ガンダムビルドアウターズ   作:ク ル ル

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5章落書き『機動戦士ガンダムEXTREMEVS.MAXIBOOSTOON発売おめでとう』

「やっぱこういう時は機動戦士ガンダムEXTREMEVS.MAXIBOOSTOONでもやらないか?」

 

 7月某日。

 寮でガンプラ研究会を行っていた中エイジがふとそんな事を言い出した。

 リュウの部屋には、リュウ、ナナ、エイジ、コトハ、ユナといった所謂イツメンが揃っており、無言が続く昼間の作業の最中にエイジがテレビ台の中に閉まってあるPS4を、部屋主の許可が下りる前に取り出していた。

 しかし他の人間の作業も残りは単純作業に差し掛かっており帰宅して1人でも出来る状態だ、ここは気分転換を行うのも悪くないと少年は物置からゲーミングモニターを引っ張り出す。

 

「エイジさん、その……エクストリームバーサス? ……ってなんですか」

 

「ユナはこれやるの初めてか? 丁度良い、ナナちゃんも居るから説明しとくか」

 

 エイジが機材をセッティングしながら説明を始める。

 

「エクストリームバーサスってシリーズは複数タイトルが出ているんだが、……まぁ簡単に言うと色んなガンダムが出てくる2On2の3D格闘ゲームだ。省略化されたガンプラバトルってイメージで良い。その中でも今からやるMAXIBOOSTOON、通称マキオンってゲームはゲームバランスがぶっ飛んでてな、結構理不尽な面があるんだがそこが現実のガンプラバトルっぽくて、ガンプラファイターは結構このゲームやってると思うぞ」

 

 マキオンは2020年に発売されたPS4向けのゲームだが、秀逸なゲームバランスと豊富な機体数、なにより機体毎の特徴を最大限活かせる覚醒というシステムが強いゲームであり未だに人気のタイトルだ。

 170機以上となる参戦機体、それらはガンプラバトルのレギュレーションのようにコスト分けされており、ガンプラファイターにとってはプレイする敷居は結構低い。

 その上膨大な機体数だが機体毎の性能は感心する程に違っており、どんな機体でもやりこめば上位の機体を食えるところがユーザーから評価が高い。

 

「ナナは最初だから見学の方が良いな。ユナも居ることだし、簡単な操作説明をコトハ教えてあげれるか?」

 

「わかったー! エクバってガンプラバトルに結構似てるからすぐに馴染むと思うよ~」

 

「こっっ、こと、コトハしゃんから教えて貰えるんでしゅかッッ!!?」

 

 起動した画面を操作して項目はトレーニングモードへ。

 2つのコントローラーを握った両者は肩をくっ付けて画面を見て、ユナの身体が感動のあまり震えている。

 

「もう機体選んで良いんですか? ……うわっ、凄い沢山機体が居ますね」

 

「私も最初凄いびっくりした! 何から使って良いのかさっぱりだったよ!」

 

 キャッキャと喜ぶ女子達を見て、リュウとエイジは腕を組んだまま子細を見守る。

 このゲームで初めに選ぶ機体は、最終的に自分の持ち機体になったり機体性能が似通った機体を選ぶ傾向が強い。ユナが何の機体を選ぶのか、それは彼女のガンプラファイターとしての特性が分かる要因にも成り得る。

 それほどこのゲームはガンプラバトルと共通する点が多いのだ。

 

「やっぱストライクフリーダム以外有り得ないですね~!」

 

(ストライクフリーダムか、成程……)

 

(機体愛なんて言葉、俺はもう忘れちまったぜ)

 

 エイジとリュウは、かつての遠い自分達を見るかのようにツインテールの少女の背を見守る。

 ユナが選んだストライクフリーダムは最高コストである3000コストに位置し、全機体トップクラスの機動力と旋回性能を併せ持つ反面、3000コスト最低の体力と制御が難しい独特の浮遊感が特徴だ。肝心の武装はと言うと両手持ちの為射角が広く、その上弾数が多いビームライフルを筆頭に、範囲の広いゲロビ(ハイマットフルバーストによる照射ビーム)とドラグーンを使用した攻撃、そして第2の覚醒とも称されるSEEDという独自の武装を搭載している。

 

 初心者であれば低耐久故に1度ダウンさせられると起き攻めによって一瞬で溶かされて、相方から『助かりました』『了解です』通信が連打されること請け負いとなる事が多いが、上級者となると持ち前の機動性と特殊格闘に位置する宙返りで敵の弾幕を交わし続け、近寄られたとしても停滞ドラグーンを用いた迎撃によりマトモに触れられること無く試合が終了する。

 

 ここまで書けば強く見えるかも知れないが、他の機体にも様々な強みがあり、理不尽な武装が飛んでくる事が多いこのゲームにおいてストライクフリーダムで全てを回避し続けるというのはトッププレイヤーでも至難の技だ。

 ユナが今回のマキオンでストライクフリーダムが嫌いにならなければいいなと願うばかりだ。

 

「よ~し! 覚えました! エイジさんやりましょ! ボコボコにしてあげますっ!」

 

「ん? あぁ、じゃあ今日は1on1やるか」

 

 そうしてる間にもコトハが説明を終えてコントローラーをエイジへと渡す。

 このゲームは2on2が主な遊び方だが、ある程度ゲームに精通したプレイヤーはこうして1on1で積極的に対人を行う事もあり、しかしその意図をユナが理解している筈もない。

 このエクバというゲーム、2on2がメインと銘打ってるが実は1on1、俗に言う疑似怠(疑似タイマンの略称)が重要で、相方同士が孤立した場合目の前の敵をどう倒すかが勝負の分かれ目へ充分に成り得る。

 ……ユナの場合はエイジを倒したいという欲求で動いているが。

 

「シナンジュでも使うか……」

 

「さっさと選んでください! 積年の恨み今晴らしますよ!!」

 

 ちなみに現在まででユナは1度もエイジにガンプラバトルで勝てていない。

 選ばれたフィールドはサイド7。

 こうして急遽マキオンによる1on1の勝負の火蓋が切って落とされたのであった。

 

 

 ※※※※※※※

 

 

「攻撃が当たらないッッ!?」

 

「うっひょっひょ。どうしたのかなユナちゃんや? 俺はここからブーストを踏んでいないぞ?」

 

 ユナがビームライフルを連射(ビームライフルの射撃硬直をブーストダッシュでキャンセルし、それを交互に行うテクニック)するも、地面でステップを繰り返すエイジのシナンジュには1発も当たらない。

 地ステ、もしくはステ連と呼ばれる技法だ。

 地上でステップを入力すると硬直が切れた瞬間にブーストが全回復する。これを利用してブーストゲージギリギリまでステップを繰り返して、僅かに立ち止まるだけで再びブーストが回復しているのだ。

 2on2ならそのステップ連打を相方が取ってくれたりするのだがこれは1on1、煽りにも見えるその行為を止めてくれる味方は居ない。

 

「ユナちゃんっ! ハイマットフルバーストだよ!」

 

「……っ、そうか!」

 

 キチンとドラグーンを展開したストライクフリーダムが地上でシャッシャシャッシャと反復横跳びをしているシナンジュに向けて全砲門を閃かせた。

 ハイマットフルバーストであればステップの範囲毎焼き払える為有効な手と成り得る。

 ドラグーン含めた広範囲のゲロビがシナンジュに接近して。

 

「見え見えだなぁ~ユナちゃんやぁ~」

 

「たっ、盾!?」

 

「ストライクフリーダムのハイマットフルバーストは対ストライクフリーダム戦において最も警戒する武装だよ。その射撃動作を見たら盾を行うって入力は脊髄反射として身体に刷り込んであるんだなぁ」

 

 ストライクフリーダムのハイマットフルバーストは、最高速度による広範囲ゲロビをステージの端から端まで流せる他、着地硬直後のブーストを停滞ドラグーンによって狩れるといった極めて凶悪な特性を併せ持つ。

 ストライクフリーダムを使用するにあたってハイマットフルバーストを当てることは何より大事な技術となるが、その反面しっかりと対策も存在する。

 その1つが盾だ。決して長くはない射撃前の動作だが反応出来ないという速度でもない。それが見えた瞬間に盾をすればこちらは攻撃を凌ぎ、ストフリ側はハイマットフルバーストによってブーストを消費し続けることになる。こうなったストフリが取る行動は即座に着地して機動力を活かした引き撃ちに回るのがベターだが、熟練者になればその着地の隙に一気に接近を行う。

 

「今回俺は攻撃を行わない。……そうだなぁ、1回ダウンさせる事が出来たら……まぁ、合格ってところかなぁ?」

 

 あからさまに挑発の言葉を横に投げてエイジは眼鏡の位置を直す。

 安い挑発だが、最近コトハから修行を受けている以上、ユナもこの程度の挑発には乗らず冷静に分析を────。

 

「殺す殺す殺す殺す殺す殺す……」

 

 挑発に乗っていた!! 

 

「ドラグーンッッ!!」

 

 ユナの叫びのまま背部スーパードラグーンが射出されエイジのシナンジュを取り囲む。

 順次発射される全方位の射撃を、シナンジュはブーストダッシュで回避し、尚も取り付いてくるドラグーンに対してはブーストダッシュの慣性を引き継いだ上昇でドラグーンからもストフリからも距離を離した。

 

「ってあれ? このゲームのドラグーンも自分で勝手に攻撃してくれるんですね?」

 

「そうそうガンプラバトルみたいに自分達で陣形組んで攻撃してくれるの。ちなみに今エイジ君からロックオンされているんだけど、画面の上が黄色でしょ? どこかで見たこと無い?」

 

「うん……? あぁっ、これガンプラバトルの正面モニターにそっくりですね! ……じゃあエイジさんが攻撃したらもしかして」

 

「この射撃はノーカウントだからな」

 

 意を汲んだエイジのシナンジュのビームライフルから射撃されて、それに反応してユナの画面に警告(アラート)が鳴る。

 

「わっ! ほんとにガンプラバトルみたいですね!」

 

「そうそう! 私達も結構練習でエクバしたりするんだ~。前は学校の授業にも使われたりもしたんだよ!」

 

「成程……じゃあっ」

 

 ユナが前傾姿勢となりツインテールを揺らす。

 その瞳を明々と闘志で揺らして、不敵に笑った。

 

「これで勝てば実質エイジさんに勝ったってことですね!!?」

 

「抜かしおるわ青二才が! 偉そうなことはワシに勝ってから言え!」

 

 お前のそのキャラクターはなんなんだ。

 

 ブーストで突貫したストフリは着地を挟まず距離を詰め、シナンジュの眼前で着地を晒すかと思いきやストライクフリーダムの機体が弾けるように発光した。

 SEEDと呼ばれる、格闘チャージで発動する武装の1つだ。

 劇中のキラ・ヤマトの機動をイメージされたこの武装は一定時間機動性が格段に上昇してブーストゲージも回復する。

 それを利用したユナは全機体最高性能となった速さのままストライクフリーダムのビームサーベルを悠然と抜き放った。

 

「横格闘っ!? ……勝ち気な武装選択はコトハ譲りかっ……!」

 

 その横凪ぎをステップで回避しやり過ごす。

 しかし格闘をステップでキャンセルしたユナはそのまま怒濤の横格闘連打を繰り出した! 

 

「1発でも当てたら勝ち1発でも当てたら勝ち1発でも当てたら……!」

 

「チィっ!?」

 

 建物に詰まってステップを妨害されたエイジは咄嗟の判断で盾を選択。

 弾かれた両者の距離は離されて、お互い同時に着地する。

 そこで再びユナがハイマットフルバーストを選択し、無防備なシナンジュが次の瞬間には焼かれる未来がまざまざと想像出来た。

 

「さっき教えただろ! それは俺に効かねぇぞ!」

 

「じゃあっ、────()()()()()()()()()()()()

 

「なっ、!? 小癪なっ!」

 

 ハイマットフルバーストの前動作をブーストでキャンセルし接近。盾を入力していたエイジはハイマットフルバーストのフェイントを食らい、ストライクフリーダムの接近を許した。

 この時点でブースト残量はお互いにほぼ五分。ユナは着地をさせる前にシナンジュへ横格闘の嵐を浴びせる。

 

「あたら、ないっ……!!」

 

「ステップは誘導も切ってるからな、ユナが横振ってくるだけなら一生当たらないぜ」

 

「──────ユナちゃんっ!! ()()()()

 

「っ!」

 

 ギャラリーであるコトハの声にユナがハッと目を開き、停滞させていたドラグーンから次々とビームが撃ち出される。

 至近距離の停滞ドラグーンはこのゲーム全体で見ても凶悪な近距離択だ。エイジが繰り出すステップの間にマシンガンの如きビームがシナンジュを襲う。

 それをエイジは先程行った慣性上昇で回避した。ステBDを駆使した本気の回避だった。

 その回避に合わせて横を降るユナ、格闘は勿論届かない。

 ──────だが。

 

「ハイマットフルバーストッッ!!」

 

「なっっ!!? 前ステで軸を合わせてゲロビだとっ!!?」

 

 互いにブースト残量0。

 エイジの読みであればこの後互いに着地して再び仕切り直すというプランだったが、その逃げをブースト0(オーバーヒート)で行った決死の攻め択によってユナは貫いた。

 オバヒになれば行動はキャンセル出来ず、空中で決めポーズのようにハイマットフルバーストを流すストフリはサイド7の陽光に尚も映えていた。

 

※※※※※※※

 

「やったーやったーやったぁー! エイジさんに勝ったぁ~!!」

 

 両手をあげてコトハとリュウとナナにハイタッチするユナに対して、エイジはOTLの格好で愕然としてた。

 

「停滞ドラと横を合わせて、その上回避した相手を読んで前ステゲロビだとッッ……!! 全部、読まれていたって事なのか……!? 初心者のユナに……!!」

 

「あっらぁ~? どうしたんですかエイジさんそんな所で項垂れて。元気だして下さいよぉ~()()()()()()()()()()()()()()

 

「べ、別に落ち込んでいないが? だがユナ、勝ち逃げはどうなんだと俺は思う。俺は条件付きで実力を出せていなかったわけだし次は公平な試合をしよう。………………S覚リガ、E覚グシオン、F覚アヴァランチぶつぶつぶつ……」

 

 めっちゃ根に持ってる。

 そんな2人を生暖かい目で見守る傍ら、隣から声を掛けられた。

 桃色の髪を僅かに揺らし、微笑んだ幼馴染みがコントローラーを差し出す。

 

「リュウくん……。わたし、あの2人のバトル見て我慢できなくなっちゃった……」

 

「お、おう」

 

「えへへ、………………やろ?」

 

 その後コトハのE覚エピオンとF覚エピオンに50回ほどしばかれて、リュウの精神は多いに凹まされる事になった。

 

「ひっっ────ぎィッッ!!? そんな高い所から大車輪ッッ!? じぬじぬじぬ死ぬぅッッ!!?」

 

「リュウくん虐めるの楽しい~っ」

 

「──ふふっ」

 

 笑うと叫び声が止まないその様子を、傍らの少女は笑みを浮かべて眺めていたのであった。

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