけど。……だったら、なんで俺に関わったんだアンタ」

 

「……自分の大好きなもんが原因でよ、子供が酷い目にあってる場面に出くわして手を出さない程俺は大人じゃないんだよ。だからお前がある程度力が付いたタイミングで()()()()()()()()()()()()

 

 男から与えられた情報の多さにリュウが整理の為に黙り込む。そのタイミングで傍らの少女が1歩男へと歩み寄った。

 

「私はあなたの事を知らないですが、どういうご関係なのでしょうか。あなたと私は」

 

「そりゃ……!」

 

 言い掛けて顔を背ける。

 愁眉を寄せて、数度頭を掻いた後に男はぼそりと呟いた。

 

「申し訳ないが、今は言えない。……間違っても俺の子供じゃないから安心してくれ。ただまぁ、親戚のおじさんくらいに思ってくれたら嬉しい」

 

「親戚の、おじさん……」

 

「ハッハッハ! それでいい。ここにリュウが来れたのは間違いなくナナちゃんのお陰だ。ナナちゃんとリュウの事はずっと見ていた。2人の事情も当事者じゃないが把握しているつもりだ。その上で言いたい。……良く辿り着いてくれた、礼を言う」

 

 急に腰を折る男にリュウは言い返す言葉がない。

 そもそもの話、この男が何者なのかすら把握しておらず未だに警戒が胸から解かれない。

 

「……1つ聞きたい。アンタは、俺達の味方なのか?」

 

「俺が悪役演じるならこんな格好で現れないだろ」

 

 気さくに歯を見せて笑い男が少年と相対する。

 ただ、瞳の力は笑みに反して強く、リュウの意思を量っているように深い。

 

「リュウ、お前はまだ初めの質問に答えていない。……()()()()()()。俺はお前にこう言ったんだ」

 

 恐ろしく冷えた声だった。

 意に沿わない返答が聞こえ次第切り捨てるような声音だった。

 間違いなく推し量られていると察するも、胸に浮かんだ答えに少年は何の疑問も持たない。

 リュウは同じように男を睨み、腹に力を込めて気張る。

 

「……俺は、弱くて、卑怯な人間だ。自分の為に他人を蹴落とす事もやって、見殺しにも近いことをやるような、胸張れる人間じゃない」

 

「…………」

 

「それでも守りたい物はあった。こんな俺にも付いてきてくれるガキ共に、俺なんかを信頼してくれる仲間達。応援してくれる親。……でも俺は学園って環境を盾にして大事な物から目を背け続けて、いつの間にか守りたい物を忘れていた」

 

「テメェ……」

 

「だけど、全部捨てる勢いでこの町に帰ってきて。……ようやく分かったんだ」

 

 ────事情を知らずとも応援してくれた両親、約束を果たさずに帰ってきても迎えてくれたカンナに店長。こんなにも情けない自分に付いてきてくれると言ってくれたナナ。

 少年は彼らに感謝した。頼っても良いと、そう言ってくれた。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。────これが俺の答え。……思い出したんじゃない、やっと俺は戦う意味を見付けたんだ」

 

 臆せずに答える少年の、それを上回る威圧を以て男は視線を射抜く。

 静寂が空間に満ちて、綻ぶように男は口角を吊り上げた。

 

「忘れんなよその言葉。……リュウ、俺の眼を見ろ」

 

「眼……?」

 

「今からお前に、記憶を返す」

 

「は──────?」

 

 間抜けな声が上がりながらリュウは見据えられた黒瞳に身動きが出来ない。瞳へ吸い込まれるように視線が釘付けとなりながら、膨大な量の風が吹き付けてリュウの中へと入っていく。

 

「どうして俺が失われた筈のお前の記憶を持っているのか、何故俺が2人を呼んだのか。残念ながら答えられる時間はもう残されていない」

 

「アンタ……! 何言って……!?」

 

 身に打ち付ける暴風に、目をしかめながらもリュウは男の目を見続ける。後退り体勢が崩れそうになる少年を少女が必死に支える。

 

「答えは電脳世界(アウター)にある! そこでもう一度俺に会え、そのときに全てを教える!!」

 

 風はやがて空を裂き雲を裂き、亀裂が地上へと大きく走る。

 割れ目から溢れる光の鮮烈に少年は否応無しに世界の終わりを察した。

 風の暴威の中でただ1人、ポケットに両手を突っ込んだ男は今までの快活な表情ではなく、悪童染みてそれでいて本気で楽しんでいるかのように犬歯を覗かせて言い放つ。

 

「ガンプラバトルをそこのナナちゃんと続けろぉ! お前の道は間違っちゃいねぇ! だからっ────」

 

 足場も崩れ世界が白に包まれる。

 上下どころか時間の定義すら消え行く空間の中に、姿の消えた男の声だけが響き渡った。

 

「リュウ! お前は本当の英雄(ヒーロー)になれぇッッ!!」

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