「エイジ、俺のこいつを見てくれ、どう思う?」
「すごく……大きいです」
途中まで組み上げた件のガンプラを見せると、そんな率直な意見が返ってきた。
結局急遽開催される事になったタチバナ家でのお泊まり会はエイジにコトハ、ナナとカンナも居合わせる事となり、リュウの自室は人員オーバーギリギリの状態となっている。
因みに電話でユナも誘ってみたが、
『こっ、コっっ……! コトハしゃんとおっ……────お泊まり会!!? 死にます! その場にずっと居たら感動で恐らく死んじゃうのでごめんなさい遠慮させて頂きます!! ……あ、でも声だけ今聞かせて貰えませんか!? 最近稽古の方がご無沙汰で声を聞いていないんですッッ!! コトハニウムが不足してるせいか最近肌も荒れてきて……』
『やっほーユナちゃん元気~?』
『おひょおおぉぉっぉおおおお!!??!?』
南国の鳥みたいな声を上げて電話が切れた。……今更気付いたがユナはコトハに対して限界オタクみたいなところがある。
こうして開かれたお泊まり会は現在、机にリュウとエイジ、ベッド付近に女子3人という割合で自然と分けられていた。
「素体はもう完成してるのか……。どうして脚部だけシナンジュ・スタインなんだ? シリーズを跨ぐミキシングは動かす為のエネルギーが違う。股関節の可動を考えてスタインを選んだのなら他にもキットはあっただろ」
「勿論考えた。だけど00シリーズのガンプラはGN粒子で飛行を前提とした機体が多い影響か足の接地面積が少ない。今回考えたコンセプトは全領域で戦えるガンプラだ、色んなキットを探したけど、スタイン以外条件に合ったガンプラを考えられなかった」
機動戦士00におけるGN粒子を扱う機体は、総じてGN粒子による飛行能力と重量軽減作用を考慮して足部分の接地面積は
最低限の物となっている。
しかしその分粒子を割いているという事実でもあり、リュウは今回『GN粒子を扱いながらも脚部で機体全体を支える機体』を構想して組み上げていた。
それが実現するのなら重量制御に用いていた分の粒子を武装にも回す事が計算上可能なのだが、そうすると脚部自体にある程度強力な推進力を備えた物が必要となってくる。
推進力と接地面積を備えた脚部、そうなると広いガンダムシリーズの機体群を探しても数はある程度絞られた。
「成る程。それでスタインか。確かにこの脚部なら接地面積と推進力の問題はカバー出来そうだな……。太ももに仕込んだGNケーブルはスタインの脚に変換したGN粒子を回すためって事で良いんだよな?」
「元々は燃料に見立てたプラフスキー粒子を使う機構だからそこだけ弄る必要があった。……そもそもアイズガンダムは上半身が大きく下半身は細いスタイルだから、スタイン脚を使えば重心が落ち着いてとりあえずは自立出来る」
プラフスキー粒子を回していなくとも自立出来るということは、その時点で重心のバランスは取れているということだ。
後は余った粒子をどのような武装に回すかという最も大事な問題があるのだが、そこは少年のバトルを多く見てきたエイジに意見を仰ごうかと考えている。
掌で慎重にガンプラを回すエイジ。引っくり返したり真上から見たり、その眼光は鋭利な刃物のように鋭い。
「……やはり一撃の元に全てを貫通させるパイルバンカーユニットだろう……。1発で全粒子を消費させるくらいの」
「真面目に取り合ってくれませんかねぇッッ!!?」
ゴソゴソと鞄からGNアームズとダインスレイヴとサイコガンダムの腕を取り出したエイジに思いきり叫ぶ。
もしかしたら意見を求めた人選が間違っていたかもしれないと、リュウは内心後悔したのだった。
※※※※※※※※
「へぇ~。ナナちゃんはガンプラバトル1回しかやったこと無いんだ」
「……以前に1度、リュウさんから『でんどろびーむ』なる物を買って貰い、それを動かしただけですね」
「はぁ!? デンドロビウム!? アンタいきなりあんなデカいの選んだの!?」
女子サイド。
こちらはガンプラを取り敢えず置いて、円の中心に菓子類やジュースが並べられていた。
おさげの少女は先端にチョコの付いた棒を加えて、最近ようやく生え揃った永久歯で音を鳴らしてそれを折る。
「……じゃあアンタ、自分のガンプラ持ってないのよね? 萌煌学園にはデンドロビウムで殴り込むの?」
「実はデンドロビウムは私では使いこなせず……、まだどのようなガンプラが向いているのかも分からないんです」
視線を落とす少女。手に持った紙コップの飲み物には眉を寄せるナナ自身が映っていた。
そんな少女に向けて好奇の目を光らせる人物が2人。
その勢いは、『容姿は抜群だけど何を着たら良いか分からない女の子に、性癖(個人的趣向)の限りをぶつける女友達』を彷彿とさせた。
コトハとカンナの顔が一斉に少女へと接近する。
「ガデッサとかどう!!? 恵まれた基本性能に加えてほぼ一撃でバトルが終わる射撃武器も付いてるの! 最強だよ!」
「それならガンダムXの機体も良いわよ! 基本性能も高く武装も色んな種類があって好みのカスタマイズが出来るわ! 尚且つ対策されにくいシリーズだから初等部連中相手なら無双出来るわよ!」
「それは待ってカンナちゃん! 長い目で見るなら、そんな初心者狩りみたいな真似はいずれ限界がくる! ここはシンプルかつ大胆な戦法の取れるガデッサ1択よ!」
「長い目で見るからこそですよ! 初心者に大事な事はまずバトルに勝って自信を付けさせる事です! だからこそキワモノと呼ばれる武装も豊富なガンダムXシリーズが良いんです!! 月は出ているか!!? 私の愛馬は凶暴です!!」
目の前で始まる乱闘(コトハは指に○ッキーを挟んでガデッサに成りきっている。対してカンナは腕を折り畳んでTの字の体勢で立ち上がり威嚇をしている)に、白銀の少女は目を丸くする。
収拾が付かなそうな両者にも聞こえるよう、少しだけナナは声を張り上げた。
「おっ、お二人が薦められる機体は全部乗ってみます! どうかよろしくおねがいします!」
「キャー!! 聞いたカンナちゃん!? じゃあどっちが先にナナちゃんへ機体を勧めるかガンプラバトルで決めましょう!」
「望むところよッッ!! シンガポールの大会で1位がなんぼのもんじゃい!」
「言うじゃないチビッ子! 今から『中山模型店』に行きましょ! 軽く捻ってあげるんだからっ!」
バチバチと眼光が衝突する17歳と10歳。
かくして少女は連行されて深夜まで営業をしている中山模型店で2人のバトルを見届ける事になった。